労働新聞 2007年10月5日号・2面 社説

朝鮮制裁を直ちにやめよ
即時無条件の国交
正常化こそ必要

 福田政権は九月三十日、十月十三日で期限となる、朝鮮に対する制裁措置を半年間延長する方針を決めた。政府はまたも拉致問題を持ち出し、延長を合理化している。自民党総裁選において、朝鮮との「対話」に言及した福田首相だが、その舌の根も乾かぬうちの措置で、自ら対話の道を閉ざす暴挙である。
 この制裁措置は、昨年十月の朝鮮による核実験を口実として、国連安全保障理事会による「制裁決議」に先んじて、日本独自に発動されたものである。内容は、朝鮮籍船舶の入港禁止、朝鮮からの輸入禁止、朝鮮国籍保有者の入国禁止、金融機関の口座凍結などであり、それ以前(七月のミサイル実験後)に実施済みの万景峰号寄港禁止などの制裁措置をいっそう強化するものであった。
 また、これらの敵視策動を結びついて、朝鮮総聯や傘下団体に対する弾圧が強まり、在日子女に対する人権侵害が続発している。マスコミもこれと一体になり、排外主義をあおった。
 わが国支配層は、これら朝鮮に対する敵視と排外主義をあおることをテコとして、米軍再編や教育基本法改悪など、対米追随の軍事大国化を進めたのである。公然たる「核武装」発言も飛び出した。
 しかし制裁措置によって、在日朝鮮人による祖国、家族へのわずかな送金・物資輸送さえもが困難となり、家族の往来や朝鮮学校生徒による修学旅行などが不可能になっている。加えて日本政府は、朝鮮国内で深刻な事態となっている、水害被害に対する救援物資輸送のための万景峰号寄港を求める要望書の受け取りを拒否した。米国でさえ行っている人道支援を行わず、あまっさえ妨害するなど、常軌を逸したものと言わなければならない。
 過去において朝鮮半島を侵略・植民地支配し、強制連行や「従軍慰安婦」強制、創始改名、独立運動への弾圧など塗炭(とたん)の苦しみを与え、戦後は朝鮮戦争で米軍を支持して南北分断に加担したわが国が、いままたこのような犯罪を繰り返すことなど、断じて許されないことである。朝鮮政府がこの延長に対し、「敵対政策を放棄すべきだ」と強く要求しているのは当然である。
 おりしも南北首脳会談が行われたが、南北朝鮮人民の祖国統一と平和への意志は確固たるものである。日本が朝鮮への敵視政策を続けることは、この声に背を向けることであり、国際的に孤立する道である。わが国は朝鮮への制裁を直ちに解除し、敵視政策をやめなければならない。侵略と植民地支配への真摯(しんし)な謝罪と補償も忘れてはならない。水害被害への人道支援も、政府が率先して行うべきである。
 真に拉致問題を解決しようとするならば、日朝両国の国交正常化以外にないことは明白である。アジアで朝鮮と国交がなく、いまもって敵視を続けているのは日本だけである。朝鮮との国交正常化は、日本がアジアで生きてゆくために必要不可欠、かつ緊急の課題なのである。
 だが、議会内の野党には期待できない。野党第一党の民主党は、政府・与党とともに朝鮮への敵視をあおっている。鳩山幹事長は、対朝鮮政策で「与野党の壁を越えていかなければならない」などと、この問題で与党と違いがないことを明言している。新潟県議会は二十八日、朝鮮への制裁継続を求める意見書を可決したが、民主党もこれに賛成、政府の策動を支持するありさまだ。また共産党は新潟県議会で「棄権」というあいまいな態度を取った。この党も朝鮮を「無法」と決めつけている点で、与党や民主党と同じである。
 朝鮮への制裁延長に反対し、即時無条件の国交正常化のための国民運動が求められている。とりわけ労働者・労働組合が、大衆行動の先頭で闘うことが求められている。

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