労働新聞 2004年8月5日号 社説

2大政党制を「左」から支える
共産党の犯罪性


 第20回参院選挙が終わり、参院での各党の新たな勢力分野が確定した。
 与野党関係という意味では、議席数に大きな変化は生まれず、自民、公明の連立与党が衆参両院の多数を制するという状況が続いているが、支配層、財界の意を受けたマスコミは、「2大政党化の流れが加速」したと、昨年総選挙時以上に、選挙経過と結果を通じた、意図的なキャンペーンを強めている。
 各党は選挙総括を発表し、次の局面に向けて動き始めた。与野党それぞれなりの評価は当然としても、国の進路の重大な岐路、激変の前夜に際して、闘おうとする者が今回選挙結果から何をつかみ、以降の闘いの発展に生かすか。これは重大な問題である。
 このような角度で各党の総括を見る時、とりわけ共産党の態度、以降の方針は危険で、その客観的役割を暴露しておくことが重要である。

自民の歴史的衰退と連立与党の危機

 今回参院選挙結果の分析、そこからかいま見られる有権者の意識や政党支持の動向、その変化をどのように見るべきかについて、本紙は、7月25日号で、わが党中央委員会政治局の声明を発表している。
 そこで明らかにしたように、自民党は、「小泉効果」も完全にはげ落ち、むしろ、イラク多国籍軍への自衛隊の派兵など、徹底的な対米従属の政治、さらに国民生活、国民経済を破壊する改革政治の加速化で、とりわけ地方などの歴史的な党の支持基盤が急送にくずれ、敗北した。
 この衰退する自民党を、選挙でも支えているものこそ公明党であった。かろうじて自民党の勝利となった1人区での自民・民主対決は、公明党の選挙協力がなければ逆転して、ここでも民主党の勝利となった。すでに、自民党は、公明党の協力なしには、自力で第1党の座を守ることすらままならないほどなのである。
 公明党は連立与党として政権に参加し、発言力を強めて、キャスティングボートを握ったまま、昨年総選挙、そして今回参院選と、着実な議席増加を図った。比例票の伸び率や、実際の自民党との選挙協力の効果など、頭打ちの傾向も見えてきたが、閣内におけるその存在感は、以降もさらに強まるはずである。
 しかし、自民、公明両党間には、福祉政策や教育基本法、憲法問題、安全保障など少なくなくない政策上の相違がある。しかも公明党は、イラクへの自衛隊派兵にあたって、神崎代表がイラクまで行って、現地の「安全性を確認する」などの猿芝居を演じたように、その支持基盤との関係で、いっそうの独自性を打ち出す必要にも迫られる。これは自民党と連立政権にとって、閣内にいわば巨大な抵抗勢力を抱えたようもので、以降の対米追随の売国政治と改革政治加速化の中で、新たな困難となって連立政権の維持さえ危うくするものとなるに違いない。
 自民党内では存亡をめぐって危機感が高まっている。民主党の前進も、さらに危機感を増幅させる。さらに与党の自公連立がいつまで維持できるか? 自公連立という現在の政治の継続と深まりは、それを可能としている条件を、ますます掘り崩しているのである。連立与党の危機は深く、政権運営はいっそう不安定となるであろう。

反自民の受け皿となれない民主党

 一方、財界の狙う保守2大政党制の一方の極、その装置と自らを位置付けることで、財界、マスコミ上げての支持とキャンペーンに支えられ、民主党は、躍進した。
 しかし、それは、自民党から離反した部分を吸収しての前進ではない。都市中小業者の1部を除き、例えば農村部で、自民党から民主党への大規模な票の移動は見られなかった。自民党以上に徹底した改革政策推進で、財界の走狗(そうく)としての姿を露骨に自己暴露する民主党が、改革政治に苦しみ、怒って、自民党から離反した層の、受け皿になれないことは、当然であろう。従って、今回の民主党の躍進は、その大半が、同じ野党の共産党や社民党のこれまでの支持者が、民主党に幻想を抱いて投票した結果として、実現したものである。これは共産党、社民党の無力さは示すにしても、民主党の前進の基礎が強固で安定的なものと見るべき根拠とはならない。
 例えば、民主党に飽き足らない多くの有権者は、対米従属政治と多国籍大企業のための改革政治に公然と反対し、国民経済を守る政策を掲げる野党が登場すればどうするだろうか。民主党の前進も野党内部での相互関係も、きわめて条件的なものである。
 また、今回の投票率も、政府、マスコミの大キャンペーンや、期日前投票などさまざまな抜け道的な選挙制度の手直しでも、低落傾向に歯止めがかからず、実に有権者10人中4人以上が投票所に足を運ばないという事態であった。自民党から離反した中間諸層など、有権者の多くは、投票すべき政党を見つけられなかった。支配層は、政治支配と議会政治の安定を狙って、選挙制度を改悪し、2大政党制へと強引に誘導しながら、その議会制度それ自身の形骸化、不安定化におびえてさえいる。議会の欺まん、茶番が深まるほど、議会外の行動で、直接の民主主義を実現しようとする闘いが高まることは、避けがたいからである。
 参院選挙の結果は、マスコミなどが騒ぎ立てる解説とは逆で、政治、政党の再編がいっそう劇的に起こる可能性が高まったことを示している。「2大政党制が定着」などと宣伝され、その傾向に向っているように見えても、一方でそれが崩れる要因もまた蓄積されているのである。

民主党への幻想あおる共産党

 支配層の進める2大政党制に反対し、このための道具、装置として自らを位置付け、対米従属と改革政治を自民党と競い合おうという民主党の役割を、労働者階級の中で徹底的に暴露しなければならない。よしんば自民党に変わってこの党が政権を握ったところで、多国籍大企業など支配層は安泰で、国民には引き続く地獄である。
 ところが、このような中で、惨敗した共産党は、引き続きこの民主党への幻想をあおるという犯罪的役割を続けている。
 「参議院選挙の結果について」の7月13日付けの共産党、常任幹部会の声明は、「自民か民主か、という2大政党の流れが強力につくられ」たと、いまさらのように敗因を語っている。しかし、その2大政党制の一方の装置としての民主党と、野党共闘路線を進め、労働者の中で民主党の暴露が進むことを妨げてきたのは、共産党自身であった。
 しかも、志位委員長は、開票直後のテレビインタビューでも、「野党共闘は今後もありうる」と言明している。
 そもそも共産党は、97年の第21回大会で、「21世紀の遅くない時期の民主連合政府樹立」を打ち上げ、保守政党との連立による政権参加を目指す路線を選択した。以降、今年はじめの二十三回大会での綱領改定を含め、米国にも財界にも「安心して政権を任せ」てもらえる党を目指して、柔軟路線をひた走ってきた。とりわけ、自公連立政権下では、民主党との連携、共闘を重視する政治戦術を取ってきたのである。
 総選挙での惨敗を受けた、23回大会での志位委員長報告では、2大政党制を批判する一方で、「民主党の政策と立場は自民党と全分野で同じとなったわけではない」「国会共闘は今後もありうる」と引き続き、民主党への幻想を撒き散らすものであった。
 これは民主党にすがり、保守政党との連立で議会での政権参加を目指す、この党の幻想に満ちた政権戦略、それ自身の破たんを示すものである。
 共産党の展望喪失も、混乱もそれはこの党の勝手だが、民主党への幻想をあおるこの党の態度は、結果として2大政党制に向けた支配層の攻撃を「左」から支えるもので、徹底的に打ち破らなければならない。

 激変が近づいている。労働運動など広範な大衆的基礎のある国民的運動を強め、要求を実現する道を断固として進まなければならない。
 この国民運動と結びついて、議会でも闘う、新しい野党の登場は、必要で、いよいよその条件を拡大させてもいる。わが党は、社民勢力はじめ、広範な人びとのこの努力を、支持し、ともに支えるものである。


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