2004年大隈議長新春インタビュー

労働新聞　2004年１月１日号２～６面

　労働新聞編集部は、2004年の年頭に当たって、日本労働党中央委員会議長大隈鉄二同志にインタビューした。大隈議長は、昨１年の戦後史を画するような内外情勢の発展と、その中で党の闘いを振り返り、新しい年の情勢の見通しや展望、党創立３０年目を迎える労働党の課題や抱負などについて縦横に語った。とりわけ議長は、イラク戦争を契機として顕在化した米欧亀裂の意味や背景、そこに見られる世界資本主義の新たな分裂について、また、崩壊するドル体制に深く依存したわが国支配層の危機の深まりと、多国籍企業にまで上りつめた財界の政治支配と海外派兵や国内改革、さらに２大政党制への攻撃など、一連の反動攻撃の一体的な関係について解明、暴露した。さらに、事態を切り開く確かな力としての国民運動を発展させる角度から、社民勢力の問題についてのわが党の態度を表明し、闘いの発展を呼びかけた。以下掲載する。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　【聞き手・日本労働党中央委員会理論政策宣伝局長・秋山俊彦】

秋山　2004年、明けましておめでとうございます。
　年頭にあたって、日本労働党中央委員会議長の大隈鉄二同志に激動の昨１年を振り返り、今年の情勢の見通しや労働党の闘い、その課題や抱負など、ざっくばらんに語っていただきたいと思います。

戦後史画す激変の内外情勢

日本労働党中央委員会議長・大隈鉄二同志

大隈議長　明けましておめでとうございます。
　労働新聞の読者の皆さん、わが党の友人、支持者の皆さん、先輩や友好諸団体の皆さんに、そしてわが党の同志の皆さんに、新年のごあいさつを送りたいと思います。

秋山　昨１年の内外情勢は、ともに大きな変化がありました。
　やや日誌風に振り返ってみますと、国際関係では、米帝国主義が年頭から、イラクへの侵略戦争を構えていたし、国連決議もなく、「有志の同盟」という格好で、３月２０日、侵略を開始しました。小泉政権はこれを即座に支持した。戦闘自体は４月９日にバグダットが陥落し、大方の予想を超えて短期で終わり、ブッシュは５月１日に戦闘終結宣言をやった。しかし、イラク人民の抵抗はやまず、今日、戦闘終結宣言以降の米兵の死者のほうが、戦闘中より多いという状態になっています。中東和平のロードマップも、事実上頓挫し、中東で米帝国主義は追い詰められています。またこの戦争の経過を経て、米国と欧州、特にドイツ、フランスを中心とした欧州連合（ＥＵ）との対立が、劇的に顕在化しました。
　６月のエビアン・サミットで、フランスのシラク大統領は明確に「多極化を目指す」と表明しました。ＥＵについて言えば、４月のアテネでの首脳会談で、今年５月の中東欧１０カ国の加盟問題も決めましたし、北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）に頼らないＥＵの独自軍という方向も、年末にかなり踏み込んだようです。こういうことで、米欧の亀裂が非常に顕在化した。これは戦後史を画するようなことではないかと思います。
　朝鮮の問題でも、わが党は一昨年の平壌宣言以降、帝国主義の狙いを暴露して論陣を張ってきましたが、８月に６カ国協議というものがやられました。これが継続されるということになっていたんですが、昨年中の再開は先送りされています。
　一方、国内に目を転じますと、一昨年、財界が再編され日本経団連となって、トヨタの奥田が会長に就いて多国籍企業の支配が確立した。奥田は、昨年年頭からビジョンを発表、抵抗を打ち破れと大号令をかけました。小泉は、これを受けて、不良債権処理など改革加速化を決めました。
　また、朝鮮問題でも、核、拉致問題をあげつらって敵視政策、排外主義を強めました。５月には、公明、土壇場で民主党の協力もあって有事法制を通過させ、イラク復興支援などといって、アフガン以来といえばそうですが、自衛隊の海外派兵を急ぎました。これまた戦後史を画する決定となりました。
　金融問題では、改革加速化という中で、６月にはりそな銀行の破たん、年末、１１月になってから、足利銀行の国有化等々ということで、銀行に税金を投入し、不良債権の処理で企業を倒産させ、勤労国民には深刻な危機が押し付けられているということだろうと思います。
　政治、政局でいえば、３月は統一地方選挙でした。それから、１０月に入って、民主・自由の合併劇ですね。春先から「２１世紀臨調」の画策もありました。そして１１月に衆院選挙、そしてその結果、２大政党制が進んだなどと、マスコミは盛んに世論操作に力を注いでいます。この夏には、参議院選挙もあります。
　このような情勢の中で労働党は闘ってきたのですが、まず概括的に、情勢や党の１年など、お話し願えませんか。

大いに語る大隈議長（左）と、秋山理論政策宣伝局長

大隈議長　大体の経過は、あなたが話してくれたので、また、あなたが言うように、経過を見ると、大方、予測していたことだとしても、時期を画するような、戦後史でも、特筆されるようないろいろなことがあったように思うんです。

　印象的に話しますと、国際関係では、イラク戦争が大事なことだったが、米国が侵略戦争を始めるだろうということは、見当がついていたので、驚くべきことではなかった。だがその戦争が比較的短期で終わったというのは、ざっくばらんに言えば、ややわれわれにとって、予測と違ったというか、それ以前の認識を、いくらか改める機会ともなりました。われわれは、一昨年の秋口には、すでに、米国が開戦に踏み切るだろうと、党内では検討済みでしたし、そのすう勢がどうなるか、一般的にいえば、米国がなぜ戦争を始めるのか、そしてそれが危機の反映だと結論づけていました。また、米国は、勝ちはするだろうが、そのことによっていっそう自身の没落を早めるだろう、中東にもはまりこむに違いない。世界経済にとっても、とりわけ米国にとって、危機を早めることになるだろうと、きちんと理解しておりました。そういう点では、結果から見て、予想外の情勢が進んだわけではありません。
　しかし、この戦争の具体的なりゆきでは、アフガンと比較しながら、イラクはもう少し粘れるのではないか、と思っていました。ですから、先ほども言ったように、やや予測が違った。これは、特に戦争の歴史で、軍事技術がいろいろ移り変わっていく中で、戦争の仕方も変わってきたというようなこと、また、２次大戦の経験、あるいはそれ以降の経験、一般に強国の侵略に対して、弱小国が国を守って闘う上での、市街戦の特別な役割などを考え、イラクは、ある程度やれるのではないか、との予測があったんですね。その点で今回の結果は、帝国主義の側もこの経験を生かすだろうし、弱小国も、この経験に学ぶことになる。そういう意味では、以降の戦争に影響を与えると思いますね。
　だが、どんな兵器、軍事技術も、それ自身の優位性は、やがて相対化する。また、武器は他の諸条件と結びついて、時に決定的役割を果たすが、他の条件下では決定的なものではない。戦争の歴史がそれを教えていますよ。
　イラクは市街戦を想定できたが、アフガンのような天然の要塞ではなかった。イラクの兵器は米国や英国にはもちろん、イスラエルや近隣の敵と米軍基地にも届かなかった。フセイン政権は、湾岸戦争以後、実際には帝国主義の圧迫下で、武装解除同然だったんですね。何か少しは持ってると思っていたのですが。他方の米国は、最新の軍事技術、兵器でたたいた。フセイン政権は軍事的には「受け身」で、たたかれるままであった。
　フセインのようなああいう人でも、譲歩すれば助かると思ったんでしょうかね。この問題が本当は本質的で大事なんでしょうが、しかし、短期で崩壊したことは、われわれにとっては意外なことだったので、反省と学ぶ機会となりました。

　さらに、もう少し予想が外れたというか、正確に言うと十分に見通しきれていなかったのは、米欧亀裂の問題です。
　この問題では、われわれは、ユーロ登場の少し前から、米欧間の矛盾について、繰り返し党内でも議論しておりました。そして一昨年の秋口から米欧の亀裂があることも非常にはっきりしていましたから、そういう意味では状況の全体について、うんと的外れということではなかったのです。しかし、一昨年の秋口段階では、現実に国際政治の上で、米国も押し切れないだろうし、欧州、特にフランスが、国連安保理で拒否権を発動する力もないだろう、というような見通しだったのです。しかし、実際には、フランスは拒否権を発動するという意思を明確にしました。それを受けて米国は、国連決議なしで侵略戦争に走ったんですね。イラク問題で始まったこの亀裂は、以降の国際情勢の発展にとって、きわめて重要な問題です。この問題については、後でまた述べましょう。
　あなたが言うとおり、組織的な国家としての抵抗、戦闘は短期で終わったにしても、反米闘争はやまず、米軍は犠牲を拡大しながら、この時点でも、片づく見通しが立っていない。しかも米欧間に、国際政治上での明確な亀裂が顕在化した。したがって米国による、このイラク侵略戦争は、米国の世界支配の危機を救うことにならないし、むしろ没落を早めていく。そのように歴史に記されると思います。まさに、情勢というか、歴史はフルスピードですね。

　つぎに国内問題ですが、小泉政権は、開戦以前、国連でまだ議論されているうちに、戦争を支持すると言ったわけです。以降、昨年暮れには、遂に陸・海・空、自衛隊の海外派兵に踏み切った。そういう点では小泉の親米ぶりというか、追随ぶりというか、これは、まあブレアに負けず劣らずですね。しかしそれでは、何故そうなったのかという問題は、いろいろと議論してみる必要がある。
　小泉の親米ぶり、あるいは朝鮮問題を含めた、反動的な、売国的な政治を、もう少し深く日本の歴史の流れの中で把握してみる必要があると思うんです。小泉個人に結びついた、あるいは小泉政権の独特の、ということだと十分な理解ができないと思う。このことは、特に小泉を支えている、奥田に代表されるような、経済界の状況、発展段階と結びつけて考えてみる必要がある。

　それから、今度の総選挙。これも大きな変化ですね。
　われわれも選挙の総括など、いろいろとやりましたが、普通、大方見当がつくんですよ。私なんか、戦後ずーっと選挙を見ていますので。選挙前から大方推察がついたり、結果が意外にしても、選挙が終わった時点で、その意外性も含めて、詳しく総括しなくても、おおよそどういうことだったのか、想像はついたものです。
　例えば、経済的ないろんな不満があれば、それはそれで与党が打撃を受け、野党が前進する。疑獄事件のようなことが起これば響く、政権が国民負担を強いれば野党に有利、投票率が低いとどこが有利だとかね。
　だが、今度の選挙はとても分かりにくいんです。もちろん、分かりにくくなったのには若干の時間的経過がある。例えば93年、自民党の単独支配が崩れ、連立政権となって、与党だか野党だか分からんようになるわけです。村山の時に、当時の社会党と自民党が連立政権をつくる。こうしたことで、従来の与野党関係、例えば何党は革新的で何党は保守というような戦後何十年かの中で有権者の間にできていた認識が、連立政権の時代にぐちゃぐちゃになった。政党に対する評価は、すっかり見当がつかなくなる。新しい党もいっぱい出てくる。そういう意味で評価が変わってきたというか、こうした前史があるんですね。
　正確に言えば、政党が自己の支持基盤の利益を裏切った結果、有権者が政党を信頼せず、政党不信が高まった、どの政党に期待をつなげばよいのか、分からなくなってきた。しかし、有権者のこの判断、認識は、政党を見抜いたという意味では、きわめて正しい。ですが、まだ投票する人は半分はいる。政治に淡い期待ももっているんですね。
　こんな中で今回の選挙は、支配層の側がマスコミを使い、あるいは「２１世紀臨調」などを使って、さまざまな工作をやったんですね。マニフェストなんかもそうですね。それから「政権選択」選挙のキャンペーン。２大政党という装置というか、仕掛けをつくった。一方の政党を、小沢が民主党と手を組んでつくった。あれは間違いなく、支配層のいわば装置、道具でしょ。
　小沢は、もう93年の以前から、その仕事をやっているんですから。一方は自公保、もう一方は自由党が合流した新民主党。ここまでくると、やや政治が分かる人なら、どういう装置で、だれらが手を組んでやっているか、見え見えですね。しかし有権者の多くが、見抜いているわけではない。これがブルジョア選挙の本質でしょ。そのような総選挙で、投票をするわけですね。だから、この総選挙の結果は、どういう総括をしたらよいか、従来と違って、分かりにくいものだった。
　結果はご存じのとおりですが、これまでにない、時期を画するような、支配層によって管理された総選挙だった。それだけ、敵も必死だったんでしょう。

　外交では、朝鮮問題がありました。労働党は、一昨年の日朝平壌宣言について、必ずしもこれは平和につながらない、むしろそうでない方向に動くかもしれんと、そんな主張をしました。それから去年の８月の６カ国協議。これについても、われわれは、これで平和に向かうとか、そうした大方の見解にくみしませんでした。日本の与野党問わず、朝鮮問題に対する評価は、きわめて表面的ですね。
　朝鮮問題で、いったいだれが悪いのか、だれが危機をつくり出しているのかという点を、日本の政党はみな暴露しない。米国は核軍事力でどう喝し、しかも長い間、ここをつぶそうと経済封鎖をやっている、敵視政策をやっている。したがって朝鮮は、生き残ろうとすれば、あげて自国防衛のため、武装せざるをえないですよ。そこまで追い込んで、周辺を取り囲んで食えなくして、難民が出れば、それを騒ぎ立てる。そこまで追い込んでいるのはだれか。周辺とも付き合っていければ、当然彼らは、働いてメシを食えるんです。
　また、韓国の中小業者だって経営者だって、なにも遠いところに工場をもっていかなくっても、朝鮮語が通じて、そして北の人たちが望んで、喜んで働いてくれるのなら、北朝鮮に設備をもっていって、友好のうちに仕事をしたほうがいいに決まっている。そうすると、いつまた戦争が起こるかなどと、心配はいらない。やがて朝鮮が平和的に統一され、よい暮らしができるわけですよ。そういう朝鮮になれば、「脅威」なんてことはない。
　日本では、朝鮮の核兵器がどうのこうのと騒ぐ。だれが核兵器を持たざるをえなくさせているのか。そういう議論もしない。悪いのは米帝国主義、日本でしょ。
　これじゃあ、朝鮮だけでなく南、韓国の人たちだって、やはり民族感情からいって、日本の態度を支持しないと思いますよ。日本は過去に、朝鮮民族に対して多くの悪いことをやった。その国が再び、北の同胞をいじめている、となるわけでしょう。韓国の多くの民衆の中には、そういう批判もある。だから私は、朝鮮が核兵器を持つことを奨励はしないが、自民党から民主党、共産党や社民党までが、北朝鮮は核をなくすべきだと騒ぐのには、賛成できない。
　６カ国協議で、あれこれ言っても、北朝鮮は応じにくいでしょう。朝鮮は米国に対して、安全を保証するなら、と言っている。だから米国としか交渉しないと言っている。他の４カ国が米国に代わって、安全を保障できますか、それはできないでしょう。今のところ、いわゆる６カ国協議は、米国の核軍事力によるどう喝、敵視政策の道具となるのがおちでしょう。だから６カ国なんて言っても片づかないですよ。朝鮮の核問題、もし本当に解決しようと思うなら、朝鮮の立場、状況に対する、一定の理解は示さねばならないと思いますよ。
　それから拉致問題です。安倍晋三、タカ派的な意見を言うことで、名を上げようとしている。無責任な話です。あれでは、拉致家族の問題だって解決しない。
　日本に帰ってきた、かつて拉致された人たちは、暴力的に拉致された。それは金正日氏も国家犯罪として認めているが、憤りや恨みは、容易に忘れられないと思う。しかし、今はもう１つ、家族が離ればなれになっている問題がある。これは、もう１つの悲劇でしょ。
　帰ってきた人たちは家族との再会を望んでいる。北朝鮮側は、一度帰しなさい、それが約束だからと言っている。もし本当に解決しようとするなら、その問題を考えねばならんと思うんです。向こうに帰せば、２度とこっちには戻れないなどと言うが、朝鮮だって、アジアで、しかも日本のような国と付き合っていくことを必要としている。本当に大胆な政治家なら、それはやれると思いますよ。
　これらが、昨年のことで、おおざっぱな描写、印象でしょうか。

流れに抗して暴露し、闘った

　労働党の活動ですが、昨１年、いろいろなことをやった。
　その第１は、政治的批判や暴露の活動です。労働党は流れに抗して、言いたいことを言ってきました。イラク戦争、北朝鮮に対する態度もそうです。それから、先ほど申し上げた小泉政権の暴露ですが、これを、日本の政治を実質的に握っている経済界、これとの関連で暴露したことは、大事なことだったと思っています。
　今の小泉の対米追随、あるいは海外派兵の政策も、国内の改革政治も、２大政党制を画策しているようなことも、すべて、支配層がどういう発展段階にあるか、つまり奥田の登場の意味ですね、そういうことと併せてみると、非常に一体的なこととして、把握することができます。
　この点では、例えば、共産党が、２大政党制が突如として出てきて対処が間に合わなかった、などと言っているのを見ますと、まあ、そこまで堕落したと言うか、哀れと言うか、そう思います。
　われわれは一昨年の５月、日本経団連が統合され、トヨタの奥田が会長となった、その直後ごろの党の会議で、この問題を議論しています。それから、去年の正月には労働新聞で、経済団体が１つに統一され、多国籍企業の頭目の奥田がその指導的位置に立ったことを、戦後の50年代の、保守合同の前提になった経済界の統一、それを想起させる、そういう非常に大きな変化と見ている、と述べました。
　戦後の経済界のあの統一がなければ、いうところの保守合同や、55年体制もなかった。自民党にとっては単独支配ですが、財界から見ると、その道具を使って、安定した政治支配を手にしたわけです。
　そして、80年代後半から90年代にかけて、その戦後の政治システムが機能不全に陥って、93年自民単独支配が崩れ、１０年余り、曲折ありの連合政権、この過渡期を経て今回に至るわけですが、80年代の終わりにはすでに、戦後システムに代わるものとしての、２大政党制が出ているんです。
　それがなかなか実現しない。それを財界が強力に進めようとする。それが今度の経済団体の統合、奥田が頂点に立ったことの意味なんですね。政党、とりわけ野党は注目しなかったが、われわれにはその段階からよく見えていました。２大政党制への策動、改革の加速化が強められるであろうと、つまり、支配層の側の、１つの危機感の表れだととらえていたんです。案の定、去年の正月、奥田は、言うなら「抵抗勢力の首をたたき切ってでも前進しろ」と、号令をかけた。小沢の新民主党づくりや、今度の総選挙も、その流れなんですね。
　そういうことで、重要な時期に重要な問題で、きちんとした意見を出してきた、これがつまり、わが党の、大きな役割だったんだろうと思います。
　そのほか、労働党は春の地方選挙にも取り組んだし、失業者問題も取り組んできました。これも、わが党がもっと全国的に展開しておれば、もっと大きな仕事になったと思いますが、それにしても、不十分な広がりにしては一生懸命やってきたように思います。
　それから、社会党、社民党というか、村山の時期に決定的に没落した社民勢力、これを、国民運動を組織しなければならんという意味で、彼らが明確に、村山路線を清算し、闘うことができるのなら、それを支援しようと、さまざまな努力を続けてきました。この問題です。
　まだ十分成果が上がったとは思えませんが、それにしても社民勢力のさまざまな党派、グループの、とりわけ地域段階での「団結しなければ」という感情は高まってきたと思います。わが党とこれら社民勢力との関係も、とてもよくなっています。
　わが党は、誠心誠意やったし、社民党とその影響下の多くの人たちも、労働党のこの努力を本物として、受け止めてくれる人が多くなってきたと思います。これは、大事な前進だと思うんです。
　わが党が、もっと大きな役割を果たそうと思えば、党自身も大きくならねばならない。その点について言えば、まだ十分な成果を上げきれていない。これはやはり日本の労働者階級、多くの国民に対する、われわれの責任の問題として、党自身の問題ですが、そういう責任の問題として、十分考え、努力しなければならないと思っています。

顕在化した米欧亀裂

秋山　今のお話で、内外情勢の大きな変化、そのポイントが何点か出されたと思うんですが、最初に米欧の亀裂の顕在化ということですね。これをどう見るか。その背景、基礎というか、そこに見る米国、あるいは米国中心の世界の根本的危機ですね。これも新たな局面に入ったと言えるかもしれないですね。このへんを、構造的にお話ししていただけますか。つぎに、そういうすう勢、多極化を深める世界で、わが国の位置、あるいは対応も鋭く問われたと思います。併せてお話しください。

大隈議長　米欧亀裂の前に、これまでの世界というか、今日の世界のことを少し話させてください。２次大戦後、80年代の終わりまでは、米ソ対立、冷戦の時代でした。しかし、西側世界は、政治も経済も、米国が支配し、冷戦後は、どっちにしても米国の一極支配でした。ただ、経済の点でいうと、基軸通貨国としての米国も、弱体化し、支配が揺らいでいます。
　そういう世界、米国ですが、例の同時テロがあった2001年の９・１１の直後、これは『ブッシュの戦争』という本や、いろんな新聞にも出ていることですが、ブッシュの周りのスタッフたちが「ブッシュは歴史的な大統領になれる」「さっそくイラクを攻めましょう」と、そういう会話があったというんですね。ということは、イラクを攻める計画が、それ以前からあったということですね。
　それにもう１つ、例えば「ネオコン」といわれるやつ。この出生の秘密というか、これが生まれた経過です。この連中は、前回の湾岸戦争後、あそこを徹底してやっつけなかったことに不満をもったグループ、もとはといえば民主党なんですね。
　この連中が、いわばタカ派になっているわけで、伝統的な保守とは、ちょっと違う。今では、融合した面もあるんですが、当時から米国には、ますます世界の中で力をなくしていくという、そういう危機感、認識があるんです。
　米国は戦後ずっと、世界の資金供給国だった。世界経済の中で、もっとも比重の大きな、金持ち国家だった。ところが、1985年を境にして、日本と入れ替わった。だから米国の衰退は、冷戦の中で、ずっと前から始まっていたんです。
　ニクソンの金・ドルの交換停止、ニクソン・ショックといわれるやつです。これはもう、経済がうまくいかないので、基軸通貨国として、裏づけのない札を印刷するということでしょう。これが71年でしょ。そういう流れの中で、80年代のはじめ、レーガンが登場する。国内では大減税をやり、そしてソ連に軍拡競争を仕掛ける。当然、財政赤字となって双子の赤字も拡大する。そして85年に、ついに借金国に転落する。ドルの大暴落を避けるため、プラザ合意で協調介入し、ドル安のソフトランディング、ということになった。この時、日本では円高で大騒ぎになったんですね。九〇年代はじめ、米国は政治的、軍事的には冷戦に打ち勝ったものの、経済の衰退は、止まらず、進んでいた。
　それから、湾岸戦争。米国は確かにあれには勝った。しかしそのとき、いまでも私の印象に残っているのですが、キッシンジャーが、「落日の輝き」と評した。つまり、あの勝利を、今にも日が落ちる、その落日にたとえたんですね。衰退する米国、これが念頭から離れなかったんでしょう。キッシンジャーはもちろん保守、共和党で、ネオコンではありませんが。
　そういう流れの中で、米国では、危機感がますます深まった。これが「ネオコン」の出生の経過なんですね。だから９・１１のときに、これをチャンスと言い、「イラクを攻めましょう」と言ったわけですね。
　つぎにその衰退と関連し、なぜイラクなのかという問題ですね。
　米国が衰退していく一方で、欧州が、また日本も大きくなる、中国も発展している。90年代の半ば以降、危機を反映してか、米国ではいろんなレベルで戦略計画、論文が出ています。戦争の計画があったんでしょう。それは衰退を挽回するための政策、計画なんですね。
　冷戦崩壊後の90年代はじめに、米国の戦略家ブレジンスキーが、米国は、冷戦に打ち勝って、やっと世界を支配することになったんだから、２度と米国に対抗する勢力をつくらせない、というようなことを書いて、出版しています。さらに衰退が進む中で、99、2000年ごろの、米国の安全保障関係のいろんな研究文書（99年、米２１世紀国家安全保障委員会報告など）を見ると、世界経済を分析しながら、石油問題に注目している。つまり、１０年、１５年のうちに、石油の戦略的価値、比重は、非常に大きくなると。なぜなら、中国を含むアジアが膨大に石油を消費するようになろうと、書いています。欧州では、さらに統合が進み、99年には通貨統合、ユーロの登場となる。90年代の終わりごろに、すでにＥＵは、国内総生産（ＧＤＰ）で米国に接近しているんですね。だから、時間の問題というか、歴史的に、そう長くないうちに、世界での欧州の比重がぐっと高まる。アジアはもちろん、欧州も、石油の消費が何倍にもなる。
　米国の脅威になってくる欧州の石油エネルギーがどこにあるかというと、中東です。約６割の依存です。米国自身の中東依存率はそう高くない。けれども、いわば米国が、石油の供給基地としての中東を支配することによって、世界の石油の流れ、石油の価格の決定権、コントロールできる。ですから、そんな計画があっても不思議ではない。
　中東の石油を支配すること、そういう計画が、米国で練られている。だから決して、大量破壊兵器だとか「悪の枢軸」でフセインが悪いとか「脅威」だとかが真の理由ではなくて、その計画実現の上で、ジャマになったと理解するのが自然なんですね。
　ではイラク戦争をやって、米国が経済危機から逃れ出ることができるのかですが、実際、中東の支配もままならない。しかも、米国経済はますます行き詰まっている。経常赤字、財政赤字、クリントンのときから比べても、急速です。そういう意味で、米帝国主義は、その没落を早め、その過程で、世界のそこここで、ことを起こしている。
　それから、米国はよく言われるように、経常赤字国。これは競争力がないということでしょ。もちろん大企業は多国籍で世界中に展開しているけれど、国民経済としてはやはり矛盾でしょ。海外からたくさん輸入するが、輸出は少ないのでゼニが足りなくなる。資金を、よその国から環流させない限り、成り立たない。だから、当然、他国との間で、なにかと軋轢（あつれき）を生んでいる。
　米国は力ずくで、自国の衰退していく経済力を、いわば、単純化していえば、軍事的手段で、しかも、歴史の歯車を逆さに回すようなやり方で、維持しようとしているわけで、そういう中での米欧亀裂なんですね。
　構造的にという角度で見ると、結局、こうだと思うんですね。
　すでに述べたように、米国は膨大な貿易赤字国。しかも膨大な借金国家で、国際収支でいうと、貿易収支の赤字、それに借金の利子も払わなければならない。だから、米国はますます経常赤字を増やしている。国家財政の赤字が急速に拡大している。他国に対する累積債務も増えるばかり。
　当然ドル不信が起こる。それでいて、ドルが下落すれば、世界のほかの通貨は相対的に高くなる。日本だったら、円高となる。ユーロも同じですね。どの国だって、米国を、ドル下落を救うつもりはないが、自国の通貨が上がるから、貿易での競争力が弱くなる。すると、輸出産業がうまくいかないということで、政府はドル買いをやって、ドル安を止めようとする。そしてドル買いをやれば、結局、そのドルで米国の財務省債券を買うしか運用の方法がない。こうして、政府間の貸借関係に変わってしまう。2003年１２月の米国資料では、米国の財務省債券の外国持ち分、１兆4000億ドルのうち、３４％は日本１国で持っている。
　だから、これをさして、米国は世界を収奪している、という言い方をするわけで、収奪された国々からすると、ドル安は輸出で困るものだから、とりあえず日本でいえば円を売り、ドルを買って、ドルのいっそうの下落を避けようとする政策。だからそれは、それぞれの国の政府が、輸出産業、製造業を助けることにはなるんだと説明される。だから、納得している面もある。しかし、いつまでも米国がこういうことを続けて、ドル暴落が迫っているかもしれないのだ。米国が破産するという危険をかけてやっているわけで、迷惑千万な話です。でなくても、ドルの価値は確実に下落して、その差損でも被害甚大。
　だから、フランスのエマニュエル・トッドという学者は、「米国はもう乞食だ」と言っている。日本は強奪され、日本の支配層はその米国を助けながら、おこぼれにもあずかっているような、売国奴ということになる。
　世界にとっては、とにもかくにも、米国には、膨大な需要があって、ものが売れるということがあります。世界は今、不景気ですから、米国は政府として、１国にたとえると財政の大盤振る舞い、それができる政府のような格好。
　米国は、どれほど財政赤字が増えようが、大盤振る舞いで減税をやる。イラク戦争で、兵器を皆あそこにぶち込んで、倉庫がカラになれば、さらに膨大な軍事費を出してまた買う。最近では、選挙があるというので、医療制度問題ですね。ああいうこと。米国政府は、民間企業にも「心配するな」と、「ゼニが足りなくなければ、政府が財務省債を出し、他国がそれを買ってくれる」と。日本なら国債が売れなくなったらどうするという話もあるが、米国はドルが下落しても、暴落しても、困る国がいっぱいある。米国以外に財、商品を買ってくれる国はないから、皆それを恐れて、ドル買いをやり、最後に、ドルを持っていく場所がないので、財務省債を買うことになる。それを見越して開き直っている。収奪している。しかし、いずれどこかで、破たんするのは明らかなんです。
　したがって、他国はやはりそれぞれ、米国に依存しないで生きていく道を考えざるをえない。欧州の場合は、フランスはドゴール政権のころからそうでした。それから1970年代、西ドイツのシュミットなどは、「日本がいつ暴落するか分からん紙くずとしてのドルを、せっせとため込んでいるのは気が知れん」と、言ったことがあるんです。
　もう米国がどこかで破たんするというのは、だれでも知っている。だから、ヨーロッパはああやって、戦略的に、米国との距離をおき、米国の危機が深まる下ででも影響を受けないような、戦略的な独自の道を歩こうとしている。米欧亀裂というのは、そういうものなんですね。

激化する列強間矛盾とわが国支配層の危機

　では、日本の支配層はどうか。彼らだってバカじゃないから、知っているんだと思うんですよ。しかし、あまりにも長く追随政策をやって、米国に大きく依存しすぎている。しかも、アジアでも孤立し、中国も登場してくる、これも気になる。
　こうした中で、ドル体制からの脱却など、容易なことではない。転換するにはリスクを伴う。破局的なそういう時期、これなしには、乗り切れない。だから、支配層も、心配しながらやっているはず。市場と資源の分散とか、それなりに模索もある。しかし、日本の財界が多国籍企業にまで前進した、この状況で、なかなか乗り越えられない。
　ヨーロッパは１つの経済圏をつくったが、日本には「円ブロック」なんてないですから。この問題は70年代からしょっちゅう議論されてきた。マレーシアのマハティール前首相が、ＥＡＥＣ構想を打ち出したり、さまざまあったが、結局米国に抑えられた。
　だから、日本の保守政治家も、本当に国を救う道を提示できない。この問題を、本当にやれるのは、やはり、労働運動や、むしろ多国籍でない国内基盤の企業家、そういうところに主導権が、政治のシフトが、移らない限り難しい。だが、多国籍企業は容易に「親米」から離れない。もちろん、それ以外の企業家も、主導的にこの転換を進むようなことは、容易にありえまい。やはり、労働運動をはじめ、底辺にいる多くの人たちが、闘わねばならない。
　米国追随の政治と経済の下で、苦しんでいる人たちが、全体として盛り上がって主導権をとる。そういう条件の下であれば、日本のかなり大きな企業主でも、国内に基盤をもつ人たちがこの流れを利用しようとするか、合流しようとするか、そういう空気が起こってくると思うんですね。
　米欧亀裂、これは、世界の資本主義の中での頂点に立っていた米帝国主義と、２番手の帝国主義の分化が起きているということ、これはすでに述べました。ドイツが典型なんですが、ドイツはＥＵ、欧州に囲まれて、独自の道を歩き始めたと思うんです。敗戦国で似たような条件のある日本は、そのドイツと、まるで違う。
　これは基本的に、１次大戦、２次大戦もそうなんですが、冷戦が終わってこの段階で、世界資本主義がまた分化し始めたというか、先進諸国間の戦略的な闘争が非常に顕在化した。これは以降の歴史の発展に、大きな影響を及ぼす。
　それは、経済から始まって、通貨統合もあり、それから政治の統合、これは憲法問題で、ちょっともめてますが。それから軍事も、米国がずいぶん反対した中で、英国の同意も得て、小規模にはＥＵの独自軍の司令部を発足させるということですね。ＮＡＴＯの大きな障害にはならない、とか言いながらですが、いったんここに芽が出た以上、以降の発展は必然だと思うんです。米国は盛んに、政治統合にしても、ましてや軍事はいろいろに画策して反対している。この間の憲法問題だって、背後に米国があると見なければならない。
　人民の勢力を別にすると、米帝国主義の主要な関心事、あるいは国際政治は、主として列強間の争いとなっている。資本主義の分化、１次大戦、２次大戦と同じように、資本主義の分裂が起こってきていると見たほうがいいと思うんです。
　だから、前に述べた、小泉政権の対米追随の問題は、そういう世界資本主義の大きな流れの中で、日本の独占の、多国籍化したほどの大企業の、この時期における変化としてとらえるべきです。
　95～96年の台湾海峡危機の時、経済同友会などが、安全保障問題について、今までタブー視してきたが、資本主義の存亡にかかわるので、集団的自衛権、海外派兵なども公然と議論すべきと言ったことがある。あれからもう、６、７年、当時はそれですんだんだが、今日では具体的に軍隊を出すことも含めて、財界が望んでいるということです。
　キッシンジャーが繰り返し「経済大国になったものが、軍事大国にならなかった歴史を知らん」と言ってるが、そのとおりだと思うんです。基本的には、そういう多国籍大企業の、あるいは資本の発展段階と深くかかわって、国際的な発言権、海外派兵を、彼ら自身が望んでいる。小泉の対米追随、反動化や排外主義政策は、これと密接に関連している。連立に参加している公明党も、野党としての新民主党も、すでにこの網にかかっている、と思わねばならない。したがって、小泉政権が別のヤツに代わっても、この流れは強力な闘いなしに、変わらない。

２大政党制の攻撃と社民問題について

秋山　それでは次に国内問題ですが、総選挙が終わりました。党は、すでにこの総括を発表しています。そこでもふれていますが社民党の問題。年末に入って大会がやられましたね。この結果、再生の方向が出たとは思えないんですが、この問題について、また、党の態度などについて、これは非常に大事な時期だと思いますので、ぜひ、話していただきたいと思います。

大隈議長　さっきちょっと申し上げたんですが、総選挙がこういう結果になった、もともとの支配層の意図、それから、この結果になった理由ですが。支配層が、この選挙の結果だけではなくて、例えば「改革」をやっていく。これだって結局、支配層は国を合理化し、資本効率をよくしようとしているんですね。
　小泉は「民にできることは民に」とよく言っている。あんまり利益のないのは資本効率から見て、ダメだと。
　私は繰り返し言っているんですが、５人、１０人の規模で、あまりもうからなくても、中小企業のおじさんが、労働者のクビを切るわけにもいかず、地道に経営をやっているというのは、私などはとてもいい経営者だなと、思うんです。しかし、動機が違うんですね。大銀行は、カネを貸し付けてどんどんもうけが出るような、そういう企業でないと存在の意味がないという。つまり、資本を持った人、あるいはそれを貸し付けて利益を得ている人、「利札切り」は、企業経営とは、利益を極大化するためにあると言う。われわれから見ると企業は、皆が生活するためにあると思う。
　これを広げて見ますと、国にはさまざまな仕事、工場があって、農業があって、それらは皆、国内に住む人たちがメシを食えるためにあるんです。そして、ギスギスしなくて食えるのなら、これがいちばんいい世の中と、われわれは思うんです。ところが、発想が違う。米国もそうなんだが、日本の銀行も、小泉などが言うのには「利益を生む」ということが先にあるんですね。根本的に違う。したがって、そういう人たちが日本の国を改革しなきゃならんと盛んに言っているわけですね。弱い者はつぶせと。
　企業家は同じような考え方で、国際政治、外交も考えているわけです。彼らは、国際的にあちこちに市場をもっていて、世界の企業家との競争の中で、発言権を持たなければならない。そういうこととして、軍事的に一定の役割を果たさねばいかんと言うわけです。
　選挙や２大政党問題も同じです。
　支配層にとって、戦後長く続いた従来の政治システムでは、もうやっていけないので、２大政党制にしようというわけです。形は与党、野党でもいいんだが、どっちに転んでも支配階級としては、基本的な政治支配を維持できる、そいうシステムをつくろうとしているわけです。ですから、安全保障とか憲法問題、改革など、国の重要政策では基本的に一致した、そういう２つの政党なんですね。自民・公明党、新民主党、この２つの党は、奥田が動かす指人形のようなものでしょ。
　国民、有権者を馬鹿にした話でしょ。これはいつわりの民主主義というか、議会制民主主義のいっそうの形骸化でしょ。考えてみれば、しかし、そこまで、現在の資本主義は危機が深まって、政治支配が難しくなってきた、ということでしょう。
　危機の深まり、支配層の意図、この結果として、今日のさまざまな政治がある。したがって私は、社民問題、あるいは今度の選挙問題を考える時、この支配層のねらいと、関連させて論じなければならない。野党も、このことが十分わかっていないと、本来は闘えないわけですが、実際には、社民党も共産党も、してやられたわけですね。
　さて、その社民問題ですが、それにしても、大きな敗北すね。私はなんとしても、はやくこのショックから立ち直って、本当は闘ってほしいわけです。彼らと手を結んで、支配層の政治に立ち向かって、共同の仕事をしたい。社民問題をかんがえるとき、われわれは、いつもそういう角度で追求しています。しかし、今度の大会を見て、この敗北からどんな教訓をつかんだんだろうかというふうに思うと、率直に言って、敗北からはい上がっていくだろうという見通しは立たないですね。
　地方の社民党の人たち、それも、県段階でかなり有力な人たち、また、より下部の、地方議員、活動家たちの、闘いたいという空気は、依然として、まだ強いですね。中央指導を改善して、もっと強力な党の運動にならないかという意見も強いんですね。これは労働組合の中にもある。
　ただ、その労働組合の都道府県段階の人たちの中に、「社民党がこのまま立ち直らなければ、もはや連合内部で、民主党にも展望はないけれどそうかと言って、連合方針に逆らって社民党を支持し続けることは、難しい」という意見もいくらか強まっているんですね。
　ですから、前進するには、それなりの総括がないと、難しいと思うんです。
　ですが、今度の大会では、福島瑞穂さん、その他主要な人たちが皆、土井さんをえらく褒め上げた。しかも、土井路線を引き継ぐとまで言っているわけです。土井路線を引き継ぐのなら、展望ないですよ。
　土井さんは最後まで、民主党が政権を握るようになれば、政権協議に加わると言った。そして、弁解とも、なんとも取りようがないが、憲法問題、９条の精神が生かされるのなら協議に応じると。民主党とは、この問題で合意ができると思う、とまで言っている。つまり土井さんは、実質、ずっと民主党に幻想をもっていた。これは小沢に幻想をもっているということですよ。
　福島さん達は、そういう土井路線を「引き継ぐ」と言っている。したがって私は、展望がないと言うんです。
　もう１つ。福島瑞穂さんは「今日から新生社民党だ」言う。そしてこれは、党の方針にもなっている。しかし、人びとがこれを「新生」と見るでしょうか。中身は土井路線を引き継ぎ、大会では「土井さんに引き続き指導してほしい」とまで発言する。こんな状態では、どうにもならない、と思いますよ。
　93年以降の現在に至った問題では、村山だけが悪いんじゃないんです。連立政権、つまり自民党単独政権が崩れた直後、土井さんは、衆議院議長になった。小沢の説得でなったんですよ。これは小沢が、社民をたぶらかすには、土井を「野に置かんほうがいい」という策略でしょ。小沢による配置なんですよ。ですから、村山だけでなく、土井にも責任がある。
　だから社民党は、村山路線だけでなく、土井路線も含めて、厳しく戦後の社会党あるいは最近の社民党の、こういう歴史全体を総括する必要があるんです。それが十分か不十分か別にして、そういう姿勢があって初めて、最近の村山路線や土井路線も脱却することが可能になると思う。だが、この大会で、それがなかった。
　関連してのことですが、護憲一本槍の社民路線も、大会で、２、３の代議員から発言があったようですね。護憲、つまり憲法改正に反対しているんで、それはそれで正しい。しかし、問題はそうではなくて、「護憲の党」でやってきたにもかかわらず、実質的に憲法も守れなかったではないかということなんです。この期間に、軍隊もできた。有事立法もやった。海外派兵もすでに去年決まった、という実態でしょう。
　護憲の旗を掲げ、憲法さえ変えられなければいい政治ですか。敵側も心得たもので、歴代の自民党の政治家は、戦後すぐの政治家、鳩山などを除いて、だいたいにおいて総理大臣になっての第１声は「私の政権は、憲法改正は致しません」といってきた。彼らも気づいているんです。「憲法改正しない」と言って、世論の全体的な変化を待つ。世論が変化しないうちに憲法問題を出すより、実質はあまり、障害にはならないんだから。軍隊もつくれるし、軍事予算も通る。しかも今日の世界で、日本の軍事予算は、もう大国でしょう。日本はロケット技術は持っているし、航空機も飛ばせます。だから、小沢が言うように原爆をつくるなどは、すぐできますよ。ミサイルに積めば大陸間弾道弾もすぐつくれる。
　そうすると、護憲党の面目はどうなりますか。護憲一本槍でやってきて、自分は正しかったと、言い張れますか。こういう実際を、いくらかは反省しなきゃならんと思うんです。
　社民党がここまで影響力がなくなった理由でもありますが、90年を境にして支配層は、戦後の安定した政権をなくすかも知れないという危機に直面し、過渡的な政治でやってきた。この１０数年間、敵側も確固たる政治システムを手にしないまま、当座しのぎでやってきたんです。このとき、野党が強力に攻めれればどうなったか。だが、闘えなかった。
　しかも、この過渡期の、敵の支配が不安定な時期に、社民党は、敵側にたぶらかされ、政権に取り込まれたり、やれ「市民の党」とか「女性の党」と、労働運動をすっかり忘れ、そして労働運動は財界が握ったも同然になった。連合路線で。
　連合会長の笹森は、奥田の回し者みたいなものでしょ。しかも２１世紀臨調などに事務局長が参加し、２大政党制を推進する側に立っている。そういう連合だが、いまでも内部に社民党の影響力残っている。いまでさえ、都道府県段階に行けば、３割から４割の力はある。
　ところがこの社民党、土井になってから典型だが「市民の党」「女性の党」こんなていたらくでしょう。だから闘えないんです。そして、今度は一挙に２大政党制としてもっていかれた。こういうものをやっぱり反省しなきゃならんわけですね。
　その他に、社民党の中央体制、指導部をどう形成するかの問題も、注目されることでしたね。今度衆院で６人、参議院で６人となった。これをつぎはぎして指導部つくってもどうにもならんでしょう。路線を見直すだけではなく、自民党だってやってるわけだから、議員でなくても、最良の人材で、指導部を形成する、これを社民党内も望んだと思いますが、他からというか、われわれも関心がありましたよ。やらないですね。
　社民党のために「がんばって下さい」と言っているわけではない。私たちのもっぱらの関心は、敵側の攻撃と闘う上で、国民運動を盛り上げ�立ち向かっていくという、体制をつくるということなんです。
　それに役立たないのであれば、関心も、おのずと違ってきます。そういう意味で、ここまでくれば、社民党の中にも、もう随分出ているようですが、「再建」ではなく「新しい党」として、やり直すという意見、これには大賛成ですね。
　そのような党、それは、闘いたがっている人たちが中心になって、つくるべきですね。もちろん、現在の指導的な人たち、別の言い方をすれば、全国的に影響力のある人たちでも、何らかの役割を担う意思があれば歓迎すべきだと思います。むしろそのような人々の参加は、成否の鍵でもありますからね。そういう気運ができるのなら、わが党も協力したい。
　率直に言って、社民党のためにやるつもりはないと、どこかで言いましたが、しかしそういう闘う新しい党、をつくるのならば、われわれは議会の道を信じませんが、そのような党は、立派に、一定の役割を果たせるし、政権を取れるかどうかは別として、国民のいまの危機、労働者をはじめ国民の多くの期待、これに応えることによって、議会政党としてある程度まで成功を収めることが、可能ではないかと思んです。このような党は、必要ですし、支持を集めると思いますよ。
　気がかりというか、残念なのは、社民党、新社会党のなかの若干の指導的人々が、いまでも、分散し、自己だけを守ろうとしていることです。ただ自分の主義・主張、党派を守ることにだけ、もっぱらの関心を注ぐような、態度がみられることです。
　問題は、いまの情勢にこたえようとする、そういう大きな流れ、党派の利益ではなく、労働者階級と国民の多くの、危機の下であえいでいるこの人たちの要求を満たすために、こたえるえるべきでしょ。政党は手段ですが、なんのためにやっているのかですね。「自己完結型」ですかね。しかも、新しい世界情勢、新しい状況を、彼らが十分研究しているようにも見えないわけで、残念なことですね。
　すべては今年の多くの努力にもかかっているとは思いますが、社民問題についていうとそういうことだと思うんです。

結党30年、国民の切実な要求とともに闘う

秋山　インタビューの最後ですが、この新しい年を迎えたわけで、今年労働党はどう闘うか、今年は結党３０年の年も迎えるわけで、そういうことも含めて、抱負や展望について、お話をうかがいたいと思います。

大隈議長　３０年になりましたが、３０年で、これくらいの仕事しかできなかったのかなと、思いもします。
　だけれども、私は、この種の事業というのは、情勢と無関係ではないし、反省することもたくさんありますが、困難な中でいろいろ努力してきたことも事実ですので、党のこの前進なり努力なりをどう評価するかは、これはもう、皆さんに聞く以外にない、と思うんですね。
　党も３０年ですが、私も結党以来今日まで、指導もろくにしないで、立場からいくと、指導的位置に、役職はなってるんですね。
　この党には言いようのない魅力があるんですね。私でも頑張らなくっちゃと、そんな気にさせる魅力が。
　ですから、まあ、しかし、しょうがない。がんばろうと言うしか、言いようがないですね。
　それにしても、情勢はここ数年、とりわけ去年は、申し上げたように、一種の大きな区切りになるような、時期を画するような事件、政治の動きが起こってきたですね。私は、こういうものに立ち向かえるというのは、我々のように運動をするものにとって、困難というより、とても面白くなってきたなあと思って、仕事してるんです。
　今年も、胃が痛くならないように、言いたいことを言って、今の全局のなかで、敵を暴露していく。それが第１義的にわが党がやらにゃならんことだと思うんです。
　例えば、日本には経済学者がたくさんいるんですが、なぜ米国が、あれほどの超借金国家で、国家財政も大きく破たんした、問題国家でありながら、収入以上にぜいたくして、世界に借金して飯を食っていけるのか。日本は、そういう国を支えるために、せっせと銭を仕送りしてるわけですが、このことを、なぜ暴露しないのか、と思うんです。
　やっている人も、少数派だけどいるんです。これらの学者に聞いてみると、何か言おうものなら、学会内部で特別視され、用いてもらえない。そういう雰囲気があると言うんです。もっと聞いてみると、やっぱり脅迫電話がかかってくると言う。しかし、沈黙を守るのは、学者としての良心があるのか、ということでしょ。
　オランダ人のジャーナリストのウォルフレンさん。日本は米国に収奪されていると、しょっちゅう書いてる。中曽根は「２１世紀日本の国家戦略」という本で、それを抜き書きして紹介している。みんな知ってる事実なんです。ですから、この理不尽な仕組み�秘密を、経済学者は説明したらどうかと思うんです。また、すべきでしょ。
　マスコミもそうです。例えば同時テロ事件以降、何１つ日本のマスコミは、米国のむごいような、アフガンやっつけたり、今度のイラク侵略戦争、これを暴露しないですね。マスコミ、その他、知識人と言われる人たちは皆そうでしょう。
　したがって、私たちは全力を挙げて、これを暴露する。本当のことを主張する。それが真実を広げ、脅迫を受けながらもそれに手向かって言おうとする人たちの、激励にもなる、と思うんです。
　与党を暴露する。いわゆる諸野党とも闘う。党派闘争、政治闘争を強めなければわが国の現状を暴露できない。また、これをせっせとやらねば、声をひそめている、良心があっても、立ち向かうにはやや勇気が足りない、そいういう人たちを激励することもできない。
　やがてしかし、そういう人たちがものを言えるようになれば、大勢は変わる、世論は変わると思うんです。だから、これはわが党にとって大事な仕事、これをやります。
　もう１つ、党というのは、どこから今の流れに逆らう力をつくりだせるんだろうか、この問題です。支配層が進めている経済、政治、今の諸条件下で、暮らしが立たない人たちの闘う力を、どうやって集めるかです。この力に依拠すること、これに依拠してこそ、わが党は強固になれるし、不敗です。
　支配層が、彼ら自身の利益のために、犠牲を押し付けている。労働者だけでなく自営業者、さらにもうちょっと大きな経営者もつぶされている。「食い物の恨み」といいますが、この大衆とともに闘っていく、これがいちばん根強い力なんです。
　どこの党もそうなんですが、もっとも生活に根ざしたそういう問題、憤り、そことの結びつきが弱いですね。わが党も例外じゃない。わが党は正しいことを言ってるんだが、その正しさを、本当に物質的力、現実の政治的力になそうとするなら、そういう大衆の中に深く入って、彼らと手をつないて、政治の世界に登場しなければならない。現場にいる同志たちはもちろん、指導的な位置にある専従者も、今年はこの問題で、大きな仕事ができればと、思うんです。これができてこそ、強大な党もできると思うんです。これが２点目です。
　社民勢力の問題ですが、新しい党の問題をいうとき、もはや社民勢力というのは正確ではないかもしれません。従来社会党におって社民勢力と言われた人たちと、その他に、明確に自分たちの運動を、社民主義と結びつけてこなかったり、なんの関係もなかった人々も、闘っていますし、党に結集できる可能性があるからです。
　これはまた、労働者だけに限らない。自営業者だって、いっぱいいる。商工業者の１部にだっていると思うんです。そういう人たちが、もし、従来の政党にあきたらず、闘うというなら、そういう人たちも含めた、新しい政党があってもいいのではないか、と思うんです。そういう党なら、国民運動の有力な組織者になれる。
　わが党、労働党は、そういう政党の登場を支援したい。今年は参議院選挙だし、総選挙もこれまでよりテンポが速くなると思うんですね。そういう意味で、多くの人たちと相談しなければなりませんが、この問題も、進めていく、ということでしょうか。
　もう１つは、国民連合です。
　これは構想はいいと思うんです。幅の広さからみると、いろんな人たちが結集してきてはいる。しかし、全国的広がりという問題もあるが、その前に、実際に各界で、各社会層のなかで、真に影響力のある人物、そういう人たちを結集させることがいっそう重要ですね。実力のある人たちの結集と広い戦線、それが１県でも、あるいは数県ででもできれば、その経験は全国的広がりを持つ出発点になると思うんですね。
　わが党員も、ずいぶんと国民連合に関わっているわけですから、国民連合の大きな飛躍、これに、重要な貢献をしたい。国民連合の問題ですから、労働党の一存ではできません。ですが、積極的に努力して、前進を図りたいですね。
　この国民連合の運動が始まった初期から、一角を担って、社会民主主義者や、他のいろんな政治勢力と連合して、ここまでやってきたわけですから、われわれの反省も含めて、今年は、重要な貢献をしたい。
　最後に、それらの仕事を全体として前進させるため、幹部の学習を強化したい。まずきちんとした世界観、つぎに歴史観、そして方法論ですね。この３年ほどは、ずいぶんと努力しましたが、いっそう力を入れたい。
　唯物論的弁証法、これを学び、この方法論を十分身に付けるというか、実際の研究に適用し、これで自己点検し、自分の活動でいっそう効果があがるようになれば、これは敵と闘う強力な武器となる。その意味で、全力を上げて、学習活動にとりくむ。
　これは、幹部の水準をうんと引き上げることになる。この数カ年努力してきましたが、もう一歩水準を引き上げため、徹底してやりたい。
　以上�わが党はこの１年も、多くの皆さんとの団結を希望しながら、全力で闘いたいと決意していますので�引き続きのご支援とご支持を重ねてお願いしたいと思います。
　最後に、諸先輩の皆さん、友党の皆さん、労働組合の皆さん、社会諸団体の皆さん、労働党員の皆さんに、引き続き連携し、団結をお願いして、終わりにします。
　ありがとうございました。

秋山　本日はありがとうございました。