労働新聞 2007年6月25日号・2面 社説

RCCによる差押え問題

朝鮮総聯への卑劣な攻撃を許すな

 東京地裁は六月十八日、在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)に対し、整理回収機構(RCC)に約六百二十七億円の返済を命じる不当判決を言い渡した。
 政府・与党や御用マスコミは、この問題をとらえて、またもや朝鮮敵視と排外主義をあおり立てている。
 このまま事態が推移すれば、朝鮮総聯は中央本部(東京都千代田区)の土地と建物を手放さなければならず、在日朝鮮人は民族としてのより所を奪われることとになる。さらに東京地検は、この問題に関連して許・朝鮮総聯副議長を参考人聴取するなど、弾圧を拡大しようともくろんでいる。
 今回の事態は、昨年秋以来激化している、在日朝鮮人・団体への政治弾圧の一環にほかならない。背景には、拉致問題や核問題を口実に朝鮮への敵視と排外主義をあおることで、対米追随の政治軍事大国化を急ぐ、安倍政権の危険な策動がある。
 実際、安倍首相は十二日、「朝鮮総聯は破防法に基づく調査対象」などと不当判決をけしかけたし、「産経新聞」は、「(東京地検は)政府の意向を重視した」と露骨に書いている。
 安倍の朝鮮敵視政策は、二月の六者協議「合意」以降、国際的孤立をますます深めているが、かれらは、日本国内で朝鮮総聯を「犯罪団体」のごとく扱い、国民の朝鮮・在日朝鮮人への敵がい心をあおることで、自らの策動と政権浮揚に利用しているのだ。
 地裁判決は、RCCが、在日朝鮮人による金融機関である旧朝銀信用組合(朝銀)から引き継いだ「不良債権」問題をきっかけとしている。
 しかし、朝鮮総聯は和解に向けたRCCとの話し合いを継続させてきており、中央本部の処分なしでも債務の返済に応じる姿勢を明確にさせていた。ところが、安倍政権の意を受けたRCCはあくまでも本部の処分を要求して話し合いをぶちこわし、訴訟に持ち込んで、あえて「事件」化させたのである。
 そもそも、旧朝銀の「不良債権」を口実にして朝鮮総聯施設を差し押さえること自身が、きわめて異常で悪質なものである。
 朝鮮総聯施設は、わが国が国交を持たない朝鮮民主主義人民共和国の在外公館・施設であり、ビザの発給業務や関係官庁との交渉、友好交流活動など、事実上の大使館的役割を果たしている。日本も批准している「領事関係に関するウイーン条約」(一九六三年締結)では、公館の不可侵をはじめとする外交特権や、非課税など在外公館・施設への保護が規定されている。当然のことながら、朝鮮総聯の土地・建物はこの適用を受けるべき公的な施設である。
 しかも、多くの朝鮮人がわが国に居住していることは、強制連行など、日本による侵略と植民地支配の結果でもある。
 わが国政府も「中国の一部」と認め、同じく国交のない台湾の施設は、現在も免税など特別扱いを受けている。なぜ、朝鮮だけ不当な仕打ちを受けるのか。
 まして、政府、大銀行、産業再生機構などが一体となって、流通大手・ダイエーに対して一千億円以上の多額の債務免除を行った例がある。なぜ、本来保護されるべき朝鮮総聯に対してはできないのか。
 朝鮮総聯だけが課税や差押えなどを受け、立ち退きを迫られる不当性、二重基準は明白である。
 朝鮮総聯に対する卑劣な策動を打ち破り、即時・無条件の日朝国交正常化を実現することは、ますます切実な課題となっている。それは、アジアと共生すべきわが国の進路、あるいは民主主義にとっても重大な問題なのである。
 安倍政権が在日朝鮮人への敵視と排外主義をエスカレートさせているのは、決してかれらの「強さ」ゆえではない。弾圧によって自らの国際的孤立をおおい隠そうとするもので、むしろ弱さ、困難さゆえのものである。闘えば道は開ける。
 この問題に沈黙を決め込む、議会内野党は頼りにならない。長年日朝友好運動にかかわってきた人士をはじめ、労働者・労働組合を先頭とした国民運動が求められている。


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