労働新聞 2002年9月5日号 社説

近づく民主党代表選挙

財界の走狗、
民主党に期待を
かけることはできない

 9月9日公示、23日投票の日程で、民主党代表選挙が予定されている。
 現在、鳩山由紀夫代表、菅直人幹事長、中野寛成副代表、横路孝弘前副代表の各氏に、若手候補を一本化した形で野田佳彦衆院議員を加えた5氏が立候補の予定である。
 若手候補の乱立と一本化工作、サポーター制度による党員以外の人気投票の導入など、支持率の低迷にあえぐこの党は、代表選挙を期して存在感を示すことに必死である。
 とりわけ、有力候補の口からは、「反自民、反小泉」「倒幕」などの勇ましい言葉が飛び出し、小泉政権後を意識した「政権構想」なるものが、ブルジョアマスコミを活用して次々と発表されている。1部マスコミもまた、「実現するか政権交代」(中央公論)などと幻想をあおり、あたかも、民主党が自公保連立政権の対抗勢力であるかのような演出に力を入れている。
 しかし、この党が結党以来果たしてきた実際の行動・役割を、事実に則して振り返って見れば、およそ何の期待も抱くことができないこと。それどころか、この党の危険で反動的な役割を、鮮明に見ることができる。

結党以来の反動的、売国的役割

 結党以来4年、菅、鳩山と代表は変わってきたが、この党の基本姿勢と役割に変化はない。
 外交安保政策では、1999年に策定した「安全保障基本政策」で、安保再定義、新ガイドラインなどを高く評価、国連平和維持軍(PKF)凍結解除など、集団的自衛権への踏み出しを提唱、有事法制も、政府提案に先んじて提言した。
 事実、昨年9月の米同時多発テロ以降、この党は、米国の報復戦争を積極的に支援、「あらゆる協力を惜しまない」(鳩山談話)と米国への忠誠を表明、「『汗を流す』ような目に見える支援が必要だ」と「テロ特措法」の成立に事実上協力、自衛隊の海外派兵を推進した。また、今国会で継続審議となった有事法制には反対したものの、その理由が「肝心のテロ、『不審船』対策が不十分」というもので、政府案以上に米国の対テロ戦争、「悪の枢軸論」を意識した、売国的なものであった。小泉は早速これに飛びついて、次期国会での有事法制の再提出にあたって、テロ、「不審船」対策を追加するように政府に指示、民主党を巻き込んだ法案通過を狙っている。
 また、この党の反中国、反朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は一貫したもので、先の中国・瀋陽の日本総領事館「亡命駆け込み事件」なるものに際しては、鳩山が「激しい怒りで行動すべきだ」と強硬論をあおりたてた。菅も5月4日、わざわざ上海まで出向き「台湾の国際機関、特に国連加盟を容認すべき」と、悪質な内政干渉発言で中国を挑発した。「不審船」、「拉致疑惑」など北朝鮮敵視も後を絶たない。
 一方、内政ではどうか。結党直後の98年秋の「金融国会」で、大銀行救済のための60兆円の血税投入案を自ら提案。少数与党で立ち往生していた小渕政権を救い、「金融再生関連法」の成立を推進。財界、金融資本の走狗としての正体を早くも暴露した。また、鳩山代表は今年の1月にも、「3月危機」をささやかれた銀行救済のため「公的資金の投入額は、「(新規国債発行額)30兆円枠の中に入るという議論ではない」と、小泉以上の財界の忠臣ぶり演じて見せている。
 一方で、中小企業基本法改悪、労働基準法改悪などを積極的に提案、賛成し、税制改革でも法人税の引き下げと併せ、課税最低限の引き下げ、外形標準課税導入を提言するなど、労働者、中小商工業者の利益を裏切り、切り捨てる役回りを演じ続けているのである。
 とりわけ小泉政権成立以降、この党は、グローバル資本主義下の多国籍大企業の利益のために、構造改革路線を積極的に推進し、「自民党と政策的にそう差があるわけではない。改革を断行する覚悟と勇気があるかどうかの違いだ」(鳩山)などと言って、小泉と改革政治を競い合っている始末である。昨年参院選では、小泉政権への何の対抗軸をも示せず得票を減らし、党内から激しい執行部批判がわき起こったことは記憶に新しい。「倒幕」「反小泉」などというが、改革政治で小泉にすり寄った1年前のこの事実は、記憶しておく必要がある。

何も期待できない代表選挙

 以上の事実は、憲法問題、安全保障や外交、改革政治など、基本路線では小泉政権と大差はないか、時にいっそう売国的で反国民的な民主党の実態を、暴露して余りある。この党が徹底した対米追随で、労働者、勤労国民の敵であることは明白だ。
 さて、それでは今回の代表選挙で、何事かが変わるのだろうか。
 しかし各候補の「政権構想」を少しでも検討すれば、この点で何ら幻想を抱くことができないことは直ちに明白となる。
 たとえば鳩山は、その政権構想で「対米追随外交からの脱却と対等で健全な日米関係の構築」を掲げるが、「日米同盟は基調」と、日米安保堅持の立場を表明。「日米関係の重要性については十分に認識している」と、ご丁寧にも言い訳してみせる。どこが「対等で健全」なのか。また、菅は「米国に対する基地提供や維持経費支援は、…アジア太平洋地域の安全保障に対するわが国の貢献」と、米東アジア戦略に沿った、日米安保のグローバルな拡大を誓ってみせる。これで、沖縄の米軍基地縮小に取り組むというのだから、まったくの欺まんである。
 若手候補で注目される野田もこの点はまったく同様で、「日米体制を機軸として、朝鮮半島の軟着陸、中国の国際社会への融和」をめざすというのだから、自主性のかけらもない。米東アジア戦略がいう「関与」政策そのものである。
 一方、旧社会党出身の横路氏はどうか。「平和憲法を基礎に」と護憲を強調するが、対米関係は「当面は日米安保条約を維持」と、先輩の村山首相の裏切りを継承し、他候補と何ら変わるところがない。
 改革政治についても同様で、鳩山氏は、改革の「意思と覚悟を有しているのが民主党」と、引き続き改革の本家ぶりを強調し、菅も民主党を基軸とする「非自民救国政権」による大改革を標榜している。横路氏にいたっては「グローバル化する今日、主権国家の下での一国主義的経済政策が機能しなくなっています」などと、米国主導のグローバル資本主義をそのまま容認。規制緩和、市場開放で苦しめられ、存亡の危機に立たされている国内製造業や中小商工業者にすれば、とても認めがたい見解である。
 まさに誰が代表になろうが、外交、内政の基本路線で何の変化も期待できない、これが民主党代表選挙の真実である。

保守支配を補完し支える民主党

 この党の現実政治の中での役割は、その主張、行動の1つひとつが反動的で、売国的だというにととどまらない。それは、行き詰まった小泉政権と外交・内政の基本路線で一致して、野党として国民に何らの対抗軸を提示せず、国民の選択の余地を奪い、結果として、現実に権限と財政を握る与党への期待・依存を高めざるをえなくさせ、小泉政権の延命を助け、支えているということである。小泉はそのことをよく知っている。時に手を差し伸べ、法案審議でも妥協して見せるのは、民主党のこの役割を評価しているからにほかならない。
 さらに民主党は、いよいよ政治再編・政権参加のチャンス到来と、自由党・小沢との連携の下で、保守2大政党制への策動を強めようとしている。米国に見るように、基本政策が同じ保守2大政党制は、財界、支配層が望む最も安上がりで安定的な政治システムだが、国民、労働者にとっては最悪である。
 労働者、労働組合がこうした民主党を支持し、付き従うことは自殺行為である。連合幹部が進める「民主基軸」路線を撤回させ、民主党の裏切りと保守2大政党制への策動を打ち破らなければならない。
 情勢は急で、闘いは不可避だ。敵の術策はいよいよ困難となろう。  労働者階級、勤労国民は、民主党の犯罪性、危険性をはっきり見抜き、幻想を捨て、自らの政治的要求を大衆行動に頼って実現する、確かな道を進まなければならない。


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