2008年10月15日号 2面・社説 

「徹底審議」説く共産党

働労働者の断固たる
行動を恐れる立場

 米国発の金融恐慌は日に日に深刻化、ドル体制はまさに末期症状を呈している。政治・軍事面でも米国の限界と衰退は明白で、中小国やロシアは米帝国主義を恐れなくなった。激変する世界の中で、わが国の対米従属政治はますます時代遅れのものとなっている。
 一方、物価高や社会福祉制度改悪などに対する国民各層の怒りが高まっている。与党が、予定していた解散・総選挙に容易に踏み切れないのは、深まる金融危機への対処とともに、国民の怒りを恐れてのことである。
 いまこそ、労働組合を中心とする断固たる大衆行動で、売国政府を打ち倒すことが求められている。
 このような重大な情勢下で、共産党は相変わらず民主党を美化し、さらに議会政治への幻想をあおることで、支配層に手を貸している。
 そのありさまは、かれらの民主党への「批判」に端的にあらわれている。
 共産党は、民主党が十月八日、自民、公明の与党とともに、〇八年度補正予算に賛成したことや、インド洋での海上自衛隊の給油活動を延長するための新テロ法延長の早期採決に応じる方針を決めたことを批判している。
 悪法の成立に手を貸す、民主党の態度は許し難いものである。今回の事態は、対米従属で多国籍大企業のための政治を行う党という、民主党の正体を改めて明らかにさせた。
 だが、共産党が民主党を批判するのは、「総括質疑をおこなっただけでのスピード採決」で補正予算を採決し、「短期間審議」で新テロ法を採決しようとしているから「許しがたい」というだけのことである。共産党の判断基準は「徹底的な審議によって、政府・与党を追い詰めていくことこそ本来、野党のとるべき大道」(志位委員長)などというもので、「民主党はそうでない」と言っているにすぎないのだ。
 共産党は、総選挙向けに民主党への批判を強めているが、この程度にしか行わないのは、民主党との連携を否定していないがためである。実際、九月末に行われた第七回中央委員会総会決議では、民主党との関係について「問題ごとに協力」などとし、実質上「共同」に余地を残した。また共産党は、先の国会の首班指名で小沢民主党代表に投票した(「小沢首相」を「支持」したことを意味する)ことにいっさい口をつぐんでいる。民主党を批判するのであれば、まず、小沢代表への投票について自己批判すべきであろう。
 共産党のこうした態度は、財界が進める保守二大政党制の一方の装置である民主党に対する本質的暴露を避けることを通じて、二大政党制策動を助けるものである。
 それだけではない、共産党は「野党の大道」などと大言壮語しているが、要は、断固たる国民運動の発展による悪政の打破を否定し、労働者のエネルギーを議会内の審議、おしゃべりに押しとどめようというものにほかならない。
 一九九五年の少女暴行事件を契機とした沖縄と全国での米軍基地撤去を求める闘い、最近の全国漁民のいっせい休漁(ストライキ)や農民、トラック事業者の闘い、このような大衆行動があってこそ、支配層に譲歩を強いることが可能なのである。
 だが、共産党たるや、影響下の大衆団体を闘わせるどころか、自党の国会質問が自民党議員に「評価」されたと、誇らしげに「しんぶん赤旗」に記し、「蟹工船」の書籍が売れたと言っては浮かれている。かれらの態度は、大衆行動の荒々しい発展を恐れる小市民的なものである。
 共産党は七中総でも、金融危機に始まるこの激動を「暗転」としか言わず、わが国労働者の生活を打開する問題も「選挙の重大な争点」としか提起していない。
 わが国の労働者・労働組合が実力で前進することが差し迫った課題となったこの時期に、またしても「議会の道」を吹聴する共産党は、これまで以上に反動的なものと言わなければならない。
 労働者階級は、共産党の説く「議会の道」ではなく、断固たる行動によってこそ、悪政を打ち破ることができる


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