2008年4月5日号 2面 社説 

チベット問題で策動する民主党

「人権」口実の内政干渉許すな

 三月中旬から、中国西蔵自治区でデモや暴動が発生し、チベット民族が居住する四川省など、周辺地域にも波及している。
 この問題が中国の内政問題であることは明らかで、どのような方法で解決するかも含め、他国は干渉すべきでない。だが、夏に予定されている北京オリンピックと結びつける形で、さまざまな対中干渉が強まっている。ドイツが開会式への首脳参加をボイコットしたのをはじめ、欧州連合(EU)加盟四カ国が同様の措置を表明、米国も下院議長がインド亡命中のチベット仏教指導者ダライ・ラマ十四世と会談、中国を挑発した。
 わが国ではどうか。福田政権はいまのところ、オリンピックと結びつけることはしていないものの、十四世との「対話」や「外国メディア受け入れ」を求めるという形で、中国をけん制している。
 「チベットの人権」は口実にすぎない。諸外国、またわが国においても、チベット問題での干渉を策動している勢力の真の狙いは、中国の分裂、そして体制転覆である。
 米欧におけるチベット支援グループが、旧ソ連・東欧諸国における社会主義体制転覆に深く関与し、現在もキューバ、朝鮮、イラン、ベネズエラなど、反米諸国への干渉で暗躍している「ソロス財団」などの資金援助を受けていること、メディアに祭り上げられている十四世にしても、かつて、米中央情報局(CIA)の支援を受けて対中武装闘争を展開していたことは銘記すべきである。
 さて、わが国において対中干渉の姿勢を鮮明にしているのが、民主党である。
 とくに、民主党の枝野・元政調会長が代表を務め、同じく民主党の牧野前衆議院議員が事務局長である超党派の「チベット問題を考える議員連盟」が三月十九日、「声明」を発表して中国を非難、策動を主導している。しかも、同議連はチベット問題と結びつけて、五月に予定されている胡錦濤・中国主席の来日を「歓迎できぬ」などと公言した。
 また牧野は、中国大使館前での行動に参加し、中国の体制問題に言及するなど、その意図をあけすけに語っている。牧野は、新疆ウイグル自治区の「人権」問題についての「勉強会」開催を意図したこともある。
 まさに、「人権」を掲げた、許し難い対中内政干渉の策動である。これはわが国の進路を誤らせ、アジアと敵対させる道である。
 このような姿勢は、枝野ら一部議員だけのものではない。
 同議連の一員でもある鳩山幹事長は、昨年十一月、来日した十四世と会談している。ここで鳩山幹事長は、「(十四世の)右手が満たされるまで、左手を力強くサポートさせていただく」という異例の表現まで使った。鳩山幹事長は、党代表当時の二〇〇〇年にも十四世の「歓迎レセプション」であいさつしているほどだ。
 枝野は鳩山幹事長の行動について「参院第一党のトップリーダーの発言は非常に重い」と言ったが、まさに鳩山個人というだけでなく、民主党の問題なのである。鳩山幹事長の行動に対し、中国が強く反発したのは当然である。
 民主党は、中国を事実上の仮想敵国とする「日米共通戦略目標」合意(〇五年二月)に賛成するなど、米戦略に追随して中国に身構えることを基本政策としている。この点で、与党とまったく同じなのである。チベット問題を口実とする鳩山幹事長や枝野などの動きは、この帰結なのだ。
 また、このような議連に、社民党の一部議員が加わっていることは、アジアの共生を願う下部党員、支持者を裏切るものである。
 民主党に頼っては、真の日中友好はあり得ない。労働者・労働組合は、政府・与野党による中国への干渉策動に反対し、アジアの共生に向け、わが国の進路を切り開こう。

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