2007年11月5日号 2面 社説 

「テロにも戦争にも反対」は
敵を誤らせる見解

国民運動で新テロ特措
法案を廃案に

 「テロ対策特別措置法」が十一月一日に期限が切れ、インド洋において自衛隊が米軍などに対して行う補給活動が中断された。対米追随で、わが国の政治軍事大国化のためのこの活動は、国民世論の前に中止に追い込まれたのである。
 福田政権は新テロ特措法案(補給支援特措法案)を成立させ、補給を再開することに躍起となっている。「新法」成立に反対し、米帝国主義のアジア支配の策動、それへのわが国の加担、軍事大国化の策動を打ち破らなければならない。
 そのためには、米帝国主義やわが国政府の言う「反テロ」なるものの根拠を暴露し、それと正面から闘うことが求められている。

ますます衰退する米帝国主義
 こんにち、諸国・人民の闘いの前進で、米軍によるイラク、アフガニスタンの支配は窮地に陥っている。イランは米欧の圧迫に屈せず、独立国として当然の核開発の権利を放棄していない。パレスチナ人民の闘いも続いている。
 米国は、朝鮮半島から中東地域までを「不安定の弧」などと名付け、とりわけその西端、原油の存在する中東を支配することで世界支配を続けようともくろんだが、それはもろくも挫折しつつある。最近では、北大西洋条約機構(NATO)に加盟するトルコまでもが、米国の介入への反発を強めている。この米国の衰退を見透かし、中東以外の各国も自主的な動きを強めている。
 限界をさらし孤立を深める米国にとって、もっとも忠実な「手駒」である日本の「貢献」が、自らの世界戦略にとってますますなくてはならないものとなっている。だからこそ、米国はわが国政府を時にどう喝して「数週間以内の再開」などと期限までつけ、あるいは同盟国を使って、補給活動の延長を迫っている。
 しかし、この補給活動なるものは、占領に抵抗するアフガン人民を虐殺し続けている、米軍への加担にほかならない。また、海上自衛隊が補給した燃料が、米軍によるイラク戦争・占領や、本年初頭のソマリア爆撃に転用されたことも間違いなく、インド洋への自衛隊派兵は、米国の世界戦略を支え、反米・反帝国主義の闘いに敵対する、きわめて反動的なものである。

新法制定急ぐ福田政権
 この米国の要請に対し、福田政権は徹底して忠実に振る舞おうとしている。
 福田は「アジア重視」を掲げているが、このように、安倍前政権と同じく徹底した対米追随である。
 また、世界中に膨大な権益をもつに至ったわが国多国籍大企業は、米帝国主義とともに反米・反帝国主義の闘いを抑えつけ、かつ、わが国自身も軍事大国となって国際的発言権を拡大させ、覇権的利益を維持拡大することを欲している。
 この多国籍大企業を中心とする財界に奉仕することが、小泉政権以降の自公政権の対外政治の本質である。福田政権もこの基盤の上にあるからこそ、新法制定に必死なのだ。

欺まん演じる民主党
 野党の態度はどうか。参議院の主導権を握った民主党は、インド洋への派兵に「反対」し、与党との「対決」を演じている。
 しかし小沢代表は、アフガン本土に展開するNATO軍指導下の国際治安支援部隊(ISAF)に参加すると公言している。自民党出身閣僚ですら「憲法違反」と言う、自衛隊の戦闘参加を主張するものだ。しかも、小沢は、派兵が「憲法の理念に適う」などと主張する。
 しかし、労働組合など世論が、この「武力行使」発言に反発したのは当然である。小沢民主党は、この声に押される形で、ISAFへの参加を「民生部門に限る」などと軌道修正を図っている。
 だが、小沢は先日行われた福田首相との会談で、自衛隊海外派兵のための「恒久法制定」で一致したとされる。案件ごとの「恒久法制定」は、前原前民主党代表がテロ特措法の延長に「反対」する理屈として主張していたもので、現在のような「特措法方式」の派兵では、派兵を迅速に行えないからというのだ。この「合意」に対して、早速、高村外相は「意欲」を示したという。まさに、自民・民主という保守二大政党の出来レースである。この事実からも、小沢民主党の本音が海外派兵の拡大にあることは明らかだ。
 小沢の意図は、時代錯誤の政府・与党案と何ら変わるものではない。だまされてはならないのである。

テロは反帝国主義の闘いの一つ
 共産党や社民党は、政府の新特措法案にも、小沢の主張するISAF参加にも反対している。だが、かれらの基本的な態度は「テロにも戦争にも反対」というものである。これは敵を取り違え、敵を利する根本的に誤った見解である。
 かれらは、武力という手段に賛成しているかどうか、という違いはあるが、「反テロ」という点でブッシュや福田と同じ立場なのである。
 もちろん、共産党などが言うように「テロの根源は貧困」である。だが、それは事実の一面でしかない。正確には、テロは貧困、そしてそれをつくり出している収奪構造からの脱却を求める人民の闘いの一つなのである。だから、貧困の根源と闘わなければならないのである。
 このことを、イラクやアフガンをはじめとするイスラム人民は早くから見抜いていた。グローバリズムという米国中心の国際金融資本による搾取と収奪、世界支配が絶望的な貧困の根源であり、核武装した米軍がそれを支えているということを。だから、九・一一の「テロ」は、国際金融資本の本拠地・世界貿易センタービルと米軍の本拠地・ペンタゴンを襲ったのである。アフガンのタリバン、パレスチナのハマス等々の闘いも、同様である。
 あれから数年、世界には貧困がさらに急速に広がる一方、富は米国など一部の国の金持ちらに集中した。
 例えば、ある調査(〇七年)によると、世界一の約五百六十億ドルもの資産を持つビル・ゲイツ(米マイクロソフト会長)を筆頭とする上位十人の大金持ちの資産を合計すると、三千四百八十億ドル(約四十兆円)にもなる。これはなんと、サウジアラビアの国内総生産(GDP、世界第二十三位=〇六年)、大阪府の域内総生産(GRP)とほぼ等しい。
 逆に、世界では、毎年九百万人以上が餓死している。多くの国々では貧困が急速に進み、米国にも、台風が来れば町は廃墟、人びとが難民化するような悲惨な状況がある。
 現代資本主義社会には、このように「格差」というのも生ぬるい収奪がまかり通っている。
 こうした中で、帝国主義の支配と抑圧・収奪に抗して、人民は方法を問わず、全世界で不屈の闘いに乗り出しているのだ。

帝国主義との闘いこそ打開の道
 「テロの根源は貧困」と言うのであれば、これと連帯し、帝国主義の支配と収奪を打ち破らなくてはならない。さまざまな人道援助をすべて否定するわけではないが、それだけでは問題は解決しないのである。
 「テロ根絶は法と道理で」と叫ぶ共産党のような見解は、現実から目を背けるものだ。
 共産党は、〇一年の米国による当のアフガン侵略を「早すぎた」(不破)としか言わず、同年の第三回中央委員会総会で「国際テロとの闘い」という課題を第一に掲げた。
 「反テロ」の立場の行き着く先はこのようなものであり、これは結局、人民の闘いと結びつけず、逆にツバをかけ、帝国主義と歩調を合わせ、ブッシュ政権の反テロ戦争を支持する犯罪的なものである。
 わが国が、米帝国主義に追随・従属し、アジアと世界の人民に敵対するのか、それとも米帝国主義に反対し、アジア・世界の人民とともに独立自主を勝ち取るのかーーテロ特措法問題はそれを迫っている。
 全世界の反米・反帝国主義の闘いと連帯し、労働運動が中核となって、断固たる国民運動で新テロ特措法案を粉砕しよう。


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