2007年12月15日号 2面 社説
民主党は、小沢代表以下、四十六人の国会議員以下、総勢約五百人による「大長城計画訪中団」で中国を訪問した。十二月七日には胡錦濤主席と会談、今年一月に設置された両党の「交流協議機構」の充実など、関係強化で合意した。
小沢民主党による訪中団の狙いは、来年年頭に予定されている福田首相の訪中に先んじることで中国との関係を印象づけ、総選挙を前に「政権担当能力」をアピールすることにあった。小沢は代表に就任してすぐの、昨年七月にも中国を訪問、小泉政権下で悪化していた対中関係を打開するかのように、「交流協議機構」設置で合意するなどした経過がある。訪中団派遣は、この流れの上にある。
訪中に先立ち、小沢代表は「中国、米国の両国は日本にとっていろんな意味で非常に大事な国」と述べた。また、靖国神社に祀られているA級戦犯の分祀(ぶんし)を主張、侵略戦争についても「迷惑をかけた、間違いだった」と述べた。また、事前に中国の党役員や駐日大使と会談を繰り返すなど、念入りに準備を行った。
確かに、小沢訪中団は「友好」を演出して終わった。だが、これで福田政権の外交政策との「違い」をアピールすることに成功したとはいえない。
むしろ、「民主党(政権)であれば、両国がさらに信頼関係を築いていける」(菅代表代行)などという発言とは相反する策動が、訪中を前後して、民主党内で強まったことが目立っつている。
八日の「交流協議機構」の席で民主党は、台湾問題について「中国による武力行使に反対」と明言した。
台湾が中国の一部であることは、国際機関も、またわが国政府も日中共同声明などで表明してきたことである。よって、武力によるものか否かについても含め、台湾問題の解決は中国の内政問題である。「武力行使に反対」という民主党の態度表明は、明らかな内政干渉にほかならない。
また十一月末には、鳩山幹事長がダライ・ラマ十四世と会談、十四世が中国に求めている「高度な自治」を支持する考えを表明した。「チベット問題を考える議員連盟」代表でもある枝野衆議院議員(民主党憲法調査会長)はこれを賞賛した。また開催直前に中止となったものの、同じ時期、牧野前衆議院議員を中心に、現職議員も参加して、中国の新疆ウイグル自治区の「人権」問題についての「勉強会」が開かれる予定があった。
これらも、「人権」を口実に、中国の内政問題に干渉し、挑発する策動である。中国政府が、こうした民主党の態度に抗議の意思を示したのは当然である。
加えて、訪中しなかった松原衆議院議員は、小沢と胡錦濤主席の会談当日、国会で、南京大虐殺を否定する歴史わい曲発言まで行った。
民主党は、中国を事実上の仮想的国とする「日米共通戦略目標」合意(〇五年二月)に賛成するなど、米戦略に追随して中国に身構える態度である。また、小沢代表自身は、自由党党首時代の〇二年、「その気になったら原発のプルトニウムで何千発分の核弾頭ができる」と、日本の核武装にまで言及して中国をけん制したことを指摘しておかなければならない。
民主党が数々の中国への干渉策動を行うのは、このように、外交政策の基本において与党との違いがないがゆえである。だからこそ、昨年十月、誕生直後の安倍政権が中国との関係を「改善」するや、外交政策で与党と攻める決め手を失い、直後の衆院補選で敗北したのである。
今回、小沢民主党はいくらか独自色を出そうとしたものの、自ずから限界があることも明らかになった。このような民主党が政権を握ったとしても、真の日中友好関係が進むことはあり得ない。
民主党への幻想を捨て、アジアと共生するわが国の進路を切り開かなければならない。
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