2008年10月25日号 2面・社説 

朝鮮「テロ支援国」指定解除

即時無条件の
日朝正常化こそ肝要

 米政府は十月十一日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核計画申告の検証方法で合意したとして、同国に対する「テロ支援国家指定」を約二十年ぶりに解除した。
 これに対して、朝鮮は「歓迎」の意を表明し、一時再稼働の動きを見せていた寧辺の原子炉などで無能力化に向けた作業が再開された。
 米国による「テロ支援国」解除は、二〇〇七年七月の六者協議で合意されていたが、米国が核無能力化についての「検証手段」を持ち出して解除を遅らせていたものである。指定解除は、米国の長年の朝鮮敵視政策が、また一つ、破たんしたことを意味する。
 わが国支配層は、「不満だ」(麻生首相)など、米国の対応に不満たらたらである。
 一方、これに先立つ十日、わが国・麻生政権は朝鮮に対する日本独自の制裁措置を半年間延長することを閣議決定した。二〇〇六年十月、安倍政権が朝鮮の核実験を口実に制裁を発動させて以来、四度目の延長となる。朝鮮籍船舶の入港禁止、朝鮮からの輸入の全面禁止などといった露骨な敵視政策であり、在日朝鮮人に対する抑圧策でもある。
 中国や韓国は「テロ支援国」解除について歓迎するとともに、朝鮮への「重油百万トン相当の支援」という六者協議の合意を実行するよう、日本に促している。「制裁」にひた走るわが国は、六者協議の中でさえ、いよいよ「蚊帳の外」に置かて孤立を深める事態となった。
 米国の敵視政策に追随し、朝鮮への敵視と排外主義をさんざんあおったわが国売国政治の転換なしに、この事態は打開できない。
 朝鮮との即時・無条件の国交正常化が急がれており、国民運動の発展が求められている。保守層にも打開を求める動きは強まっており、戦線を広げて闘わなければならない。
 だが、野党などの対応はどうか。
 民主党は「北朝鮮の核・ミサイルは直接的な脅威」とあおり、「毅然とした態度」で拉致問題の解決を迫れ(直嶋政策調査会長談話)と、いっそう反動的な立場から政府を「批判」している。
 共産党は「北朝鮮の核兵器の完全放棄につながることを、強く期待する」(志位委員長談話)と、日米政府とまったく同じ立場である。
 連合も、指定解除を「極めて遺憾」とし、「強力に」外交を展開しろと、政府に要求した(古賀事務局長談話)。
 これらはいずれも、日米政府と歩調を合わせて「核」や「拉致」で朝鮮に屈服を迫るもので、わが国の進路を打開できるものではない。
 近づく米国の次期大統領選挙で、民主党、共和党どちらが政権につくにせよ、本質的な朝鮮敵視政策に変わりはない。とはいえ、イラクやアフガニスタンでの侵略・占領に失敗している米国は、北東アジア地域で、主導的に軍事行動に出る余裕はもはやない。そして、飛躍的に深まった金融危機によってその力は限界に達し、超大国の地位から転がり落ち始めている。
 米国の衰退が深まるこんにち、対米従属のわが国は、政治も軍事も経済も完全に行き詰まりを深めている。日米基軸を転換し、アジアと共生することこそが真の活路であることがはっきりしている。そのために、米国のアジアへの干渉・侵略支配に反対し、平和な環境を実現しなくてはならない。
 わが国は、まずは、明治以来の朝鮮への植民地支配とその後の朝鮮敵視政策の歴史を真摯(しんし)に反省・謝罪し、必要な賠償・補償も行って、朝鮮との国家関係を正常化しなくてはならない。こうしてこそ、アジア諸国からの信頼を勝ち取ることが可能となる。〇二年の平壌宣言は、その手がかりとなり得る。
 今年になって、国会で超党派の「日朝国交正常化推進議員連盟」が発足したり、兵庫県や福岡県など各地でも日朝友好と国交実現をめざす超党派の県民組織が相次いで結成されている。
 日朝国交正常化を、即時・無条件で実現しなくてはならない。わが党は、各界人士の共同の努力を引き続き呼びかけたい。とりわけ労働運動の皆さんが、誤った見解を打ち破り、国交正常化実現に向けた運動の中核となることを望むものである

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