2008年10月25日号 2面・社説 

新テロ法延長問題

「対決」の欺まん性
自己暴露した民主党

 インド洋での海上自衛隊の給油活動を継続する、新テロ対策特別措置法(新テロ法)延長案が十月二十一日、衆議院で可決された。二十三日には参議院での審議が始まったが、この否決を見越し、与党は三十日にも衆議院で三分の二以上の賛成で再可決する方針である。
 米英軍などへの給油は、「テロ」を口実とした無法なアフガニスタン占領を支えるものである。また、重油がイラク戦争などに流用されたという疑惑があるごとく、米国の中東戦略を支える重要な一部である。
 米帝国主義の衰退が決定的なものとなる中、対米従属のわが国支配層は、何が何でも給油活動を継続することで、米国への忠誠を示そうとしている。併せて、これを通じた国際的発言力の強化をもくろんでいる。
 対米従属で中東・アジアに敵対する新テロ法はわが国の進路を誤らせるものであり、これに反対する闘いを発展させ、法案を廃案に追い込まなければならない。
 ところが、民主党はこの悪法の成立に、事実上賛成している。
 昨年、民主党は旧テロ支援法に対し、審議を引き延ばすなどして「反対」した。国民の反対も相まって、給油活動は三カ月間の中断に追い込まれた。
 もちろん、「日米基軸」で自民党と差がない民主党が掲げた「反対」は、もともと欺まん的なものである。事実、小沢代表はアフガニスタンを占領する国際治安支援部隊(ISAF)への派兵を主張、武器使用基準を緩和する「復興支援特別措置法案」など、政府案以上に危険な提案を行った。
 今回、民主党はこの欺まん的な「対決」さえかなぐり捨て、「解散・総選挙」を口実に、法案の成立に手を貸すという許し難い態度をとっている。衆議院での新テロ法の審議日数は、たった二日間だ。
 民主党は、新テロ法の成立に手を貸すことで、事実上、総選挙で同法、ひいては日米基軸という国の進路の問題が争点化することを避けたのである。このような民主党の「政権交代」など、ペテンでしかない。
 この一年間、米国の窮地はいっそう深まっている。
 ISAFは約一万六千人を増派したにもかかわらず、死者が累計約一千人に達するなど、米国は軍事的に追い込まれている。兵力を維持する資金面でも窮地だ。加えて、アフガンの隣国パキスタンでは、反米の闘いが「テロとの闘いの最前線」を担ってきたムシャラフ政権を退陣に追い込んだ。
 こうした窮地を背景に、米国の対日要求は給油活動にとどまらなくなった。
 米国は十月七日、わが国に対し、二兆円規模の資金など、新たなアフガン支援策を要請している。米政府の一部には、輸送ヘリか輸送機、さらに陸上部隊の派遣を求める見解もあるという。
 「日米基軸」を掲げ、ISAFへの派兵を主張する小沢民主党には、これらの要求を拒否して「対決」を演じ続けられるはずもない。
 すでに、アフリカ・ソマリア沖での「海賊対策」を突破口に、与党と民主党が連携した、自衛隊派兵をめぐる新法あるいは恒久法の制定に向けた動きが浮上している。
 総選挙後の民主党には、いっそう期待できないことは明らかだ。
 民主党による「対決」の欺まん性が改めて明らかになったことは、闘う労働者にとってよいことである。「徹底審議」を説くことしかできない共産党も無力である。
 わが国の進路の打開を願う労働者・労働組合は、民主党に期待せず、その「政権交代」への幻想を打ち破って、自らの力で闘おう

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