2008年9月5日号 1面・社説 

福田首相の辞任について
 福田康夫首相が九月一日、安倍前政権を引き継いでわずか一年弱で辞任を発表した。
 共産党や社民党は「無責任」などと批判しているが、そのたぐいの没政治的な問題ではない。安倍も福田も、敵階級から政治的支配を託された「手駒」であるが、飼い主への「責任」を果たせないほどに危機が深いのである。
 この一年で、世界情勢は「百年に一度」と言われるほどの再編成、劇的な変動期に入った。首相の相次ぐ辞任は、そうした情勢の中での出来事であり、多国籍独占体を中心とする敵・支配階級の政権が行き詰まり、重大な困難に直面していることを象徴的に示したのである。

深刻な困難に直面した対米従属政治
 福田政権は、昨年参議院選挙での自民大敗と「ねじれ国会」の政治危機で安倍が政権を投げ出した中、内外に難問を抱えて発足した。その課題は、小泉、安倍同様、外交では対米従属の下での国際的発言権強化であり、内政では財政再建であった。
 だが、その内外政治は行き詰まった。
 サブプライムローン問題に始まる米国発の経済危機はわが国を直撃し、とりわけ原油・資源や食料価格高騰で国民各層を瀬戸際に追い込んでいる。漁民、農民、トラック業者などの闘いに見られるように、国民の不満と怒りは急速に高まっている。対米従属で一握りの独占体だけが繁栄してきた、戦後のわが国経済構造、それ自体の根本的限界が露呈しているのである。
 安倍政権は「成長なくして改革なし」と財政再建を成長に託していた。いま、それどころでない。「緊急総合対策」に見られるがごとく、政府は目前の選挙対策に汲々(きゅうきゅう)とせざるを得ない。一九九〇年代のバブル崩壊、デフレ期の諸困難も癒(い)えぬまま、始まった危機に対処するための財政的基盤を持たないわが国政権は、重大な困難にさらされている。
 グルジア問題に象徴されるように、米国の国際的影響力は決定的に後退している。新テロ法延長問題も朝鮮問題も、一年前とは比較にならない深刻さで、わが国の対米従属外交を試練にさらしている。

自公政権はもはや限界
 自公政権の議会運営、支配層の政権運営は、いっそう重大な困難に直面した。
 周知のように、国民各層の不満の高まりの中で、九〇年代に自民党単独政権が崩壊して以来、支配層は保守二大政党制の実現による、国際政治に対処できる「安定した支配」を実現しようとした。昨年の参院選の民主党圧勝で二大政党制に近づいたかに見えたが、それを覆す事態も「ねじれ」として含まれていた。小沢民主党との「大連立」政権も画策されたが、それも破たんした。こんにち、次の総選挙を経ても二大政党制による安定した政治支配の実現どころか、むしろ不安定な政治・政党再編が避けられない。
 自民党はこの間、九九年十月に小沢党首の自由党と公明党との「自自公連立」政権を発足させて以来、公明党を与党に引き入れ、「自公連立」で政権を辛うじて維持してきた。こんにち、その公明党が「政治再編」を視野に入れて動き始め、事実上、福田辞任の引き金を引いた。自公与党体制は限界で、重大な困難に直面している。

自公政権の存続許す、議会野党の堕落
 このように、政府、支配層は重大な困難に直面している。
 労働者階級は、自公政権と敵階級が直面したこの困難を見抜いて、闘いを準備しなくてはならない。一握りの多国籍化した独占体が支配する対米追随の売国政権は行き詰まっている。独立自主の政権だけが事態を打開できる。
 敵階級、政権がこれほどの危機にあるにもかかわらず、自公政権が続いているのは、労働運動が十分に組織されず、労資協調型の組合主義が連合指導部を牛耳り、断固として革命的に闘えないからである。労働運動を民主党の応援団に堕落させているからである。
 議会野党の堕落も自公政権を、許している。小沢代表も鳩山幹事長も元自民党である。まさに民主党は、対米追随で多国籍大企業のための政治を行う点で自民党と同じで、財界の願う保守二大政党制の一方の装置である。労働者階級とわが国が直面した課題を解決することはあり得ない。「大連立」で自民党を助けようとしてすでに暴露された、この党への幻想をあおることは犯罪である。
 ところが社民党中央は、この民主党を「よりまし」と美化し、選挙で「すみ分け」て自分たちが生き延びることだけに汲々としている。しかしそれは、社民党にとっても自分の党を失うことにつながる自殺行為であろう。民主党にいささかでも期待をつなぐようでは闘えず、展望はない。
 共産党は、「左」ポーズを一方で強調しながら、他方で、支配層に恭順の意を示すことに懸命である。先進的労働者は、この党の歴史的裏切りについて思い起こし、暴露を強め、労働者の中から影響を一掃しなくてはならない。

 わが党は、労働者が今回の事態からも学び、前進するよう呼びかける。支配層の危機は深い。その敵の弱さを見抜き、対米追随で多国籍大企業のための政権を暴露し、闘いを発展させよう。漁民、農民、トラック業者など、各層はすでに闘いに立ち上がっている。こうした情勢下で労働者階級が行動を起こし、国民運動の組織者となれれば、局面を変えることが唯一可能となる。
 わが党は、その先頭で闘う決意である。


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