2008年6月15日号 2面 社説 

福田政権が
アフリカ開発会議を開催

米戦略の補完では諸国の
発展に貢献できない

 国会では、野党が参議院の過半数をにぎる「ねじれ」が続き、福田政権の支持率は、「危険水域」と言われる二〇%を切った。先の衆議院山口二区補欠選挙の大敗や沖縄県議選における与党の過半数割れにもあらわれたように、自公連立政権に対する国民各層の不満、批判は高まる一方である。
 内政ではどうにもならない状況の中、福田首相は、五月末にはアフリカ各国首脳とのマラソン会談、さらに今月に入って欧州歴訪や世界食料サミットへの参加、さらに七月の北海道・洞爺湖サミットに向け、外交面で点数を稼いで政権浮揚を図ろうと、まさに東奔西走である。
 だが、福田首相が頼みとする米国のは急速に指導力を後退させ、欧州連合(EU)の拡大や中国、インド、ロシアなどが台頭している。対米従属という、これまでの日本の生き方の限界も明らかで、激動する時代を見据えた自主的な日本の生き方が求められている。

首相が力を入れたアフリカ開発会議
 このような中、五月二十八日〜三十日、横浜で第四回アフリカ開発会議(TICAD4)が開かれ、アフリカ五十三カ国のうち五十一カ国が参加した。うち、大統領など首脳級の参加は前回(二〇〇三年)の二十三カ国より増えて過去最多の四十カ国、さらに主要国(G8)や中国、インドなど八十六カ国とEU、七十一の国際機関が参加する大規模な国際会議となった。
 このアフリカ開発会議は、日本が主催する国際会議としては最大規模のもので、一九九三年以来、五年ごとに開催されてきた。
 会議で採択された「横浜宣言」では、近年のアフリカの経済成長を「前向きな兆し」として評価した。しかし、失業問題やエイズなど感染症、食糧価格高騰など、依然として深刻な問題に直面しているとして、経済成長の加速化、環境・気候変動問題への対処などが盛り込まれた。
 アフリカ支援問題は、サミットでの主要議題の一つであり、日本政府は議長国として求心力を発揮したい課題である。
 日本は、交通インフラ整備などを中心とした円借款、資源開発、緊急食糧支援、官民合同の経済ミッションの派遣、政府開発援助(ODA)と民間投資の倍増などを表明した。また、福田首相は七時間に及ぶマラソン会談をこなし、スーダンへの自衛隊派兵検討も表明した。

アフリカをめぐる競争が激化
 こんにち、アフリカ諸国をめぐって、大国間の競争が激化している。
 歴史的にアフリカ諸国と経済・政治関係が深く、かつての植民地支配の宗主国であったEU諸国の対アフリカ貿易は、〇六年の約二千二〇〇億ユーロにのぼっている。昨年十二月には、第二回EU・アフリカ首脳会議が七年ぶりに開かれている。
 注目すべきは、最近の中国の動きである。対アフリカ貿易は〇〇年の一〇六億ドルから〇七年には七三五億ドルと、年率三〇%以上の急拡大を見せている。これは日本の三倍以上である。胡錦濤国家主席は就任以来三度もアフリカを歴訪、資源・エネルギーの安定確保、企業進出などを図っている。〇六年十一月には、四十八カ国を集めた「中国・アフリカフォーラム」を開催した。
 EU同様、歴史的にアフリカとの通商関係が強いインドも、経済成長を背景に、資源確保などを狙ってアフリカ進出を本格化させている。今年四月には「インド・アフリカ会議」を発足させた。韓国、ロシアなども動きを活発化させている。
 世界の主要国は、多極化する世界の中で、国益を掲げ、アフリカにある豊富な石油、鉱物資源、希少金属(レアメタル)などの権益確保の競争を激化させているのである。

米戦略補完する福田のアフリカ外交
 一方、衰退を早める米国は、冷戦時代のソ連との競争後、対アフリカへの関与を一時低下させていたが、資源確保や中国へのけん制を狙いとして、再び策動を強めている。
 とくに、ソマリアやエリトリアなどの「テロ対策」を口実に、資源確保と併せて安全保障面での動きを強めている。〇七年には、九四年以来、再びソマリアを空爆した。今年二月にはブッシュ大統領がタンザニア、ルワンダなど五カ国を歴訪、経済支援を約束している。
 また、エジプトを除くアフリカ全域を管轄する「アフリカ統合軍」を創設、アフリカに対する関与をいちだんと強めようとしている。しかし、この統合軍の受け入れに対しては、ナイジェリアや南アフリカなどから強い反発を受け、司令部の設置を断念することに追い込まれた。米国の力と地位は、アフリカにおいても弱まっているのである。
 福田政権の対アフリカ外交は、このような米国の対アフリカ戦略を補完し、中国に対抗するためのものである。
 昨年十一月のブッシュ米大統領と福田首相の首脳会談では、日米同盟が「日米がグローバルな諸課題に対処していく上で不可欠」とあらためて確認した上で、アフリカ支援について「アフリカ開発会議の成果をサミットにつなげるべく、日米でいっそう緊密に協力していく」と確認し合っている。
 このことから分かるように、日本の対アフリカ政策・支援は日米同盟の枠内のもので、米国に手足を縛られている。日本は、中東で足をとられ、世界的に指導力が衰えている米国の対アフリカ政策を補完する役割を負わされているのである。
 同時に、福田政権の対アフリカ外交は、対米追随の下でわが国の国際的発言力の強化を望む、わが国多国籍大企業の意を受けたものである。福田首相は、「横浜宣言」に「国連安保理改革」を明記させ、日本の安全保障理事会常任理事国入りのための「大票田」(国連加盟国の四分の一を占める)として、アフリカ諸国を引きつけようとした。
 支援策のほとんどが、日本の多国籍大企業の権益確保の域を出るものではないことは言うまでもない。外務省が四月に発表した「成長加速化のための官民パートナーシップ」では、ODAを活用した日本企業のためのインフラ整備を公然と掲げているほどだ。

アフリカ諸国と共生する外交を
 しかし、このような対米追随で多国籍企業の権益のための外交では、アフリカ諸国との真の友好関係など実現できないし、日本国民の真の利益にもつながらない。
 実際、会議に参加したアフリカ諸国は、米主導のグローバリズムや大国による搾取に対する怒りを公然とぶつけた。セーシェルの大統領は「毎年三十八万トンのマグロが捕れるが、地元では五千万ユーロ。加工されたものが欧州では三十八億ユーロで売られている。こんな不正義があるだろうか」と、参加した大国の首脳に迫った。
 一方、参加国は、福田首相の「ODA倍増」表明などを「歓迎」したものの、日本の安保常任理事国入りへの「支持」について踏み込んだ表明を行った国はほとんどなかった。
 福田政権の思惑は、必ずしも思い通りにはいかなかったのである。
 アフリカ諸国は資源国や絶対的貧困国など、置かれた状況に大きな違いがある。だが、いつまでも帝国主義に収奪され続ける国であるわけではない。アフリカ諸国は、〇二年にそれまでのアフリカ統一機構(OAU)を発展させ、アフリカ連合(AU)を発足させた。AUは、域内の結束と国際的な発言力を強めようと、中央銀行や議会創設、通貨統合、常設の平和維持軍創設などをめざした動きをしたたかに強めている。
 世界はもはや、超大国が旗を振れば、それで収まると状況ではない。だから、世界各国は、国の大小を問わず、自身の足で立ち、どう生きるのかを真剣に模索している。
 わが国が対米従属外交をやめ、中小国・人民と結びいた独立・自主の道に転換することは、ますます切実な課題である。


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