労働新聞 2007年6月25日号・2面 社説

コムスンが大規模な不正

問題は介護保険制度自身にある

 介護事業最大手コムスンが事業所開設に当たって不正請求を行うなどしていたことが発覚、厚生労働省から処分された。
 コムスンの親会社グッドウィルは、グループ子会社に事業を事業譲渡するという姑息(こそく)な手段で処分を逃れようとしたが、世論が許すはずもない。当初、譲渡を容認した厚労省も、一転して譲渡の凍結を指導せざるを得なかった。しかし、譲渡先として名前が上がっている大手他社も不正に手を染め、行政処分を受けるなどの前科を持っている。
 今回の事態は、介護保険制度そのものの構造的問題点を、改めて浮き彫りにしている。
 グッドウィルは、バブル期に巨大ディスコの経営で名をはせた折口会長が人材派遣企業として一九九五年に設立した。折口は財界総本山・日本経団連の理事にまでのし上がったが、「ディスコも介護も同じ」と、高齢者介護をカネもうけの手段とすることを公言してはばからない人物である。
 このようなグッドウィルの介護事業からの撤退は当然だが、国と地方自治体は介護を必要とする利用者へのサービスが継続されるよう保障しなければならない。コムスンなどの施設・住宅介護サービスを利用する約六万五千人の利用者が切り捨てられる事態は許してはならないのである。
 また、グッドウィル傘下六社には、約二万四千人の労働者がいる。労働者の雇用を守り、低賃金、長時間という労働条件を改善することも急務である。
 さらに、介護保険制度自身の抜本的な見直しが不可欠である。悪質なのは、コムスンだけではないからである。
 そもそも介護保険は、国・自治体の責任を放棄して、介護をカネ次第の保険制度に転換するものであった。国民負担は増えるが、必要な介護サービスが保障されない、低所得者ほど負担増となるなど、極めて選別性、排除性が強いものである。
 加えて、利用者の多い都市部はともかく、地方では、事業自身が成り立ち難い。それを無理に「事業」として成り立たせようとすれば、利用者と労働者に犠牲がしわ寄せされるのは必至なのである。
 実際、四十歳以上の国民すべてが負担する介護保険料は上がり続けている。介護に携わる労働者は低賃金で使い捨てられ、利用者は高負担を強いられている。介護労働者の平均年収は施設で約二百九十万円、ホームヘルパーで約二百六十万円という低賃金下にある。これは、とても家族を養える額ではない。
 さらに、昨年四月からは改悪介護保険法が施行され、いっそうの負担増が押しつけられるようになっている。「軽度」の利用者の訪問介護の回数や時間は減らされ、利用者の生活に大きな影響を及ぼしている。保険料を支払いながらサービスを受けられない、「介護難民」という言葉まで登場した。
 このように、介護保険制度は、まさに国によるサギ行為である。コムスン問題は、こうした介護保険制度自体に根ざすゆがみの中で起きた。
 介護保険制度の成立や改悪を進めてきたのは、自民、公明、民主の三党である。これらの党は、今回の事態の「共犯者」というべきで、コムスンを批判する資格はない。これらの党内には、保険料の支払い義務年齢を引き下げようという動きもあるが、とんでもないことである。
 また、共産党も大差ない。かれらは制度そのものを容認した上で、小手先の「見直し」を求める程度である。これでは、根本的な解決にはならない。
 介護保険制度は廃止を含めて抜本的に見直し、公費による社会保障をこそ、拡充させるべきある。


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