2008年6月25日号 2面 社説 

共産党の日朝「包括的解決論」

「即時無条件」正常化の妨害物

 米国政府は六月二十六日までに、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対する「テロ支援国指定」解除と敵国通商法の適用停止を議会に通告すると明らかにした。朝鮮が中国に核計画の申告書を提出することを受けてのものである。これに先立つ十三日には、朝鮮が拉致問題の「再調査」を表明、日本政府は制裁措置の一部緩和を表明している。
 近く行われる六者協議の結果を見なければならないにしても、核兵器を握った朝鮮は、引き続き主導権を維持している。一方で、米帝国主義は中東で困難を抱え、経済でも深刻さを増して受け身に回っている。また、拉致問題にこだわり外交上の孤立を深める日本政府も、それを打開しようとあがいている。
 国会議員が超党派で「日朝国交正常化推進議員連盟」(以下「議連」)を発足させたのも、こうした情勢の反映である。
 情勢は、日朝国交正常化の実現に有利である。「即時無条件」での日朝国交正常化を求める闘いを強めることは、ますます重要である。
 日朝国交正常化をめざす闘いを進めるためには、正常化の条件として「核・ミサイル・拉致問題」といった問題を持ち込む、いわゆる「包括的解決論」を打ち破ることが不可欠である。
 そもそも、核武装問題は朝鮮の主権に属することで、独立国がみずからの国民と国土を守る上で認められた、当然の権利の一つである。しかも、核兵器を保有しているかいないかは、その国と外交関係を結ぶ際の条件にはなり得ない。これは世界の常識である。懸案といわれる「拉致問題」にしても、国交正常化によって日朝間に信頼関係を醸成してこそ解決できる。
 以上、「包括的解決論」の誤りは明白で、日朝の国交正常化は「即時無条件」で行われなければならない。「包括的解決」は、実際上は、小泉・安倍・福田という政権がこれまでとってきた、「諸懸案(とりわけ拉致問題)の解決なくして国交正常化なし」という「入り口論」と同じ立場に立つことを意味しており、日朝の国交正常化をはるかかなたに押しやるものである。
 そして、「議連」の内外で、この「包括的解決論」をもっとも熱心に宣伝している勢力の一つが共産党である。共産党の「包括的解決論」は、かれら自身が「一貫して主張している」というほどに筋金入りのものである。共産党は平壌宣言に基づく「国交正常化」を掲げ、朝鮮への制裁解除を主張、「過去の清算」も明言するなど「左」を装っているだけに、その果たしている役割はより犯罪的であるといわねばならない。
 さらに、朝鮮半島をめぐる諸問題の根源を朝鮮の「核・拉致」に求める点で、福田政権と共産党の立場はまったく同じである。共産党の笠井衆議院議員(「議連」副会長)は、日本政府のとるべき態度について、町村官房長官の「朝鮮側がどういう対応をとるかにかかっている」という発言に公然と賛同してみせた。
 つまり、米日の歴史的な敵視政策、そして「核」を口実にした制裁などについての批判はまったくなく、「ボールは朝鮮にある」という立場である。これでは、朝鮮の「譲歩」なしには、日本政府は何もしなくてよいということになる。このような態度からは、必然的に「即時無条件の国交正常化」という立場など出てこず、米日支配層に追随することになる。
 ところで、共産党が「包括的解決論」を声高に叫ぶのは、米国とわが国支配層に恭順の意を示し、政権入りへのお墨付きを得たいがためである。
 共産党は一九九七年の第二十一回党大会で、保守政党との連立による政権入りの方針を打ち出し、さらに二〇〇四年の第二十三回党大会における綱領改定で、事実上、「世界に帝国主義は存在しない」という見解を打ち出した。
 共産党のいう「包括的解決論」は、このような政権入りという意図と結びついている。共産党の吹聴する「包括的解決論」を、徹底的に打ち破らなければならない。
 労働者・労働組合を先頭として、日朝の即時無条件での国交正常化を実現するための国民的運動を巻き起こすことが求められている。

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