2009年1月25日号 1面〜5面 

2009年
労働党新春講演会・旗開き
大隈議長が熱烈に講演

日本労働党中央委員会 大隈鉄二議長の講演



 労働党中央委員会主催による新春講演会・旗開きが一月十一日、東京で開かれ、友党や労働組合、諸団体からの来賓、友人、党員が多数参加した。講演会では大隈鉄二議長が講演し、急速に深まった世界資本主義の危機に対する見方やわが党の闘いなどについて、熱烈に訴えた。引き続く旗開きには多数の来賓が発言、団結と闘いを誓い合う取り組みとなった。以下に、大隈議長の講演を掲載する。なお、編集部の責任において、一部を割愛した。


来賓の方々へのあいさつ

 明けましておめでとうございます。
 新年恒例の旗開き、党の情勢に対する見方や闘いをご報告いたしまして、新年のあいさつに代えさせていただきます。
 今日は、たくさんの友党・諸派、それに槇枝先生はじめ諸先輩の方々、友人の皆様方に参加していただいています。後でご紹介いたしますが、たくさんのメッセージもいただいています。感謝申し上げます。
 また全国のわが党の同志、ここにおいでの同志の皆さんにも、党外を含むこの旗開きの場をお借りして、あらためて新年のあいさつを申し上げたいと思います。

 さて過ぎた一年は、内外とも、大変な年でした。
 槇枝さんくらいですかね、ここにおいでの方では。歴史書では知っていたにしても。私も一九二九年生まれです。まあ恐慌の始まりではありますが、しかし私は四つか五つの頃、ちょうど鉄道線路の横に家があってですね、もう家も残っていませんが、九州ですから炭坑地帯でね、杵島(きしま)炭鉱だとか、あの一帯は炭鉱があったのですが、他の企業からかもしれませんが、失業者がトボトボと歩いて、線路をですね。今なら新幹線ですか、地方の非正規労働者がクビになって、「ゼニがあるうちに」と、東京に来た、そんな記事がありましたね。当時は線路伝いにトボトボ歩いていたんですね。
 メシが食えないので線路近くの民家に、いわば泥棒に入って。だから四つか五つ頃、私などは貧乏でしたから親は子どもをほったらかしで、気付いてみると、当時の羽釜(今は電気釜ですが)を開けて、子どもでもやっぱり気がとがめるので、握りながら、口に入れながら逃げていく。何度も見たというか、かすかに記憶に残っていますよ。
 それから、今の自衛隊は少し違いますけど、当時は不景気だったからですかね、それに線路への飛び込み自殺、海軍水兵の飛び込み自殺者がおったですね。ポーッポーッポーッて汽笛が鳴って、汽車が止まると、切断された死体があったことなどをかすかに覚えているんです。子ども心に、暗い記憶だけ残っています。
 しかしほとんどの人は、歴史の文書で読んだにしてもですね、まったく実体験としては、生まれてこのかた今進んでいる事態、状況を体験したことがないですよね。したがって、予想もしなかったというか、理屈では知っていたとしても、マルクス主義を勉強した労働組合の幹部でもですね、ほとんど初めての体験だと思います。

 そういうわけで、大変な時代、特に去年の後半、この一〜二カ月は、急速なんですが……。
 わが党は、一昨年夏から始まって、その暮れから昨年の旗開き頃までには、ほぼこの危機が元には戻らないとの結論に達していました。
 ドル危機の深まり、そして世界の金融や経済も、中心地域あるいは重心が移動して、金融や経済を含む下部構造全体が大きな変動を遂げる、そういう変動期に入った。したがってその上部構造である全世界の政治と国際関係もまた、激変は避けがたい。そういう時代に入った。そう指摘したと思います。
 それから、米国のことを超大国と言う場合、経済だけでなく軍事力も含むこと、しかも超軍事力を有すること、これが通常前提になっていましたが、その軍事力もすでに相対化した、と主張しました。世界はそれを見抜いているので、小国も米国を恐れてはいるが、しかし極端には恐れなくなった。動き始めた。
 ロシアも大胆になった。社会主義陣営が崩壊した後の、押されっぱなしの状態だった時期とは明確に異なってきた。巻き返しを始めた。私たちの一年前の、こうした分析に基づく見通しは、基本的に正しかった、と思っています。
 もちろんわが党が、力が弱いばかりに、情勢に十分対応できないでいること、これは責任を痛感しています。
 以上を確認しながら、二〇〇九年、以降の情勢分析と展望、党の闘いについてご報告をしたいと思います。

金融危機は全世界を巻き込み、本格的な世界恐慌へと発展した

 一昨年から始まった米国発の金融危機は、昨一年を通じて全世界を巻き込み、実体経済の本格的な後退局面、恐慌へと向かった、というところについて、いくつかの要点だけを述べてみたいと思います。

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 まず、金融と実体経済の危機は、全世界を巻き込んだ、これについて簡単に。後でいくらか詳しくは述べるかもしれませんが。
 例えば株式の時価総額ですね、よくバブルが崩壊して、信用が収縮しているという話があるんですが……、これは新聞記事を見ての例ですが、株式の時価総額で最近のピーク時、〇七年の七月と比較して、日本円に換算して二千兆円目減りしたと書いてありました。
 これは全世界のGDP(国内総生産)と比較すると、その四〇%ですね。これが消えてなくなった。つまり信用が収縮したということで、この状況のすさまじさをあらわしています。
 これは一昨年の七月と比較した記事で、昨年の十月一日の「日経新聞」に出ていた話なんですが、それから十日もしないうちにですかね、すでに二千八百兆円という数字なども発表されておりました。つまり世界のGDPの四割というと、主要な国の何カ国かを除けば、後の全部が消えたという状況ですね。そうした付加価値に匹敵する資産が吹っ飛んだ、消えたという理屈になる。
 そういうことに見られるように、この金融危機は実体経済面でも全世界を巻き込むんです。この資産が吹っ飛びますとね、銀行はもちろん各企業の株式の時価総額、そしてその株式を持っておればバランスシートが崩れるんですね。つまり普通の株式会社も左前になる。もはや金は借りられない。等々で、深刻に実体経済にかかわってくる、銀行も企業も大変なことになった。

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 二番目。したがって各国の中央銀行と政府は、なりふり構わず大量の紙幣を発行し、銀行に流し、資本注入、金利下げ、不良資産や株、CP(コマーシャルペーパー)などのリスク資産の肩代わりをし、巨大銀行と大企業を助け、金融不安と景気後退を鎮めようと躍起になっています。
 民間銀行や大企業、米国でいえば「ビッグ3」のようなところも含めて、その危なっかしい資産を、中央銀行や政府が買い取ったり保証してやってる。その最たる国が米国。次いで欧州、ここも大変。それに、先進国経済とかかわって発展してきた中国やインド、アジア諸国、原油や他の資源輸出国の多くも。
 大変さで違いはあっても、例外なく全世界に響いてきているんですね。日本も金融システムは割と痛みが少ないといいながら、津波で言えば、最初の金融ではともかく、あちこちに跳ね返って株価暴落、株価や証券などの資産評価でバランスシートがおかしくなる。外需は落ち込んできた。一挙に景気は落ち込んできたんですね。
 中小企業に金融支援の資金は届いていないですね。銀行の貸しはがしで倒産は激増してる。
 全世界で失業者が激増しています。日本でも派遣、パートなど非正規雇用労働者の失業、正規雇用者にも広がってきましたね。しかも、これからが本番だと言われています。

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 三番目に、世界情勢と国際政治、この一年、激変しました。この時期、米国の世界政治上での衰退は、特に著しかったと思います。
 私は昨年の旗開きでも、米国は金融や経済の弱さと併せて、国際政治面でも、主導性がなくなったと指摘しました。また安全保障面で見てもそうです。そんなことを話したと思うんです。
 実際、昨年後半からの米国は、国際政治上での問題で、なにかと対処する力をなくしましたね。
 グルジア問題もそうでしたが。たとえばG20の会議、あれはサルコジ・フランス大統領、下心もあってのことでしょうが。その直前には英国のブラウン首相が「第二のブレトンウッズ体制」あるいは「見直しが必要である」と言いましたね。欧州人は日本人とは違いますね。ーー日本は二次大戦後、戦争に負けて、米国の下で売国奴の自民党が政治をやってきた。麻生も一生懸命やっていると言われるが、売国政治の本質は変わらない。米国の動きから世界を見るというクセがついている。今でさえ世界の動向が分らないーーしかし欧州人はですね、「ブレトンウッズ体制を見直せ」って大胆に言う。米国から世界を見るクセを持ち合わせているわけではなく、自国の利害をちゃんとわきまえているんですね。
 あれは二次大戦前の、つまり二九年、三〇年、三一年と危機が進んだ、ポンドが基軸通貨としての力をなくした、そして世界大戦が始まった、その後米国は、四四年前後から英国の提案を押し切って、二次大戦後にドルを基軸通貨としたブレトンウッズ体制をつくった、その歴史がある。
 基軸通貨国を経験し、その確執と闘争を経験した欧州人から見ると、それを握ることのうまみなどはよく知ってるんですよ。現在の危機で、そうした歴史を思い出しても何の不思議もない。
 ですからサルコジがブッシュを口説いて、ブッシュはもうすぐ辞めにゃならんので、力がなかったこともあるんでしょうが、とにかく欧州主導で会議が始まった。
 あまりいつまでもこの状態で、国際的な話し合いをしないと危機が深まる、というようなことで、基軸通貨国、世界の指導者だと言われた米国が、この危機の最中に自分からは何も、ハンドルを握って世界をどこにもって行くかという頭さえ浮かばないほどの状態。
 つまり米国の世界政治上での衰退は「この時期、特に著しかった」というふうに言っておきたい。
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 四番目に、昨年の秋、大統領選で史上初の黒人大統領オバマが当選し、この一月、もうすでに議会で承認しましたので、オバマ政権が発足するんですね。
 これに対する世界のさまざまな期待があるようですが、この問題。米国民の劇的な支持率。これは大統領選挙そのものではなくて、決着がついて、今の世論調査での劇的な支持率です。
 選挙が終わって、オバマが大統領になることが分った時点で、選挙では共和党に投票した人たちも、雪崩(なだれ)をうってオバマに期待するようになった。その劇的な支持率。この時期はまた、劇的な危機の深まりと重なり合ったんですね。従来の大統領選の結果の同じ時期と比較しても劇的なようですね。
 したがってこれをまともな意味での期待というか、そうとも言えるし、別様の見方もできる。急速に世界経済が、とりわけ米国は大変。この一、二カ月で何百万もの労働者が生産活動から外される、失業したんですね。そういう深刻さの中での支持率。
 これは期待の高まりという単純なものではない。期待の異常な高さは、危機の深刻さを反映したもの、そう思います。米国は現在、ただならぬ異常さ、そんな情勢下にある。

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 五番目。G20会議が昨年の秋開かれた。これは従来だと、金融問題などは先進七カ国、政治上も含めていえば八カ国、ロシアも加わって八カ国だったんですね。
 危機下にあって、世界の金融や経済問題をG20で議論する、こうした会議が開かれたこと、ここに世界の金融や経済の中心地域の移動、あるいは再編成、力関係などの急速な変化を見ることができるんですね。
 この変化は、金融、経済だけでなく上部構造全領域を含んでの世界の多極化、その急速な進展ともかかわっています。軍事(情報技術、核、ミサイル)や安全保障、その力や相互関係の変化も、当然のことながら、全体的変化の一側面、しかも重要な側面なんですね。
 G20会議は、単なる金融や経済の会議でなく、多極化する世界の現状でのプレーヤーたちの、きわめて政治的な会議という側面も見逃せない。
 昨秋の会議、これはサルコジの提案なんですね。サルコジは欧州の人ですから、若くてーー勉強したか分かりませんよーー、だけれども欧州という風土で育ったという意味で、なかなか欧州人というのは長(た)けてる。G20など、たくさん集めて米国と交渉しないと、例えばやれ規制をどうとか、なかなかG8ではできないですからね。
 ちょうど〇三年のイラク戦争を始める時に、フランスのシラク大統領がアルジェリアか、あそこに行ってですね、そして「われわれはイラク戦争に反対だ」と言ったーーそんなやり方ですね。欧州人でなくとも、どの国も自国の利害を見つめていたと思いますよ。麻生首相は「基軸通貨ドル防衛」でしたが。
 ですから、昨秋の最初はともかく、オバマ登場での四月の会議、以降での会議は、協調と闘争の入り混じった場となる、それは避けがたいと思いますよ。G20の共同声明以降の流れを見ても、それははっきりしてるんですね。
 それにしても、G20の国際会議が昨秋行われたこと、これは世界の大きな変化、米国一極支配の時期は去って、その力は相対化し、複雑に変化する多極世界の現実があること、これをしっかりと、歴史的な変化として、確認しておきたいと思います。

危機の打開策等についてさまざまな見解がある

 世界にもわが国日本にも、危機の理由、打開策、見通しについて、さまざまな見解がある。国内の政治家、学者、企業家や労働団体、「左翼」諸党派などにある見解を、新聞や雑誌、機関紙誌などから拾ってみました。さらに見通しでの、いくつもの議論が展開されています。

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 けっこう多かったのは、市場原理主義の破たんだというもので、だからこの行き過ぎを規制する必要がある、こうした見解。さまざまな担保資産の高度な金融工学による証券化、ファンドのレバレッジ商法等々、行き過ぎが批判されてますね。
 問題は過剰資本、投資家の手に増え続ける過剰資本があるのだから、バブルの発生とその破たんはまた起こる。予測できない、できるのは危機を最小限にすること。過剰資本のことは行天氏(元大蔵相財務官)やグリーンスパン(前FRB・連邦準備理事会議長)などですね、グリーンスパンはまた起こる、防げないし予測もできないと言ってますね。こんな議論もある。
 さらに、問題は世界経済の不均衡、米国の過剰消費あるいは異常な経常赤字。これを克服しなければならない、という見解。
 基軸通貨ドルの問題では、ドルの時代は終わったというものから、基軸通貨ドルに代われる通貨がさしあたってないので、ドルは続く、そんな議論、見解もある。
 基軸通貨ドルと、その体制の動揺や不安定化は、おおかたは一致した認識でしょうが、米国一国でも、G7のような先進国だけでも、もはや守れまい。そこで、G20のような会議への期待があって、評価に差はあるが、さまざまな議論がされている。
 米国での初の黒人大統領の登場。オバマ政権の内外政治への期待がある。金融と経済危機では、大規模なオバマの「ニューディール」政策、その効果に期待あるいは関心が寄せられている。

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 私は思いつくままに六点挙げてみました。もっとさまざまな言い方があると思います。一昨年から現象化したこの米国発の金融と経済の危機、この経済現象をどの深さで認識するか、この認識の違いによって、打開策も、見通しーーつまりどのような時間的速度、苦しみ等々を経て、他の局面へと移行するのだろうか、それはどんな世界だろうか、そうした見通しも異なると思います。

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 やや脇道の気もしますが、複雑な世界、ちょっとだけーー。
 経済危機の「深刻さ」ですが、新聞にもそんな言葉、表現を使っての記事がある。一般的な意味で「深刻だ」とか深刻でないとか、経済が「回復」したとかしないとか、ありますが、一つの危機も誰かにとってはチャンス、そんなこともあるんですね。
 日本のいろんなゼニを持った人たちは、「今こそ」と言って、アジアに進出する。例えば造船業界。韓国の造船業界が弱ってきている、中国ももたついている、「今こそ傘下に収めにゃならん」と、そんな記事も見ましたよ。この場合危機の評価も具体的で、「誰にとってか」なんですね。
 同様に、経済の一定の浮き沈みも、例えば新聞が「やっと経済が回復し始めた」と書くかもしれない時期がある。誰にとってか、これが問題ですね。九〇年代、「失われた十年」と言うんだけれど、五年でいわば「三つの過剰」、労働者が余ってる、借金が多過ぎる、設備過剰、これを減量して乗り切り、大企業はいち早く回復した。ところが中小企業は、十年たっても二十年たっても回復せず、再びまた危機がやってきた。
 だから、新聞は何げなく読むのではなく、情勢評価も政策も、誰にとってのものか、各主体、それぞれの立場、その利害の相違に敏感でなければ、と思いますよ。
 国際関係、例えばG20だったら、その結論や取り決めが、どの国にとってはどうか、等々ということがある。あるいは諸勢力、諸独占体あるいは企業にとって、ですね。
 経済危機ですが、さて最も大事な点は、諸階級の利害なんですね。ここに集中的にあらわれる。危機の問題はしたがって、その諸階級立場によって、利害も違うし、認識も異なる。打開策はさらに異なる。当然ですが見通しも異なってくる。
 「経済闘争の集中的表現は階級闘争である」と。つまり、経済危機は、最終的には、諸勢力、諸階級間の利害の相違となってあらわれ、お互いに危機を押しつけ合い、階級闘争が激化する、というわけですね。ついでながら、同じ言葉を使うとですね、「階級闘争の集中的表現は政治闘争である」という言葉もある。
 経済危機は階級闘争の激化を通じ、政治闘争を激化させるが、その政治闘争で誰が打ち勝つか、これが再び、下部構造の利害の相違や、経済をどう運営するか等々に反作用を及ぼす、つまり政治で決着をつけることになる。
 経済と政治、これも複雑な社会の、相互に作用し合う二つの部分なんですが、広い意味での経済も、金融という概念でとらえる部分と、実体経済という二つの部分、相互関係として、作用し合ってるんですね。実体経済は金融に、金融はまた実体経済にかかわっている。問題はときどきの動きで、どちらが大きな問題か、実践家はそれに大きな関心があるんです。ただ、政治と経済では経済、金融と実体経済では実体経済、その規定性を認める、それが唯物論者ですよね。

 まあちょっと横道にそれましたが、G20に対する評価はいろいろあるんですね。期待があります。共産党の志位さんはどう言っているかというと、「G20は大変成果があった。何はともあれ規制を強化するという方向で決議がされた」、こう言っている。
 ブッシュはそんな意味で会議やったわけではないですね。そんなことができるとサルコジも思ったわけではない。
 しかし危機の最中に、いずれにしても米国発の金融危機ですから、規制の問題はすう勢としてそういう世論としてもあるわけですから、そういうことをとりあえず決めたわけで。文書を決めたわけで、事実を決めたわけじゃないですよ。

 似たようなことは行天さんもこう言った。これは一カ月ほど前のことです。
 G20は今の基軸通貨国である米国が弱ったので、そして米国も処理する力がないので、しかし代わりに基軸通貨を引き受けるところもないので、G20はそういう困難な時期に何かと役に立つのではないかと。
 行天さんが言うと日本の政治家たちもみな言う。だけどもG20はそうなるのかならないのか。
 そしてG20で麻生さんは粋がって、「IMF(国際通貨基金)に一千億ドル出す」という約束をした。

 そしたら今度米国人の、世界銀行の副総裁をやっていてクリントン時代の顧問をやっていたスティグリッツ(元世界銀行上級副総裁)が昨日か一昨日の新聞で、「麻生さんは一千億ドル出すということで良いことをやったと、だけども条件を付ければいいではないか」と、こういう言い方をしておった。九七年の危機の話も出ていた。九七年の危機の時に、韓国の閣僚が宮沢に提案して、三千億ドルのアジア通貨基金をつくろうと、こう言った。そしてアジアが安定できるような仕組みをつくろうと言った。
 ところが米国が反対したが、どうしてどうして、中国がですね、国際的な流れの中でアジアがそれと違った行き方をするのは反対だと言った。つまり米国と連帯してこれをつぶしたんですよ。
 そのことについてさっき挙げた副総裁、米国人が言い始めた。そしてドルはもう基軸通貨として力がなくなったんだから、バスケット方式で、ちょうどIMFのSDR(特別引出権)ですか、市中では通貨としてできていませんが、引出権というのがあってですね、各国は、もちろん出資に応じてイザという時に使えるという、いわばIMFの内側の内緒の通貨ということでしょうか。
 そういうようなことを言って、米国人でさえこの基軸通貨問題に意見を出す。もちろん米国の多数派にはならないんですが、しかし国連のこの問題を議論をする代表なんですね。それほど世界は大きく変わっているのに、日本ではそういうことはない。
 したがって、しかしその行天さんもG20での規制問題を、ほんの数日前の文章では、仮に規制をしたにしても、また揺れ戻しが来て「元の木阿弥(もくあみ)」になるかもしれないと書いている。

 それほど世界は、もしなんとか主義が行き詰まって、世界は規制の方向にあるという期待、それで状況を描いておる方も、そういう意見もあるんですが、これは米国がそういう金融の銀行家たちが支配しておる国であるということ、そしてこれを乗り越えるのは大きな革命のような政変でなければなかなか実現できない。この問題はまた後で触れようと思いますね。

 それから最後に、オバマ政権が始まって大規模なニューディール政策をやるので、米国国内での効果はもちろん世界経済でも動きが始まるとの期待がある。オバマ側近の計算によると、三%の浮揚力があると。つまりグーっと後退していくので、客観的に米国の成長率が三%になるとは言っていない。つまりその七千億か八千億ドルのカネを使わなければ、落ち込むことと比べると三%の効果があると。つまり別な言い方をすれば、これ以上沈むかということを、滑り止めになるかもしれないという意味もあるようなことを新聞には書いてありましたね。

 だけれどもそういう期待がわが国にもある。二階さん(経済産業相)などは、もうオバマに期待して、そのゼニを使ってくれれば、なにせそういう消費ができるのは米国だと。
 そしてそれは米国が回復軌道に乗るか成長軌道に復帰すると、緩やかにでも復帰すると世界経済は好転するであろうと。
 展望がないのにですね、今まで展望がなかったのがオバマに対する動きがあったので、という期待が日本にもありますね。

わが党の認識、見通し、打開策について

 では、進行しつつある今回の危機について、わが党の認識や打開策、見通しについて、上記の六点にも触れながら、とりあえず、一般的に、述べてみたいと思います。
 さてですね、今回の金融危機、あるいは恐慌と関連してですね、「市場原理主義、規制強化」、その他にもいろんな見解があります。さっき、六点挙げたようなさまざまな、世界は現象は複雑ですから、一部を取り上げれば、どんな説明でもできるわけですね。金融であれ経済であれ、実際にいろんな面をもっている、いろんな面はまた、全体の一部なんですね。したがって、何が正しい意見か、間違った意見か、見分けるのは難しいですね。一定の見解を示すまじめな人たちであれば、何の事実の裏づけもない話は普通はしない。だから見分けるのは難しい。
 「真理と誤謬(ごびゅう)は相対的で、絶対的なものではない」というように、より多くの側面から、より広い角度から検討することが必要ですね。つじつまが合わないことがいっぱいあるんですから。
 さっき、「世界経済が大変なことになる」「これじゃ、もうもたん」と言う企業家もおれば、「うまい時代になった」「チャンスだ」と言う人もいる。同じ情勢の中でも、相異なる傾向は必ずある。それを含んでるんですね。

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 まずいちばん初めに、金融恐慌というのは初めてではないんですね。キンドルバーガー(米国の経済・歴史学者)米国の経済・歴史学者)著「熱狂、恐慌、崩壊?金融恐慌の歴史」という本、去年の後半からすさまじく売れたんです。書いたのは〇四年が最後、七二年頃が初版。学者の中では、世界の金融恐慌について、詳細に資料を寄せ集め、分析し、正しくというか、問題を提起した、第一人者と言われているんですね。彼は三百年くらいの歴史を研究し、資料を集め、研究を重ね、金融バブルやその崩壊、恐慌は、珍しい現象ではない、と言ってる。
 投資家たちがいて、投資をしながら、利益を上げられないようになると、もうけ口を必死に探すような状況になる、やがてもうけ口、つまり投資の対象が見つかる。他の投資家もそこに殺到する。そして資産バブルが起こる。住宅と物件資産でも、金融資産でも、投資の対象となる。やがて、資産バブルが起き、そして、崩壊する。
 わざわざですね、「市場原理主義」とか「金融工学」など大げさなものがない時代にも、金融危機、そして、恐慌があったんですね。景気循環のように規則的に必ず見られる現象ではないけれども、景気の絶頂期、それがやがて、景気の後退を生んで、まあ、そのたびに金融恐慌が起こったわけではないが、しかし、よく見られる現象だと書いてます。
 言ってみれば、資本主義にとっての、普遍的な現象と言ってもよい、という言い方をしている。彼は非常に用心深く、歴史家にとってはこういう問題も、一つひとつが、全部事情が異なる、つまり、特殊性があると言い、詳細な分析をやっている。
 経済学者はどちらかと言うと、それらの分析では、普遍性にわりとこだわる。共通項、法則というようなこと、「そういう傾向がある」という言い方をし、「自分はそういうさまざまな違い、それを塗りつぶし、普遍化することは、あまり望まない」とも。
 そうした控えめの著者が、金融恐慌は繰り返し起こる現象だと言ってる。市場原理主義とか金融工学とかの以前にも、金融危機や恐慌はあった、儲け口のない過剰資金が大量にあれば、結局資産バブル発生、やがて崩壊、こうなるんですね。それは不可避と言うか、普遍的にあらわれる現象。

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 二番目。しかし今回の危機は、キンドルバーガー、さっきの学者の話ではないですが、三〇年代の大恐慌とも、それ以前とも異なるんですね。また最近の例で言うと、二次大戦後のさまざまな通貨や金融危機、とりわけ九七年のアジアの通貨危機から始まって、ロシアを通って、ブラジルまで行った、あの危機とも違うんですね。特殊性がある。

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 今回の危機を理解するためには、よく言われる「サブプライムローン問題に端を発した…」というこの言葉、最近はこれはもう消えたですね。最近は「米国発、金融危機…」という書き出しになりましたね。さらに、今では「サブプライムローン問題がなくたって、いずれは起こった」と、変わってきたようですね。
 したがってこの問題の原因、グリーンスパンと行天が言うように「問題はカネ余り」。九〇年代後半以降、いちだんと増加した過剰資本。資産家の人数が広がった、持ち金が増えた。九〇年代後半以降、非常に増えた。統計を見るとそうなっている、ですね。
 急増する過剰資本を指摘して、グリーンスパンはさらにそれに付け加えて、「こうした条件下では、バブルの発生と、その崩壊は繰り返す」、「予測できないし、防ぎようがない」とも。
 「だから、われわれにできることは、起こったとき、被害を最小限にくい止めること、早く立ち直れるような手だてを考えるしかない」と、こう言っている。
 それに、資産家がいっぱいいて、今のカネ余り。信用収縮して、損したかもしれませんが、動かせる資金はケタが違う。
 したがって、まだもうけ口がないか、今はちょっと、「くわばらくわばら、規制が強くてなあ」と言うかもしれないが、いつまでもそうじゃない。そして、彼らが世界の経済の実体を握っている。こういうことですね。だから一部の人びと、共産党も含めて「規制が…」なんとか言ってますが、規制されちゃ困る人たちが実体を握っている、この現実を知るとですね。今しばらくは、自粛したにしても、いつまでも自粛するわけではない。
 日本の金融関係はもちろん、政府も学者も、「行き過ぎた規制はなんとやら…」と。かえって、「この金融の市場は、世界の資源をより有効に、効率的に配分する機能があるんだから、もし、それを規制すると、世界経済はどうなるか」と論陣を張ってる。日本の有力な連中、誰も賛成してないですよ。
 ついでにもう少し。怪しげな金融技術。サギまがいの金融商品を発明したわけですね。なんとかファンド、これらの商売や証券の考案者がおっても、売ろうとしてもですね、生き血をすする、ここでは、ハイリスク・ハイリターン、これがいちばん「おいしい血」なんで、生き血を探す、そうした飢えた投資家たちがいなければ、売れんのです。これはね。
 また、飢えた投資家たちが、血眼で、利を求めておれば、「ダンナ…」と言って、その商品、あつらえ向けの証券をこしらえて提供する、それを生業(なりわい)とする大小のヘッジファンドも無数にあらわれる。
 これは、小さなものから大きなものまで、何千、何万と米国にはそういう、ヤクザなようなものも含めた、投資家たちに近づいて、もうけ口を勧める、そういう商売があったんですね。あるんです。
 例えば石油関連の先物市場。この先物投資で、石油価格が少し変動し、下がり始め時でしたか、そういうファンドが相当つぶれちゃったんですね。あらわれたり消えたりしてるんです。今回の危機で、五大証券というのは、なかなかしぶといのか、銀行に変身したんですね。これは。まあ、そういうことです。
 こんな状況ですから、この「市場原理主義」とか「サギまがいの金融工学」というよりも、行天とかグリーンスパンのものの見方のほうが、やや、より深いところでとらえている、ということになるんですね。
 現象とか本質とか言っても、比較的な話ですから。アリストテレス(古代ギリシャの哲学者)は「現象を知っただけでは、それは真の知識ではない」。「なぜ、それがそうなるか、というようなことを含めて知らなければ、それは良い知識ではない」と言ってるんです。
 したがって、アリストテレス風に言うと、これは昨年の、いや一昨年の末ですね、「労働新聞」編集部のインタビューを受けた際、私が触れたことですが……。
 グリーンスパンや行天の方が、アリストテレス風に言うと、より事態を現象的ではなく、少しばかり、深いところから説明している。けれども、本質を本当に突いているんだろうか。なぜ過剰資金が有り余るようにあり、この時期さらに増えたのか、過剰資金が世界の危機をつくり出す。資本主義、儲け過ぎて困ってる。全社会、世界の人民が苦しんでいる。この説明はないですね。

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 さっきの、危機発生の理由を含む六点ですが、比較的実質を突いた論拠に欠けるというか、十分な議論になってないですね。本質を突いた意見ではないように、私どもはそう思うんです。
 突っ込んで考えるなら、これは戦後の基軸通貨国としての米国にメスを入れなければなりません。資本主義発生以来の、数百年の歴史の中で、少なくとも十九世紀の半ば以降の独占体の形成以降、帝国主義時代のさまざまな経済問題、通貨や金融危機と国際関係、全上部構造領域としての国際政治情勢、その歴史について振り返る、あるいは研究しなければならないと思います。
 しかし私は、世界の歴史の流れをですね、どの範囲内で、それを一つの過程として、それ以降の段階を研究するか。その過程もまた、例えば帝国主義時代も、米国のドル体制の時代もあれば、それ以前の英国の時代もある。
 等々ということになれば、さしあたって、身近に戦後の米国を中心とする、ドルを中心とする、ブレトンウッズ体制の歴史、そして米国がこんにちに至った理由、それらを分析すれば、この危機の深さがおおかたはつかめるのではないか、そう思いますよ。
 ドル基軸体制を握っておる米国が以後どうなるか、世界はどうなるだろうか、という展望もできる。私は思うんです。その問題について若干、触れてみたい。
 戦後の世界経済での通貨や、金融の危機の問題は、諸国間の経済発展の不均衡に関連して、あるいはそれに影響を受けて、発生したものですね。これが唯物論の立場だと思うんですね。
 米国のドルを基軸通貨にしたブレトンウッズ体制が早くも六〇年代に崩壊し始めたのも、米国が七一年に金とドルとのリンクをはずしたのも、そうなんですね。西欧や日本が復活し、米国が経済的な挑戦を受けたからですね。それまではこのドル紙幣、一ドルについて金何オンスと交換いたします、とこう書いてあった。
 レーガンのドル高政策、八五年のプラザ合意、その後のドル危機と金融政策、それから二〇〇四年以降、経常赤字の異常な激増も、今回のような危機の発生も、基本的には、市場競争での世界各国相互間の不均衡な発展、とりわけ米国の競争力の低下、経済の弱体化と関連している。米国経済が弱ってきたんですね。
 米国はある意味で、四五年が頂点でしょう。それ以降、米国は特に、ヨーロッパの先進国、アジアでは日本、これが復活して、やがて競争力を持ち始めて、輸出するようになる。というようなことの中でですね、米国の競争力が劣ってきた。米国は帝国主義として、ベトナム戦争もやった等々。
 基軸通貨国でありながら米国は、世界市場で、どんな競争にさらされ、どんなふうに衰弱してきたか、この歴史を背景にして、さまざまな通貨と金融問題に遭遇し、調整せざるを得なかったということでしょう。
 それでも、これほど長く、やってこられたのはなぜか。米国は基軸通貨国の特権を巧みに利用し、核とミサイルを頂点に、超軍事力で世界支配を維持し、それからある意味では、ソ連と両体制間矛盾があって、これも米国を生き永らえさせる一つの側面だったと思いますよ。単純ではありませんが。
 冷戦終焉(しゅうえん)後、次第に、巨額の経常赤字、過剰消費国と言われながら、基軸通貨国特権と金融で生き永らえてきた米国。その米国発の金融危機で世界が大変なことになったんです。
 ヨーロッパ人は「米国はもう農業国だ」と言ったりする。なぜかといえば、航空産業だって、もうヨーロッパ。宇宙だってそう。米国はまだコンピュータ部門とか、何かは優れた面はあるんでしょうが、それ以外、あまり優位な点はないんですね。自動車産業だって衰退していくわけですね。主な製造業は生産拠点を賃金の安い海外に移している。
 基軸通貨ドル体制は、生き永らえる上では有利だった。しかし、それに安住し、金融業と超軍事力で国を賄い、基礎的な経済力の構築を怠った。
 過剰消費、巨大な経常収支赤字、こうした世界経済の不均衡が問題だとの米国批判はある。その米国の過剰消費で世界は成長してきたんですね。そして世界は今、米国の過剰消費が落ち込んだと騒いでる。オバマ政権は、巨大な財政支出「ニューディール政策」で消費をつくり出そうと必死。財源はドル紙幣、発行するのは米国のFRB、動きだせば経常赤字はさらに拡大する、ドルは世界に氾濫(はんらん)する。米国政府の財政危機もさることながら、ドルへの信認も揺らぐだろう。
 だが、御手洗氏はじめ日本の経済界は、この局面では、世界経済を好転させる力は米国にしかない、そう言って、オバマ政策に期待している。日本だけではない。
 世界の各国には、それぞれの事情がある。そしてその内部にある危機は深い。その危機は、米国発の危機とその波及によって深まった。それなのに、米国発の今回の危機克服は、新たなより巨大な危機を準備することでしか、わずかでも癒(いや)すことができない。そんな構図なんですね。実際の展開はどうなるか、一様ではない。危機の深さや展開も、各国は不均等でしょうから。しかし全構図は把握しておかねばならないと思いますよ。
 一般的な見通しを言えば、世界は当面、しかも短くはない期間、金融と世界経済は困難な時期を経過することになる。国際関係も不安定で緊張したものとなり、諸国内部での階級とその相互関係は、矛盾に満ちたものとなる。

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 基軸通貨国特権のことですが、今日は、理論的な関心がある方も多くお見えですから……。

 一つは有名な、例のマイケル・ハドソン。これは米国がドルと金のリンクをはずして以降、米国は経常赤字がどんなにあってもやっていける、と暴露した人ですね。その著作、七二年に出たんです。米国の支配層、当局者は大喜び、これをさらに研究した。
 以後この人にさえ、米国政府は経済資料を秘密にして見せなかったといわれています。資料を隠したんですね。
 日本でもこの本は当時は出版されず、三十年後の〇二年に「超帝国主義国家 アメリカの内幕」のタイトルで、日本語版の初版が出たんです。そんないわくつきの本です。七二年当時、日本の大蔵省の役人も読んでいたと思いますよ。
 関連があるかどうかはわかりませんが、七〇年代に円ブロックをめざす、というようなことを大蔵省を中心に、やり始めた。しかし、大平総理(当時)の頃、結局、米国側の圧力と、日本の保守政治家たちの合意があって、大蔵省もその資料をお蔵入りさせた。

 関連して。ここにいらっしゃる、特にソ連に関心があったり、ソ連共産党と連携をされたりした方にお話ししたいんですが、二次大戦後ですね、米国が、さっき言ったようなマイケル・ハドソンの研究に基づいて、米国の当局者はそれを受け継いで、戦略を立てていた。日本の大蔵省さえ、たぶんその影響を受けたと思う。
 さて、そのソ連の話。二十五回大会ぐらいでしょうか、七七年、日本の出版物。ソ連共産党のそうそうたる、党大会の準備もあったんでしょうか、そうそうたる理論家、経済学者を総動員して研究されたんですが、その報告が資料が、「資本主義の全般的危機の深化」という本。日本の国内でも評価をめぐって、論争があった。もう、中ソ論争もあった時期ですからね。この分析の中で、この問題、基軸通貨ドル問題は、ただの一言もないです。私は、二次大戦後ですね、共産主義者たちはレーニンの「帝国主義論」を勉強はしたものの、二次大戦後、特にドル体制についての研究はおろか、ドル体制の真の意味も理解できなかったのではないか、つまり、現代資本主義の、二次大戦後の資本主義のこれについては、理解できなかったんだと思う。
 その中で「全般的危機の第二段階」というのは、ベトナム戦争で米国が負けた。これですね。もはや軍事も、経済も米国は行き詰まった、ソ連に対抗できなくなった。と書いてますね。
 そしてキューバ兵を使ってアフリカに進出し、社会主義を打ち立てようとした。アフガンを越えて南下政策をとろうとしたんですね。そういうことですね。

 今日は本山(美彦)先生(大阪産業大学教授)がおいでかどうか、私は分かりませんが、本山先生が中心になって出された本「グローバリズムの衝撃」の第七章に、七〇年代から九五年までの通貨危機、金融危機を研究した部分があります。ドルの秘密そのものの分析研究ではないが、体制がどんなふうに行き詰まったか、唯物論者としては、研究の若干の手がかりとなるものでした。
 資本主義諸国間の競争力の不均等な発展を基礎にして、ーー諸国は、黒字を稼げば通貨は上がる、赤字になれば通貨は下がるーーときに一定の幅を超えると通貨危機がくる。通貨が下落すると買い支え、通貨を防衛せねばならない。今、韓国がやっているようなことですね。そういう政策でやがて元に戻ってくればいいんですが、戻らないときには、介入通貨が足りなくなる。介入通貨が足りなくなると、外から借りる、ということになる。そこでもたもたすると、通貨危機が金融危機に発展する。

 「グローバリゼーションと国際通貨」という本があって、そこの一部に、今ではこれは通説になっている、例えば、米国は経常赤字がこれほど増えながらも、どうしてやっていけるんだろうか、ということね。これは黒字国が米国の国債を、つまり財務省債や株に再投資することによって、米国の証券資産等々を買い取ることによってドルを還流させると。つまり、米国の株や米国のいわば財務省の「借用書」ですね、あるいは社債等々が黒字国に渡り、黒字国はドルを米国に渡す、ということですね。還流する。そして還流したものが、経常赤字より多く還流してくれば、それを米国はいろいろな技術を使って、稼げるところに再投資して、利益を上げてメシを食っておると。こういう説ですね。

 これが通説になっておるんですが、実際はウソっぱちなんで、そんなに単純な問題ではないんです。計算してみると分かります。経常赤字と経常黒字を総合するとゼロなんですね。つまり、米一国で経常赤字をつくる、他国は黒字を稼ぐ。全部回ってきて、米国にドルが還流したとすれば、それはそれ以上、つまり黒字を全部米国に戻したら、それ以上には返らないですから、それ以上増えるわけがない。ここにはウソがあるんです。つまり、米国は基軸通貨国、国際通貨国なんですね。米国でドルを印刷するとーーこれは紙切れですよーー日本で円をいくら印刷しても、韓国で(ウォンを)いくら印刷しても、それは国内では通用しますが、外国の品物は買えないんです。国際通貨ではないですから。
 しかし、米国はですね、自分の国で輪転機を回してドルを印刷しますとね、たちどころに外国から品物を買って、そしてそれを払うことができる。基軸通貨国でない国は、貿易赤字もある程度までが限度。それから他国に資本を投下する、これもある程度以上、実力以上には限度がくるんです。制約があるんですね。しかし、基軸通貨国にはそういう制約はない。
 つまり、もし日本が自分の黒字以上に、資本収支で持った黒字以上に、自国でなく他国に投資しようとすると限度がある。そしてさらに投資しようとすると、より安いところで国際通貨を借りて、そうしてしか投資を継続できない。だから、米国からドルを借りて、日本の企業家が中国に投資することはあり得ることで、また実際に、中国に円で投資しているわけではないですよ。ドルで投資している。そのドルはですね、米国ではタダなんです。輪転機を回すだけ。
 したがってですね、米国は自国の通貨ドルを銀行、あるいは公的機関を通じて、どんどん他国に貸すことが可能ですし、投資することが可能なんですね。あるいは何とかという資料を見ると、国ではない何とかという島があるじゃないですか。怪しげなオフショア市場がある島(英領ケイマン諸島など)。そういう島を通じて、米国の巨大なドルが、そしてそこを通じて、米国のファンドだけでなく、他国のファンドもそこからドルを手に入れてですね。ということは、世界には公式な窓口のほかに、そういうさまざまな窓口通じて、ドルは世界に垂れ流される。
 今度、オバマが八千億ドル(の景気対策)、「ゼニが集まるでしょうか」という文書をどこかで見ましたが、心配はないです。そういう意味で、通説であるドル還流システムと言われて、経常黒字国がドルの資産を買うことで還流させる、それを再投資するということは、実際にはウソなんですね。この研究はですね、さっき挙げた人も書いているんですね。横浜国立大学(の上川孝夫教授)が、今度は「グローバリゼーションと国際通貨」のはじめの頃の章の中に、「計算がどうも合わない」ということを書いている。

 そしてごく最近、まだ若い学者(徳永潤二准教授)、かれの本、研究(「アメリカ国際通貨国特権の研究」)で、去年の十一月か十二月に出た本でーーこれは比較的、米ドルの世界に及ぼす、つまり世界市場で、黒字国が世界の資本が流動しているときの起点ということなんですが、米国もまた、基軸通貨国として起点をなしてですね、そして九〇年代後半と二〇〇〇年代、特に〇六、〇七年以降、巨大なつじつまの合わない、経常赤字はどんどん増えながら、他方で膨大な資本投下を、資本進出をやっている理由を突き止めていますね。計算でも突き止めている。これは有益だと思う。そしてかれの結論で、もはや米国の巨大銀行は一国の範囲ではなくて、全世界にネットワークを張りめぐらすことよって、金融の総合企業、コングロマリット化している。「金融帝国」、こういうことを資料として、数字もある程度はじき出しています。これは私は、説得力があって、さっき七〇年代以降のことで二〇〇二年にマイケル・ハドソンがわざわざ日本人のためにつけ加えたものとも一致するんですね。
 こういうことをですね、なぜ日本の学者は言わないんだろうか。全世界から収奪しているわけですね。

 そしてご存じのように米国も危機、欧州も危機と言って、金融で大騒動しているこの時期に、ご存じでしょうか、スワップ協定、これは新聞でいうと去年の九月三十日の「日経新聞」、それまでは二千九百億ドルの、米国を中心とした先進国は、日本は六百億ドル、欧州は千二百億ドルだった。スワップ協定というのは、それぞれの通貨をいつでも交換できる協定なんですね。そして実際のカネを動かしたら、半年とか一年で期限が切れる。そして、それを運用して、動かした時期の通貨のレートと実際の決済をする時期のレートは変わっているのでしょうが、にもかかわらず、最初の協定通り、カネを動かしたときの通貨で受け渡しをする、決済もするという協定なんですね。それを全世界に、米国は欧州や日本も含めて、合計して二千九百億ドル。それを六千二百億ドルに、枠をうんと拡大したわけですね。そしてこの危機のさなかに、日本も欧州も、自国の金融機関や企業がドルを必要としているんです。
 したがって、お互いに企業はドルを持っているものの、その手持ちのドルを貸し借りもできない。お互いに不信ですから、「あの企業に貸したら返ってくるかどうか分からない」。そういうときに、このスワップ協定の枠を広げて、数千億ドルが欧州と日本に流れている。そしてしかも、その協定の後にも、韓国やその他も加わって、世界の主要十中央銀行を通じて、全世界にドルが流されている。あたかも、その限りで言えば、(米国が)世界の中央銀行の役割を果たしているんですね。これは大変な量です。
 相矛盾する傾向がさまざまに進んでいます。私は、そういうことをきちんと知っておかなければならないと思います。

 さて、もっと身近なことで、キンドルバーガーが例を挙げている。七二年といいますから、ニクソンが大統領をやっていたときの選挙でね、大統領選挙で政権を握った側、現職は自分の選挙に有利なために景気を良くしておかないといけない。そこで、ドルの金利を下げ、流通量を増やしたんですね。金利を緩めた。だから、米国では経済生活が活発になるわけですね。ローンも組みやすくなる等々あるわけです。ところが、キンドルバーガーはこのことと関連してーーこのことは私が研究してみて、初めて分かった。一般的にしか分かっていなかったんですが、大統領選挙と結びついたのは初めてですがーー、このとき欧州のドイツは、三〇年代の危機のときもそうでした。伝統的にドイツは金利を、通貨を安定させる志向が強いんですね。したがって、高金利を維持していた。米国は下げた。そうしますとね、資金は金利の低いところから高いところに移動する。そして、マルクを求める人が増えた。日本でも「ドル預金か円預金か」とかあるでしょう。そうしたら、どんどんドルが、いわばマルクに行って、ドイツはドルを抱え込んだ。一方ではマルク高になった。貿易上、不利なんですね。したがって、たまらず金利を下げたんです、ドイツは。最近でも起こっていますね、英国とドイツの間で。
 気がついたら、数千億ドルがドイツに渡った。もちろん、ドルは下落したんですね。そういうことが分かった。ドルが下落したことによって、ーー石油産出国はみなドル決済でしょうーーしたがって、あの七四年以降の石油価格が四倍化したなどという前段に、ドル安によって、石油の王様たちのドルの実質収入は下がったんですね。石油価格は実質下がったということですよ。
 したがって、世間ではいわば資源戦略として第三世界が登場し、値上げをして、ということに見えるんだけれども、石油の王様たちから見ると、石油代金はドルですから実質目減りしたと。それを取り戻すんだということで、それをきっかけにして石油を値上げしようと、OPEC(石油輸出国機構)がやったんですね。こういうことです。
 その結果として今度は、そこへドルが集中することによって「オイルダラー」が生まれた。そして、このたくさんのドルがそこに集まったことによって、このドルをどうするかで、石油の王様たちは使い道を知らず、ロンドンを経由して米国へ。米国との秘密協定が十年以上たってからバレたわけですね。米国の財務省債を多く買わせるということだけれども、買った後すぐに手放さないと。その代わり、石油の王様たちの権力を、政権を、米国は軍事力で守ってやるという保証をした。
 そして英ロンドンのシティと米国の銀行を通じてですね、この有り余ったカネを、ドルを、非産油国に膨大に貸し付けた。これがいわゆる南北問題ですね。そして焦げ付いて(累積債務問題)、等々というようなこと。つまり、ドルはそういうことをさんざんやりながら生きてきたわけですね。
 したがって私は、今ですね、米国のそういう基軸通貨国としての特権や、巨大銀行が全世界での金融総合企業、コングロマリットーーよく「軍産複合体」などと言いますがーー金融の銀行、証券、それらを何でも扱える。それがすべて、全世界に支店があるんですね。そういうことによって生きてきた。つまり、そういうことを通じてですね。これほど経常赤字がありながら、なおかつこれまで生きてきたんですね。
 したがってですね、これが破たんしたということになれば、どうやってーーつまり、一面から見ると、世界は米国があるので、大量消費国があるので世界経済は維持できた。米国はそういう金融システムの中で、製造業であまり働かないで、ちょうどローマ帝国と同じですね。ウォール街を中心にして、巨大な人口がメシを食っている。この金融システムが破たんして、米国人は以後、生きていけるんだろうか。
 そして、米国人が「おれはもう働いただけで、給料でメシを食うよ」とこう言ったら、世界は大変なことになる。「なんでもいいから消費をしてくれ」と、こうなる。ドルさえくれればよい、とこうなる。したがって、今度オバマ政権になってどうなるかというと、「景気を三%うんぬん」と言って財政を投じる。目前には、効果があると思います。だから各国は、これが世界の不均衡をさらに拡大するーーつまり、経常赤字がもっと増えるだろうということーーしかし当面は、ドル世界、というような意味で「仕方がない」と。しかし、製造業は大喜びするんだと思います。
 誰もが、この先、どういう世界が待ち構えているかということについて言うと、「ローマの悲劇」。惨憺(さんたん)たる危機が待っているとしても、当面食えれば、ホッとすると。したがってどの階級にとっても、そしてさっき言ったように、危機の深さや進行等々によって、そこで諸階級がかかわって、社会的な生活をしているわけです。社会的生産と言ってもよい。階級闘争の利害が激化せざるを得ない。
 したがって本質的に言うと、カネがこれほど余っている。ブルジョアジーの「カネ余り」というのは相対的なもので絶対的なものではない。世界には資金があれば天国になる国はいっぱいあるんですよ。自動車は今の何十倍もあっても、欲しい人はいっぱいいる。ゼニがないだけ。つまり、資本主義の「過剰」というのは、「儲からないから」というのが前提になっている、これはね。私的所有の矛盾でしょう。それほどあるんだから、「『誰のものだ』などと言わないで暮らしたらどうでしょう」というのが、われわれならできる。しかし、金持ちは「そんなことが許されるのか」とこう言う。理屈は理屈ですが、あの階級にとっては当然。
 しかし、そういう大金持ちの下にいる小金持ち等々もまた、基本的にはブルジョアですから。そうするとわれわれは敵から政権を奪おうとすると、どうしても一挙に「資本主義をつぶせ」などと言えないですよね。

 G20会議について若干述べてみます。
 結局のところ、キンドルバーガーも、危機がきたとき「最後の貸し手」がうまくおれば危機は救える、と言っている。
 ある意味で、最近の先進国間のスワップ協定で、米国がドルを供給したようなことも、そんな意味があるんですね。
 あの時期、米欧間で、米日間で、十分な協調ができなかったとしたら、どんな状況が生まれただろうかーーと。
 これからの危機のさなかに、「最後の貸し手」、力のある者は用心深く、この危機の収拾と結果を考える。つまり、純経済の立場からだけでなく、自国の政治的利害も考慮するのが自然である。米国は国力が衰える中で、基軸通貨国の特権を維持する闘いを放棄しないだろう。これを維持しなければ当面やっていけないからである。二十カ国の会議を考察するとき、キンドルバーガーの研究文献は参考になる。
 三〇年代の危機について、こう言ってますよ。まず基軸通貨国、英国の力がなくなった、あの当時ね。米国は力があって英国との関係はきわめて深いものがあったが、用心深く接近して、それ以上を引き受けようとしなかった。フランスはドイツとオーストリアを助けようとはしなかった。ドイツが自国の政策に固執したこと。諸国が責任を分担しなかったこと。そうこうしているうちに、世界の、後で分裂して戦争をやった主要な中央銀行、政府が集まって三三年に会議をやったが、決裂し、世界は分裂し第二次大戦になったんですね。
 米国のオバマ政権が登場しても、四月のG20会議が、協調の場所となる保証はないんです。世界の歴史は協調の場でもあるが、闘争の場でもあるんです。また、キンドルバーガーはこうも言っている。「『最後の貸し手』の問題は、複雑で矛盾に満ちている」とも。
 それぞれの国は、そこでどんな態度を取り、どういう約束事をするか、自国に帰って、自国の政治や階級間の相互関係で、支持を受けるか受けないかがある。政権が不安定になるかもしれない。したがって、G20の会議は国際的な協調の場でもあるが、実態はそれぞれの内輪の事情に制約される。したがって「外交は内政の延長である」ということ、そして、外交の結果もまた、内政の、内部矛盾にさまざなな影響を及ぼす。

危機に遭遇してのわが国の問題

 さて最後ですが、わが国の経済を考えるとき、ーーオバマがどうなるかという視点ではなくーーもう少し基本的に、日本の国の進路を考えるとき、外需頼みでなく、大きく内需に依存する経済、また通貨問題で揺さぶられない貿易、アジア近隣諸国とのと連携、これが大事ですね。
 近隣域内貿易と通貨バスケット。いろいろな意味で、ドルの影響を比較的受けない、安心して商売ができる貿易、そして有無相通じて、日本の高度な技術とか生産設備等々を生かしながらメシを食っていく。政治としては独立自主の国をめざす。
 これ以外にないでしょう。

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 私はこのことについて、日本の経済界、昨年も申しましたが、石橋湛山(東洋経済新報社社長、のちの首相)が戦前、「アジア、全世界と手を結んで…」というようなことで、民族が本当に自主・独立で、そして世界と共存する道を選ぶことができるということ、それを保守政治家に呼びかけた。
 しかし今回は、もう少し違った角度から呼びかけたい。つまり、企業家、経営者、商売をしている人たちの経済的な利害から見ても、もはや米国依存、ドル依存は限界でしょう。根底から戦後政治、米国依存の政治の転換が不可避となったんです。
 こうした経済的、物的根拠に基づいての提案です。

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 したがってもっと具体的には、どんな経済界のレベルとも、保守政治家とも、どんな知識人とも、国の進路をめぐっての意見交換、議論の場を持つようにし、共通の展望を描けるように進む。
 改めてこの局面で、国の生き方の問題として提起をしたい。議論を深めたい。政治戦線でいえば、強力な意志がなければ、例えば、国の進路の転換と言っても、あるいはアジアでの共同体を発展させようとしても、米国の反対を押し切らにゃならん。したがって、生きた経済界、企業家、商売人は、冒険を恐れる、そんな危ないことはしないんですね。心で望んでもそうですよ。
 これはですから、政治家の仕事。強力な政権、わが党は、そのための戦線を拡大する。

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 この強力な戦線と政権は、多数派である労働者階級の自覚と、実践的な戦略、階級的利害に敏感な強力な政党なしには形成できないと思います。ですから、こうした問題も併せて考えるような、そういう大きな観点に立たなければ、そして労働運動がそこまで育たなければ、局面を変えることができない。
 したがって、国の進路を転換する大事業は、第一義的には労働者階級の任務であると思います。

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 もう一つ、私は統一戦線を保守も含めて模索しながらも、国の進路を模索しながらも、併せてこの間、議会政党、新しい闘える議会政党を再建しようと努力してきました。社民諸勢力の団結も図って進めました。
 私は、闘う新しい党をつくったらどうか、議会主義でもよろしい。ただし、議会外の闘争も結合しなければならん。そういう行動する党を呼びかけてきた。そして、多くの共鳴者が社会民主主義者の中にもあった。労働組合の人たちも賛同してくれた。
 しかし残念ながら、この呼びかけは当面、停滞することになった。最も中心的な責任は、われわれが呼びかけながら、わが党が弱かったということだ。力量が足りなかった。

わが党の問題、努力の重点について

 わが党は現在、先に開いた第六回党大会の方針の全面的な具体化に全力を注いでいます。党の建設が戦略上の中心任務です。党建設に熱中していますので少しずつは前進、成果もあります。しかしながら、急速な危機の進行で、これに対応するには力不足、党の建設が間に合わないんです。ですから、大会方針を堅持しながらも、また、党の前進のためにも、二つの方面で注意を払って前進を図りたいんです。

 国の進路をめぐっての、幅広い戦線の形成のことは、すでに触れました。もう一つの大事な問題、これを言ってみます。
 私は改めて、先に述べた新しい「議会政党」だけでなく、「党をつくろう」と言っている人たちも、あるいは「自分たちの路線は…」と言って機関紙を出している、いわば左派諸勢力、と言ってもよい、こういったさまざまな人たちとの団結問題です。合わせると膨大にいるんです。
 にもかかわらずわれわれは、自分たちが正しいことを信じて、自分の党を強めながら、かれらとは論争しながらやってきた。しかし、この激動の中で、それらの諸君が、従来の路線に固執しているわけではないんですね。かれらもまた、深刻にこの現実を打開するのに力不足を感じ、何かこれまでの認識上のことで「考えてみる必要があるのではないか」ということを、深刻に考えていらっしゃるように見受けました。
 私も、そういう人たちとたびたびお会いした。これはわれわれは、それらの人たちに対する先入観を変えにゃならんと、こう思うようになった。
 したがって私は今回、この最後に呼びかけておるんですが、当然のことながら私は、それらの人たちと共同行動ですね、敵と闘うために共同の行動を呼びかける。
 もう一つは、認識面で情勢を議論したり、できるなら共同の学習をやってもよろしい。われわれは情勢や理論問題や認識問題に関する限り、秘密はないんです、これはね。したがって、開けっ広げにそうした議論をしたい。それはしかも、公式でも非公式でもよい。そういう意味で、積極的にそれらの人たちとの間で連携を深めたいと。
 これは、われわれが「正しい」と言いながらですね、実際問題を解決する上で、労働党はまだ本当に力不足であったという自己批判の上に立っています。
 基本的にわれわれは、数年前に第六回大会をやりましたので、その方針を堅持しながらやりますが、それを具体化する上でも、それらの皆さんと改めて団結を呼びかけると。

 先の社民勢力の問題では「党が弱かった」と申しましたが、労働党の責任でもありますが、社民の人たちが踏み切れない他の若干の理由ーーぬる風呂でも入っておくと風邪をひくかもしれんが、まだ今のところは風邪をひかないーー「今回の選挙にかけてみる」など、あるでしょう。したがって、時期を待たにゃならん面もあるわけですね。
 したがってこの旗は降ろさず、時期を見ながら、相互信頼を維持しながら進むということにして、さっき言った二つ。一つは、経済界を含む戦線を思い切り広げること。かれらもまた、この状況では異なった状況にさらされている。「左」のかれらとも、強力な連携を深める。この二つを当面、大きな力を割いて進めたいと思います。

 社会主義問題にもふれたかったんですが、別の機会にします。また「福祉国家をめざす」という主張もあるようですが時間がありません。
 以上のことを呼びかけて、まだ言わにゃならんことはたくさんありますが、こういう時間でそれほど深くはしゃべりにくいのでこのくらいにしたいと思いますが、本当に長時間ありがとうございました。(拍手)


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