労働新聞 2004年4月5日号

7月の参議院選挙に
対する態度について

2004年4月5日
日本労働党中央委員会政治局

 

 通常国会も2004年度予算の成立を見て、後半戦を迎えた。いよいよ政局あるいは関心は、6月24日告示、7月11日投開票予定の参議院選挙に向けられることになった。

 昨年秋の衆議院総選挙では、自民、公明、保守新の与党は、かろうじて過半数を維持したが、保守新党は消滅した。民主党が進出し、共産党、社民党など、少数野党は激減した。今回の参議院選挙は、この政党間の新たな力関係を前提に争われる。
 自民党は、今回選挙の勝敗ラインを、改選議席の現有51の確保に設定するなど、守りの選挙で、単独支配どころか、公明党と合わせた与党全体での過半数維持を目指している。
 民主党は、一人区での議席の過半数確保を目標に掲げ、また全複数選挙区で多くの候補者を擁立、当選を目指し、比例選挙での大幅な前進を図り、次の総選挙に向けたステップにしようとしている。
 マスコミはこの選挙戦を、自民・公明の与党が現状を維持するか、あるいは民主党がこれを突き崩せるかに、もっぱらの関心を向け、解説あるいは論評している。
 これは、総選挙で行ったのと同様の二大政党制に向けた世論操作であり、少数野党を有権者の選択肢から排除しようとするもので、先の総選挙で激減した共産党、社民党にとっては、厳しい選挙であろう。
 だが、政党の描く風景や関心と、有権者、つまり、国民諸階級、諸階層の描く風景や関心とは、重大な関わりがあるものの、あるいはそれゆえに、ますます乖離(かいり)しつつある。



 小泉政権は昨年3月、米帝国主義によるイラク侵略戦争を、世界の大勢に逆らっていち早く支持し、イラクへの自衛隊の派兵を強行。憲法違反の集団的自衛権の行使に公然と踏み出し、さらに有事法をも通過させた。
 また、拉致、核問題を口実として朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への敵視政策を強め、反中国、反朝鮮など排外主義をあおり、アジアと世界の緊張を高める、亡国への道を急速に進めた。
 内政では、不良債権処理の加速化、自治体合理化など改革政治を進め、失業の増大、労働強化と雇用不安の拡大など労働者に耐えがたい苦しみを押し付けた。また、一部輸出大企業が史上最高の利益を上げる一方で、中小商工業者は銀行による貸し渋り、貸しはがしなどで倒産と廃業、存亡の危機に追い込まれた。地方自治体、地方財政の切り捨ても急速に進んだ。
 小泉政権の改革政治は、国内を切り捨て、国際市場でぼろもうけを続けようという、多国籍大企業の要求に従うもので、軍事大国化も海外派兵も、米国に従い、世界での政治的、軍事的な発言権を確保しようという、支配層、多国籍大企業の狙いに沿うものである。
 だが、イラク戦争開戦から1年を経たこんにち、小泉政権とわが国支配層の意図は完全に失敗した。
 米国のイラク占領、統治はイラク人民の激しい抵抗闘争に遭遇し、米軍の死傷者は激増、傀儡(かいらい)政権の樹立にもてこずって、完全に行き詰まった。米主導の中東和平策(ロードマップ)も破たんした。いまや、米国内でもブッシュの支持率は急落し、大統領選挙での再選も危ぶまれるほどである。
 さらに、イラク開戦をめぐって顕在化した米欧間の亀裂はいっそう激化し、いまやその亀裂が一時的でないこともきわめて明らかになった。欧州連合(EU)の25カ国体制への拡大は、欧州の統合を強め、EUは世界政治の上でますます存在感を増している。
 さらに欧州とロシアさらに中国は「戦略的パートナー」として多極化を掲げ、米一極支配に反対している。
 空前の規模の経常赤字と財政赤字を抱えた米経済への不信は、ドル安を加速し、ドル不安を拡大している。経済での衰退を背景に、米国の世界支配は崩壊に瀕し、その国際的孤立は深刻である。
 「強大な米国」に追随し、軍事でもこれを支え、次第に世界での発言権を得ようとした小泉のもくろみは、1年が経ったこんにち、いよいよ時代錯誤、孤立の道であることが鮮明となった。
 このような中で、自民党の有力議員からさえ自衛隊のイラク派兵への反対が公然と表明された。
 巨額のドル買い介入など、果てしなく国民資産をつぎ込んでドルを支え続ける、従属的な日米経済関係にも、保守層内部にも不安と、不満が高まりだした。対米追随外交全体、さらに憲法問題でも、自民党内部にさえ疑問、躊躇(ちゅうちょ)が高まっている。
 また、公明党は、神崎のイラク視察などさまざまなマヌーバーを弄(ろう)しながら、結果としてイラク派兵や有事法成立を推進し、年金改悪その他改革政治でも、与党として小泉政権を支え続けている。しかし、その暴露は急速で、支持基盤である創価学会内部からさえ不満が噴出、厳しい批判にさらされている。
 最大野党としての民主党は、イラク派兵に反対しているとはいえ有事法には賛成し、朝鮮敵視あるは改革政治でも与党と競い合い、憲法でも改憲の立場に立つなど、支持基盤たる労働組合「連合」の中からも公然たる疑問と不満が高まっている。二大政党制を狙うマスコミのキャンペーンにも関わらず、昨年総選挙の結果では、不況と改革政治に苦しむ都市中小業者、さらに若干の票が動いたにしても農民もまた、自民党に代わる強力な受け皿としてこの党を信じていないことが明らかとなった。民主党の暴露も進んでいる。
 こんにち、小泉の売国政治、改革政治に反対し、二大政党制など財界の画策に反対する、諸階層の力を組織する広範な国民的戦線の構築こそ急務となった。そして見るように、その客観的条件も拡大しているのである。



 このような情勢の中で国民的戦線を構築して闘うべき、第一の課題は、イラク派兵や有事関連法案など、軍事大国化を許さない闘い。また、朝鮮や中国敵視政策をやめさせ、自主的な対アジア外交の確立を求めるなど、対米従属外交からの脱却を目指す、国の進路をめぐる闘い。
 第二は、年金、社会保障、地方財政など、多国籍企業の利益のために、国民生活、国民経済を犠牲にする改革政治をやめさせる課題。さらに、景気、中小企業・商工業対策、農業・食糧問題、雇用確保など国民生活と地域経済の危機打開である。
 第三に、アジア敵視の排外主義と国内での政治反動の高まりに反対し、憲法改悪に反対する課題である。
 そして、何より重要で根本的課題は、これらの課題を闘って、小泉政権そのものを国民的力で打ち破ること。したがって、そのための大衆的基盤ある強力な国民運動、国民戦線を形成することである。
 当面する参院選挙の争点となれば、イラク派兵の是非、有事関連法案への態度、さらに年金、保険。地方財政問題や景気、雇用問題、そして、国民投票法、教育基本法改悪など日程に上りだした憲法問題があろう。
 ところで、その憲法問題だが、確かに、海外派兵や軍事大国化に反対し、あるいは改革政治に反対し国民生活を守る上から、憲法を守ることが重要であることは間違いない。しかも、民主党が「創憲」などと言って、憲法改悪を競う側に回っている中で、ことは切実でもある。
 しかし、問題なのは、この海外派兵にまで踏み出した、戦後史を画するようなこんにちの事態がなにゆえ生まれたか。なぜこれを阻止できなかったのか、ということである。
 戦後、憲法は改悪されなかったものの、敵は軍隊をつくり、膨大な軍事費も確保し、海外派兵も実現して有事法制をも通過させた。憲法さえ変えられなければいい政治だったかといえば、そんなことは決してない。
 それを許したのは、闘う側に、敵の攻撃を阻止する基本的な力がなかったからである。
 そしてその基本的力とは、社会を揺さぶるような労働運動であり、それを中核とした国民的な闘う戦線の存在である。
 わが党が、新しい議会の党を提起しているのも、これと関連している。こんにち、まだ多くの有権者が議会を見ている中で、このような党が再建できれば、国民運動の発展に大きく貢献するし、その条件もまた存在するからである。
 国民が目指すべきは、憲法を守ると言う狭い範囲にとどまらず、どのようにしてこの闘う強力な戦線を形成するかである。闘いをこの全体と切り離し護憲一本に切り詰めることは、あまりに狭く、国民の力を結集できず、結果として誤りである。



 わが党は今回の参議院選挙では、例外なく社民党の候補者を支持し、有権者にも支持を訴える。また、社民党の要請があり、かつ、わが党にも条件があれば、具体的な支援も惜しまない。
 だがこれは、わが党が社民党に期待を寄せ、この党に展望を見出しているからではない。それとは反対のものである。
 社民党の評価については、これまでもたびたび述べてきた。それを変えたわけではない。社民党は先の総選挙で激減、惨敗し、選挙区で1議席、比例で5の合計6議席になった。参院は5議席に過ぎず、いま改選2議席の維持さえ危うい。今回の参院選で、大きく前進できるという見通しは立っていない。つまりこの党に展望はない。これがわが党の評価である。
 命脈尽きたのにはいくつもの理由があろう。戦後史としての全体的総括、党内各派閥のそれぞれの総括、田辺、山花、村山、土井の指導部の総括、だが現在では総括のしようもないと思われる。党の指導部、中枢に、それができないところに、この党の悲劇がある。
 だがこの党には戦後からこんにちまで、50数年の歴史があり、大半の期間は、わが国での最大野党で、功罪はあるものの、財界と支配層の走狗(そうく)としての保守、自民党単独政権の売国反動政治に反対して、国民運動の組織者であった。そして有権者からの支持を失った。
 しかし、その責任の99%は指導部にある。社会党、社民党の影響下にあって闘った幾万かの下部党員や、支持した数百万の労働者にあるわけではない。
 現在、かつての社会党、社民勢力は、社民党、新社会党、その他に分裂しているが、その指導部、指導的人物と下部組織、地方組織、労働者の活動家とは、大きな違いがある。一部の指導者たちを除けば、多くが闘いを望んでいるし、大きな団結を熱望している。
 これは社民勢力としての、かつての党員ばかりではない。支持を続けてきた労働者の中にもある気分である。社民党には失望しても闘う党の出現を熱望しているのである。この数は多い。これは歴史の重みであって、この状況は容易に形成できるものではない。
 わが党がこの数カ年、社民勢力の団結を呼びかけてきたのも、こうした状況があったからである。新しい党の提起もそれである。今回の参院選での社民党支持の態度決定も、その延長線上にある。
 民主党が支配層の画策する二大政党制の一方の装置として、敵の側にあり、また、すでに新社会党は国政を争う力はない。わが党も当面はその計画がない。こうした現状では、選挙をボイコットしないかぎり、社民党を支持するのは当然である。
 今回のわが党の決定が、社民党の皆さんへの何がしかの支援、激励になれば、そして以降の団結に役立てば、と思う。闘う新しい野党の出現、あるいは再建は、労働者階級と国民諸階級の喫緊(きっきん)の課題だからである。
 関連して。「イラク派兵に反対し憲法を生かす候補を共同で当選させよう」という呼びかけが出されている。善意から提唱されていることを疑わないが、また、共同の呼びかけ人の方々の危機意識と善意は、なおさらである。だが、具体的内容では、意見を言わざるを得ないし、賛成できない。
 「新しい確認団体」という提案は、この時点で、護憲を掲げる各党が参加する見通しはないし、その状況で、それ以外の人びとで「確認団体」をつくって参議院選挙に登場すれば、志と違ったものになるからである。
 率直に申し上げれば、今回は、こぞって、社民党を支持することにしてはどうだろうか。以降の団結にも有益なはずである。
 なにも闘いはこの参議院選挙ばかりではないし、これからも闘いは継続される。団結にかかわる問題も、これからもある。引き続き団結を強めなければならない。
 情勢と国論は、いよいよ重大な岐路に直面している。壮大な国民的政治的戦線と強力な闘いだけが、前途を切り開く。いっそう団結を進めよう。


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