労働新聞 2006年12月5日号・2面 社説

「主張する外交」は
米追随と戦争の道

 安倍政権が成立し、二カ月余が経過した。これを機にあらためて、わが国のめざすべき進路について明らかにしておきたい。
 九月に成立した安倍政権は核実験を口実に、米国とともに朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対する「国連制裁決議」の採択を主導した。この一連の事態によって、わが国と北東アジアの情勢は一変した。安倍政権の踏み込んだ道は、北東アジア諸国、人民に、重大な災いを引き起こしかねないものである。
 安倍政権は政権発足直後、小泉政権下で行き詰まっていた中国・韓国との関係を「改善」したが、これをもって、安倍外交が「穏健」だとか「自主的」であるなどとは言えない。中韓訪問はむしろ、北朝鮮包囲網を形成するという危険な意図を秘めたものであり、米国の意向にもそうものであった。
 そして、これが安倍の言う「主張する外交」の第一歩だったのである。
 「主張する外交」は、衰退する米帝国主義に追随し、これを支えながら、多国籍大企業の権益を守るため、経済力にふさわしい国際的発言権を実現しようという危険なものである。
 わが国財界の主導権を握った多国籍大企業はドル体制に依存しつつも、安倍政権を突き動かして、経済連携協定(EPA)締結を進めることで「東アジア共同体」を展望し、アジア市場を基盤として、米欧多国籍大企業との市場争奪に備えようとしている。
 そのためにも、わが国支配層は対米従属の下での政治軍事大国化を望んでいる。北朝鮮問題を口実に、日米「共通戦略目標」合意にそった在日米軍再編の強行、日米の軍事一体化、ミサイル防衛(MD)をはじめとする集団的自衛権の行使容認などを、急速に進めようとしているのだ。安倍政権は、わが国の核武装問題も、政治問題として登場させた。
 本来、資源のないわが国は、アジア諸国との共生なしに存立しえない。それを真に実現するには、わが国が対米従属を脱却し、独立・自主の国の進路を実現する以外にない。
 だが、北朝鮮や中国など、アジアの国々を敵にする日米軍事一体化、まして核武装を含む軍事大国化は、アジアの平和とわが国の進路にとって、亡国の選択である。対米追随外交では、財界の願う「東アジア共同体構想」さえ、実現は不可能なのである。
 そもそも米帝国主義は、わが国が東アジア市場を独占することを決して許しはしない。これは、先のアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、わが国の「東アジア共同体」をめざす動きをけん制して、米ブッシュがAPEC全域自由貿易圏(FTAAP)構想をぶち上げたことで、すでに明らかだ。
 こんにち国の進路、民族の前途をめぐって、二つの道が鋭く問われている。「独立・自主でアジアと共に繁栄する道」か、「対米追随でアジアに敵対する戦争の道」かである。
 わが国の生きるべき道は前者しかないはずである。一方、安倍政権の進める道は後者である。
 安倍政権の道は、かれが頼る米国の急速な衰退と北朝鮮制裁をめぐる諸国の足並みの乱れ、あるいは安倍自身への支持率低下などにより、早くも行き詰まりを見せている。
 しかし、マスコミはもちろん野党までもが、中韓との関係を「改善」した安倍政権の外交をほめたたえ、あるいは批判を避け、北朝鮮敵視の大合唱に加わっている。独立の課題で対抗軸を出せない野党では、安倍政権には太刀打ちできない。
 まずは、北東アジアでの戦争にもなりかねない情勢を打開しなければならない。北朝鮮への敵視と制裁を即時中止し、東アジアの平和・繁栄をめざしてアジアの共生へと、国の進路を切り替える政治の実現をめざすべきである。
 対米追随で、多国籍大企業のための安倍政権を暴露し、行動する強力な国民運動を構築して対抗しなければならない。北東アジア諸国、労働者・人民、在日外国人との連帯を強めよう。
 労働者・労働組合は、闘う戦線の中心的組織者とならなければならない。壮大な戦線を急速に発展させるために、多くの政治家、政党、政治グループ、各分野の活動家などの団結が欠かせない。
 国の進路の打開は、国民諸階層にとって、いっそう差し迫った課題となっている。


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2006