2008年10月15日号 2面・社説 

危機の打開策ないG7

ドル体制救う
売国的策動を許すな

 深まる金融危機を回避すべく、日米欧の先進七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議が行われ、十月十日に異例の「行動計画」を発表して閉幕した。「計画」は「利用可能なあらゆる手段を活用する」などとしたが、具体的な方策はさほど決まっておらず、金融機関の相次ぐ破たん・国有化など、日に日に深まる危機を解決できる保障はない。
 ブッシュ米大統領が「世界的な危機には、世界的な対応が必要だ」と述べたように、この間、先進各国は緊急の協調利下げや資金供給などを繰り返してきた。だが、危機は治まらず、米国の中央銀行である連邦準備理事会(FRB)の資本内容が著しく悪化するなど、ドルの信用は失墜している。欧州各国でも、金融機関の国有化が相次ぎ、「金融立国」化を図ったアイスランドは国家自身の破たんに直面した。まさに、ドル体制は末期である。
 米FRBが「最期の貸し手」としての役割を果たせずにいる中、これを支える役割を演じようとしているのが、わが国売国政府である。
 中川財務相はこのG7会議で、国際通貨基金(IMF)を通じて、現在一兆ドル(約百兆円)近くあるわが国の外貨準備を新興国などに提供することを表明、中国や中東産油国など、ドル資金に余裕のある国々にも呼びかけることを明らかにした。
 併せて、米財務省がFRB救済のために発行する臨時の財務省債についても、引き受ける意向のようである。三菱UFJや野村ホールディングスなどの民間金融機関も、独自の狙いをもちつつも、米銀などへの出資で「救済」に乗り出した。
 多額の外貨準備にしろ、米国債の購入資金にしろ、その原資は、労働者をはじめとするわが国勤労国民の血と汗の結晶にほかならない。これまでも、わが国歴代売国政府は財務省債購入などで米国を支えたあげく、ドル安でその価値は目減りし、どぶ川に投げ込んできたも同然である。いままた、末期のドル体制を救済するために国富をつぎ込もうとは、断じて許せないことである。
 「新興国への支援」などとうたっているが、それは口実にすぎない。米国を助ける国際的な旗振り役となることで、末期を迎えたドル体制から離れつつある国々をドル体制につなぎとめ、ひいては、もはや見る影もなくなった米一極支配の再構築に手を貸そうというものだ。かつてアジア、中南米などの中小国に構造改革政策を押しつけて塗炭の苦しみを与え、こんにちも「米帝国主義の手先」として悪名高いIMFを通じて「支援」を行おうというのであるから、なおさらである。
 ペルシャ湾岸産油国は、二〇一〇年に共通通貨・ディナールの導入で合意しているし、昨今の金融危機でも米国への融資を手控えるなど、昨年までとは異なる態度を取っている。今月からは、ブラジルとアルゼンチンがドルを介さない貿易決済を始める。欧州連合(EU)加盟国でも、アイスランドがロシアに四十億ドルの支援をあおいでいる。好まざるとにかかわらず、各国はドルを見捨て始めている。
 しかも、震源地である米国の国民自身が、大銀行救済のための金融安定化法に反対して闘い、一度は否決に追い込んでいる。
 このような中、あくまでもドルを支えようとする麻生政権の策動は世界のすう勢に反する、きわめて反動的なものと言わなければならない。
 国民とその富を、泥舟と化した米ドル体制を支えるためつぎ込もうとする売国政府の策動に反対し闘わなければならない。労働者・労働組合を中心とした国民運動で、対米従属政治を打ち破ろう


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2008