労働新聞 2004年10月25日号 社説

三菱自工労働者支援の闘いへの
不当弾圧をはね返そう!

 「三菱自動車岡崎工場の閉鎖問題に絡み、同社や労組を批判するポスターを電柱などに張った」として、愛知県警公安3課と岡崎署は、「張った」事実があったとされる7月から3カ月もたった10月14日、岡崎市屋外広告条例違反と軽犯罪法違反の容疑で、愛知県内の労働者1人を不当にも逮捕した。同時に、他の3人の労働者宅に家宅捜索を強行した。
 さらに愛知県警は、わが党愛知県委員会事務所(名古屋市)と労働新聞社、党中央機関の事務所(東京都)に対しても、家宅捜索を行なった。わが党は、この愛知県警の暴挙に対して、すでに党中央委員会政治局として抗議声明を発表した(前号1面参照)
 声明でも述べたように、この弾圧は、三菱自動車岡崎工場の閉鎖など理不尽な攻撃に抗して粘り強く闘っている労働者、労働運動に対する、口実をつけた不当なものであり、労働者の闘いを支援するわが党に対する、狙いを定めた政治弾圧である。それは、軽犯罪法4条の「濫用(らんよう)の禁止」という規定に反した理不尽さと、さらにポスター張り容疑で逮捕(しかも現行犯でない)した労働者に対して、10日間の拘留延長と接見禁止措置を行うという暴挙でも明白である。
 現在、闘いを組織した労働者、さらに党愛知県委員会の対策本部のホームページには、多くの激励の声が寄せられている。「働く者の意見を代弁した人たちへの不当な弾圧に怒りを覚えます。三菱のリコール隠しによる『殺人』や、経営責任を労働者に押し付けて解雇や遠隔地への単身赴任を押しつける三菱のやり口にはだれもが許せない気持ちでいると思います。逮捕された方が即時釈放されるよう応援したい」「犯罪企業を批判しただけなのに犯罪になるのか。警察は犯罪企業の手先か。欠陥車で人を殺した企業と、それを批判した人と、どっちが犯罪なのか」。
 これらの声は、資本家の強搾取と非人間的労働に苦しむ労働者の、共通の感覚・思いであろう。

あくどい三菱自工「事業再生計画」

 あらためて、死傷者まで出した三菱自工の欠陥車隠しと虚偽報告に端を発した、リストラ計画について振り返ってみる。
 三菱自工は5月21日、企業、経営陣の責任をなんら示すことなく、岡崎工場の2006年3月閉鎖などを含む「自工事業再生計画」を公表した。これは、岡崎工場の労働者1800人の職場を奪い、関連下請け、家族など計1万人もの犠牲で企業を守ろうというもので、断じて認めることのできないものであった。
 自工労働者によると、24日、工場の所長説明会では、明確な報告がない中、労働者の1人が「不祥事は経営者の責任。なぜ、その尻拭いを私たちがしなければならないのか」と声を上げると、参加した労働者は一斉に声援を送り、拍手がわき起こったという。31日、この職場で開かれた組合支部との懇談会では、支部役員に対して「組合は、会社の施策に協力せよと号令をかけ、失敗すれば知らん顔か! お前たち執行部は居残るつもりだろう! 責任を取れ!」と罵声が飛んだ。
 6月3日に行われた三菱自工会長との対話集会でも「犠牲にされる私たちの気持ちが分かるか」「工場を閉鎖してどうがんばれと言うのか」などの怒りの声が飛んだ。こうした発言は、当然の意見である。
 「これからは皆さんと対話していきたい」と述べた会長の舌の根も乾かぬ16日に発表されたリストラ「追加施策」は、「聖域なきコストカット」と称して、2年間給与5%削減、年末一時金ゼロ、人員削減の加速などを含む、まったく理不尽なものであった。さらに7月7日には、05年末までに岡崎工場を閉鎖する前倒し案を提案した。
 26日には、1800人の労働者に対し希望退職200人、近隣企業へのあっせん400人、岡山県水島工場などへの配転を発表した。提案には明記されていないが、会社は500人以上の「人員整理」を事実上進めている。三菱自工は、「雇用は守る」とか「労働者は再建の貴重な戦力」などと言いながら、再就職支援策の発表を意図的に遅らせ、労働者を自己都合退職に追い込んでいる。水島などへの配転は、生活基盤が岡崎地域にある労働者にとって「会社を辞めろ」と言うに等しいものである。
 リコール隠しなど会社の社会的責任が追及されているが、それはあげて、利益最優先で事故の隠ぺい工作すら行なった経営陣が負うべきである。だが、犠牲はすべて、肩身の狭い思いをして辛苦に耐えてきた労働者に押しつけられようとしている。これを暴挙と言わず何と言うのか。
 本来、労働者の利益を守り、闘いを組織すべき労働組合はどうか。
 自工労組の水川委員長は、リストラ追加策発表直後、無条件支持を表明した。しかも、これは、組合員どころか組合機関の意見すら聞かないまま、「労働条件の不利益変更」を独断で受け入れるというもので、断じて許せない裏切り行為である。水川委員長は、労働者の雇用を守ることなど眼中にない会社の走狗(そうく)であることを、自己暴露した。

闘い呼びかければ大きな力になる

 会社の不祥事で労働者が犠牲にされるという現状に、地域の労働者は、「同じ労働者として三菱労働者の窮状を見過ごすことはできない」と、反撃の闘いを開始した。当該労組が闘いを放棄する中、こうした動きが起こることには道理がある。
 9月5日、地域の労働者の手で開催された「がんばれ! 三菱労働者岡崎集会」は、自治労、日教組、全逓、全労協、地域の労働者など、ナショナルセンターを超えて100人の労働者が参加、大成功した。
 発言した岡崎工場の労働者は、「私たちががんばれるのは、地域の連帯した力があってこそ。力を貸してほしい」と連帯を求めた。参加した地域の労働組合代表も「大変だろうが、がんばって欲しい。私たちは、あらゆる支援を惜しまない。私たちも当局から不利益変更を求められ苦慮している」とこたえた。
 三菱自工、警察、当局は、このような労働者の頑強な闘いが発展し、階級的連帯が地域に広がり、社会的影響が拡大することを心底恐れている。だからこそ結託して、労働者、労働運動に対する不当な弾圧攻撃を行なったのである。これは、労働者の闘いが効果をあげ、敵を追い詰めている証拠でもある。
 わが党は、こうした労働者の闘いをどこまでも支持し、共に闘う。

地域ぐるみの闘いの発展を

 小泉政権は、グローバル経済のもとで、多国籍大企業の国際競争力強化のため、不良債権処理、規制緩和、行財政改革、労働の規制緩和など、経済社会システムの大改革を急ぎ、国民生活と国民経済に犠牲を押しつけている。
 こうした中での、大企業のリストラ攻撃は、労働者だけの問題ではない。工場閉鎖や海外移転ともなれば、多数の下請け、地域商店街、地域経済にも大きな犠牲を強いることになる。したがって、闘いは地域全体の課題である。
 とくに自治体は大きな責任と重要な役割を担っている。なぜなら、三菱自工など大企業は、優遇税制など自治体の支援で膨大な利益をあげてきたからで、自治体には第3者的態度は許されない。住民の側に立って企業に抗議し、大企業の社会的責任を追及すべきである。
 労働組合・連合の姿勢も試されている。しかし、連合は02年12月、政府、日本経団連との間で「雇用維持を図る場合、労働条件の弾力化に対応する」などと譲歩を約束する「政労使合意」を結んだ。政府と経営側に闘わないように求められ、事実上屈服しているのだ。
 また、政党の態度も問われている。国政はもちろん、市議会、県議会などでの雇用問題での真剣な議論はわずかである。連合の支援を受ける民主党だが、最近は企業献金ほしさにしきり財界に媚(こ)びをうり、小泉と「改革を競い合う」のが実態で、労働者の味方などではまったくない。
 岡崎工場に組織を持つ共産党も、宣伝を1度行っただけで闘いの先頭に立つことは一切なかった。選挙一辺倒で、現場の闘いの発展を恐れるこの党に期待することはできない。
 大衆的闘いこそ力である。心ある活動家、労働者も、下請け業者や小売業者も、地域住民も広く連携し、地域ぐるみの闘いを発展させよう。それこそが、資本、権力の弾圧に対するもっとも的確な回答である。


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