2007年12月5日号 2面 社説 

大激動の国際情勢

衰退早める米国、
自主外交は待ったなし

 今の国際情勢で大きく目立つことの一つは、全世界で反米・反帝国主義の闘争が目ざましく前進する中、米帝国主義が国際政治で力の限界をさらしていることである。米ソ冷戦崩壊からはや十五年余、米帝国主義の「一極支配」はいまや音を立てて崩れつつある。
 経済でも、米国はサブプライムローン問題に端を発した金融不安と実体経済への波及にあえいでいる。
 世界は多極化の様相をますます濃くしている。近い将来、わが国をも巻き込む国際情勢の大変動は不可避となろう。
 日本の労働者階級は、わが国支配層だけでなく、全世界の中小国家・被抑圧民族と連帯して、米国を中心とする帝国主義との闘争を進めねばならない。
 労働者階級は反米・独立自主、アジアの共生、国民経済擁護の旗を掲げて、民族的課題や外交問題でのわが国支配層の欺まん的な術策を暴露し、指導権を争って国民各層と連携して闘うことが求められている。

国際政治で力の限界をさらす米国
 米国は、二〇〇七年に入ってイラクへの増派や「イラク安定化国際会議」など、軍事面でも政治・外交面でも挽回に手を打ってきた。しかし、イラク人民の反占領の闘争に敗北を重ね、ますますイラク戦争の泥沼から抜け出せないでいる。
 アフガニスタンでも、タリバン(旧政権勢力)が復活し、欧米侵略軍やその傀儡(かいらい)政権は手痛い打撃を被っている。ブッシュ大統領に「悪の枢軸」と非難され、包囲を受けているイランも、圧力とどう喝を跳ね返し「核開発」を手放そうとしていない。
 米帝国主義の侵略と異民族支配が続く限り、国際政治での火薬庫・中東での「爆発」は不可避であろう。イラク一国の「治安維持」に手を焼いているブッシュにとって、これはまさに悪夢の到来である。
 イラク侵略・占領を支持した「有志同盟」も、みじめな末路をさらしている。
 十一月末に行われたオーストラリアの総選挙では、ブッシュの盟友であるハワード首相までが落選し、米国の世界戦略にとって手痛い打撃となっている。ポーランドでも親米政権が崩壊、新政権はイラクからの撤退を表明した。このほか、英国のブレア政権、イタリアのベルルスコーニ政権も退陣した。日本でも、参院選で自公政権が大敗、海上自衛隊はインド洋から帰還せざるを得なくなった。
 この一年余で、ブッシュの戦争を支持した「友人」は、国際政治から姿を消したのである。
 朝鮮半島でも、米国は対朝鮮民主主義人民共和国外交で調整を余儀なくされている。
 また、「裏庭」の中南米でも、ブッシュが今年三月に諸国を訪問し必死の巻き返しを図ったが、ベネズエラやボリビアなどの反米・反帝国主義勢力が引き続き前進している。
 もう一つ目立ったことは、中国やロシアが大国としての発言力を強めていることである。ロシアのプーチン大統領は二月、公然と米国の「一極支配」を批判した。以降も、ポーランドなどへの米軍のミサイル配置をけん制、核開発問題でのイランへの制裁策動に対しても慎重の姿勢を崩していない。また、中国や中央アジア諸国と上海協力機構(SCO、イラン、インドなどもオブザーバー参加)は、経済協力だけでなく、合同軍事演習を行うなど外交・安全保障面でも結束を強めている。

諸国・人民の闘争は必ず勝利する
 もちろん米帝国主義は、中東でもアジアでも、自国の権益を守るために総力を挙げて巻き返しを図るであろう。
 実際、イラン核開発への制裁やアフガン問題では、帝国主義の仲間であり、イスラム人民の闘争を恐れるフランスのサルコジ大統領やドイツのメルケル首相と協調して打開を図ろうと画策している。「中東和平」でも最近国際会議を開き、中東穏健派・親米派の周辺国やシリアをも巻き込んで、パレスチナの「安定化」と「イラン包囲網」形成に向けた外交攻勢をかけている。
 しかし、「湾岸協力会議」がイラン制裁の早急な強行に反対の意思を表明するなど、米国の画策が成功する保証はない。
 目覚めつつある被抑圧民族、中小諸国家の闘争はやむことはなく、大局的には必ず勝利する。ここの一年間を振り返るだけでも、イラク・中東や朝鮮半島、中南米でも、人民の反米・反帝国主義の闘いは前進し、帝国主義には不利になっている。日本の労働者階級は断固として帝国主義と闘い、世界の反米・反帝国主義闘争のいっそうの発展に貢献すべきである。

帝国主義への幻想振りまく共産党
 このように、全世界の闘争はすばらしく前進し、帝国主義を追い詰めている。
 ところが、「左」の仮面をつけながら、この道理を認めないのが、日本共産党である。
 共産党は昨年、朝鮮のミサイル発射や核実験を非難し、国連制裁決議や安倍政権による制裁措置を支持した。それどころか共産党は、米国の「朝鮮半島の非核化に向けた努力」を支持するほどである。これは、米帝国主義を免罪し、朝鮮の武装解除を求める有害な見解である。
 米国の対朝鮮政策の調整は、米国がイラク・中東で敗北を重ね、余裕を失い、朝鮮半島にまで手が回らなくなったからである。そして何より、朝鮮が核兵器を持つことによって「力と意思を持った存在」として米国に対抗し、確固たる独立国家として立ったからである。別に、米国が平和勢力になったからではない。
 現在も米外交に影響力を持つキッシンジャー元国防長官は、米国の戦略について「米国の国益の表現」だと言う。共産党のように「武力(対中東政策)はダメだが外交(対アジア政策)はよい」などということでは、米戦略とは闘えず、これを美化することにしかならない。
 〇四年の第二十三回大会で帝国主義の存在を否定し、米国と支配層にますます恭順を誓った共産党からすれば、こうした態度は当然のことではある。
 だが、この犯罪的な見解を打ち破ることなくして、反帝国主義闘争はもとより、わが国での闘争も前進できない。

支配層暴露し、国の進路切り開こう
 わが国でも独立・自主の新しい国の進路を切り開くチャンスである。
 わが国支配層は小泉、安倍、それに福田と続く自民党・公明党の連立政権は、多少の違いはあれ、日米基軸、アジア敵視を日本外交の基本にしている点では同じである。共産党など「左」を装う政治勢力の一部に福田の「アジア重視」への幻想があるが、それはまったくの間違いである。
 例えば、福田政権は、朝鮮への経済制裁を延長するなど、安倍政権と基本的に違いはない。朝鮮総聯への弾圧体制も解いていない。こうした態度でどうして「アジア重視」といえるのか。先の日米首脳会談でみられた「日米同盟とアジア外交の共鳴」なるものも、日本の自主外交とは程遠く、米国のお墨付きの下でのアジアにおける米国の「下請外交」とでも言うべきものなのである。米国の縛りを打破せずに、自主外交はありえない。
 わが国労働者階級は、国の進路の問題、外交・安全保障問題で支配層と争って闘わねばならない。福田外交が対米追随で多国籍企業のためのものであることを暴露し、反米、独立・自主、アジアの共生、平和外交への転換を求めて闘わねばならない。当面は、日朝国交正常化の即時無条件での実現を求める国民運動の形成・発展が重要な意義をもつ。
 労働者階級が民族的な課題で国民各層と連携して闘えば、多国籍大企業を中心とする一握りの支配層を孤立化させることができる。それはまた、労働者階級の独自の闘争を進める上でも、有利となる。
 こうして闘ってこそ、労働者階級は農民、中小零細企業など国民諸階層の指導階級として前進できる。


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