労働新聞 2006年8月5日号・2面 社説

イスラエルの無法なレバノン侵略

米国主導の「国際社会」の
正体があらわに

 イスラエル軍は七月十二日、隣国レバノンのイスラム教シーア派組織「ヒズボラ」による兵士拉致に対する報復を口実に、レバノン南部への大規模空爆を開始した、首都ベイルート空港や道路などを破壊した。さらに十七日からはレバノン南部に地上軍を投入し、病院や国連施設にまで攻撃を行うなど、無法な侵略を続けている。
 これにより、六月からのパレスチナ自治区・ガザ地区への攻撃と併せ、中東和平のロードマップは完全に破たんした。
 イスラエル軍の侵略行為によって、レバノンではすでに七百人以上が殺されたが、その大部分が一般市民である。四百万人の国民のうち、すでに百万人が難民化していると報じられている。中東をはじめ世界各地で、イスラエル侵略とそれを支持する米国への抗議が広がっている。
 わが党は、イスラエルによる無法なレバノン侵略とそれを支える米国を糾弾するとともに、ヒズボラなどアラブ人民、パレスチナ人民の闘いを断固として支持する。
 このイスラエルのレバノン侵略に対して、国連や主要国首脳会談(G8)など「国際社会」はまったく無力である。その原因は、米国のブッシュ政権がイスラエルを支持・擁護しているからだ。
 アラブ連盟などは国連に停戦の仲介を要請したが、国連は米国の反対によって、何の効力もない「議長声明」しか出せなかった。イスラエル軍のガザ侵攻中止を求めた決議案は、米国の拒否権で葬られた。
 そもそも、イスラエルは一九四八年の一方的な建国以来、パレスチナ人を暴力的に追い出し、周辺国に対して武力行動を繰り返してきた。米国はイスラエルによる侵略と占領を半世紀以上にわたって支持し、政治的軍事的に支えてきた。それどころか米国は、抵抗するパレスチナ人やアラブ人民に「テロリスト」と悪ばを投げつけてきた。ヒズボラがレバノン国会に議席を持つ合法政党である事実など、一切おかまいなしだ。
 ブッシュ政権は二〇〇三年、根拠のない「大量破壊兵器」という口実でイラクのフセイン政権を打倒した。こんにちも米国は、「国際社会」の名の下に、イランや朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に圧迫を加えている。
 だが、核兵器を保有し、パレスチナとアラブ諸国を侵略して殺りくを繰り返しているイスラエルに対しては、経済制裁どころか非難一つしない。今回の侵略による犠牲に対しても「新しい中東の生みの苦しみ」(ライス米国務長官)などと開き直っている。
 米国は、イスラエルを使って、ヒズボラを支援しているとされるイランをけん制するなど中東諸国の反米気運を鎮圧し、諸国の体制転覆をもくろんでいる。狙いは、この地域の原油の支配である。
 まさに、米国こそが中東和平の真の敵なのである。
 レバノンをめぐる事態は、マスコミや共産党などが美化する「国際社会」が米国主導のものにほかならず、これに頼っては平和を実現することなど不可能であることを、改めて明らかにした。
 しかし、米帝国主義に反対する全世界の諸国・人民の闘いは強まり、米国はますます孤立している。イスラエルへの支持は、米国の国際的孤立をいっそう深刻なものとしている。
 だが、小泉政権は世界のすう勢に反し、対米追随の政治軍事大国化の道に踏み込んでいる。中東問題でも、イスラエルを訪問した小泉首相は、ルメルト首相との会談中に空爆が始まったことを知りながら何らの抗議の意思も示さないことで、イスラエルの無法を追認したのである。
 このような小泉首相が「(パレスチナを)平和と繁栄の回廊に」などと言ったところで、欺まんでしかない。むしろ、自らの政治大国化のために中東問題を利用しようという姑息(こそく)な態度は、アラブ・中東人民の怒りを買うのが関の山だ。
 中東・アジア諸国との友好こそ、わが国の平和と繁栄の道である。とりわけエネルギー資源が乏しい日本にとって、米帝国主義に追随し中東人民に敵対することは、国益に反する亡国の道である。
 売国奴・小泉政権を暴露し、中東・アジア諸国との平和・友好の外交を実現するため、国民運動を巻き起こさなければならない。


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