20020805 社説

横暴なグローバリズム、揺れる支配層
国の進路が深刻に問われる時代


 米国株価・ドルの暴落・動揺によって、世界の資本主義経済はさらに不安定化している。世界経済は、劇的事態もあり得る不安定で、危機的な局面となった。
 米国への輸出に依存する一方、ひたすら円をドルに替え、米国経済を支え続けてきた日本経済はとりわけ影響が深刻となる。こうした米経済の危機を背景に、今や対米従属で進んできたわが国政治・経済体制のあり方が根本的に問われている。その根本的変革は、疑いもなく情勢が求めていることである。
 これはわが国財界の動向にも反映している。米国主導のグローバリズムの横暴さを前に、従来通りの対米追随で国益が守れるのかどうか、支配層もまた選択を余儀なくされ、大きな動揺が広がっている。当然であろう。
 危機が進むこんにち、国民経済を守り国民政府を樹立するための壮大な国民的戦線をつくる好機である。

いっそう深まる米経済危機 
ドル環流システムの崩壊へ
 7月末発表になった米国の国内総生産(GDP、4−6月期)速報値は、年率換算で1.1%増となり、1−3月期の年率5.0%から大幅に減速した。米景気の「2番底」すらうわさされている。
 併せて、昨年1−3月期、4−6月期はかつてプラス成長と発表されていたが、今回マイナスと訂正された。米経済は昨年から不況に突入、とは以前からいわれていたが、今さらながら米政府自身が昨年1−9月期はマイナスと認めたわけである。
 今回の減速は、個人消費(米GDPの約7割を占める)の鈍化と貿易赤字の拡大が主な原因といわれる。
 以前からいわれていた国内消費の限界が、今回はっきりした。今春いわれた「米国経済の驚異的回復力」は、国内消費に支えられたものであるが、米国家庭の40%が株を運用しており、当然株安は、消費にも大きな影響を及ぼす。今のところ、株を売った余剰資金が住宅部門へ流れ、一時的に住宅バブルがつくりだされている。米国民は、値上がりした住宅を担保に借金を重ね、消費を維持しているだけである。こうした無理が長続きするはずがなく、その限界が露呈した。
 米経済にとって抜き差しならぬ構造的危機は、いわゆるドル環流システムの「逆流」である。米国は、95年にルービンが財務長官に就任して以降、経常収支の赤字を埋め合わせるために、ドル高、高金利をエサに日本などから資金を集め、バブル経済をつくりだしてきた。
 経常赤字を大幅に上回る資本流入によって、米国経済の繁栄は保証されてきたが、深刻なのはこの資本流入が細り始めていることである。2002年第4・4半期、米国に対する海外からの資本流入は1133億ドルで前年同期の3分の1に落ち込んだ。「逆流」現象である。90年代後半から続いていた欧州から米国への投資の鈍化が主な原因である。米国経済への信頼が崩れ始めてきたのである。エンロン、ワールドコムなど一連の不正会計問題の発覚は、その不信を深刻化させ、資金流出に輪をかけている。
 また、昨年の同時テロをきっかけに、軍事費の急膨張が進んでいる。今年1−3月の国防支出は19.6%増とベトナム戦争以来の高水準だった。9月から始まる03年度会計でも国防予算は、15%増と過去20年間で最高の伸びである。国防支出の増大は、当面の景気押し上げに役立つものの、中長期的には財政赤字に転落させ、民間経済への投資を制限する。まさに「両刃の刃」である。いよいよ米国流グローバリズムは、構造的にもがけっぷちに立たされ始めた。

もろに打撃受ける日本経済
わが国支配層に動揺が
  米国の株安は日本の株価にも連動した。株価は1万円を割り込んだが、日経平均株価が1万円まで下落すると、大手銀行12行が抱える含み損は3兆円強に達し、1000円下落するごとに2兆2000億円も膨らむという推計がある。
 小泉政権は、米経済回復による輸出拡大を予想して「景気底入れ宣言」をしたが、米国バブル崩壊で回復のめどが立たなくなった。
 こうした米経済の危機、日本への波及などを背景に、わが国支配層の中に米国主導のグローバリズムに対する疑問・不満が広がり始め、日本独自の国家戦略を模索する動きが始まっている。
 例えば、元大蔵省財務官の榊原英資は『新しい国家をつくるために』で次のように述べている。「(19世紀の)グローバリゼーションの時代は、第1次大戦で唐突に終焉(しゅうえん)を迎え、世界は、経済恐慌と保護主義、そして、ブロック化の時代へ突入していったのである。……この歴史の教訓が、現在にもあてはまるかどうか……。ITバブルの崩壊と共に、世界経済は再び大きく後退する気配を見せている」。「何かのきっかけで平和がおわったとしても何の不思議もない。しかも、大転換と大崩壊の時代である」。一部支配層の時代認識を反映していると見てよい。
 吉川元忠・神奈川大教授は、米国への資金環流システムを米国によるマネー支配(日本のマネー敗戦)として説明し、米国からの自立を訴える。「日本はどうすべきかというと、王道としては、東アジアの通貨圏をつくる以外にない。日中の太いパイプを形成しアジア通貨協力、できれば通貨統合までいければ、ということであるが、ドルの暴落は、実際には、時間のかかるステップを待ってくれない可能性がある」(マネー敗戦再び)と。
 国の進路をめぐって、支配層の動揺、模索する姿を最も端的に見せつけたのは、日本経団連の夏期セミナーであった。日本経団連は7月末「グローバリゼーションの進展と日本の国益」をテーマに、新たな国家戦略を模索するセミナーを開催。
 そこでは、一方で奥田碩会長(トヨタ自動車会長)のように、国内であまりもうからなければ、本社の海外移転もあり得ると、ぬけぬけと高言する多国籍大企業の連中もいる。彼らは「自分の企業が世界を舞台にどうやってもうけるか」ということだけが最大の関心事である。「日本でもうからなければいつでも出て行く」と脅しながら、政府に対して規制緩和、大企業減税など自分たちに都合の良い経済システムを要求している。もちろん、こうした連中に国益、国民経済を語る資格はない。
 小泉政権も多国籍大企業に忠実で、骨の髄まで対米追従の売国政権である。例えば、政府・日銀は、米国への投資資金の流れが細くなっているにもかかわらず、先進国で唯一徹底したドル買い支えを行った。また、4−6月に増加した外貨準備高は446億ドルになるが、そのうち350億ドルが米国債に回ったといわれる。同時期につくりだされた米国経常赤字の4割を占める。米国と心中するつもりだろうか。
 他方で、経団連セミナーでは「米国は冷戦終結後、明確な経済戦略を練って、円高政策などで日本などに対応してきた。日本も同様の国家戦略が必要だ」(東京電力会長)「東アジア経済圏を早急に確立すべきだ」(新日鉄社長)「米国のグローバリズムはご都合主義」などという意見も相次いだという。日本経済を支配する連中が多国籍企業化しているといっても、本国がないとやっていけないのだから、こうした意見が出るのは当然である。
 そもそも、日本経団連が吉川元忠教授を呼ぶこと自体、財界が対米従属のわが国の進路に何かの不安を感じ、新たな国家像を模索している象徴的な出来事といえよう。なぜなら吉川氏は、前述したように、「マネー敗戦」としてわが国のドル従属体制に一貫して警鐘を鳴らしている論客だからである。
 米経済の危機を震源に、世界の危機が深刻化しており、激動は避けられないであろう。米経済の危機をもろに受けるわが国は、この米国につき従って没落させられるのか、それとも新たな進路を打ち立てるのか、今や支配層も含めて国論を二分するような進路の選択が突き付けられている。この問題をめぐって、わが国が揺さぶられている。危機が深まる情勢だからこそ、米主導のグローバリズムに従うことに反対し、国民経済を守る政治をめざす壮大な戦線形成の条件は一気に広がっている。そういう激動の情勢を迎えつつある。

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