2008年11月15日号 2面・社説 

米大統領選でオバマ氏が勝利

幻想あおる野党などの犯罪性

 米大統領選挙で、民主党のバラク・オバマ氏が選出され、第四十四代大統領となることが決まった。同時に行われた上下両院選挙でも、民主党が勝利した。
 国内の中間層、貧困層の経済的不満を背景に、イラクからの「早期撤退」を掲げたオバマ氏は当初から有利な選挙戦を展開し、さらに、金融危機のぼっ発が勝利を決定的にした。
 オバマ次期政権には、これまで積もり積もった米帝国主義の「借財」と、ブッシュ政権の八年間のツケがそのまま引きつがれる。目前の金融危機と景気後退のみならず、膨大な経常赤字、弱体化した製造業、貧困の拡大、ドロ沼のイラク戦争とアフガン情勢等々である。
 オバマ次期政権の陣容や具体的政策はこれから明らかになるが、問題は、オバマ氏が何を言うかではない。具体的に何を余儀なくされるかである。
 二十世紀半ばに世界の覇権を握った米帝国主義は、次第にその力を衰えさせた。クリントン政権末期には、IT(情報技術)バブルの崩壊などでドル還流システムの危うさも暴露された。二〇〇一年に発足したブッシュ政権は、起死回生を図って、対外的には「テロ」を口実としたアフガニスタンやイラクへの侵略戦争、国内では住宅バブルをつくって消費をあおるなど、内外ともに悪あがきを続けた。しかし、それはことごとく失敗した。
 そして、昨年夏のサブプライムローン破たんは、今年九月の世界的な金融危機へと発展した。ドル体制は末期を迎えている。
 これは今後の日米関係に反映し、両国間、企業間、民族間などの利害対立をいっそう険しくさせるだろう。対米従属のわが国の生き方を根本的に転換する問題は、最も切実な課題となる。
 だが、わが国支配層の宣伝機関であるマスコミはもちろん、程度の差はあれ野党や労働組合も、オバマ次期政権への幻想を振りまき、労働者階級をはじめ国民各層の目を曇らせている。
 民主党は、鳩山幹事長談話でオバマ氏の当選を手放しで評価し、「(米国と)成熟した関係を構築していく」と、日米の同盟強化を表明している。保守二大政党制の一方の装置として、自民党と同じく、日米同盟を外交政策の基軸とする民主党としては当然のことではある。
 共産党は、志位委員長の談話で、黒人大統領の誕生で「アメリカ社会が新しい民主的活力を発揮する転機となることを期待する」と、これまた天まで持ち上げている。さらに、イラクからの撤退などオバマ氏の公約を大きく評価する一方、かれがアフガンへの増派を主張している点については、「注目する」と批判を避けている。共産党が、事実上、米国を「帝国主義ではない」と言い始めてから久しいが、まさに堕落のきわみである。
 連合も古賀事務局長談話で「世界のパラダイム転換を象徴するもの」と大賛辞を送り、「アメリカは変わろうとしている。日本は変われないのか」と、労働者の力を民主党主導の「政権交代」に集中させようとしている。さらに、オバマ氏の「新しい責任の精神と新しい犠牲の精神」という言葉を持ち上げ、わが国労働者に危機への対処での協力と労使協調を説いているのである。
 すでに世界的な景気後退ははっきりし、わが国の自動車産業でも派遣労働者を皮切りとした合理化・首切り攻撃が始まっている。闘いが求められている。連合指導部のこんな見解を、労働者は納得できるだろうか。
 農民も漁民も中小業者も経営危機の中で声をあげ、闘い始めている。
 広く世界を見れば、多極化の中で欧州連合(EU)は戦略的な動きを強め、新興国も発言力を増している。世界経済の重心の移動、再編が始まっている。米帝国主義は、いまや「溺(おぼ)れる犬」である。
 いまこそ対米従属の売国政治を転換し、自主・独立の日本をめざすべきである。わが国にのしかかる、米軍再編や海外派兵、ドル体制を守るための対米支援、際限ない市場開放要求……。これらはオバマ政権になっても変わらないどころか、米国の危機の深まりと相まって、いっそう強くなろう。
 一握りの多国籍大企業の利益のためにわが国を差し出すのか、このことが真剣に問われている。
 米帝国主義とその追随者と闘ってこそ、悪政を転換させる活路も開ける。最もたしかな力は、労働者階級を中心とした国民各層、各界の連携した広範な大衆行動である

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