2008年3月25日号 2面 社説 

輸入農産物への懸念深まる

売国農政の転換こそ急務

 中国ギョーザ問題を契機に、国民の「食の安全・安心」への意識が高まりつつある。中国産野菜の輸入が激減する一方、農協などは「国産農産物を訴えるチャンス」と呼びかけている。苦境にある農業者の実情を考えれば、この気分は理解できるところである。
 しかし、食料の増産や自給率の向上は簡単ではない。農畜産物の自由化・市場開放などといった歴代売国農政の結果、後継者不足と高齢化、耕作放棄地の拡大など、日本農業は深刻な危機にある。昨年から導入された新政策「品目横断的経営安定対策」は米価をいっそう下落させており、農民はコメをつくっても赤字しか残らない。政府が政策的に進めた大規模「担い手」農家さえも、経営が圧迫されている。さらに、飼料穀物高騰が酪農・畜産農家の離農をますます促進している。日本農業はまさに存亡の危機にある。
 本来、国民に安全で安心な食料を確保し、食料自給率を向上させることは独立国として最も重要な課題である。だから、本当の意味で「食の安全・安心」を確保しようというのであれば、これまでの農政を根本的に転換し、国民の食料を生産する農業者が、安心して農業に取り組めるような農業政策を確立すべきである。そのためにこそ、財政を投入すべきなのである。
 それなしには、国産農産物への需要増加も一過性のものとなり、日本農業を育てることにはなり得ない。
 しかし、福田政権はこの期になっても、農業政策の転換どころか、逆に農業大国オーストラリアとの経済連携協定(EPA)交渉を推進している。
 もし、オーストラリア政府の要求する牛肉やコメ、小麦、砂糖、乳製品などの重要品目を含むすべての品目の関税撤廃の関税が撤廃されれば、北海道、九州・沖縄の農業は壊滅的な打撃を受けてしまう。関連産業も含めた影響は三兆円、現在三九%(カロリーベース)の食糧自給率は三〇%まで低下するという試算もある。地域経済への打撃も深刻なものとなるだろう。
 改革政治の「司令塔」である経済財政諮問会議で、財界などの民間委員は、「日豪EPA推進」だけでなく、韓国や米国、欧州連合(EU)とのEPA、そのための工程表づくりを要求し、加速化を求めている。だが、米国やEUなどとの関税撤廃が実現されれば、自給率は一二%まで低下する。まさに、日本農業の壊滅である。
 トヨタなどわが国の多国籍大企業が海外市場で首尾良くもうけるために、農業を犠牲に差し出すことは絶対に許されない。EPA推進の策動を強める、福田政権を打ち破らなければならない。
 他方、昨年の参議院選挙で「戸別所得補償」で農民の支持を得た、民主党の農業政策に日本農業の展望があるだろうか。
 民主党の農業政策は、基本的に世界貿易機関(WTO)やEPA推進、つまり関税などの国境措置を全面的に撤廃する「市場開放」が党是となっている。これは、小沢代表が繰り返し述べ、その著作でも書いていることでもある。民主党は、参院選公約との整合性をつけるためか、日豪EPAに関しては慎重であるかのようなポーズをとっている。しかし、それは「政府には戦略性がない」というもので、EPA締結自身を否定してはいないのである。結局、民主党の農業政策も福田政権と大差なく、これでは、日本農業も国民の食料自給も守れない。
 財界の要求に沿った自民党農政、さらに民主党の農業政策へ幻想を捨てなければならない。
 現状の農業政策では、穀物の増産を呼びかけたとしても自給率は向上しない。採算が取れないからである。規模の大小にかかわらず、安全で安心、自給率向上のために努力する農家が持続的にやっていける所得補償を実現すべきである。
 安全で安心な食料、食料の自給は農業者だけでなく、国民全体の課題であり、独立の基礎である。労働者・労働組合は農業問題に関心を寄せ、農民と連帯し国民運動を展開しよう。

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