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2018年1月25日号 5面・解説

閣僚級会合などで合意 
水指す日本政府の態度許せぬ

 自主性確認した南北朝鮮

  韓国と朝鮮民主主義人民強国(朝鮮)による閣僚(高位)級会合が一月九日、軍事境界線がある板門店で始まった。二年一カ月ぶりの会合は「共同報道文」を発表、対話の継続などが確認された。とりわけ、民族による「対話と交渉による解決」が明記されたことは重要である。米トランプ政権が朝鮮に対する制裁など包囲と圧迫を強め、安倍政権がこれに追随するなか、南北の自主的態度は大いに歓迎できるものである。


昨年来、トランプ米政権は「核・ミサイル」を口実に朝鮮への制裁を強化し、政治・経済・軍事すべての面での包囲と圧迫を強め、緊張は極度に高まった。安倍政権はこれに追随、アジアで先兵として振る舞っている。
 他方、「キャンドル革命」と言われた大衆行動を背景として誕生した韓国・文政権は発足当初から、米韓同盟の枠内ではあるが、「韓国の了解なしの軍事攻撃に反対する」態度を表明したり、朝鮮への人道援助を決めるなど、相対的に独自の態度を取ってきた。
 朝鮮は米国の圧迫に屈しない姿勢を堅持している。
 こうしたなか、金委員長は「新年の辞」で、核兵器開発の成果を誇ることと併せ、二月から韓国で開かれる平昌冬季五輪に「代表団を派遣する用意がある」と述べた。文大統領も、「いつでも南北首脳会談に応じる用意がある」と応じた。
 文政権の独自姿勢と金委員長の発言は、今回の南北閣僚級会談とその後の情勢を動かす大きな原動力となった。背景には、平和と統一を願う南北人民の願いがあることはいうまでもない


民族の自主性を明記
 発表された「共同報道文」では、「軍事的な緊張状態を緩和し、朝鮮半島の平和的な環境をつくり、民族的な和解と団結を高めるために共同で努力する」「多様な分野で接触と往来、交流と協力を活性化させ、民族的な和解と団結を高める」と明記された。
 さらに、「南と北は南北宣言(注)を尊重し、南北関係で提起されるすべての問題を、わが民族が朝鮮半島問題の当事者として、対話と交渉を通じ解決していく」という合意は、非常に重要である。
 この宣言は、民族の将来を自らの力で解決していくという自主的意思を示したものにほかならない。その後、五輪会場への南北「統一旗」による入場など十一項目の合意もなされた。
 本来、国内、あるいは民族の課題を自らの力を解決することは、当然のことである。
 だが今回の南北会談に際して、米国は「協議内容は五輪に限定したもの」(ペンス副大統領)と圧力をかけた。
 南北はそれでも、「南北関係で提起されるすべての問題」という形で、対話が五輪以外にも及ぶことを確認した。
 米国からすれば、外交上の敗北ともいえる。トランプ大統領は「力の行使も辞さない断固とした強い姿勢が対話につながった」と自賛したが、負け惜しみにすぎない。
 こんにちの世界では、帝国主義者とその手先の策動によって、民族の自主性という当たり前のことさえ奪われ、妨害されている。世界の中小国・民族は、大なり小なり、米帝国主義を筆頭とする帝国主義の世界支配の下、自らの運命を自ら選択できない状態を強いられているのである。
 同一民族が分断されて約七十年を経た南北朝鮮はその典型である。一九七〇年代半ばまでのベトナムも同様だった。アラブ民族はこんにちにおいても、米国とその手先であるイスラエル、さらに各国反動派によって分断・支配されている。
 南北の対話は、帝国主義と闘う世界の労働者、被抑圧民族、中小国を激励するものである。

政府やマスコミは難クセ
 わが国もまた、米国の顔色をうかがい、その世界戦略に追随・奉仕している。わが国歴代政権は、民族の将来を自らの力で解決するという当たり前のことさえ(密かには願っているのだろうが)、放棄してきた。
 南北会談、対話の動きへの支持と併せ、「民族の将来を自らの力で解決する」という考え方を当然のこととして、広範な国民に広げることが重要なのである。
 だが、安倍政権は南北朝鮮の自主性を見習うどころか、「対話のための対話であってはならない」(小野寺防衛相)などと悪罵(あくば)を投げつけている。
 マスコミにいたっては、「北朝鮮が狙う米韓分断や国際包囲網の突破に結び付きやすいことに留意すべき」(産経新聞)などと、主に文政権の態度を非難している。一般には「リベラル」とされる「朝日新聞」も、「北朝鮮の得意な『くせ球』というべき」などと難クセを付けている。
 朝野をあげたこのような態度では、わが国は米国の先兵役として、アジアでの孤立を深めるばかりである。
 日本は朝鮮を植民地支配し、こんにちの分断につながる「種」を蒔いた責任がある。
 南北分断を固定するに至った朝鮮戦争では、日本が後方支援基地となって米軍を支えた。現在も日本は拉致問題も絡めて、米国による朝鮮敵視政策における先兵役を買って出ている。ベトナム戦争でも、沖縄をはじめとする在日米軍基地がなければ、米軍は北爆や枯れ葉剤散布などの残虐行為を遂行できなかった。イラク戦争においても、同様である。
 このような過去・現状を清算し、対米従属からアジアの共生へと国の進路を転換してこそ、わが国はアジアで信頼され、生きていくことができるのである。

曲折は不可避、闘いが重要
 朝鮮代表団の五輪参加が成功すれば歴史的なことだが、南北対話が以降もすんなりと進むことはないだろう。すぐさま、延期された米韓合同軍事演習という問題がある。米韓同盟は維持されており、韓国国会における政権基盤の問題もある。米日の画策も強まろう。
 文政権がどこまで平和と対話の方向を堅持できるかは、労働運動を中心とする韓国民の闘いに大きく依存してもいる。
 朝鮮包囲の張本人である米国は衰退を早め、財政政策や秋の中間選挙など、当面は国内問題を優先せざる得ない。外交面でも、エルサレム問題などで孤立を深めるなか、台頭する中国への対処がますます中心課題となってきている。
 朝鮮への圧迫は、これまでも朝鮮自身への敵視というだけでなく、中国をけん制する狙いがあった。中国の影響力拡大とともに、この側面がますます大きくなり、米国は遠からず、中国への対処で手一杯になることだろう。
 文政権の態度は、このような歴史的変動期のすう勢をにらんだものでもあろう。かつて金大中政権は「太陽政策」、盧武鉉政権がそれを引き継ぎつつ「北東アジアのバランサー」を掲げ、米中を含む周辺国との等距離外交による平和と安定で民族の統一への環境を促そうとした。文政権の戦略も、これと共通したものであることが伺える。
 南北朝鮮が自主的態度を強めるなか、わが国の態度が問われている。 (K)

注・二〇〇〇年、金大中大統領と金正日国防委員長が「統一をめざす」ことなどで合意した。 


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