労働新聞 2006年3月15日号・社説

社会民主党
第10回大会について

 二月十一、十二の両日、結党十年を迎えた社会民主党が、第十回党大会を開催した。
 今回の大会では、これ以降十年間程度の政治方針を示したとする綱領的文書、「社会民主党宣言」(以下「宣言」と表記)が討議、採択され、規約改正や新たな中央指導部体制も決定された。
 福島党首は、今回の大会を、「宣言」を採択し「新たな一歩を踏みだす大会」と位置づけ、「これからを社民党躍進の十年にしよう」と訴えた。
 さらに今回の大会で注目されたのは、九四年の自民・社会・さきがけの三党連立の村山政権下で、当時の社会党が「憲法の枠内」と認めた自衛隊について、「事態は非常に変わった」として「現状、明らかに違憲状態にある」との認識を示したことである。また、九四年の通常国会で、党の決定に反して、小選挙区比例代表並立制を導入した政治改革四法案に反対し、処分された社会党国会議員の名誉を回復。当時の社会党の判断の誤りも認めた。
 自民・公明の与党や野党の民主党、さらにマスコミはこれを、「先祖がえり」と揶揄(やゆ)しているが、敵に反対されるのは悪いことではない。
 しかし、例えば福島党首の記者会見などによれば、少なくとも自衛隊や日米安保条約などの基本政策については、「路線転換ではない」「当時の村山首相の判断について、正しかったのか、間違っていたのかと問い直すものではない」と繰り返しており、今回の大会が、村山政権下の誤りを自己批判し、根本的な路線転換をはかったものと見ることはできない。
社民党をめぐる内外情勢の変化
 社民党は、昨年九月の総選挙で、惨敗必至、解党的危機との大方の予想と異なり、踏みとどまることができた。もちろん衆院七、参院六名という議員数は、かつての社会党と比べるべくもなく、小選挙区比例代表制の下で、存亡の危機に変わりはない。
 しかし、総選挙以降の数カ月で、内外の情勢は変化し、政治の「潮目」は急速に変わった。
 公明党に支えられ、総選挙で大勝した小泉政権だったが、耐震偽装やライブドア事件などの四点セット、アジア外交の完全な行き詰まり、更にはポスト小泉で低下する求心力など、その危機を深めている。
 このような中で、財界のための安定した政治システムとしての「二大政党制」は、自民党に対する一方の極、装置としての民主党が、基本政策で明確な対抗軸を打ち出せず、対米追随と改革政治を自民党と競いあう中で、その化けの皮がはがれつつある。労働者、労働組合の中での、民主党の暴露が急速に進みだした。全体としてのこのような情勢、政局の変化が、社民党の置かれた状況に影響を与えている。選挙での敗退を続け、意気消沈していたこの党が、国民の中の民主党への失望、社民党へのある種の期待を感じ、大会を契機に「躍進を」と意気込むには、そのような背景があった。

大会に現れた支持すべき変化

 しかし、その社民党は大会を経てどのように闘おうとしているのか。他党のことながら、強力な国民運動と広範な国民的統一戦線を形成する角度から、われわれもまた、注目せざるを得ない。
 新たな綱領的文書として採択された「宣言」は、その冒頭で「格差のない平和な社会を目指して」と、目指すべき社会像について触れ、護憲、平和と併せて格差是正を強く打ち出した。
 社民党が、それ以前の護憲一本槍の方針から、改革政治に苦しむ国民諸階層の生活や営業の課題へと政策的な広がりを見せていることは評価すべき変化であろう。これは、わが党が昨年総選挙の総括で指摘した点でもある。
 非正規雇用の拡大、地域間格差や所得格差など、大会ではこの問題での闘いを望む発言が、地方や現場の党員から多く出された。これらの課題で社民党が国民の要求にこたえて闘うとすれば歓迎すべきことである。
 さらに労働組合との連携強化を打ち出したこと。中小業者、個人商店や農漁民など市場開放や自由化、規制緩和の中で苦しむ中間層との連携と支援を強調していることも重要である。かつての社民党の中にあった「市民の党」的な、狭くあいまいな路線からの脱皮を意味するならば、注目に値する。
 福島党首が「米軍基地強化は、米軍と自衛隊が一体となって行動し、世界戦略を行っていくこと」と暴露し、これとの闘いを呼びかけたことも重要である。米軍再編に反対する闘いで、社民党が積極的役割を果たすことが求められている。

あいまいな見解・・誰と闘うのか

 一方、いまだ不確かな部分、重要な課題での不徹底な見解も目立つ。
 「宣言」は「競争最優先の市場万能主義に立つ新自由主義」「強大な政治・経済・軍事力を背景に特定の価値観を押しつけようとする新保守主義」が台頭したことが、世界で格差と不平等が拡大し、戦争の危機を高めている原因と指摘している。
 しかし問題なのは、この新自由主義や新保守主義は、誰の利益に奉仕し、誰が推進しているかということである。
 今日の世界で、貿易や金融の自由化をかかげ、世界貿易機関(WTO)など不平等な国際協定で途上国、資源国を縛り付け、全世界規模で搾取と収奪をほしいままにしているものこそ、米国を中心とする帝国主義諸国に他ならない。
 また、強大な軍事力に頼って、窮地に陥った世界支配を維持しようと、「民主主義の拡大」などと全世界で挑発と恫かつ、侵略戦争を行っているものこそ帝国主義の頭目米国である。
 新自由主義や新保守主義なるものはこれらの帝国主義の行動を合理化し、正当化する理論、政策、イデオロギーに他ならない。
 だから全世界の人民は、自国の支配層と闘うだけでなく、全世界の弱小諸国と連帯し、帝国主義と闘わねばならないのであって、「宣言」は今日の時代のこのような中心課題を覆い隠すものと言わねばならない。
 わが国においては、米軍再編に反対する闘いに見るまでもなく、米帝国主義によるわが国への政治、経済、軍事的な不当な支配、圧迫に反対し国民的戦線を形成して闘わねばならないのであって、「宣言」はこの点が極めてあいまいである。
 さらに決定的な問題は、わが国において闘うべき敵は誰なのか、「宣言」がこの点で全く口をつぐんでいることである。小泉政権が対米従属の政治・軍事大国化を急いでいるのも、改革政治の加速化を叫んでいるのも、わが国財界の指導権を握った多国籍大企業の利益に奉仕するために他ならない。多国籍企業の頭目で日本経団連の会長奥田は、そのビジョンで「抵抗を蹴破って進め」と小泉を叱咤している。「宣言」がいう格差是正も平和もこの多国籍企業の政治支配と闘うこと抜きに実現できないのは明白である。
 敵は新自由主義や新保守主義などと言った抽象的なものではない。それは極めて具体的である。重要なことは、このような闘うべき敵を明らかにし、これと闘う広範な戦線を形成することでなければならない。そうでなければ、個々の闘いは方向が不確かで、無力なものとならざるを得ないからである。
 「宣言」の採択に当たって、「多国籍企業や金融独占資本への批判を強める」ことや、「対米従属からアジア重視への外交政策の切り替え」などを求める補強意見があったと伝えられる。これは当然で、重要な指摘というべきである。

団結し、行動する国民的統一戦線を

 先の総選挙での自民党の分裂や、民主党の混迷に見られるように、敵の画策する二大政党制は分化する可能性を秘めている。しかしそれはわが党や社民勢力を含む、左派、闘う側がより広い団結を進め、力をつくり出せるか否かにかかっている。わが党が、社民勢力を含み、いっそう幅広い国民的基盤を持った議会での新たな党の提案をしているのは、このような理由による。
 社民党が、わが国政治情勢の中で、真に一定の役割を果たしたいと願うのなら、小選挙区制に制約された国政選挙での、議席の増減にのみ汲々とするのでなく、身を捨てて、全局の団結のために力をつくすべきである。
 独立・自主の国の進路実現、改革に反対など、政治方向を明確に、党派を超えて団結し、行動する、国民的統一戦線を形成し闘うことが求められている。


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