2008年5月25日号 2面 社説 

世界各地で食糧暴動

自給率向上へ農政の抜本転換を

 世界的に食糧価格が高騰している。一年前と比べて、小麦の国際市場価格は六割以上上昇、大豆は約七割、コメは二倍以上にもなっている。
 この食糧高騰の元凶については、さまざまな論がある。項を改めて論じなければならないが、争う余地のない事実は、全世界人民の生活が、これまで以上におびやかされていることである。
 カリブ海のハイチでは暴動が一週間以上続き、首相が解任される政変が起きた。アフリカのエジプト、カメルーン、セネガル、エチオピアなどでも、食糧を買えない人民によるデモが相次いでいる。アジアでは、主食のコメを海外に依存しているフィリピンで受給ひっ迫が深刻化、国民の怒りが高まっている。アロヨ政権は、食糧増産のための「かんがい施設整備」などを打ち出しているが、飢えた国民にとっては、悠長(ゆうちょう)な話である。
 こうした事態は、売国農政を続けるわが国に、あらためて食料安全保障の重要性を投げかけている。
 わが国は、食料自給率四割、穀物自給率は三割と、先進国中で最も低い。農村の後継者不足は深刻で、地方には耕作放棄地があふれている。「三位一体改革」など地方切り捨ての改革政治も、農村の疲弊(ひへい)に拍車をかけている。
 この上、自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)による農産物輸入自由化策を続ければ、日本はいっそう、国の独立と安全保障の最大の基礎、民族の生存条件である食料を外国に依存することになる。世界銀行によれば、食糧価格は今後何年にもわたって高止まりすると予測され、国民が飢えにさらされる事態に直面しかねないのである。
 安全、良質、安価な食料の安定供給は国民への政府の責任である。対米従属で、多国籍大企業が海外で稼ぐ上での「見返り」として農産物の市場開放を繰り返す農政を根本的に改め、食料安全保障の観点から、農業を保護する政策に転換すべきである。また、農産物の価格安定策は必須であり、一定の買い支えと所得補償が行われるべきだ。財界が要求し、すでに進められている、農業への市場原理の全面的導入は、絶対に許してはならない。
 こうした中、昨夏の参議院選挙で、農民の支持を一定集めた民主党の政策はどうか。
 民主党は戸別所得補償政策を掲げ、農民の収入を安定化させるかのように主張している。しかし、この政策は「農産物の自由化」が前提である。民主党は、与党と同じく、日本経団連など財界が願うEPAを推進する立場で、まさに財界の意思を実現するための党なのである。また、日本農政を大きく規定してきた対米従属の問題についても、「日米基軸」を掲げることで、見直そうとはしていない。
 このような政策では、戸別所得補償などと言ったところで農村の苦境は打開できず、日本農業の再生も不可能である。民主党の農業政策も求められる農政にはほど遠く、幻想を持つことはできない。
 労働者・労働組合は、独立の基礎である食料問題に関心を寄せなければならない。いくつかの労働組合が、「食料自給率の向上」を掲げているのは積極的なことだ。これを発展させ、農民の要求を支持し、国民運動の先頭で闘うことが求められている。

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