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2018年1月1日号 2面〜5面

新春インタビュー

労働党中央委員会
秋山 秀男同志に聞く

  二〇一八年新年に際し、「労働新聞」編集部は、労働党中央委員会の秋山秀男同志にインタビューを行った。話題は趣味に始まり、内外情勢と党の闘いなど多岐にわたったが、紙面の都合で、一部を割愛して掲載する。(聞き手・大嶋和広編集長)


大嶋 明けましておめでとうございます。

秋山 おめでとうございます。新しい年に際して、全国の同志、友人、そして「労働新聞」読者の皆さんに、ごあいさつ申し上げます。

印象に残った映画

大嶋 党中央委員会の秋山同志への新春インタビューです。今回も、よろしくお願いします。
 内外情勢や党の闘いについても伺いますが、今回は趣向を変え、柔らかい話から。何かというと、映画の話から伺います。
 実は、党の同志でも知っている人はさほど多くないのですが、秋山同志は結構、映画には造詣が深いんですよね。

秋山 そんなこともないですが、見るのは好きですね。


大嶋 まず、英国映画の「ブラス!」をご覧になったとか。

秋山 昨年の「労働新聞」新年号で紹介されていたので、興味を持っていました。とても面白かったです。
 サッチャー政権下の政策転換、労働運動への弾圧で廃鉱に追い込まれた炭鉱と、そこで働く労働者によるブラスバンドの姿が、生き生きと描かれています。実話を元にした作品ですが、演奏の力強さには心打たれます。
 そして何より、指揮者のダニーが政権の悪行を告発するシーンは「涙もの」でした。
 一九九六年の作品ですが、労働組合の学習会などでも活用して欲しい作品だと思いますね。
 
大嶋  新聞で紹介した甲斐がありました(笑)。私も好きな映画です。
 最後に、エルガーによる「威風堂々」が流れます。この曲には、「大英帝国」の国威発揚的な歌詞が付けられています。これを労働者が演奏しているのは、どういう意味か。私には、「国をつくっているのはオレたちだ」という誇りの発露として聞きました。

秋山 なるほど。私は、この映画には、労働者の闘いが一時的に困難、敗北を余儀なくされても、精神的には決して屈しない心意気や連帯の気持ちがよく出ていて、労働者に勇気を与えるものだと思いました。

大嶋 そのほかにはどうですか?

秋山 ケン・ローチ監督による「わたしは、ダニエル・ブレイク」に感動しました。これも英国作品で、過酷な生活保護政策と、これに耐えきれなくなって闘う高齢者の話です。
 私は、サッチャ—政権以降の英国の労働運動の闘いの歴史に関心を持っています。英国の労働者階級が、サッチャ—政権、ブレア政権、そしてキャメロン政権とどう闘ってきたのか、そして最近のコービン党首率いる英国労働党の動向など、その経験や闘いを導いた長期路線や考え方、そして活動方法などに学ぶべきものがあると思うからです。
 この映画は直接には組織された労働者階級の闘争を描いているわけではありませんが、英国社会の底辺に生きる労働者たちの非常に深刻な現状、貧困や苦痛、生き延びるための必死の闘い、出口を求めてもがいている労働者の姿をリアルに描いています。最後の場面で、主人公(五十九歳の大工)が役所の壁にペンキで「わたしはダニエル・ブレイク」と大きな字で書きなぐり、それを見ていた周辺の労働者がみんなで嬉しそうに拍手喝采する場面はさすがに泣けましたね。英国の労働者階級は「もはや我慢の限界」にきていることを強く「告発」した映画です。
 最近の英国労働者階級の「反乱」の背景が実感できる、しかも普通の労働者の共感を呼び起こし、鼓舞激励する優れた映画です。

大嶋 私も、ケン・ローチ監督によるその前の作品である「ジミー、野を駆ける伝説」を見ました。アイルランド共産党の創設者たちが、反動政府と保守的なキリスト教会が支配する田舎町で地道な地域活動を行い、若者を教育していく姿が描かれています(作品中では共産党の名は明示されていない)。
 もう一つ、「バトル・オブ・ライジング コールハースの戦い」も良かったですね。実話を元にした、十九世紀のドイツの小説がベースの作品です。領主の不正で財産を失い、さらに妻を殺された馬商人が、数百人の軍勢を組織して復讐に立ち上がるという話です。

秋山 それは面白そうですね。機会があったら、見てみます。
 これも昨年の新年号で紹介されていましたが、「サンドラの週末」も地味ながら感動的な映画です。突然リストラされた女性労働者が、従来の家庭生活を取り戻すため解雇撤回を求めて闘う物語です。迷い、不安、逡巡(しゅんじゅん)、そして仲間の支援の中で労働者の団結と威厳を取り戻していくのです。
 この映画を見ていると、資本の理不尽な攻撃を受けた労働者ならば、誰もが闘いの中で立派に成長していく力を持っていることを実感できてうれしくなります。

大嶋 日本映画では印象的な作品はないのですか?

秋山 私も探しているところです。最近評判になった「シン・ゴジラ」は、体制側から見た危機管理を描いており、つまらないですね。
 「ゴジラ」第一作目(一九五四年)は米国の核実験で突然変異的に生まれたゴジラを描いており、核実験とわが国政府の対米追随政治への静かな怒りがにじみ出ている反戦・反核映画でしたが、それに比べれば、最近作は全く無内容です。
 日本でも階級的観点、政治的な観点から見て優れた映画はありますが、少ないですね。外国、例えばフランスやドイツでは面白い映画が多くつくられています。例えば、少し古いのですが、ルネ・クレマン監督の「太陽がいっぱい」は、一人の女性をめぐる米国人の金持ちのドラ息子とフランス人の貧しい青年との息詰まるような闘争を描いた映画です。しかし、主演のアラン・ドロンの端正なマスクにごまかされ、皆さんはそうは見ていないようですね。
 この映画は「鉄路の闘い」というフランスの鉄道労働者のストライキと対独レジスタンス映画をかつて制作したルネ・クレマンでなければつくれない、現代の「階級闘争を描いた」傑作ですね。
 日本映画で推奨したいのは少し古いのですが「大魔神」シリーズの三本です。弱者、虐げられたものが権力に闘って最後には勝利を収める映画です。その過程で大魔神に助けを求める。しかし、大魔神は闘う側が「自己犠牲」をいとわない姿を示した時初めて立ち上がり、権力者や小悪党を懲(こ)らしめて消え去る。なかなか考えさせられる映画です。

大嶋 「大魔神」シリーズは何回か見ました。なかなか痛快ですよね。

秋山 素材としては面白い映画もありますね。たとえば、山田洋二監督の寅さんシリーズですが、部分的ですが、沖縄、北海道、青森県深草、阪神淡路大震災後の神戸市長田地域など、時に鋭く「地域」を描いています。寅さん映画を並べれば、地域で農業、漁業、畜産・酪農、商工業で生きる人びとの暮らしや生きざまを理解するヒントが随所にあります。仕事を終えた労働者たちが気楽に、面白く見ながら談笑できるという点では、寅さんシリーズは使い方次第でいい材料になりますね。

情勢の理解に役立つ書籍

大嶋 そろそろ世界の話に移っていきたいのですが。今回は、書籍の紹介を通して、内外情勢について語るようにしたいと思います。

秋山 昨年末、わが党は第十五回中央委員会総会を開き、活動の総括を行うとともに、内外情勢の見方や闘うべき課題、党建設について決議しました。それをいくらかベースにしながら、話せればと思います。
 また、大隈議長による新春講演もあります。党の見解はそこでも聞いていただくこととして、ざっくばらんにいきましょうか。

大嶋 まず、「これはオススメ」という一冊は何でしょうか?

秋山 「米中戦争前夜ーー新旧大国を衝突させる歴史の法則と回避のシナリオ」(クレアム・アリソン、ダイヤモンド社)ですね。
 内容は膨大で一口では言えないのですが…。
 著者は、米国防相の顧問を務めた人物で、過去五百年間に起きた、新旧両大国の「覇権交代」と衝突のケースを分析し、米国と中国の間での戦争と、それを避ける方策を述べたものです。

大嶋 古代ギリシャの「トゥキディデスの罠(わな)」について展開されている本ですね。

秋山 著者によると、近代以降の新旧大国が対峙(たいじ)した十六のケース中、十二で戦争になっています。著者は「数十年以内に米中戦争が起こりうる可能性は、ただ『ある』というだけでなく、現在考えられているよりも非常に高い」と述べています。多くの点で参考になりますね。
 もちろん、著者は米国の覇権を維持する角度から述べていますので、そこに留意する必要はありますが。
 そこで、米中間で戦争が起きるシナリオを五つ挙げています。その一つが「同盟国の問題」、すなわち、朝鮮半島や沖縄県の尖閣諸島をめぐる紛争です。序文を書いている船橋洋一氏(元朝日新聞主筆)が「世界のどの国よりも影響を受けるのは日本」と述べている通りで、私たちならずとも、国民は無関心ではいられません。
 本の基本的な政治傾向としては、一昨年の新春講演会で大隈議長が紹介した、「China2049」(マイケル・ピルズベリー、日経BP社)と同じですね。

大嶋 昨年末、トランプ米政権は新たな「国家安全保障戦略」を発表しています。

秋山 はい。中国とロシアを、米国主導の国際秩序に挑む「修正主義勢力」とし、軍事・経済の両面で対峙(たいじ)する方針を示したものとして、日本でも報じられています。
 これが従来の米国の安全保障政策の大きな「転換」ととらえる考え方には、同意できませんね。
 ロシアと中国を名指ししたという点では、確かに変化でしょう。
 ですが、冷戦崩壊後、米国はユーラシア大陸の東西に、自らの覇権に挑戦する国が登場することを許さない、何としても阻止すると、一貫した戦略を採っています。
 それが最初にあらわれたのが、一九九五年の「東アジア戦略」です。ここですでに、事実上は中国へのけん制強化の方針が打ち出され、そのためにアジアで十万人の米軍のプレゼンスを維持するという、こんにちにいたる戦略の骨格が出ています。
 リーマン・ショック後には、オバマ前政権が「アジア・リバランス戦略」を打ち出しています。狙いは、自国のいちだんの衰退と中国の台頭という情勢の下で、世界支配の維持と成長するアジア市場の収奪をもくろんだものでしょう。
 「米国第一」を掲げたトランプ政権の下で、その方向がさらに強化されたものといえ、米国の危機がそれほど深いということです。中国共産党は昨年十一月の第十九回党大会で、二十一世紀の半ば、建国百周年に「現代化された社会主義強国」を築くという国家戦略を決定しました。これは、中国は米国とは違った道を通って世界で影響力を持つ、米国と並ぶ大国をつくるという意思を宣言したことにになります。決して米国の思い通りの国、コントロールされる国にはならないという挑戦者のスタンスを明確に示したのです。
 今回の米国家安全保障戦略は、この中国のメッセージに何らかの反応を示したものとも考えられますね。

大嶋 日本、とくに「左」の人びとには、「米中は経済的に深く結び付いており、戦争はあり得ない」という見解を持つ人が多くいますが…。

秋山 私たちも、米中が「すぐ武力衝突」すると思っているわけではありません。
 確かに、両国は依存関係にあります。中国にとって米国は最大の貿易相手国で、米国にとっては中国は第三位の相手国です。中国の経済力の源泉である輸出の四割以上は、米国などの(中国に直接投資した)外国資本によるものです。また、米国は、一兆ドル以上の財務省債を中国に買ってもらっており、いわば財政的な結びつきもあります。軍人を含む人的交流も盛んです。
 ですが、第一次世界大戦前の英国とドイツも、こんにちの米中ほどではないとしても相当に結び付いていました。太平洋戦争前の日本だって、米国から原油や鉄資源を輸入し、それを軍艦などの建造にあてていた。経済関係の深さは、戦争を避ける決定的な理由にはなりません。
 こんにち、中国は購買力平価ベースの国内総生産(GDP)で米国を抜いています。このままだと、名目GDPで追い抜く日も近い。人口が違いますから、一人当たりのGDPで中国が「世界一」になるはもうちょっと先になるでしょうが。
 米国は、自らが世界の「二番手」になることを黙って見ているでしょうか。
 そうは思えません。軍事力による直接の戦争ではなくても、経済や金融による、あるいは「二十一世紀らしい」といえるサイバー空間を含めて、米中間はすでに、広義の「戦争状態」にあると思いますよ。
 米中は非常に複雑な関係にあり、闘争は長期に続くでしょう。

大嶋 米国が、自らが二番手になることを許さないということに関してですが…。米国がこれまで行ってきた数々の悪行を暴露した本が出版されました。

秋山 「米国とはどんな国か」という問題意識から日本研究に長く従事し、米国政治に批判の姿勢を堅持してきたジョン・W・ダワー著「アメリカ 暴力の世紀――第二次大戦以降の戦争とテロ」(岩波書店)ですね。とても興味深く読みました。
 米国は第二次大戦の最大の勝者で、戦後秩序をつくったわけですが、それは米国が戦争とテロ、謀略を駆使してつくりあげ、維持してきたものだということです。この本には、米国が世界の四分の三の国々で何らかの軍事行動を行っていること、そのために、海外約八百カ所に軍事基地を維持していること、反米国・勢力への攻撃だけでなく、米国の利益に反する政治家や経済人へのテロや暗殺などを行っていることなどが暴露されています。
 米国は大戦後、自国主導の国際経済政治秩序をつくり世界を支配してきました。経済力を基礎とする政治力で支配してきたのですが、同時に軍事力とその恐るべき発動で、つまり戦争、暴力、諜報活動、テロなどで支配を保障してきたのです。米国は歴史的にまれにみるテロ国家であり、超軍事大国だということです。
 著者は戦後の米国の暴力の歴史を事実の基づいて暴露し、とても説得力があります。米国は「平和国家」などと信じているものは少ないと思いますが、世界最大の超軍事国家・暴力国家であることを事実に基づいて認識しているひとは少ないと思います。ダワー氏は、超軍事大国である米国が第二次世界大戦後どのようにして「暴力の世紀」を歩んできたかを米国全体の問題として克明に追求し、暴露しております。そして、この本の翻訳者が解説しているように戦後七十年以上に及ぶ「パクス・アメリカーナ」が実質的には「平和の破壊」をもたらす暴力の歴史であることを暴露しているのです。この著作は米帝国主義の全世界での悪事を暴露して闘おうとする世界の労働者人民など広範な勢力にとって有益ですし、また激励されるものです。
 日本国民は米国のこうした正体、蛮行の数々を知る必要があると思います。アジアで米国のお先棒をかつぐ安倍政権はもちろん、「私たちは反米主義ではありません」(志位委員長)などと言い、米国にこびを売る共産党は、こうした事実を隠しています。彼らは確信犯であるだけに、日本の独立・自主をめざす革命闘争の裏切り者と言わざるを得ません。
 現在の、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対する圧迫は、この最たるものでしょう。
 経済的にもGDPで両国を比較すると、朝鮮は米国の千分の一以下です。しかも朝鮮は、朝鮮戦争以降、米国からの長期の敵視と包囲、制裁に苦しめられ続けています。安倍政権、議会内野党も「朝鮮の脅威」を大合唱していますが、どうして朝鮮を恐れる必要があるのでしょうか? 全く理解に苦しみます。「核開発をやっているからだ」というかもしれませんが、それでは米国など五大核超大国はどうなのでしょうか。なぜ朝鮮だけを非難するのでしょうか?
 日本では国会(衆参議院)や地方議会でも朝鮮非難決議を超党派でやっています。おかしいではありませんか! 誰が核戦争の危機をつくり出しているのか。米国の敵視政策こそが、非難されるべきでしょう。なぜ、米国非難決議が出ないのか。なぜ、米国の核戦争挑発に反対の声が上がらないのか? 本当に平和を求める国会議員、政党ならばハンガーストライキでもやって、あるいは自分の政治生命をかけて、米国の核戦争を阻止するために行動に出るべきでしょう。


大嶋 まさにそうですね。「労働新聞」でも、もっと米国主義に対する暴露を強めなければと思っています。

秋山 大嶋同志は、面白いと思った本はないのですか。

大嶋 秋山同志もご存知と思いますが、「限界費用ゼロ社会<モノのインターネット>と共有型経済の台頭」(ジェレミー・リフキン、NHK出版)ですね。

秋山 理解するのが難しい本ですよね。

大嶋 はい。IoT(モノのインターネット)、人工知能(AI)、3Dプリンタなどの最新技術が、企業や社会、ひいては現在の資本主義経済にどのような影響を与えるかについて書かれています。
 リフキン氏は資本主義自身を否定しているわけではありませんし、技術革新の社会への影響について、あまりにも楽観的です。他の本と同様、批判的に読まなければなりません。ですが、「エネルギーとモビリティー(移動手段)、そして情報伝達の領域で同時並行的に飛躍的な変化」が、「今やこの体制(資本主義のこと、編集部注)を破滅へと急激に押しやっている」と指摘している点は、興味をひきます。

秋山技術の細かなことは不案内なのですが、急速な技術革新が、資本主義の枠内におさまらまなくなってきたということでしょうか。


大嶋 そう思います。今や人類史の中でも「百年の一度」の産業革命が進んでいます。技術革新、とくに人工頭脳やロボット化などが大量の労働者を失業に追い込むこと、国民生活にどのような影響を与えるのかについては、もっと研究する必要がありますね。。

秋山 政府の「未来投資戦略」や骨太方針でも触れているし、労働組合・連合も「技術革新の第四次産業革命の進展に伴い起こり得る変化への対応について検討するための、労使が参画する枠組みを構築する」などと労使「協議」の場を求めています。
 わが党は人間社会の未来を見据えて人類史の中にしっかり技術革新を位置づけて党の基本的な見解を出すべきですね。
 大隈議長の新春講演でどのような見解、方向を出すのか、期待しています。私自身は技術革新の進展、急速な産業革命の進行の過程で資本主義的生産様式が生産力の飛躍的な発展・変ぼうに衝突する状況が出てくると思います。片や、生産手段を私的に「私有」することで技術革新の成果を独り占めする大企業を中心とする既得権益層と生産力発展の革命的な担い手であるが、そこから排除されている労働者階級。この両者の階級闘争が激化する。これは必然的に政治権力をめぐる闘争へと発展する。労働者階級が、政治権力を取り、敵階級等の闘争に打ち勝って社会主義的な生産様式の建設に成功してこそ、技術革新の全面的な開花は可能となり、その成果も働く誰もが手に入れることになるのではないでしょうか。

激動の国際情勢

大嶋 本の紹介を通して、すでにいくらか話にはなっているのですが、わが党が国際情勢をどう見ているかという話題に移りたいと思います。

秋山 急に緊張しますね(笑)。

大嶋 国際情勢の前提として、世界経済の現状をどう評価したらよいでしょうか。政府やマスコミは「緩やかな回復」と言っていますし、株価も世界的に上がっています。

秋山 新春講演は、このインタビューよりも豊富な内容となるでしょうから、「とりあえず」ということでお話します。
 経済の「回復」についてですが、まず、株価だけでは評価できません。過半数の勤労国民、まして労働者は株式などを保有していませんから、上がっても関係ない。仮に持っていたとしても、社員持ち株制度によるものだったりで、ごくわずかなものでしょう。実際の生活や営業がどうなっているかの方が肝心です。
 私たちは、多くの論調とは違い、リーマン・ショック後の世界経済の危機はいちだんと深いと評価しています。
 昨年も話したかもしれませんが、まず、世界経済の成長鈍化が鮮明になっていることで、これが情勢全体を大きく規定しています。

大嶋 国際通貨基金(IMF)も、二〇一六年までは「さえない結果」などと評価していましたね。

秋山 それが変わったのにはいくつか理由がありますが、最大のものは、米国トランプ政権による大規模なインフラ投資への期待感です。株価も、トランプ氏が当選した後から上がっていますよね。
 ですが、トランプ政権がインフラ投資を行えるかどうかは予算編成権のある議会次第で、保証の限りではありません。共和党は伝統的に財政出動を嫌う傾向が強いですから。仮に行えても、経済の浮上に結び付くかどうかという問題がありますし、財政赤字は確実に悪化します。
 結局、トランプ政権は他国に負担を押し付け、乗り切りを図るでしょう。それは、世界経済のリスクを拡大させます。
 それに、現在の株高と国債価格の上昇(金利低下)、さらにビットコインなどの仮想通貨の隆盛は、いずれもバブルと言ってもよいほどです。これがいつ破裂するか、新興諸国の抱える多額の民間債務の問題と併せ、世界経済は大きなリスクを抱えたままです。少数ですが、現在の成長でさえ「できすぎ」という論調があるのは、このためでしょう。

大嶋 昨年は、世界経済の構造変化の問題にも言及しましたが。

秋山 世界経済は、米国の衰退と中国の台頭を典型として、歴史的力関係の変化のただ中にあります。
 新興諸国の存在感の高まり、とくに、中国は購買力平価ベースGDPですでに米国を抜いていますし、アジアインフラ投資銀行(AIIB)や、「一帯一路」構想を提唱して影響力を増しています。
 先に述べた低成長の最大の要因は、世界的な需要不足です。世界的な金融緩和策で投資家が潤う一方、各国人民にはさまざまな犠牲が転嫁され、格差は絶望的なまでに開いています。世界の需要が増えるはずがないのです。
 もう一つ、世界資本主義には新たな市場がありません。


大嶋 そこに、先ほど話題になった技術革新が押し寄せている…。

秋山 はい。技術革新自身は人類の進歩に役立てられるものすが、企業間・国家間の闘争はますます激しくなり、企業は淘汰(とうた)され、労働者は不要になります。今回の技術革新とそれが及ぼす影響は、私たちが「末期症状」と呼んでいる資本主義の危機を、さらに加速させると思いますね。
 打開の道は、政治権力を奪取して、将来的な私的所有の廃止、社会主義の道を突き進む以外にないと思います。

大嶋 こうした危機を背景に、米国ではトランプ政権が誕生したわけですが、どう見ていますか。

秋山 米国は戦後直後の最盛期から、経済・政治・軍事ともに衰退し、影響力を低下させています。それでも米国は、レーガンやクリントン政権など、得意の金融を使うなどで延命を図ってきました。それが、リーマン・ショックで破綻した。
 外交・安全保障面での悪らつさは、先ほど、本の紹介のところで述べた通りです。圧倒的な軍事力があるからこそ、基軸通貨ドルも維持されているのです。
 リーマン・ショック後、オバマ前政権は米製造業の復活による「輸出倍増計画」、安全保障では「アジア・リバランス戦略」で乗り切ろうとしたが、失敗しました。トランプ政権は中長期的には、金融を中心とする自国経済の再生と、軍事力による世界支配の維持をめざさざるを得ない。
 ですが、米国の巻き返し策は成功しないと思います。
 実質賃金が数十年間、上がっていないことに代表されるように、国民生活は改善しないでしょう。銃乱射事件などの「社会の分断」は、さらに進むと思いますね。一握りの金融資本や産軍複合体がボロ儲(もう)けすることは確実でしょうが、米国経済は再生できないと思います。
 外交面での「対中国」を中心とする巻き返し策も、国際的孤立を深めることは確実でも、成功はあり得ないでしょう。今秋の中間選挙で勝利するため、国内の不満をそらそうと、対外強硬策に打って出る可能性もあると思いますが、「総スカン」に遭うでしょう。「エルサレム問題」は、序の口だと思いますよ。


大嶋 メルケル・ドイツ首相が、トランプ政権を念頭に「欧州人は、自らの将来と運命のために闘う」と述べたことも印象的でした。

秋山 欧州経済はリーマン・ショック以降決して良いとはいえませんし、英国の欧州連合(EU)離脱問題、スペイン・カタルーニャ州の独立問題、各国で右翼勢力が台頭するなどの政治リスクもあります。最近の欧州経済は中国への輸出増大などでドイツを中心に上向きになっているようですが、持続するかどうか。
 それでも、欧州の支配層は、ドイツとフランスを中心とする統合強化以外に道はないと思っていますよ。ドイツは、製造業育成計画(インダストリー4・0)で先行しているという利点もあります。
 このほか、二十一世紀には大国に成長するといわれるインドなども注目できます。
 激変し、ますます多極化する世界であり、「戦争を含む乱世」の様相がいちだんと深まっています。とりわけ、アジアを争点とする米中の覇権争奪の闘いがどうなるか。米国は必死に中国の台頭と世界への影響力拡大を阻止しようと策動する。朝鮮への核どう喝、戦争政策もその一環です。また、オーストラリア、インドなどアジアの周辺国を動員して「中国包囲網」構築を画策する。
 全世界の労働者階級は、中小国・人民と連帯して、米帝国主義との闘いを強めなければなりません。その際、米国の世界支配をよしとしない帝国主義国の一部とも、ときに連携することは可能でしょう。現在の国際情勢は、そうした闘いを発展させ、米帝国主義を追い詰める条件が拡大していると断言できます。
 米国がアジアで「巻き返し」に成功し、覇権を維持するためには日米同盟がカギです。従って、日本の労働者階級人民の日米同盟強化に反対し、アジア・日本の平和と独立の闘争を進めることは国際的な反米闘争の前進にとって大きな意義を思っています。国際的な闘争の前進は日本における独立の革命闘争の前進にとって大いに有利となり、その前進を大きく促すことになります。日本の独立を戦略目標にして結党以来四十数年間闘ってきているわが党と労働者人民にとって、歴史的なチャンスの到来であり、いよいよわが党の「出番」です。党建設と統一戦線の発展をしっかりやり、成功させることで、闘争を前進させねばと決意を固めているところです。

「四面楚歌」の安倍政権

大嶋 国内情勢に移りたいと思います。昨年の総選挙で、安倍政権は辛くも勝利しました。「安倍一強」が続くという認識もあるようです。
 まず、日本経済の現状から。四半期連続成長が続き、安倍政権は羽振りがいいようですが。

秋山 実体を見ると、日本経済は、バブル崩壊後の長期デフレ、低成長が続いています。世界のGDPに占める割合は、一九九〇年の一五%から二〇一〇年には六%に低下しています。成長率も、先進国中、最低レベルです。日本のGDPの諸項目の中で最大の割合を占める、民間消費支出が伸びていません。
 この最大の理由は需要不足、とくに低賃金にあると思います。先進七カ国の賃金を比較しても、一九九一年を一〇〇とする指数で、日本(一〇二)がもっとも伸びていません。
 安倍政権が「賃上げ」を財界に依頼するのは、こうした実態の反映です。
 他方、日銀の金融緩和で資金があふれ、購入できる国債が枯渇することは目前です。金融緩和策はもはや限界です。政府債務残高の対GDP比が二四〇%と先進国中最悪であるなど、財政出動もままなりません。


大嶋 目先のGDPの上がり下がりはあっても、日本経済のこうした構造は、ますます悪化しているということですね。

秋山しかも、アベノミクスは実際は「輸出依存」で、「省力化投資依存」です。自動車、電子デバイス、外国人観光客(インバウンド)は伸びていますが、先に述べたような世界経済の前提があるわけで、長続きする保証はありません。
 日本経済の現状は、きわめて厳しいのが実態です。
 九〇年代後半、とりわけ二〇〇〇年代以降、日本経済はグローバル経済の進展の中で海外に進出してで稼いでいます。国内の労働者の賃金と雇用が大リストラで痛みを押し付けられ、内需は急速に減少、国民経済は疲弊しています。リーマン・ショック以降はとりわけ多国籍企業は海外でのM&A(合併・買収)で稼ぎ、また日本銀行の異次元金融緩和でタダ同然で手に入れた有り余る資金を使って海外での金融投資で稼いでいます。これを政治的に保障しているのが小泉政権以降の「多国籍企業の覇権的な利潤追求」に奉仕する自民党政権、その亜流の旧民主党政権、そして安倍政権です。これが労働者の貧困化と格差拡大の背景です。また、商工自営業者や零細業者の大規模な没落をつくり出した原因です。


大嶋 安倍政権が進める外交・安保政策についてはどうでしょうか。

秋山 昨年の日米首脳会談では、「インド太平洋戦略」で米戦略をさらに支えることを約束しました。それ以前からも、特定秘密保護法、共謀罪、集団的自衛権のための安全保障法制、朝鮮敵視と制裁強化など、米戦略の先兵役を買って出ていたわけですが、その方向をさらに強めましたね。
 日本は対中国、対朝鮮で矢面に立たされており、アジアの平和は切迫していると思います。
 安倍政権の特徴は、こうした政策を対米従属からだけではなく、「強い日本」という表現に代表されるように、従属からの脱却を進めるかのように国民を欺きながら進めていることです。わが党は「ニセの独立」と言っていますが、安倍政権が憲法第九条の改悪を日程に上らせるなか、この暴露は重要性を増しています。労働者階級が農民、商工自営業者など幅広い国民各層と連携し、政治的な統一戦線を構築し、主導権を取って多国籍大企業中心の対米従属政治を打ち破り、国民的な政権を樹立を闘い取って独立を実現することです。それなしには、わが国支配層が民族的な課題を掲げ労働者国民を引き寄せ、「独立」を欺まん的妥協的にしろ実現することもあり得る。安倍政権はそう意味でも非常に危険です。安倍の演技が可能な内外環境でもあるということです。


大嶋 わが国の支配階級である財界は、どう考えているのでしょうか。

秋山 総選挙での安倍政権の勝利を歓迎した財界は、直後、「今こそが日本経済再生に向けた正念場である」(経団連)と述べています。
 かれらの最優先事項は、「デフレ脱却と経済再生を確実に実現し、GDP六百兆円経済への確固たる道筋をつける」ことです。
 キモは、労働生産性の向上でしょう。世界経済危機の深刻化、技術革新と大競争のなか、多国籍大企業は生き残ろうと必死なんですね。


大嶋 ですが、技術革新や「働き方改革」による生産性の向上は、労働者の失業増加、より生産性が低く、賃金も安い分野への労働力の移動をもたらします。

秋山 政府の試算でさえ、七百五十万人の労働者が職を奪われると推計されています。自動車産業を例に取れば、電気自動車(EV)化でエンジンが不要になるわけで、これに携わる膨大な中小下請けの転廃業は不可避です。「自動車先進国」の日本ほど、影響は多いでしょう。  政府は「新規雇用が創出されるので影響は軽微」と言っていますが、どうでしょうか。仮に、自動車関連で働いていた労働者が再就職できたとしても、それが介護部門などであれば、あなたが言ったように、賃金はずっと下がってしまいます。

大嶋 対米、対中国関係をめぐる矛盾も激化するでしょう。

秋山 財界の中でさえそうなるでしょう。昨年末、経団連は訪米団の一方で、訪中団を派遣しました。中国主導の「一帯一路」で儲けたいと思っている企業は多いはずです。
 安倍政権の外交政策の下では、かれらの要求でさえ、満たされることはないと思いますよ。もっとも、安倍政権内部でも、また財界内部でも、対中政策(一帯一路、AIIBなど)をめぐり意見の違いがあるようです。経済同友会は「安倍政権は対米従属だと思ったが、そんな単純ではない」などと評価しております。なかなか複雑な情勢ですね。
 この気分や動きは政党に反映し、自民党内を中心に揺れると思いますね。
 支配層内部の矛盾をついて、彼らを分化させ、こちらの勢力を強大化させるために、戦後の民族的課題の闘争の経験をよく研究したりして、党の政治路線具体化の水準を高めていくことが必要不可欠です。特に労働運動の中に党の政治路線を持ち込み、闘いを組織できるようにうまずたゆまず働きかけていくことが重要です。
 安倍政権は民族的な課題を取り上げて中間層の政治的支持を獲得し、労働者階級の「孤立化」を画策します。先の総選挙でも朝鮮の「核・ミサイル」を前面に出して「国難突破」などとデマを飛ばして幅広く政治的な支持を獲得しようと画策しました。安倍政権の「ニセ独立」と欺まん的な術策を暴露し、民族的課題での主導権を労働者階級が取らねばなりません。そうしないと負けてしまいますから。主導権を取って闘えば、労働運動の前進は大いに可能だと思います。

大嶋 安倍政権の下では、デフレ脱却も、対アジア外交や平和の問題も片付けることは容易ではないということですね。

秋山 総選挙の結果に「がっかり」する必要はないと思いますよ。森友学園・加計学園問題で政府を追及するのもよいですが、もっと国の運命をめぐる問題で、「日本はそれで生きていけるのか」と、安倍政権と堂々と闘うべきだと思いますね。
 その中心勢力は、やはり、労働者階級だと思います。

大嶋 総選挙後の政局については、どうでしょうか。

秋山 議会政党は、民進党が分裂して、民進、希望の党、立憲民主党などと分かれています。社民党の動向もあります。公明党の内部、自公関係も波風が立っているようです。かなり流動的なのが現状で、大隈議長の講演に譲りましょう。

党の闘いと経験

大嶋 情勢の話題が先になりましたが、昨年の党の闘いを振り返って、経験についてお話ください。

秋山 都道府県での党建設については、総政治部の長岡同志を中心とする座談会(6〜7面)が掲載されると思いますので、そちらに譲ります。
 ここでは、中央としての総括や問題意識について話してみたい。
 昨年の成果としては、まず、政治思想建設に力を入れてきたということです。国際情勢のすう勢評価や分析・総合の方法論の獲得、朝鮮問題の評価などに力を入れました。これはわが党と国民連合が前進するうえで必要不可欠であり、迫られている党派闘争に打ち勝つためです。
 重要だったのは、大隈議長による中央と各地の新春講演において、米大統領選挙の結果としてのトランプ政権の誕生を「世界史に残るほどの大きな情勢の激変」と論断し、米帝国主義が「歴史を巻き戻そうと試み始めた。世界を地獄への道連れにしかねない」。そして「敵方も現状に耐え難くなった。現時点で闘っていようがいまいが、敵側は襲い掛かってくる」との論断は、きわめて鋭いものでした。
 安倍政権にとっては、予期しなかった外因として迫り、その基本戦略は総崩れです。闘いの激化は避けがたく、それに備えることを呼びかけました。
 帝国主義と戦争に反対し、平和と独立をめざして闘うこと、政治、理論、政治闘争を強めること、労働者の賃金、労組への組織化という三つの課題を掲げ、強大な党の建設を中心とする問題について態度を明確にさせました。
 この情勢評価、とくに米帝国主義の評価と中短期の見通し、日本が直面している課題は、以降の情勢の推移でその正しさが確かめられましたし、わが党の闘い、統一戦線の発展、党建設の重要な前提となったと思います。
 ブックレットの発行や、講演が導きとなって、朝鮮半島問題に対する党の見解も出されました。

大嶋 他党派は「激変」という認識さえ乏しかったし、今でもそうですからね。朝鮮問題については、共産党を典型に、安倍政権と対抗できず、追随しています。

秋山 党員拡大でもいくつかの成果をあげることができました。また、どうやって党建設を進めるのかという「登り方」の問題でも前進があったと思います。しかし、今から考えれば、実践的な都道府県での「県政奪取の戦略計画」の豊富化に中央指導としてももっと力を入れて取り組むべきであったと反省しています。

大嶋 中央で活動している私としては、朝鮮半島での緊張緩和を求めた、四月の集会の印象が大きかったですね。

秋山 そうですね。この集会は実行委員会の主催でしたが、実際には、党が主導的に組織したものです。他の政治勢力、政党、国会議員などが「朝鮮非難の大合唱」に押されて無力化する中で、われわれは米帝国主義への批判を鮮明にし、また「米国の朝鮮への戦争政策反対」「安倍首相は六者協議に基づき、日朝国交回復などに積極的に動け」と大胆に提起した結果、私たちの予想を超える反響と賛同が寄せられました。いくつかの労働組合も、機関決定で参加しました。

大嶋 準備を始めたころの、私たちの予想を超えたものでしたね。

秋山 はい。緊急集会ではありましたが成功を収めましたし、多くの党員がこの闘いを歓迎しました。先進的労働者の中に、米国の戦争挑発とそれに対する安倍政権の加担に対する危機感と、これと闘わない野党の状況に対する不満があり、このような提起を望んでいたと確信できます。先進的な労働者や国民の中に闘いのエネルギーがあることを実感できたことはとても良かったと思います。
 中央での政治活動の経験にもなりました。情勢を分析し、また党内外の諸条件も正しく判断し、「何が当面の中心環であるか」を決断することがきわめて重要であることを学びました。いくつかの労働組合産別との関係も深まったと思います。
 小さな力でも、情勢が求める課題、大衆の切実な要求に応え、闘争の積極的な提唱者・組織者・推進者の役割を果すことができれば、激しい党派闘争に打ち勝って前進できることを改めて示したと思います。

大嶋 その他の成果についても、お願いします。

秋山 私たちが支持する、自主・平和・民主のための広範な国民連合も、三重県での全国総会を中心に大きな役割を果たしたと思います。
 わが党としても、国民連合を自らの戦略に意欲的に位置付け、飛躍的に発展するよう貢献したい。
 最後に、全国の現場で闘う同志の皆さんは、本当にがんばっていると思います。首長選挙に出馬して反動的市政を暴露して闘った同志、数年に渡って解雇撤回闘争を闘い続ける同志、「県党ニュース」で意識的な県党建設を進めている県党、数年ぶりに活動に復帰した同志など、学ぶべき経験は多数あります。
 これらをいちだんと促し、党建設に結びつけられるよう、県党組織を援助・指導できる中央の役割は、とても重要だと思います。

大嶋 そうですね。「労働新聞」の役割はますます重要だと、自戒したいと思います。

今年の闘い

大嶋 最初に話した情勢の下、闘うべき課題はどうでしょうか。

秋山 まず、米帝国主義の悪事を暴露することに力を入れたい。紹介した「アメリカ 暴力の世紀」は役立つと思います。
 併せて、安倍政権の暴露と闘争を強めることです。沖縄、全国の米軍基地の撤去、沖縄での辺野古への新基地建設反対、日米地位協定の抜本的改正、朝鮮への制裁強化に反対し、即時・無条件の国交正常化を実現すること、日中関係の打開と民間交流の促進、憲法第九条の改悪反対、共謀罪など「軍事監獄化」への反対などの課題に取り組みたい。
 また、内外情勢評価や理論政策問題にいっそう力を入れ、敵のイデオロギー攻撃と政治思想面での党派闘争に勝利することです。「労働新聞」を「編集部任せ」にせず、全面的政治暴露の武器として前進させたい。昨年、いくらか取り組みましたが、全国的普及にも力を入れます。
 もう一つ、二〇一九年統一地方選挙の準備を直ちに始めることです。一握りの地域支配層の腐りきった政治を暴露して、全国で闘いたい。
 最後ですが、労働者の賃金闘争、組織化など闘争を強めたいと思います。政策的にはさらに煮詰めなければなりませんが、大幅賃上げ、「時給一千五百円」の即刻実施、政府が唱えるニセ「同一労働・同一賃金」をはじめとする「働き方改革」への反対、消費税の再増税反対、医療・介護・年金など社会保障費の負担増と給付切り下げを許さないなどの課題です。技術革新もあって、今後急速に進むであろう、リストラや労働環境の悪化、中小下請け企業への犠牲転嫁と闘いを強めたい。

大嶋 これらの課題を闘うことを通して、党建設はどう進めますか。

秋山 前堤として、第六回党大会の決定を堅持し、各都道府県での県政奪取を戦略目標とする建党路線を徹底させたいと思います。
 各県党がブレずに組織建設にまい進できるよう、中央も学習などの手立てで指導と支援を強めたい。
 さっきお話しした朝鮮問題での集会の経験にもあるように、どんな小さな勢力でも、有利な時期、課題、地域などをとらえれば、前進できます。
 このためには、中央や県党が、内外情勢の変化が人びとの暮らしや政治にどのように影響が出てくるかという観点で、絶えず情勢をとらえる必要があります。
 新聞記事やインターネット、さらに党内外の人びとから絶えず情報をつかまなければなりません。指導部、党内も「風通し」をよくして、地域の情報の収集方法を工夫しなければなりません。
 もう一つは、現場に入ることです。全国には工場閉鎖やリストラ、農漁業への打撃、公立病院問題や公務員削減や賃下げなどの自治体闘争などの目立った動きがあれば、すぐ現場に行き、現場の要求をつかみ、党派関係などの具体的状況に通じて闘えるようにしていきたいです。。

大嶋 最後に、具体的に入党オルグを進め、党員を増やすことですね。


秋山 そうです。そこがなければ「すべては無」ですから。これまで政治先行あるいは闘うことと党の独自活動である思想組織建設を結合させて成果を上げる点で成功しておりませんが、ずいぶんと「月謝」を払ってきたので、そろそろ結果を出して次の段階へ進まねばならないと思います。

大嶋 ありがとうございました。団結してがんばりましょう。


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