労働新聞 2004年6月25日号 社説

民主党「マニフェスト」を暴露する

多国籍軍参加反対も
農業、地方重視も真っ赤なウソ

 参議院選挙が始まった。
 財界は昨年の総選挙に続き、二大政党制の流れを固めようと、露骨な政治介入とキャンペーンを強めている。基本政策が同じ、二大政党による「政権交代可能な」政治システムをつくり出し、多国籍大企業など支配層にとって、安定的な政治支配を実現しようというのが狙いである。
 こうした財界の意図に呼応し、自らを二大政党制の一極に位置づけ、参院選での前進をはかろうという民主党は6月18日、参院選のマニュフェスト(政権公約)「国民とともに、新しい政治、新たな日本を創る」(以下、「マニフェスト」)を公表した。だが、「8つの約束」などとして打ち出された内容は、外交でも内政問題でも、自民、公明の与党以上に徹底的に売国的、反国民的なものである。しかも、票欲しさのあまりに、できもしない耳ざわりのよい公約を並べた政策は、欺まんに満ちた、国民、有権者を愚弄(ぐろう)する代物と言わなければならない。
 この民主党マニフェストを徹底的に暴露し、とりわけ労働者・労働組合の中で、その幻想を打ち破ることは、多国籍大企業のための売国政治と闘う国民的戦線を築く上で、きわめて重要な課題となっている。

小泉以上の対米追随こそ正体
 本来、参院選の第一の争点は、イラクへの自衛隊派兵や多国籍軍参加、さらに朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)敵視などわが国小泉政権の、時代錯誤の対米追随政治を転換し、独立、自主の新たな国の進路を実現するかどうか、ここにこそある。
 「マニフェスト」で述べられている民主党の外交政策の基本は、「日米同盟を成熟した同盟に強化する」というものである。「成熟した同盟」とは、「国際協調と日米同盟の両立」「協力すべきは行う、言うべきは言う」などというというもので、米国のために、世界で「ちょうちん持ち」の役割を果たそうという、自民党以上の対米追随を宣言するものである。
 事実民主党は、米国の戦争に国民を動員する有事法制に賛成、関連七法や北朝鮮敵視の改悪外為法、特定船舶入港禁止法を与党と共同提出、成立を推進し、対米追随とアジア敵視で、多くの「実績」をあげてきた。その売国奴ぶりは鮮明である。
 ところが今回、この党は、イラク駐留多国籍軍への自衛隊の参加について、唐突に「反対」を表明、自民党との違いを強調して、国民の支持をかすめ取ろうと画策し出した。
 しかし、民主党はかねてより、「国連決議に基づく自衛隊の活用」を主張してきた。多国籍軍参加は、こんにち、実質的にこの党を牛耳る、小沢前代表代行の持論でもある。菅前代表も5月、国連のアナン事務総長との会談で、多国籍軍参加を認める発言を行っている。ここには、何の政策的な整合性もない。
 しかも、マニフェスト発表直後の22日、同党憲法調査会が発表した、憲法改悪案の中間報告では、国連決議に基づく国連軍や多国籍軍などの集団安保活動への参加を明記している。
 多国籍軍どころか国連軍にも参加する。これがこの党の本音である。こんにちのイラク多国籍軍問題で、この党が問題にしているのは、「いったん撤退すべき」とか「新法が必要」などという手続き論に過ぎない。
 それどころか、民主党がもくろむのは、小泉以上の対米追随、海外派兵の常態化で、「マニフェスト」では、常設の「国連待機部隊構想」まで提案しているほどである。
 対北朝鮮政策でも、「国連安保理での問題解決」などと、国連による制裁まで騒ぎ立て、小泉以上に敵視をエスカレートさせている。
 民主党の基本政策が「日米同盟の強化」である限り、「派兵反対」などはポーズに過ぎず、腹黒い選挙向けの術策であることは明らかだ。

地方、農民の支持狙うが、本音は財界に忠実な改革政治
 参院選挙で、次に争点となるべき、多国籍大企業のための改革政治をやめさせ、国民生活・国民経済を守る、という課題ではどうか。
 「マニフェスト」は、「事業規制の原則撤廃」「市場のことは市場にゆだねる」などを強調し、構造改革推進の立場を鮮明にしている。社会保障では、「年金一元化」の名目での年金目的消費税の創設、地方制度では「道州制導入」などを主張する。
 これは、社会保障制度と地方財政の抜本改革を叫び、「消費税の二ケタへの引き上げ」などを主張する、日本経団連など財界の要求とまったく同じで、国民生活・国民経済を破壊する一方、一握りの多国籍大企業の利益に奉仕する立場である。
 従来、小泉と「改革を競う」(鳩山元代表)としてきた民主党からすれば、この基本政策は当然である。
 ところが、民主党は「マニフェスト」で「元気は足元(地方)から」「強い農業をつくる」などと言い、さも地方や農業の利益を守るかのようにアピールしている。その重視ぶりは、昨年の「総選挙マニフェスト」では「各論」に過ぎなかった地方政策を「8つの約束」の2番目に、農業政策を3番目に格上げさせていることでも明らかだ。
 これは、先の総選挙結果にもあらわれたように、地方、農村部で自民党の支持基盤が急速に崩壊している中で、この層の「受け皿」を演じようという、選挙目当ての姑息(こそく)な対策に過ぎない。従って、一歩踏み込めば、その欺まん性はすぐに暴露される。
 地方政策では、地方への約20兆円の補助金のうち、12兆円を一般財源化、5.5兆円を税源移譲すると言う。民主党は「地域が自由に使うことのできる財源にする」などと言うが、国の誘導の下でばく大な借金を積み上げ、交付税削減で財政危機に追いつめられている多くの自治体にとって、わずかばかりの財源移譲は焼け石に水である。しかも「一般財源化」などということになれば、真っ先に切り捨てられるのは、教育、福祉など住民サービスに直結する部分で、地方の住民生活と営業はさらに窮地へと追いやられる。現に、義務教育費や障害者施策費の一般財源化に対して、労働組合や自治体関係者から反対の闘いが起きているが、これは当然のことである。
 しかも、一般財源化でも税源移譲でもない、残り2.5兆円は削減される。昨年、小泉政権が強行し、予算が組めないほどに自治体を混乱させた交付税削減でさえ、約1兆円規模である。民主党は、これをより大規模に行い、さらに地方に犠牲を押しつけることを主張しているのだ。
 また、農林漁業政策について、「マニフェスト」は、「食糧自給率の向上」や「直接支払制度の導入」という大盤振る舞いを主張する。
 しかし、「自由貿易協定(FTA)推進」を掲げる民主党は、輸出大企業の利益のため、わが国農業を犠牲にしても、輸入農産物にわが国市場を明け渡すことを進めようとしており、「自給率向上」などは真っ赤なウソである。事実、この党のいう「直接支払い」は、現行の「農水省予算」内に限られるなど、微々たるものに過ぎないのである。
 多国籍大企業の利益のために、小泉政権と「改革推進」を競い合う民主党に、国内基盤の諸産業、地方も農業も、真の意味で重視することなどできない。小泉の悪政に苦しむ農民、中小業者は、この党のペテンを見抜き、打ち破らなければならない。

二大政党制の策動打ち破れ
 米国の急速な孤立化、国際的指導力の弱まりの中で、あくまで米国を支えようという小泉政権の徹底した対米従属政治と、多国籍大企業の利益のための改革加速化に対して、国民的怒りが高まっている。わが国国論は、いよいよ重大な岐路にさしかかっている。
 国民の高まる怒り、小泉政権に反対する各層の支持をかすめ取ろうとする民主党だが、「日米基軸」「改革推進」という基本政策との矛盾は、事態の推移の中でますます明らかとなり、急速に自己暴露が進むであろう。それは、財界が実現をあせる二大政党制策動の行き詰まりをも意味するものとなろう。
 売国的で反動的な小泉政権の悪政を打ち破る、もっとも確かな力は、広範な国民運動の中にこそある。さらにそれと結びつき、財界の進める二大政党制の策動を暴露し、議会でも真に闘う新しい党を形成するため、共同した努力を強めることこそ、緊急の課題である。


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