20020615(社説)

失業者自らの決起は、画期的な一歩

闘いを全国に広げ、小泉政権揺さぶろう


 今年1〜3月期の経済成長率が発表され、政府は「景気底入れ」をキャンペーンしているが、これはペテンである。国民生活の実態、実感とはまったくかい離しているからである。中でも失業問題、国民生活は悪化こそすれ、まったく改善していない。
 大企業は引き続きリストラを進め、政府は財政改革の名のもとに失業対策や社会保障の切り捨てなど、労働者の生活・労働条件悪化に拍車をかけている。
 こうした事態には、断固たる大衆的闘い以外に打開の道はない。いま、首都圏などで失業者が直接立ち上がりつつある。「1点の火花も広野を焼き尽くす」ように、こんにち、きわめて意義ある闘いであり、さらに全国に広げなければならない。
 広範な大衆的闘いを基礎に、また政治的連携を広げて大きな流れを合流できれば、小泉政権を大きく揺さぶることはまったく可能である。すでに小泉政権は、末期的症状を呈している。失業者、労働者の闘いが前進する好機でもある。立ち上がりつつある失業者と共に闘い、大きく前進しよう。

苦境にあえぐ小泉政権
 この1年有余、「改革」など悪政の限りを尽くしてきた小泉政権だが、断末魔にあえいでいる。
 今国会でも、予算案は通過させたものの、彼らが重要法案とみなす有事法制、郵便関連法案、健康保険法案、個人情報保護法案などは、成立のめどが立たない。法案を成立させるための会期延長問題1つでさえ、自民党内でもめた。
 今や小泉首相の指導性はどこかにあるのかというのが、だれもが指摘するところである。小泉は登場以来、「改革」だの「自民党を壊す」だのと呼号し、あたかも国民経済、国民生活が改善するかのような幻想を振りまいてきた。だが、こんにちの厳しい現実の前にその幻想もほぼ消えた。
 一方でこの1年余、経済指標は軒並み悪化した。1〜3月期の成長率は久しぶりにプラスと発表されたが、「景気底入れ」宣伝など一部のものを除いてだれも信じてはいない。生活、営業が悪化こそすれ、まったく改善していないからだ。国民総生産(DGP)統計の「水増し」さえ各方面から指摘されている。まして、今後の景気の行方はいっそう不安定、不透明である。改革、国民犠牲が進めば、景気の悪化は必然だからである。
 3月からの横浜市長選、参院新潟補選、徳島知事選での与党候補敗北は、小泉政権への批判の結果といわれた。
 これらの結果、発足当初は内閣支持率80%台を維持していたが、いまや支持、不支持が逆転し30%台まで落ち込んでいる。自業自得、悪政強行のツケというべきであろう。それほど、小泉政権に対する勤労国民の恨みは広がっている。
 小泉の窮地は、断固闘い要求を実現するうえでは、有利な条件である。小泉政権の国民犠牲に反撃し、大いに前進すべきときである。

さらなる失業者攻撃を許すな
 小泉政権の悪政のもとで、雇用情勢はなお悪化した。4月の政府統計でも、失業率こそ横ばいになったが、世帯主の失業は108万人、長期失業者(1年以上の失業)も103万人と、いずれも過去最悪を記録。政府は、失業者約375万人というが、職探しをあきらめて職安に行かない人を含めれば、700万〜800万人もいるのが実態とされている。
 それも当然で、経営者はこの時期とばかりに、リストラを続けているからである。最大のもうけを挙げているトヨタはこの3月期、営業利益1兆1200億円と国内企業では最大となった。しかも今春の賃上げもベアゼロで、労働者を絞り上げた。日本経団連の会長ともなり、世界一の自動車企業を狙う奥田トヨタ会長は、「成長の舞台は海外」と高言、もうかる海外にのみ目を向けている。
 自国経済の衰退、国民生活の疲弊などまったく眼中になく、まさにあくなき利潤追求のグローバル資本主義の本質である。わが国大企業はトヨタを手本に、「右へならえ」と引き続きリストラを進め、労働者、下請けを絞っている。こんにち問題となっている「産業空洞化」「地域経済の衰退」は、まさにこうした海外展開の結果である。
 小泉政権は、大企業のリストラを支援、産業再生法や会社分割法などで、大企業のリストラ、人員削減に補助金さえ出す仕組みを維持している。昨年来、「小泉改革に伴う痛み」を強要、昨年12月の青木建設倒産については「改革が順調に進んでいる証拠」と公言し、倒産を奨励するほどのあくどい政府である。
 小泉政権こそ、リストラ、倒産を促進するまさに多国籍大企業の政治的代理人である。大銀行、大企業の意を受け、勤労国民を犠牲にしてグローバル資本主義に対応しようとしているのだ。
 そればかりではない。追い打ちをかけるように失業対策、社会保障の切り捨てを画策している。雇用保険法の全面的改悪や健康保険法改悪などである。来年度の実施を狙う雇用保険法改悪では、失業認定の厳格化、給付の削減、保険料の引き上げなど、失業の増大に逆行して、失業者への保障をいっそう切り捨てようとしている。
 グローバル資本主義を強引に推進し、そのためには飽くなき労働者、失業者抑圧政策を推進する大企業、後押しする小泉政権の攻撃を断固として跳ね返さなくてはならない。

「火花」となり得る失業者の闘い
 こうした時期、首都圏の失業者数百人が「職よこせ」と、国会周辺デモに立ち上がった。戦後の1時期を除き、失業者自らの組織的な闘いは、最近では画期的なことである。
 この行動は、実質700万、800万人ともいわれる全国の失業者の切実な要求を代弁する重要な意義を持つものであった。
 この決起集会では、「今の政府はあてにならない」「やはり皆でやらないと(要求を)かちとれない」「失業者の声が政治に届くように、(運動を)全国に広げよう」と、失業者運動発展の願い、決意が再三強調された。
この運動が大きく前進し、いっそう政治的、社会的反響を呼ぶことによって、要求実現へさらに近づくことになる。またリストラ、首切りを強行する大企業と、それを後押しする小泉政権に対して痛烈な反撃ともなる。
 さらに、この運動の発展はリストラ攻撃をかけられる労働者や、不況や小泉改革で苦しめられる中小商工業者などにも、客観的には励みになるに違いない。国民の不満は、枯れ草のようにうっ積しているからである。今回の国会行動は、「1点の火花」ともなり得る。労働運動にも、何らかの影響があるであろう。
 今後、中間層も含めて勤労諸階級の動きを大きな流れに合流できるならば、国民生活の苦難の元である小泉政治を根本から打破することは大いに可能である。そうした強大な流れをめざさなければならない。そうして国民生活、国民経済を守る政治をめざす必要がある。
 この課題では、労働者の味方の政党ならば、当然失業者の運動に力を提供すべきである。失業者自身の大衆的闘いと同時に、心ある政党同士がこの取り組みで共同すれば、より強力な効果ある運動となるに違いない。社会民主党は、今回の失業者の取り組みに全面的に協力した。
 民主党なども、選挙の時だけ労働者の票をかすめ取るのではなく、本来はこうした大衆行動に協力すべきである。だがこの党は、こうした大衆行動には決して組みしない。
 連合は、今回の失業者の行動に連帯あいさつに来たようだが、本来は連合が率先して失業者を組織すべきである。会長の全国行脚やアンケート調査程度でお茶を濁してはならない。労働者がリストラ、失業で苦しんでいる時、役に立たなければ、組合の存在意義を根底から問われても仕方ないであろう。
 不況の出口が見えず、また国際競争激化の中でリストラが進み、改革が強行されるならば、さらなる失業増大は必至である。「明日の職がない」という最も困難な状況にある労働者階級の要求実現へ向けて、共に闘うことは、国民生活擁護の点からも、また勤労諸階級の闘いの前進にとっても、こんにちますます重大な意義を持っている。

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