労働新聞 2007年9月25日号・2面 社説

共産党が5中総を開催
民主党を美化し、
二大政党制に屈服

 共産党は九月七、八日、第五回中央委員会総会(五中総)を開いた。
 五中総では、七月末に行われた参議院選挙を総括し、近づく総選挙でいかに前進を図るかについて、共産党なりの方針を決定することが狙いであった。
 共産党の方針と議席の増減は、直接的にはかれらの問題である。だが、一般には「革新政党」と言われ、各社会層に一定影響のあるかれらの言動には、関心を持たざるを得ない。かれらが、保守二大政党制のための一方の装置である民主党を美化し、「共同」する方針を決めたとなれば、なおさらである。
 参議院で野党が過半数を占めて政局が流動化、安倍前首相が政権を投げ出すなど、自公連立政権は危機は深めている。米サブプライムローン問題を契機とした世界経済の不透明化、イラク問題など米帝国主義のいっそうの衰退もある。力強い国民運動によって政治を転換し、わが国の進路を切り開くことが求められている。
 このような激動の情勢だからこそ、民主党への幻想は危険であり、それを振りまく共産党への批判が重要なのである。

民主党へのすり寄りに転じた共産党
 共産党は先の参院選において、当初、民主党を批判する態度を取った。消費税や憲法問題、あるいは民主党が「目玉」とした「格差是正」策について「自民党政治と同じ土台に立っている」などと批判した。
 だが、選挙中盤から民主党への批判を手控え、選挙後はほぼ口にしなくなった。むしろ、「野党共闘」を追求するという転換を行っている。
 事実、志位委員長は八月十日、民主党のテロ特措法延長「反対」の態度について、「ぜひその立場を貫いてほしい」と、小沢代表に秋波を送った。さらに、年金保険料流用禁止法案などの具体的政策を次々に挙げ、「共同」を呼びかけた。このような踏み込んだ姿勢は、民主党との統一会派を呼びかけられている国民新党や社民党でさえとっていない。民主党に取り入ろうという、共産党の態度はあまりに露骨である。
 与党との「対決」を演じる民主党の側も、臨時国会召集前の四日に、共産党にも呼びかけて四野党の国対委員長会談を開催、自党の代表質問時間を共産党にも割り当てるという「大サービス」をちらつかせることまで行った。
 こうした経過を追認するものとして、五中総は、民主党との関係について「一致点について野党共闘を進める努力を図る」との方針を決めたのである。志位は、現在の国会情勢を「自公政治に代わる新しい政治の中身を探求する新しい時代」などと描くことで、民主党へのすり寄りを合理化しようとしている。
 次の衆院選の小選挙区選における候補者の数を絞るという方針も、直接的には財政問題が理由であるにしても、結果的には民主党を喜ばせるものであることは間違いない。民主党の鳩山幹事長は、早速「民主党に有利な環境ができる」と喜んでいる。
 この方針を基礎に、共産党は二十五日に行われる国会の首相指名選挙で小沢・民主党代表に投票することを決めた。これは、共産党が「小沢首相」を認めたことを意味する。

財界の二大政党制策動を暴露せず
 共産党は、財界が一九九〇年代初頭から系統的に進めている、保守二大政党制のための策動を暴露しないという犯罪的役割を演じている。
 保守二大政党制への策動は、八〇年代半ばからの「国際化」と産業構造調整により、自民党の支持基盤の崩壊が進み、一党支配が大きく揺らぐという状況下で始まった。狙いは、基本政策で違いのない二大政党が交代で政権を担う政治システムをつくることで、財界による政治支配を安定したものにするためである。
 民主党は、この財界の保守二大政党制への「期待」を背負って生まれた。その基本的性格は、当時の社会党を割る形で九六年に結党されたときから変わっていない。民主党は誕生直後から、規制緩和などの改革政治を主張、外交でも「日米基軸」を掲げるなど、財界の思惑を一歩も超えない党であった。
 九八年、旧新進党を構成した民政党などと合同、二〇〇三年九月には小沢率いる自由党が合流し、二大政党制実現のための一方の装置という性格はより鮮明になった。財界の手先として、二大政党制策動を一貫して担ってきた人物こそ、共産党が「首相」に推した小沢なのである。
 だが、共産党はこうした財界の歴史的な策動をまったくといってよいほど暴露していない。

「民主批判」には議会主義的な狙い
 共産党は民主党のこうした性格を知らないのではない。徹頭徹尾、議会主義的な狙いから、意図的に暴露しないのである。
 共産党は九七年の第二十一回党大会で、保守政党との連立による政権参加をめざす路線を選択した。この方針に基づいて、共産党は民主党やこれを支持する連合に対する批判を手控え、すり寄った。九八年の参院選直後には、「民主党など野党との連立政権が問題になる時期が来る。その時には共産党は政権に入る用意がある」とまで表明した。
 それに備えるべく、〇一年の二十二回大会では、党規約から「労働者階級の前衛政党」「社会主義」などを削除、〇四年一月の二十三回大会で綱領を全面改定し、月並みなブルジョア政党への純化を進めた。しかし、その「努力」の甲斐なく、〇三年十一月に行われた総選挙で十一議席を失う惨敗を喫した。
 その後の二十三回大会を経て、共産党は民主党への批判を行うようになった。
 理由は、〇四年七月の参院選で民主党に票を奪われまいという狙いからである。だが、共産党は改選十五議席に対して四議席しか獲得できないという惨敗を喫した。さんざん民主党への幻想をあおっておいて、票ほしさに批判に転じるという態度は、こっけいなほどであった。
 共産党は以降も、票目当てに民主党への批判を行った。だが、批判の対象となったのは〇三年の自由党合流以降に限られ、それ以前の民主党は肯定的に描かれた。しかも、「野党共闘」の可能性を残した上での「批判」であり、本質的な批判となるはずがなかった。現在のすり寄りは、すでに準備されていた。
 以上のように、共産党はときに民主党への「批判」めいたことを行った時期はあっても、本質的上は民主党への幻想をあおることで、労働者の中で民主党の暴露が進むことを妨げてきたのである。

民主党暴露には共産党への批判が不可欠
 共産党はいままた、民主党にすり寄ることで、政権にありつこうという策動を強め始めた。小沢民主党が「政権交代」をめざし、与党との「対決」を演じていることに便乗しようというのである。
 だが、民主党による与党との「対決」は徹頭徹尾の欺まんである。「政権交代」は幻想で、わが国の進路を打開し、国民の生活と営業を守るものとならない。
 しかも、次の総選挙における民主党の勝利は保証されていない。日本を取り巻く内外環境が激動の様相を深める中、わが国財界は経済連携協定(EPA)や消費税増税など改革政治の実現をあせり、民主党への圧力を強めている。老かいな福田首相が登場したこともあり、小沢の「対決」路線がどこまで続けられるか、危ういものである。
 共産党のすり寄り策動が功を奏する可能性も、これらに大きく規定されている。 
 労働者・労働組合は、共産党への幻想を捨てるべきである。共産党は二大政党制に向けた財界の攻撃を暴露せずこれに屈服している。結果として、財界の策動を「左」から支え、労働運動や国民運動の発展を妨げる犯罪的な役割を果たしているのである。
 こんにち、民主党への「政権交代」の欺まん性を打ち破るためにも、民主党を美化する共産党への批判を強めなければならない。


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