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2017年8月25日号 3面・解説

共産党/
「米朝対話」主張するが…

危機の根源、米国を免罪

  国連安全保障理事会は八月五日、米国が主導するなか、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を口実に、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対する制裁決議を採択した。トランプ米政権は、世界支配の立て直しの狙いも含めて、朝鮮への敵視と圧迫を強化している。米帝国主義の策動に反対し、アジアの平和のための闘いは喫緊の課題である。こうしたなか、共産党の志位委員長は十二日、「危機打開のため米朝は無条件で直接対話を」なる談話を発表した。談話は「対話」を呼びかけつつ、米国の朝鮮敵視政策を免罪、美化するものである。平和のための闘いを前進させるには、共産党のデタラメな見解を打ち破らなければならない。


 志位委員長の談話の概要は、(1)朝鮮半島の現状が「軍事衝突の危険性をはらむ新たな事態」であることを「強く憂慮」する。(2)「軍事衝突は、絶対に回避しなければならない」ということを前提に、以下の三点を求めている。(1)「危機がひきおこされた根本は、北朝鮮が、累次の国連安保理決議に違反して、核兵器・ミサイル開発を進めてきたことにある」とし、朝鮮に「国連安保理決議を遵守し、これ以上の軍事的な挑発行為」の中止を求める。(2)米朝両国に「強く自制」を求め、「無条件で直接対話に踏み出す」ことを呼びかける。トランプ大統領が「私は話す」と述べていることに「注目している」。(3)日本政府は「平和的・外交的に解決するための努力をはかるべき」というものである。

根本は米帝国主義の策動
 共産党に言われるまでもなく、「平和的・外交的に解決」するのは当然である。だが、現在の朝鮮半島の危機の根本は、共産党の言うように朝鮮の責任なのだろうか。
 朝鮮戦争はいまだに休戦状態で、国際法上は続いている。米国は朝鮮を政治的・軍事的に包囲・圧迫し続け、先制核攻撃の可能性を公言した時期もある。朝鮮が国土と民族を守るべく「核・ミサイル」を開発し、米国の包囲を打ち破ろうとしたのは当然のことである。核不拡散(NPT)条約から脱退している朝鮮には、国際法上、核開発を制約される理由はない。
 米国は、NPTに参加していないインド、パキスタン、イスラエルを事実上の核保有国として認めている。ミサイル開発にいたっては、どの国も行っていることである。朝鮮だけが非難されるいわれはない。

米国の危険な巻き返し策
 「米国第一」を掲げて登場したトランプ政権は、経済再建と軍事力強化によって自国の危機を乗り切り、巻き返そうとしている。
 トランプ政権は、オバマ前政権の「戦略的忍耐」を否定、武力攻撃を含む「すべての選択肢がある」と公言して、朝鮮への圧迫を強化した。年頭から米韓合同軍事演習を強行、中国に朝鮮制裁へのいちだんの協力を求め、諸国にも断交を含む制裁参加を求めた。
 これに続く、国連での制裁強化決議である。朝鮮の石炭、鉄、鉛、海産物などの輸出が禁止され、朝鮮の輸出の約三分の一が制約を受け外貨獲得手段が奪われる。海外で働く朝鮮労働者を増やすことや、朝鮮との新たな合弁事業も禁じられた。制裁対象団体・個人も追加された。原油禁輸は含まないが、非常に過酷な措置である。
 トランプ大統領は「炎と怒り」という表現で朝鮮をどう喝し、八月二十一日からは米韓合同演習も始まった。朝鮮半島をめぐる緊張は、非常に高まっている。
 米国にとって、アジアでの紛争は、米軍のプレゼンスを維持する上で必要なことである。こんにちではさらに、大国化する中国に負担を押し付けて世界支配を維持し、アジア市場への収奪を強めて国内経済を再建する狙いから、朝鮮への圧迫を強化している。
 このように、朝鮮半島の危機をつくり出しているのは、過去も現在も、米帝国主義である。
 今後、米朝対話が行われたとしても、それは、米国が内外の危機と朝鮮の抵抗に追い詰められたからであって、危機の根本でなくなったからではない。
 共産党は、この明白な事実を見ず、責任を朝鮮に押し付け、米帝国主義を免罪している。この態度は、米国や安倍政権とまったく同じである。

「外交と軍事」の共通性
 志位委員長は、わざわざ、トランプ政権に「注目」していると述べている。この態度は、四月末に米政府が発表した共同声明に対しても、同様の態度をとった。共産党は別の「赤旗」報道で、ティラーソン米国務長官が朝鮮への「平和的圧力」(制裁強化などを指す)発言も肯定的に報道している。
 だが、実際に緊張を高めているのは米国で、トランプ大統領の「話す」などという発言は、気休めにもならない。
 共産党は、近年とみに「外交=善」「軍事=悪」という単純な図式で、外交・安全保障政策を評価してきた。だが、「戦争は外交の延長」という言葉があるように、「外交と軍事的対応」は互いに深く結び付いており、常に排除し合うわけではない。
 たとえば、イラクは約十年にわたる経済制裁を受けた末、米軍の武力で政権を転覆させられた。米国にとっては、フセイン前政権を打倒するための一連の行動であった。「外交と軍事的対応」は、いわば「手段」の違いである。
 問題は、米国があらゆる手段で朝鮮を揺さぶり、体制転覆をもくろみ、それを通じたアジア支配を目的としてきたことである。さらに、その策動にわが国政府が追随していることである。安倍政権は、トランプ政権による、戦争の危険性を含む圧迫強化にも追随、日米外交・安全保障会議(2プラス2)でいちだんの役割分担を約束している(関連記事2面)。
 制裁決議に同意した中国だが、原油禁輸に反対するなど、米国とは明確に異なる態度である。ロシアも同様である。韓国では南北対話を主張する文在寅政権が誕生した。米韓同盟の枠内ではあれ、文政権は次第に、米日とは異なる道を歩むだろう。東南アジア諸国も、米国とは一線を画している。
 トランプ政権が冒険主義的策動を強めるなか、共産党による米国美化は、平和と独立を願う全世界・アジア諸国人民、日本国民の意思に反する反動的なものである。

歴代の「対話と圧力」を肯定
 共産党は驚くべきことに、わが国歴代政権の態度についても、「『対話と圧力』を原則としてきました」などと、肯定的とさえ解釈できる評価を下し、返す刀で、安倍政権を「軍事的圧力や制裁に重点を置くもの」などと言って「批判」している。
 確かに安倍政権は、トランプ政権に追随し、「軍事的圧力」を含む策動を強化している。それと闘うのは当然だが、かといって、歴代政権の対応策を容認することなど、できるはずもない。
 まさか共産党は、国家としての朝鮮の非承認をはじめ、朝鮮への包囲と圧迫、万景峰号寄港禁止などの非人道的制裁、朝鮮総聯本部の差し押さえや朝鮮学校への無償化除外といった敵視政策、マスコミや民間右翼をも使った排外主義宣伝に賛成するのか。
 これらは、歴代対米従属政権、とくに小泉政権以降の自公とその亜流政権が、「対話と圧力」の名の下で行ってきたことである。
 共産党はトランプ政権の免罪、美化にとどまらず、朝鮮問題においては、安倍政権以前の対米従属政権に賛成、少なくても批判しない態度をとっている。

民進党との共闘が狙い
 米国を美化し、朝鮮を敵視する共産党の態度は、こんにちでは、民進党との共闘を何としてでも維持するという狙いからのものである。
 共産党は一九九七年の第二十一回党大会で、保守政党との連立による政権入りを打ち出した。そのため、米国の「東アジア戦略」を暴露しないことで政権入りへのお墨付きを願った。九七年の第二十一回党大会、さらに二〇〇四年の第二十三回党大会を経て、事実上、「世界に帝国主義はなくなった」という立場を取るに至った。
 それだけではない。共産党は政権入りを夢想し、民進党との「野党共闘」、当面の選挙協力に血道を上げている。「日米基軸」で、朝鮮敵視では米国や安倍政権と同じ立場を取る民進党との共闘のために、トランプ政権に「注目」し、歴代政権の「対話と圧力」を肯定的に描き出さなければならないのは、ある意味、当然である。
 だが共産党のこの道は、トランプ政権が世界を地獄の道連れにしかねない危険な巻き返し策を進め、安倍政権が追随するなかで進んでいる。共産党の策動は、きわめて犯罪的なものである。
 先進的労働者は、共産党に幻想をもつことはできない。アジアの平和を求め、米帝国主義とそれに追随する安倍政権との闘いを急がなければならない。     (K)


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