2008年3月15日号 2面 社説 

与野党に朝鮮との
「対話」求める動き

即時無条件の
国交正常化に踏み出そう

 民主党と国民新党の一部議員が二月二十二日、「朝鮮半島問題研究会」を発足させた。設立趣意書は「日朝間の直接的な対話と交流が途絶えた現在の状態をこのまま放置しておくことは好ましいことではありません」と、「日朝平壌宣言に基づいて国交正常化の道を切り開くことは日本の国益に資する」と述べている。
 また、自民党でも昨年末、外交調査会内に「朝鮮問題小委員会」が発足している。同委員会は、福田政権と連携しながら「日朝国交正常化に尽力する」としている。
 両組織の代表者は会談を持ち、公明党、社民党にも働きかけること、年内に超党派の議員訪朝団を派遣することなどで一致したという。
 今回のこの与野党議員の動きを、マスコミは「政治再編がらみ」と指摘している。著しく不安定化した議会政治の建て直しを狙い、政党再編・再結集を狙う策動が各方面で強まっていることは事実であり、警戒が必要である。
 だが、個々の政治家の狙いはともかく、現在の福田自公政権の対朝鮮政策のような「圧力一辺倒」とは異なる動きで、これは当然のことである。
 わが党は、政府に即時無条件の日朝国交正常化に踏み切らせるための一大国民運動の気運を促すものとして、これらの動きを率直に歓迎したい。社民党や公明党の心ある人びとにも期待したい。
 朝鮮への植民地支配とその後の敵視の歴史を真摯(しんし)に反省・謝罪し、必要な賠償も行って、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との関係を正常化することは、わが国がアジアで生きていくために不可欠の条件だからである。

米国の限界と時代錯誤のわが国政府
 情勢は急速に変化している。
 米帝国主義は、人民の反米抵抗でイラク情勢を「安定」させられず、軍隊の撤退すらままならずに、膨大な兵員の犠牲と財政負担にあえいでいる。こうした中、米国の圧力に屈せず独自の「核開発」などで反米を貫くイラン大統領は事前に公表したうえでイラクを訪問、米国が押し立てたマリキ傀儡(かいらい)政権と会談し、両者は「協力関係」をうたい上げたほどである。米ブッシュ大統領が中東訪問で訴えて回ったイランへの圧力強化が、周辺国に軒並み拒否されたことと比べると、その対比はあざやかだ。「超大国」といわれた米帝国主義の軍事力すら、その限界は明白となっている。加えて、米国の「一極支配」を支えたドルは瀬戸際である。
 追い込まれた米国は、体制転覆を狙う帝国主義的な対朝鮮政策の基本を変えたわけではないにしても、「テロ支援国家」解除は早晩避けられまい。朝鮮政府は、ここまでのところ、内政干渉のための組織にすぎない「六者協議」の中でも主導性を確保している。
 ところが、福田自公連立政権は、安倍前政権を引き継いで、さまざまな対朝鮮制裁措置を継続している。さらに、先月末にはオルメルト・イスラエル首相を東京に呼んで会談、朝鮮、イラン、シリアを念頭に、核開発放棄のために「一致して圧力をかける」ことで合意した。韓国新大統領の就任を期に、朝鮮敵視政策の再構築という、はかない野望も隠していない。
 福田自公政権は、飼い主である多国籍大企業の利益のために、急速に崩れている米国の世界支配を支え、米軍再編を強硬に推進するとともに、わが国独自の国際的発言権強化のために、対朝鮮を含めて「積極アジア外交」という「大国外交」を模索している。
 対米追随のこの道はまったく時代錯誤で、わが国を東アジアと敵対させ、国の進路を誤らせるものである。
 こうした状況の下で、さまざまな外交政策の「手直し」の動きが、支配層内部を含む与野党内にあらわれるのは、遅いとはいえ当然のことである。日朝関係を大きく前進させるチャンスなのである。

わが国から条件を付けてはならない
 さまざまな動きの中には進歩だけでなく、反動的な傾向も含まれている。それは、完全に朝鮮の内政問題である核武装問題などで難癖をつけて干渉をもくろみ、国交正常化を妨害、引き延ばそうとする傾向である。
 問題は、即時無条件の日朝国交正常化をめざすのか、それとも「核放棄要求」など、さまざまな条件を持ち込んで日朝関係の進展を後ろに追いやるのか、ということである。
 即時無条件の日朝国交正常化と、そのための国民運動の発展こそが重要であり、朝鮮の内政に干渉して圧力をかけ、米帝国主義の前に武装解除を迫ることがあってはならない。
 そもそも、核兵器の有無は、日本政府はもちろん国際的にも、国家関係を結ぶ際の前提条件とはなり得ない。わが国は米国など核保有国と国交をもっているし、一九七二年の中国との国交回復の際には、核兵器の存在などまったく問題にならなかった。また、核武装を理由に朝鮮と断交した国など、世界中に一つもないのである。
 自国を守る権利はどの国にもあり、他国が干渉すべきことではない。しかも、朝鮮は長年にわたって、米帝国主義の核どう喝を中心とする米日韓の同盟に包囲され、さまざまな圧迫を受けてきた。朝鮮が核を含む手段で国土と民族を防衛することは、当然の権利である。
 しかし、自民党だけでなく、民主党の「朝鮮半島問題研究会」の趣意書にも、「拉致問題と核・ミサイル問題の解決」を関係正常化の前提条件にして、朝鮮に内政干渉し圧力をかけようとしているともとれる傾向が含まれている。ましてや、民主党の最大の支持団体である連合が、「拉致解決を求めるハガキ送付行動」のように、労働組合の側から敵視に加担していることは許されない。

国交正常化を妨害する共産党
 「核問題の解決」を国交正常化の条件として打ち出す勢力の筆頭が、共産党である。
 共産党は与野党内で進む朝鮮との対話の動きに加わりたいようだが、その主張は、国交正常化をはるかかなたに押しやる反動的なものである。
 共産党は「核問題、拉致問題、過去の清算問題などの包括的解決」(志位委員長)などと言い、これらの解決を朝鮮に「強くうながし」「日朝(国交)交渉再開へ強力に働きかけるべき」と、核や拉致問題の解決を国交正常化の前提条件とし、とくに朝鮮の核放棄を迫っている。日本政府は拉致問題重視で「核問題では熱意がない」などと言い、もっと朝鮮の核放棄を要求しろと、福田政権に繰り返しハッパをかけてもいる。
 日朝関係の打開を願う人びとは、この共産党の「核放棄要求」を徹底して打ち破らなければならない。

直ちに制裁をやめ、正常化交渉を
 政府は、即時無条件に朝鮮と国交を正常化すべきである。いわゆる拉致問題なども、二〇〇二年の平壌宣言に戻り、かつ関係正常化の中でこそ解決できる。
 正常化の妨げとなる敵視と排外主義策動は、断じて許してはならない。とりわけ、日本政府による朝鮮制裁はただちに撤回されなければならない。万景峰号の入港禁止など九項目の制裁措置は実施からすでに一年半を経、四月十三日に期限切れを迎える。この延長を断じて許してはならない。
 日朝国交正常化のための国民運動を巻き起こすことが、切実に求められている。労働者・労働組合は、即時無条件正常化の旗を高々と掲げ、国民運動の先頭で闘おう。


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