労働新聞 2007年10月5日号・2面 社説

野党3党が選挙協力で合意
保守二大政党制を進める
「政権交代」論

 民主党、社会民主党、国民新党の野党三党は九月二十七日、選挙対策責任者会議を開き、近づく衆議院選挙における選挙協力について協議を始めた。三党は、選挙協力を行う選挙区を、年内に決めるとしている。
 この会合は民主党が呼びかけ、小沢・民主党代表の「腹心」とされる赤松選挙対策委員長が主宰した。報道によれば、赤松委員長は「民主党公認にこだわらない」などと野党共闘を進める意思を表明したという。
 七月末の参院選で自民・公明の与党が惨敗、安倍首相が政権を放り出し、福田政権が成立した。小沢民主党は与党との「対決」を演出することで、来る総選挙で勝利して「政権交代」を成し遂げようとしている。そのためには小選挙区での勝利が不可欠で、社民党や国民新党との共闘が避けられないとの判断である。
 民主党は次期総選挙に向け、すでに二〇〇以上の選挙区で公認候補擁立を内定しているが、最終的には公認を二七五〜二八〇までとし、残りの二〇〜二五選挙区では候補擁立を見送って社民、国民新の支援に回るという。現在のところ、社民党とは大阪や沖縄などで共闘することが有力視されている。逆に他の多くの選挙区では、両党は民主党への投票を呼びかけることになる。
 この野党共闘によって、社民党などの議席がどうなるかはかれらの問題である。われわれが危ぐするのは、この共闘が財界のたくらむ保守二大政党制策動を助け、促進することになることである。
 仮に、社民党が候補者数を減らして民主に協力するとすれば、ほとんどの選挙区で、現場活動家や支持者は民主党を支持し、汗を流すことになる。民主党の支持で議席を得られた議員はそれでよいかもしれないが、それこそが重大なのである。
 民主党が進める「政権交代」論は欺まんで、「対決」はポーズに過ぎない。民主党は「まず自民党の議席を減らすこと」(赤松)などというが、仮に「与野党逆転」「政権交代」が起きたとしても、その政権は財界の許す範囲内での政策しか行えない。国民の生活と営業を困難に陥れている根源である、日米基軸外交と多国籍大企業のための改革政治をやめることなどできず、むしろ、自民党にはできない、財界のための政治を行う。社民党がその枠を超える政策を求めても実現できず、逆に妥協を迫られ、解体に追い込まれる。これは、細川・村山政権の経験からも明らかではないだろうか。
 なぜなら民主党は、財界が狙う保守二大政党制のための一方の装置だからだ。民主党議員が、自民党と寸分違わぬ連中がほとんどであるのも、この根本的な性格による。
 民主党に協力することは、この保守二大政党制に手を貸すことだ。しかも、総選挙での民主党の勝利は保証されていない。
 われわれは、あてのない「政権交代」の幻想を捨て、財界のたくらむ保守二大政党制を挫折させることこそが、労働運動と国民運動の発展にとって重要な課題であると考える。
 わが国を取り巻く環境は厳しく、財界にも余裕はない。自公政権は極度に不安定化し、支配層は「大連立」とか与野党の協調を説き、政治支配の維持・安定化を狙っている。小沢代表が言うように、二大政党制を実現するための「最後のチャンス」なのだ。闘う側からすれば好機で、挫折させる根拠は十分にある。
 参院選の結果に示されたように、農民や中小商工業者など、歴史的に自民党の支持基盤であった層は、改革政治によって苦しめられ、自民党からの離反を強めている。参院選では、この層の一部は民主党を支持した。だが、この層が民主党の安定した支持基盤となるのは難しい。民主党は本質上、財界の求める改革を進める党だからだ。
 この情勢下で社民勢力が役割を果たそうとするなら、労働者を中心にこれら中間層を引きつけ、大きな議会主義の新党をめざすべきで、われわれはそのように呼びかけてきた。
 革命政党であるわが党はそのような党には参加しないが、国民運動と結びついた新党は、保守二大政党制を打ち破る、確かな砦(とりで)となるに違いない。


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