労働新聞 2007年3月5日号・2面 社説

改めて問われる、
わが国の歴史認識

わい曲許さず、
アジアとともに生きよ

 韓国の盧武鉉大統領は三月一日、旧日本帝国主義支配下の朝鮮で起こった、独立運動記念日に際して演説しした。大統領は、「歴史教科書、慰安婦、靖国神社参拝などは、日本が誠意さえあれば解決できる問題」であり、日本政府に「何よりも歴史的真実を尊重する態度と、それを裏づける実践が必要」と求めた。発言は当然すぎる内容であり、これは全アジアの声でもある。
 おりしも、朝鮮半島における旧日本軍による住民虐殺とその隠ぺいという事実の一端も明らかになっている(宇都宮日記)。
 さまざまな思惑はあろうが、米下院でも、慰安婦問題での、日本政府の謝罪を求める決議案が審議されている。
 だが、政府、自民党は、米下院での決議案は「事実にまったく基づいていない」(麻生外相)と開き直る始末で、侵略と植民地支配の歴史的事実を真っ向から否定している。民主党の一部議員も含め、南京大虐殺を否定する議員の会合まで行われた。
 こうした歴史わい曲の策動は、安倍政権の登場とともに、いっそう強まっている。安倍首相自身も、いったんはその「継承」を認めた「河野談話」(注)に言及することをやめ、「慰安婦」強制を否定する態度に転じている。安倍からすれば「本音」が出たにすぎないにしても、絶対に許せぬことである。
 わが国マスコミも、意図的にアジアの声を黙殺している。
 朝鮮半島をはじめ、旧日本帝国主義の抑圧に苦しんだアジア人民にとっては、侵略と植民地支配は、決して過去の問題ではない。
 しかも、安倍政権は「主張する外交」を掲げて登場し、国連安全保障理事会における朝鮮制裁決議を主導、米軍再編への全面協力や集団的自衛権行使容認、核武装論までが公然化している。衰退する米国を支えながら、わが国多国籍大企業の権益を守るため、経済力にふさわしい国際的発言権を求めて、アジアでの覇権を狙っているのである。
 この対米追随の政治軍事大国化策動の強まりに対して、アジア諸国・人民が警戒を強めるのも当然である。
 こうした歴史わい曲の攻撃は、この「主張する外交」を首尾よく進めるための国民へのイデオロギー攻撃であり、国民運動で打ち破らなければならない。
 共産党のように、「侵略美化の異常」と一般的に指摘するだけでは無力である。「侵略美化」というだけならば、歴代自民党政治に共通した性格であり、とくに安倍政権に限らないのである。これでは安倍政権の危険な策動の狙いを暴露し、広範な国民に闘いを呼びかけることはできない。
 安倍政権の「主張する外交」との闘いを強めなければならない。
 そのためにも、歴史への真摯(しんし)な反省と謝罪、適切な補償を実現させることが重要である。日本国内で強まる排外主義との闘いと併せ、歴史わい曲のイデオロギー攻撃と闘う世論づくりが、早急に求められている。

河野談話 九三年、河野官房長官(現衆議院議長)が発表した談話。不十分ながら、「慰安所」への軍当局の関与を認め、「慰安婦」強制にも国が加担していた例があることを認めたもの。


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