2008年2月15日号 2面 社説 

「反核」「反テロ」で
帝国主義への屈服叫ぶ共産党
 イラク戦争を機に、目に見えて国際的影響力を低下させた米帝国主義は、昨一年を通じて金融面をはじめとする経済面での困難も増し、ますます衰退している。
 米帝国主義が衰退し、統合を進める欧州の帝国主義諸国との力関係が相対化しているというだけではない。中国・ロシアなど、帝国主義以外の強国も台頭、世界の特殊な多極化がいっそう進んだ。
 中でも、帝国主義に抗する中小国・人民の闘いはすばらしく前進し、国際情勢を揺さぶってる。米国や追随国を追いつめるイラクやアフガニスタン、パレスチナ人民の闘い、あるいは核を含む手段で抵抗する朝鮮民主主義人民共和国やイラン、各種の資源ナショナリズムなどである。
 こんにち、この闘いと結びついて帝国主義の足元を揺るがす、先進国労働者の闘いの前進が問われているのである。
 ところが、わが国労働者に対して、帝国主義への武装解除と屈服を迫る連中がいる。日本共産党である。共産党は、わが国労働者階級が全世界の中小国・人民の闘いと結びついて闘うことを否定し、その政治的自覚の発展を妨げているのである。
 わが国「左派」や進歩的人びとの中にある、共産党への幻想をすみやかに一掃することは、以前にも増して重要な課題となっている。

「反核」で帝国主義者を支持
 共産党は一月十七日以降、「赤旗」紙上で、キッシンジャー元国務長官、ペリー元国防長官ら四人の元高官が米紙上で行った「核兵器のない世界に向けて」とする呼びかけを、数回にわたって取り上げている。共産党は、全世界で侵略と核によるどう喝を推し進めてきた米高官が「改心」し、核兵器廃絶のための新しい展望が開かれたかのように大騒ぎしている。
 だが、このような見解はデタラメなもので、真の核兵器廃絶につながるものではない。
 なぜなら、キッシンジャーらはこの「呼びかけ」で、最大の核保有国である米国の核廃絶などひと言も主張していない。「朝鮮とイランの核開発に加え、テロリストが核兵器を手にする危険がある」から、「核兵器のない世界という目標を共同の事業にすること」が必要だと言っているにすぎないのである。しかも、この連中が具体的に提案しているのは、「ミサイル防衛(MD)システムの開発」や「核不拡散条約(NPT)の強化」「世界的核物質の管理体制」である。
 つまり、キッシンジャーらは、中小国・人民が核を握って自らに立ち向かうことを防ぎたいのであり、NPTを使った大国による核独占の再構築、支配の維持こそが狙いなのである。
 核を含む手段で中小国や人民を圧迫し、侵略しているのは帝国主義、とりわけ米帝国主義である。だから、米帝国主義の包囲の下に置かれてきた朝鮮が、包囲を脱するために核武装に踏み切ったことは完全に正しかった。それ以前にインドやパキスタンが踏みきり、イランが続こうとしているのも、基本的には同じ道である。被爆国国民としての心情はともかく、大国支配を打ち破ろうとすれば、核を持つ以外に選択肢はないのが世界の現実である。NPTは、核による大国支配に苦しむ国々・人民からすれば、打ち破る対象でしかない。
 中小国が核によって独立を勝ち取ることは、大国の核独占を打ち破るという意味で、逆説的ではあるが、核廃絶につながる可能性を持つものである。
 核兵器廃絶を真剣に願うのであれば、核の大部分を保有する帝国主義との闘いと結びつかなければならないのである。ところが共産党の行っていることは、米帝国主義に核廃棄を迫るのではなく、その核独占体制を支持し、生きぬくために必死で自らを守ろうとしている中小国に奴隷の地位に甘んじることを説教することである。しかも、キッシンジャーらを評価する流れからすれば、共産党はわが国が米主導のMD構想に参加することにさえ、賛成しなければならないことになる。
 まったく、とんでもない「核廃絶論」だと言わねばなるまい。

「反テロ」掲げ、抵抗闘争に悪ば
 「反テロ」についての態度ではどうか。
 共産党は、「前衛」三月号に「国際テロリズムの根絶をめざす国際社会」(小島国際局員・著)なる論文を掲載、国連の名による「反テロ」行動の強化を主張している。
 共産党は二〇〇一年の九・一一同時テロ直後、「テロ根絶」が「人類が生きていく根本条件の一つ」であるとする書簡を各国首脳に送付し、国連の名による経済的・政治的制裁を主張、続く第三回中央委員会総会でもその方針を確認するなど、アフガニスタンへの「報復」を叫ぶ米ブッシュ政権の応援団に加わった。
 その後のアフガン戦争に対して、共産党は「早すぎた」(不破議長・当時)としか言わず、事実上、これを支持した。
 この論文では、その後の六年余、帝国主義が国連などを使いながら進めてきた「反テロ」包囲網ーー資金凍結の仕組みづくりや「テロ防止条約」などーーを長々と紹介し、「大きく前進」などと賛美している。要するに、共産党は、武力を用いない「反テロ」、とりわけ国連の名によるものには賛成で、「日本のとるべき道」であるというのだ。
 これは、国連中心の「反テロ」貢献という意味で、アフガン本土への自衛隊派兵を主張する、小沢・民主党代表とまったく同じ立場である。
 帝国主義国に抵抗するイラク・中東をはじめとする人民の闘争は正義であり、手段は問題ではない。テロは貧困、そしてそれをつくり出している、帝国主義による収奪からの脱却を求める人民の闘いの一形態なのである。だから、さまざまな「反テロ」策動は、人民からすれば打倒すべきものなのだ。
 「テロ根絶に向けた国際社会の合意」などと主張する共産党の態度は、帝国主義に追随し、人民の闘いに敵対するものでしかない。

帝国主義の存在否定する共産党
 世界の労働者階級、そしてわが国がとるべき道は、帝国主義と闘うことである。
 共産党は〇四年一月の第二十三回党大会で綱領を改定、事実上、「世界に帝国主義はなくなった」という立場を取るに至った。さらに、ある国が帝国主義かどうかの判別は「侵略性が体系的にあらわれているかどうか」であるとする。
 国家の経済・政治・軍事はそれぞれに独自性もあるが、互いに関連したものである。帝国主義国の「侵略性」は、その経済的基礎(独占資本主義)と切り離すことはできない。だが、共産党はこれらを互いに切り離し、侵略的政策を単なる「好んで取る政策」レベルのものへと低めた。まさに、帝国主義への幻想を党綱領にまで「高めた」ものといえる。
 共産党の言い分によれば、帝国主義と闘う必要がないのであるから、必要なのは「反帝国主義」と切り離された、抽象的な「核廃絶」や「反テロ」で十分ということになる。
 このような帝国主義への幻想・美化は、一九九七年の第二十一回党大会で打ち出された、「保守政党との連立による政権参加」路線の必然的帰結でもある。
 共産党は、この路線を実現するために、米国やわが国支配層に対して、恭順の意を重ね重ね示してきた。「日の丸・君が代法制化」「安保棚上げ」、朝鮮への敵視と排外主義策動などだが、またも裏切りを重ねたことになる。
 このような共産党には、米帝国主義の世界支配と闘い、それに追随して政治軍事大国化を進めるわが国支配層、福田政権と闘うことはできない。
 労働者・労働組合は、共産党を信じてはならない。中小国・人民と連携し、帝国主義、その頭目である米帝国主義と闘うことこそ求められている。

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