2008年11月15日号 2面・社説 

民主党が「追加制裁」打ち出す

政府・与党と朝鮮敵視を
競い合う

 米国発の金融危機は全世界を巻き込み、実体経済の世界的後退も鮮明となっている。戦後ドル体制は末期を迎えている。
 欧州連合(EU)はもちろん、中小国も米主導の金融システムに代わる秩序を模索するという形で、独自の動きを強めている。世界の経済と政治における重点の移動が始まっている。
 こうした情勢は、わが国歴代政権が戦後一貫して続けてきた対米従属政治を打ち破ることを、ますます急務なものとさせている。日米基軸の政治を転換し、アジアとの共生を実現しなければならない。
 そのためには、過去の侵略戦争と植民地支配に対する真摯(しんし)な反省と謝罪・補償が大前提である。とりわけ、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との即時無条件の国交正常化を急がなければならない。
 田母神・自衛隊前航空幕僚長の論文問題は、この「確信犯」を空幕長に任命した歴代政権の、対米追随でアジア敵視の危険な性格をあらわにした。
 朝鮮との関係でも、国交正常化に逆行する、異常な敵視と排外主義政策が続いている。
 十月二十九日には、警察庁公安部が「税理士法違反」容疑で朝鮮総聯傘下の在日本朝鮮東京都新宿商工会など六カ所に対する不当な捜索を行った。昨年二月以来、兵庫、京都でも同様の弾圧が行われており、明らかな政治弾圧である。
 このような麻生政権に、独立・自主の国の進路も、アジア諸国・人民との間に真の信頼関係を構築するもできるはずはない。
 重大なのは、野党の態度である。
 民主党はこの政府・与党と闘えないどころか、朝鮮敵視を競い合っているありさまだ。
 民主党の拉致問題対策本部(本部長・中井元法相)は十一月二日までに、日本独自に朝鮮を「テロ支援国家」に指定し「追加制裁」を行うべきとする見解をまとめた。
 すでに、麻生政権は十月十日、万景峰号など朝鮮籍船舶の全面入港禁止など従来からの制裁措置を半年間延長すること閣議決定している。民主党対策本部の「案」は、この制裁をさらに強化することを主張するものだ。
 この「追加制裁」の中身たるや、在日朝鮮人の再入国禁止、国内の朝鮮や関連団体の資産凍結と課税強化、朝鮮と取引する外国金融機関との取引禁止など、全面的なものだ。これが実施されれば、在日朝鮮人の海外渡航は不可能になり、朝鮮総聯など民族団体の活動も著しく制限される。卑劣な人権侵害であり、これまで以上の「敵国扱い」というべき制裁案である。
 まだ民主党の正式な方針になってはいないとはいえ、野党第一党の党内機関の決定である。これはわが国の進路を決定的に誤らせる危険なもので、断じて許せない策動である。見逃して良いはずはない。
 しかるに、「左派」の人びとがこの問題にいっさい口をつぐんでいるのはどうしたことか。
 中井本部長は、この「追加制裁」案について「民主党政権でも活用できる」と明言している。社民党など「平和」「護憲」を掲げる「左派」の諸君は、このような民主党主導の「政権交代」に協力できるのか。
 対米従属政治の打破、アジアと共生する国の進路を実現するための闘いが求められている。とりわけ、労働者・労働組合は朝鮮との即時無条件の国交正常化を掲げて闘おう

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