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2009年4月15日号 2面・社説
政府・与党が
「緊急危機対策」を決定
大企業支援、国民犠牲の
悪政進める麻生政権
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世界的恐慌を口実として、多国籍大企業と各国政府は、労働者階級をはじめとする人民にさまざなま犠牲のしわ寄せを強めている。
全世界の失業者数は、今年末には〇七年比で三千万人も増え二億一千万人を超えるとも言われている。日本でも、二月末の完全失業者数が二百九十九万人に達し、年末にはさらに二百万人以上するとする調査もある。失業以外にも、労働者には賃下げや住居からのたたき出しが、中小零細企業には貸し渋り・貸しはがし、不当取引の激化など、国民諸階層の生活と営業はいちだんと厳しくなっている。
一方、各国政府は多国籍大企業や巨大金融機関に膨大な血税を投入し、救済している。オバマ米政権が自動車産業「ビッグ3」に多額の運転資金を支援したほか、欧州やアジアでも、金融機関、自動車産業やハイテク産業への公的資金投入が矢継ぎ早である。米欧の金融機関への政府保証枠は総額二百五十八兆円にも及び、一九九〇年代のバブル崩壊後にわが国政府が行った総額の三倍以上にもなっている。
大企業への支援では、日本も同様である。麻生政権は二〇〇八年度補正予算、〇九年度予算、さらに追加経済対策においても、数々の大企業支援策を取りそろえている。
労働者・国民諸階層の困難をよそに、多国籍大企業の代理人としての政府は、この瞬間もその手助けに余念がない。労働者は「誰のための政治が行われているのか」ということを見抜き、政治の転換をめざして闘うことが求められている。
「緊急危機対策」による大企業救済
政府・与党は四月十日、追加経済対策「緊急危機対策」(以下「対策」)を決めた。この対策は〇九補正予算のベースとなるもので、十五・四兆円の財政支出、総事業費は五十六・八兆円という過去最大規模のものである。国内総生産(GDP)の三%近くにも及ぶこの対策は、先進国中最悪とされる経済状況に対する政府・与党の対応策であるとともに、「GDP二%以上の財政出動」を掲げる、米国の要求に応えたものである。
「対策」は、公共事業や贈与非課税枠の拡大、農地集積策、「子育て」支援、雇用対策などで構成されているが、目立つのは大企業への支援策である。
とくに、最大五十兆円で株式を直接市場から買い取ることや、金融機関からの株式、投資信託などの買い取りを拡大する措置が盛り込まれた。「環境対策」として、省エネ家電や「エコカー」の購入にも支援が行われる。企業の研究開発にともなう減税措置も拡大された。いずれも、金融機関が自己資金不足に陥ることを防いだり、大企業の売上を引き上げ、競争力を支えようという狙いで、大企業支援策である。
金融対策でも、参議院で審議中の産業活力再生特別措置法(産活法)改「正」案と相まって、大企業に対して日本政策投資銀行などから二兆円枠(うち八割を政府保証)の出資を行えるようにする。また、一兆五千億円規模の融資損失補てん枠も設けられる。
これにより政府は、バブル崩壊後の際にも行われなかった、公的資金(血税)による一般企業への支援策に踏み込むことになる。早速、半導体大手のエルピーダメモリが、公的資金投入の要請を行うという。
大企業救済に日銀までも動員
これ以外にも、麻生政権は日銀も動員して、金融機関を含む大企業支援策を相次いで導入・拡充している。
日銀は一月末から、通常、都市銀行などの金融機関が行っているコマーシャルペーパー(CP、注)買い取りを三兆円規模で実施、また、金融機関保有の株式買い取りも再開した。大銀行への再度の公的資金投入も取りざたされている。
特殊法人の日本政策投資銀行も、別途十二月からCP買い取りや緊急低利融資を開始、すでに計約一兆三千億円の支援を実施した。国際協力銀行(JBIC)も、わが国輸出企業への信用供与のほか、多国籍大企業の海外子会社による事業にまで融資や保証を行い、融資額はすでに四千五百億円を超えている。
トヨタ自動車の金融統括会社であるトヨタファイナンシャルサービスが、約二千億円規模でJBICの融資を受けたほか、オリックス、日産自動車、富士重工、いすゞ自動車、日本航空といった名だたる大企業が、日本政策投資銀行の低利融資を受けたか、活用を検討している。
麻生政権の大企業への大盤振る舞いはきわめて露骨である。
貧困な中小企業支援や雇用対策
大企業には「至れり尽くせり」の麻生政権だが、中小零細企業への支援はまったく不十分である。
追加経済対策には、緊急保証枠の三十兆円への拡大、商工中金による貸付枠上乗せなどが銘記された。だが、つまるところ融資は金融機関の裁量次第であり、個別中小企業の資金需要に応じて十分に行われる保証はない。大企業と中小零細企業とでは金融機関の姿勢に大きな差があることは、マスコミでさえ認めている。まして、多くの中小零細企業は肝心の仕事が減っているのが現状だ。これでは、融資資金の返済のあてが立つはずもない。
産活法による支援にしても、「従業員五千人以上か国内シェア三割以上」など、中小零細企業にはおよそ無縁な「対策」である。
日々解雇され、労働条件悪化を強いられている労働者はどうか。
先に成立した〇九予算では、雇用対策はわずか二年間の期限付きで五千億円でしかない。また、「雇用危機」が叫ばれる中にもかかわらず、国家公務員純減計画によってハローワークが全国で統廃合され、失業者からますます遠い存在となっている。「対策」での「雇用調整金」にしても、企業に支払われるものであって、労働者の雇用と賃金を直接に守るものではない。まして、これら不十分な制度でさえ、末端の行政組織にはほとんど周知徹底されず、守られていないのが実態である。
何より、「対策」は将来の消費税増税を前提にしたものである。言うまでもなく、消費税は低所得者や小規模業者ほど負担が重い反面、輸出大企業には負担分がまるまる還付されるという悪税である。
多国籍企業のための政府と闘おう
まさにわが国政府は、多国籍大企業の利益を最大限に図る、その代理人である。
大企業、大銀行に投入される資金は、まぎれもなく国民の血税、血と汗の結晶である。しかも、米国でさえ資金援助と引き替えにGMのワゴナー会長を更迭させたほどであるのに、麻生政権は、融資を受けるに至った企業の経営責任はいっさい問うていない。
加えて、大企業の「経営難」はまゆつばものである。エルピーダメモリは二千億円以上の現金を保有しており、経営に困っているならばそれを取り崩せばよいはずである。トヨタファイナンシャルサービスにしても、約十三兆円の内部留保を持つ、親会社のトヨタが責任をとればすむことである。
それどころか、「危機こそ改善のチャンス」(張・トヨタ会長)などと、多国籍大企業は血税での支援を受けつつ労働者の首切りを進め、「危機後」に備えようとしている。断じて許せぬことである。
多国籍大企業のための政治を打ち破り、国民大多数のための政治を実現しなければらない。多国籍大企業中心で米国依存、ドル依存の経済を根本的に転換し、内需の大幅拡大とアジア規模での共生、ドルの変動に揺さぶられない道を進まなければならない。労働者・労働組合は、その新たな進路のための幅広い戦線を形成し、闘いの先頭に立つことが求められている。
注・CPは、短期的な運転資金を調達するため、一部の優良企業が発行できる無担保・低金利の約束手形
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