労働新聞 2007年10月15日号・2面 社説

南北首脳が共同文書発表

ますます問われる
日本の対アジア外交

 朝鮮の金正日・朝鮮労働党総書記と韓国・盧武鉉大統領は十月四日、首脳会談を行い、共同文書「南北関係発展と平和繁栄のための宣言」を発表した。
 宣言は、「軍事的敵対関係を終息させ、朝鮮半島における緊張緩和と平和を保障するために緊密に協力する」とし、現在休戦状態のままである朝鮮戦争の終戦宣言に向けた首脳会談を行う構想を示した。また、六者協議の合意履行、十一月の南北国防相会談開催なども合意された。
 今回の南北朝鮮の合意は、両国が大国の思惑に左右されず、平和と自主的統一に向けて歩むことを改めて宣言したものである。宣言は、北東アジア全体の平和にとっても、重要な意義を持っている。
 この宣言は、改めて、米帝国主義の力の低下を見せつけるものともなった。朝鮮半島における戦争、その後のさまざまな危機は、米帝国主義がつくり出してきたものだからである。
 二〇〇〇年の歴史的な「南北共同宣言」当時と今回の合意のもっとも大きな違いは、その米国が〇三年のイラク戦争以降、イラク、中東への対処に手こずり、全世界で力の衰退をあらわにさせていることである。
 〇〇年当時、米国の力はいまより強く、朝鮮半島でも「ペリー報告」(一九九九年)にそってどう喝政策をとっていた。〇〇年の南北首脳会談開催前、米国は核やミサイル問題で朝鮮の何らかの譲歩を引き出すよう、韓国に再三にわたって圧力をかけた。直後に成立したブッシュ政権は、朝鮮に軽水炉を提供することを決めた朝鮮半島エネルギー機構(KEDO)合意を反古(ほご)にし、朝鮮を「悪の枢軸」などと呼んで先制攻撃による体制転覆を公言するまでに至った。
 しかしこんにち、米国は朝鮮との対話に踏み込まざるを得なくなった。六者協議も中国に下駄を預けざるを得ず、十月初旬に発表された合意では、朝鮮の核施設「無能力化」と「並行して」とはいえ、「テロ支援国家」指定解除と対敵国通商法の適用除外の明記にまで譲歩を余儀なくされている。
 南北両国にも、大きな変化があった。韓国が対北柔軟路線を確固たるものとして国内世論がそれを基本的に支持していること。そして、朝鮮が核兵器を握り、事実として、国際政治上の発言力を高めたことも重要な変化である。
 このように、この数年間の国際政治の変化、とりわけ米国の衰退は著しいものがある。だからこそ、南北朝鮮は自主的な歩みをいっそう強めているのであり、紆余(うよ)曲折はあれ、この流れはより確かなものとなるだろう。
 隣国である日本が米戦略を支えることをやめ、自主的な対アジア、対朝鮮半島外交を行えるかどうかが、ますます問われる情勢なのである。
 対朝鮮外交の打開は、いまや待ったなしの課題である。即時無条件の朝鮮との国交正常化が求められる。
 ところが福田政権は、十月十三日に期限切れとなった「独自制裁」を半年間延長するなど、流れに逆行する態度をとり続けている。水害で多くの死傷者を出した朝鮮への人道支援にも踏み切れず、各国からはるかに遅れを取ったままである。
 民主党も朝鮮への制裁延長に賛成しており、与党との「対抗軸」にはなり得ない。共産党は朝鮮との「国交正常化」を主張してはいるが、朝鮮を「無法」と決めつけている点で与党や民主党と同じ立場である。
 また、与野党を問わず、「核放棄」や拉致問題を国交正常化の条件とする見解がある。これらは、朝鮮半島の危機の根源が米国にあることを見ないもので、誤りである。
 わが党は、朝鮮との即時無条件の国交正常化を求め、国民的運動の先頭に決意である。

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