労働新聞 2007年3月15日号・2面 社説

国民投票法案成立急ぐ安倍政権

民主党の欺まん的態度を許すな

 成立時から憲法改悪を政治日程に乗せた安倍政権は、今国会での国民投票法案成立をめざすなど、改憲手続きを加速させている。憲法改悪は、かれの「主張する外交」の重要な一環だからだ。
 安倍政権が第九条をはじめとする憲法改悪によって狙うものは、集団的自衛権の行使容認をはじめとする、対米追随の下での政治軍事大国化だ。憲法改悪によって、これらを制約なしに進めるためである。
 それは、日本を自らの世界戦略により組み込もうという米国の求めであると同時に、世界中に権益を持つに至った、わが国多国籍大企業の要求、一言でいえば「巨大独占体の覇権的利潤追求」のための政治である。
 現在、国会で審議されている国民投票法案には、その法案自身の問題点(政治活動や報道への規制など)もある。だが何より、国民投票法案は憲法改悪のための「手続き法」にほかならず、わが国とアジアの平和を願う労働者・労働組合にとっては、断固打ち破らなければならないものだ。
 各種世論調査で見ても、九条をはじめとする現行憲法の「平和主義」の原則を支持する声は強い。だからこそ、二〇〇〇年に衆参両院に設置された憲法調査会を手始めに、支配層は系統的に改憲手続きを進めてきたのである。しかも与党は、この改憲手続きに野党を巻き込もうとやっきになっている。現在も、「与党単独(での協議)は無理」(中山・衆院憲法調査特別委員会委員長)としているし、公明党がいまごろになって「慎重」姿勢を演じているのも、選挙への影響を恐れるとともに、野党の抱き込みに必死だからである。
 その思惑に積極的に乗っているのが、野党第一党の民主党である。
 小沢代表となってからの民主党は、与党との「対決」を前面に打ち出し、憲法改悪についても「急ぐ理由はない」(小沢)などと、与党とは異なった態度を見せている。だが、本質は与党と変わらない。
 民主党が国民投票法案の早期成立や公聴会開催に異論を述べているのは、「(憲法に限った投票法ではなく)一般法としてつくった方がいい」(小沢)とか、審議日程などを理由とする、手続き上のものでしかないのである。
 そもそも民主党は、その結党当初から「論憲」を唱え、改憲策動に積極的に乗ってきた。加えて、「(改憲は)民主主義の強さ」(菅代表、〇三年)などと繰り返してきた党である。昨年、小沢が代表となった後も、国会に独自の投票法案を提出したし、投票法案は「自公民三党の賛成で成立させるべき」と、自民・公明とともに法案の共同修正作業を行ってきた経過がある。
 まさに、民主党は政府・与党とともに改憲手続きを進めてきた共犯者ではないか。いまごろ「対決」などと言ってみたところで、だれが信じるというのか。民主党の態度は、まさに統一地方選、参議院選挙をにらんでのポーズでしかない。
 もちろん民主党内には、少数ながら憲法改悪に反対する議員がいることは事実である。だが、「党内に護憲派はいない」(枝野筆頭理事)と言われている事実を、どう考えるのか。
 憲法改悪に反対する労働者・労働組合、知識人、青年学生は、この党に幻想を持つことはできない。
 国民投票法案を葬り、亡国的な「主張する外交」と闘わなければならない。労働者・労働組合の果たすべき役割が問われている。


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