20020405(社説)

米国に従う小泉政権を許すな

世界で反発買うブッシュのどう喝政策


 国民からの不信が急拡大している小泉政権だが、安全保障面では引き続き米国追従、軍事大国の策動を続けている。今国会での有事法制づくりなどである。
 一方、米国は昨年のテロ事件以後、「反テロ」を口実に国際政治面でのどう喝政策をいちだんとエスカレートさせている。わが国にも、応分の軍事協力を求めている。米国のグローバル資本主義体制を守るためにとっている、ブッシュ大統領の強硬政策はもとより認められるものではない。いま一見、こわもてに見えるブッシュだが、いつまでも抑圧政策が続けられるわけではない。ブッシュの強気の反面、パレスチナ紛争など、そのほころびは世界で随所に表れつつある。
 ブッシュにつき従う小泉政権の方向は、わが国をいっそう危険で、国益に不利な所に追い込むものである。この道を断固拒否し、諸悪の根源である日米安保条約を破棄し、アジアなどと共生する新しい国の進路の転換をかち取らなければならない。

ブッシュの脅しは「張子のトラ」
 まず、昨年の同時テロ事件以後、エスカレートしたブッシュの横暴な政策を見てみよう。  ブッシュは、「反テロ」を口実に西側諸国を糾合し、できる限りの軍事派遣を狙っている。またこの機に乗じて、中国、ロシアの力も最大限そいでおきたいのであろう。
 ブッシュは「反テロ」を名目に昨年のアフガニスタンに続いて、イラク攻撃を狙っているといわれる。その下準備として3月中旬、チェイニー副大統領を英国と中東諸国11カ国に派遣、画策させた。
 もともとイラク攻撃なるものは、ブッシュの施政方針演説(1月)の「悪の枢軸」論によるものである。そこではイラク、朝鮮民主主義人民共和国、イランの3国を「テロ支援国家」と勝手に定義づけ、当面の標的とした。
 北朝鮮には、核開発問題、ミサイル輸出、韓国との境界線での軍事力削減など、あらゆる要求を突きつけ、締め付けを狙っている。3月には、世界で米国、日本しか所有しないイージス艦を韓国海軍に売却する計画を発表している。韓国軍への露骨なてこ入れである。
 これらの国だけではない。いまや米国は「テロ撲滅」の名のもとに、フィリピン、アラビア半島のイエメン、旧ソ連南部のグルジアにまで軍事顧問団などを派遣し、それらの国の軍事指導あるいは共同作戦を展開している。ロシアの南部では、ウズベキスタンなど数カ国をじわじわと侵食、ロシアに圧力をかけている。
 「核どう喝」では、『核戦力見直し報告』なるものをつくり、核兵器による脅しを最大限利用しようとしている。中国、ロシアを含め7カ国への実際の核使用計画を練っているという。米国はすでに昨年12月、ミサイル防衛(MD)計画を推進するため、ロシアと激しく対立しながら弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から一方的に脱退した。さらに臨界前核実験は、英国をも巻き込んで繰り返しており、地下核実験の再開さえ狙っているという。
 ブッシュは2月に訪中して首脳会談を行い、中国に「反テロ」での協力を取り付けると共に、江沢民国家主席の前で台湾関与、ミサイル防衛計画推進などについて高言した。米国は、旧ソ連に代わり強大国として登場する中国を恐れ、これを極力抑え込もうとやっきとなっている。とく、台湾問題では挑発的である。昨年、台湾へ大型駆逐艦、潜水艦の売却を決め、ブッシュ訪中後の3月には台湾の湯「国防部長」を訪米させ、ウルフォウィッツ米国防副長官と会談させている。
 軍事予算(来年度)も3890億ドル(約51兆円)と過去最大の増額である。
 これら「反テロ」を掲げた一連の強硬政策も、米国が利潤を上げるうえで最も都合の良いグローバル資本主義システムを守りたいがためである。彼らにとって、グローバル資本主義の最後の守り手は、軍事に頼るしかないのである。
 だが、核兵器をも使った米国のどう喝政策はうまく運ぶ保証はどこにもない。むしろ、次第に国際的孤立をつくり出していかざるを得まい。

逆効果、米国がむしろ孤立へ
 ブッシュは反テロ報復戦争が「ベトナム戦争型」になるのを恐れているようだが、むしろ「悪の枢軸」などと戦線を拡大すれば拡大するほど、泥沼にはまり込むことになる。
 端的な例が、パレスチナ問題である。米国は副大統領を派遣して画策したにもかかわらず、パレスチナ紛争は当面、収拾がつかぬほど
激化してしまった。米国がわざわざ副大統領を派遣した本来の狙いは、イラク攻撃協力のための中東諸国工作、それにパレスチナ紛争の鎮静化にあった。そうしないと、また米国が「悪の根源」として再び中東、世界の人びとから、テロも含む攻撃、非難をされかねないからである。
 結果は皮肉というか、当然というか、むしろパレスチナ紛争の火に油を注ぐこととなった。もちろん、紛争の根本原因は長年にわたり、一貫して政治・経済・軍事のすべての面でイスラエルに強力にてこ入れしてきた米国にあることは言うまでもない。最近もブッシュは、イスラエルの攻撃を容認すると言明している。米国は「ダブルスタンダード」とよくいわれるゆえんである。こういう米国が、また恨みを買うのは当然であろう。
 こうした局面で、仮に米国がイラク攻撃に踏み切れば、中東諸国、人民などの非難が一挙に米国に集中することは疑いない。イラクなどへ戦線拡大することも容易ではなくなった。
 さらにブッシュに不利なのは、作用あれば反作用で、「悪の枢軸」といわれる国々が国際的連携をめざす巻き返しを強めていることである。
 例えば、韓国の金大中大統領は4月始めに北朝鮮に特使(元統一相)を派遣して、南北朝鮮の対話再開を呼びかけた。3月末には、インドネシアのメガワティ大統領が北朝鮮を訪問し、2月には金永南最高人民会議委員長がタイ、マレーシアを訪問して経済協力などで合意している。日朝間でさえ、いったんは延期されているが厚生大臣会談も計画された。
 イラクも、イラク外相のイラン訪問によるハタミ大統領との会談、アジズ副首相の中国、ロシア訪問、外相とアナン国連事務総長との約1年ぶりの会談(3月)、湾岸戦争以来初めてとなるアラブ連盟のムサジ事務局長のバクダッド訪問などといった具合である。
 核攻撃の対象とされる中国も「上海協力機構」外相会議を開催(1月)。これは昨年6月設立された中国、ロシア、中央アジア4カ国からなる協議体だが、この6月には首脳会議を開き同機構の「憲章」をつくるという。こうして、独自の国際的連携をめざしている。
 これらに加え、英国を除く欧州の反発あるいは米国と距離をおく動きがある。ブッシュの「悪の枢軸」発言には、「同盟諸国は(米国の)衛星国ではない」(フィッシャー独外相)などと猛烈な反発が起こった。今後、ブッシュが「反テロ」で西側諸国を糾合しようとしても、必ずしも以前ほどうまく運ぶ保証はどこにもない。
 米国は、昨年の同時テロ事件以来、わが国に軍事協力を要求してきた。2月の日米首脳会談でも、ブッシュにいっそうの軍事協力を求められ、小泉首相はそれに従順に従っている。インド洋への自衛隊派遣期間を延期すると共に、いままた米国の東アジア戦略に呼応する有事法制づくりなどをめざしている。
 他方、中国、北朝鮮に対しても「不審船」問題や「拉致」疑惑などをあえて持ち出し、米国と一体となって締め付けを狙っている。こうした小泉政権のアジアと敵対する策動を許してはならない。
 ブッシュ政権が前述のような政策をとる限り、わが国の日米基軸路線からの脱却、日米安保条約の破棄は、ますます重要な課題となる。広範な国民的戦線をつくり、わが国の進路を転換させなければならない。

ページの先頭へ