2008年8月25日号 2面 社説 

医療制度改革に高まる怒り

対米従属政治との闘いこそ必要

 小泉政権以降の改革政治の結果として、国民生活が著しく悪化している。物価高はこれに追い打ちをかけ、漁民や酪農民、トラック事業者などの闘いが起こっている。
 医療問題でも同様で、七月二十四日には東京で、日本医師会、日本歯科医師会など四十団体による国民医療推進協議会が 決起大会を開き、社会保障費削減に異議を唱えた。
 各地方規模でも、医師会は医療制度改革に対する反対の意思を表明している。病院勤務医は最近、全国で新しい組織を結成して、医療環境の改善などを掲げて闘いの隊伍を整え始めている。
 小泉、安倍、福田と続く歴代政権は、医療を受ける側へは保険料値上げや窓口負担の増加、病院からの追い出し、過酷な取り立てを進めている。とくに「後期高齢者医療制度」は、高齢者に負担を押しつけ、保険料を年金から天引きするという無慈悲な制度である。高齢者を中心とする怒りの声にさらされるのは、あまりにも当然である。
 医療制度改革は、医療を提供する側にも、診療報酬改定で経営を圧迫させる一方、リハビリなど医療行為の制限を誘導して現場に患者と医療機関の矛盾を持ち込んだ。
 また、公的な医療機関には、公営企業法の全面適用やPFI、独立行政法人化などで民間企業経営の手法を押しつけた。疲弊(ひへい)した医療機関は閉鎖に追い込まれ、国民の命と健康は危機に直面している。
 こうした攻撃は、医療費を削減することで財政危機のツケを国民に転嫁し、切り抜けようという狙いから起きている。いわゆる「毎年度、社会保障費二千二百億円の削減」というものがそれである。わが国多国籍大企業は「小さな政府」を求め、この道を進めている。
 また、企業にとっては、健康保険組合への企業負担分を減らすという狙いもある。最近、運輸大手の西濃運輸が健康保険組合を解散したように、企業が健保組合を解散して政管健保への移行を進めれば、それは国庫支出、ひいては国庫負担の増加につながるものである。
 何より、医療制度改革の背景には米国の要求がある。米国は繰り返し、「年次改革要望書」などで保険、病院経営の株式会社化、そして高額な医療機器や医薬品などの規制緩和をわが国に迫り、売国政府はこれらに応じてきたからである。
 この問題でも、わが国の対米従属政治の罪は極めて重く、それが国民の命の危険の元凶なのである。
 医療は生活インフラの中でも文字通り生命線である。これを、商売の具に貶(おとし)めて暴利をむさぼり、そのツケを日本の国民各層に回す米帝国主義、その手先となって自らの利益のために売国政治を後押しし、自らもばく大な利益をむさぼる一部の多国籍大企業を追い込まねばならない。
 そのためには、医療を提供する側と受ける側、さらに国民諸階層が手を携え、共通の敵である売国政治と闘う必要がある。
 とりわけ、医療現場をはじめとする労働運動は、この正当な要求を高々と掲げて闘おう。

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