労働新聞 2006年12月5日号・2面 社説

朝鮮総聯への不当弾圧を許すな

 警視庁公安部は十一月二十七〜二十八日、「薬事法違反」を「容疑」とし、数百人の警察官・公安を動員して、朝鮮総聯東京都本部、新潟祖国訪問事務所などに対する強制捜索を強行した。
 警察は、在日朝鮮人女性が本年春に北朝鮮を訪問した際、医薬品を持参しようとしたことをもって、約半年後のいまになって「薬事法違反」をでっち上げた。
 続く二十九日には、神奈川県警が「労働者派遣法違反」を口実として、在日本朝鮮人科学技術協会(科協)への弾圧を行った。
 マスコミは、科協がミサイル・核開発などと関係があるかのように騒ぎ立てる、異常なキャンペーンを張っている。
 これら一連の捜索は、一〇〇%不当な政治弾圧である。当事者である在日朝鮮人諸団体は、すでに各種の抗議行動に立ち上がっている。これらは当然で、警察当局の非道・卑劣な弾圧は、断じて許すことができないものである。
 今回の弾圧の狙いは、とりわけ七月のミサイル発射、十月の核実験を機に激しくなった、北朝鮮への独自制裁に代表される敵視政策を正当化し、エスカレートさせようとするものである。すでに各地で、在日韓国・朝鮮人への迫害や嫌がらせ、民族的イベントへの妨害、総務省直々の指示に基づいた、在外公館に準ずる施設である朝鮮総聯施設への不当な課税などといった敵視と排外主義が続発している。弾圧は、これをいっそうあおるものだ。
 同時に、安倍政権が進める「主張する外交」、集団的自衛権の行使容認や教育基本法改悪、核武装論の公然化などの、対米追随の政治軍事大国化の道と結びついていることは言うまでもない。
 わが国支配層は、北朝鮮との間に絶えず緊張の種をつくり、国内で不断に敵視をあおって最大限に政治利用している。
 同時に、朝鮮総聯を手始めとして、労働運動など日本国内のあらゆる民主的運動への弾圧を強めるという、思想・政治上の意図があることも、指摘しておかなければならない。その意味で、全日建連帯労組へのたび重なる弾圧や、自治労・日教組つぶしを狙った各種のキャンペーンと、根は同じである。
 だから、心ある中央・地方の政党・政治家・議員、労働組合、知識人は、この不当弾圧と排外主義を許してはならず、まして、敵の攻撃に手を貸すようなことがあってはならない。
 そもそも、約七十万人の在日韓国・朝鮮人は、わが国の朝鮮半島に対する侵略と植民地支配の犠牲者として、日本に住むことを余儀なくされた人びと、およびその子孫なのである。かれらの人権を擁護し、ともに生きる社会をつくることは、わが国政府・自治体の当然の義務であっても、敵視や迫害は言語道断である。
 在日朝鮮人の闘いを孤立させてはならない。この攻撃を見過ごしては、安倍政権による対米追随の戦争の道と正面から闘うことはできないし、アジアと共生するわが国の進路を実現することはできない。
 独立・自主の国進路を切り開く上で、在日朝鮮・韓国人をはじめとする在留外国人との良好な関係は、不可欠の課題だからである。
 この問題に無関心な態度を決め込んでいる野党の態度は、厳しく批判されるべきだ。
 わが党は、朝鮮総聯を先頭とする正義の闘いを断固として支持し、ともに闘うものである。


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