労働新聞 2007年4月15日号・2面 社説

07年度予算が成立

「財政再建」口実に
国民犠牲進める

 安倍政権で最初の予算である二〇〇七年度予算が、三月末、成立した。小泉政権以来の多国籍大企業のための改革を加速させようというもので、「財政再建」を口実に、大多数の国民に負担増加をもたらすものである。実際、〇七年度分だけで国民負担増は一兆円にもなる。
 まず、小渕政権下の一九九九年に「恒久的減税」として導入され、すでに半減された所得税の定率減税が全廃となる。
 住民税も六月から増税になる。これまで住民税は収入に応じて三段階(五%、一〇%、一三%)であったが一律一〇%になる。高額所得者には減税、低所得者には増税だ。住民税の課税最低限は所得税の課税最低限よりも低いため、五%の住民税を納めている人の中には所得税非課税の人びとがいる。この人びとも、住民税だけが二倍になるのだ。
 医療では、昨年十月から現役並みの所得七十歳以上の高齢者の自己負担が現行の二割から三割に引き上げられたばかりなのに、来年四月からは、七十〜七十四歳の高齢者で一般所得、および低所得者の自己負担が一割から二割に引き上げられる。
 生活保護制度も改悪される。改革政治の下で、生活保護受給者は百万世帯を超えた。現在、生活困窮者が生活保護を申請しようと自治体の窓口に行っても、国の「抑制策」のもと、さまざまな口実で申請を出させない「水際作戦」が強行され、多くの国民が生活できないでいる。
 この上、一人親の家庭に対する母子加算が〇七年度から三年で段階的に廃止される。また、持ち家に住んでいる受給者には、支給をやめ自宅を担保に生活資金を貸し付ける制度を導入、貸付金は本人が死亡後に不動産を処分して清算する。まさに、身ぐるみはぎ取る政策である。
 さらに参議院選挙後には、消費税の引き上げが具体化する。現在資本金一億円以上の法人に限定している外形標準課税も、中小企業に拡大される見込みだ。これは中小企業に打撃となり、労働者の生活にも大きく響く。
 さらに重大なことは、米軍再編にかかわる経費(グアムへの移転費など)が、別枠(特措法扱い)として計上されていないことである。三兆円とも言われる経費も、国民負担にほかならない。
 派遣・請負労働者、フリーター、多重債務被害者、シングルマザー、障害者、ホームレスの人、年金・生活保護受給者などで、生活困窮者が拡大している。もはや「格差拡大」という生ぬるい状況ではない。〇七年予算は、これをいっそう深刻化させるものだ。
 このような政策は、トヨタなど一握りの多国籍大企業のためのものである。多国籍大企業の競争力を強めるため、社会保障費など国内での負担を大幅に削減しよういうのだ。
 国民への負担をよそに、定率減税と同時に導入された高額所得者と大企業への減税はそのまま。加えて、減価償却制度が変わり、多額の設備投資をする大企業は減税となる。
 むごたらしい国民犠牲の政策をやめさせなければならない。
 だが、格差問題で安倍政権を批判する民主党は、昨年の医療制度改悪法案(高齢者の自己負担増加)に賛成した。また、選挙対策として隠しているが、年金など社会保障費を消費税引き上げでまかなうというのが持論だ。これで「格差対策」を掲げるとは、欺まんでしかない。
 断固とした大衆行動で国民犠牲の安倍政権と闘おう。とりわけ労働者階級は、国民生活擁護のために先頭で闘おう。


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