20020315(社説)

緊急課題の失業問題

数百万失業者と共に、小泉政権に断固迫ろう


  失業問題が、引き続き深刻になっている。最近発表された1月の失業率は5.3%で、前月よりも0.2ポイント下がった。だが、実態は失業者が減ったのではなく、職が見つからないので職探しをあきらめた人が急増したせいである。2002年度はさらに悪化、政府ですら平均5.6%と見込んでいる程である。
 国会の議論は鈴木宗男問題などが専らだが、年度末を迎え、景気も悪くなるばかりで、勤労国民の生活・営業危機はいっそう悪化するばかりである。
 こうしたわが国国民経済の実体を転換させるために、リストラを強行し、自らのみが生き延びようとする大銀行、大企業の政治的代理人として、勤労国民に犠牲を押し付ける小泉政権と断固闘わなければならない。また、地方自治体にも失業者の生活保障、仕事を求めて押し掛ける必要がある。
 この時期、断固たる大衆行動のみが、自らの要求を実現させる。

大量リストラ策す小泉政権、ポーズの失業救済
 現在の失業者は344万人。だが、もうあきらめて職探しに行かない人など、統計に出てこない事実上の失業者は400万人以上いる(総務省)といわれている。だから失業者は、実質上800万人以上にのぼり、失業率も10%をゆうに超えている。その失業者が、日に日に困難な生活状況に追い込まれている。
 ところが、小泉政権は失業者の苦しさには無頓着どころか、改革に伴う「痛み」を強要するだけである。彼らは失業対策として「雇用を生む新産業育成、ミスマッチの解消、セーフティーネット(安全網)の整備」(2月の施政方針演説)などと、きれい事を並べている。
 ではその裏付けとなる来年度予算は、どうか。失業対策費はわずか4880億円にすぎない。中でも失業給付の実績は、失業情勢の悪化に伴い、昨年5月以来、毎月約110万人前後で推移してきた。11月は113万8000人となった。ところが、来年度予算では毎月84万4000人分しか想定していない。雇用保険法をすでに改悪し、定年の者、自発的離職者への給付を大幅カットしたからだという。25万人以上もの給付を切り捨てようというのだ。
 他方で、小泉政権は4兆9560億円と過去最大となった軍事費にはいっさい手を付けず、完全な「聖域」扱いである。いかに小泉政権が、失業者を切り捨てようとしているか分かるというものである。
 もともと、小泉政権は小渕政権以来の「解雇奨励策」を引き継いできた。産業再生法や会社分割法などの法律によって、大企業のリストラ、人員削減に補助金さえ出す仕組みを作っている。
 加えて、不良債権処理など小泉改革が進めば、倒産、リストラ、公務員削減などで、100万〜百数十万人の失業が生まれるというのは、周知のことである。たとえていえば、一方でどしどし100人の首を切り、他方で1人を救済して「セーフティーネット」と誇大宣伝しているようなものである。
 小泉政権は「改革に伴って国民に痛み」を公言してきた非道政権である。彼らは、大銀行、大企業の意を受け、勤労国民を犠牲にしてグローバル資本主義に対応しようとしているのだ。大衆的な闘いによって、この流れを断固阻止し、国民生活、国民経済を守らなければならない。

小泉と同類の民主党、 裏切りの共産党
 この失業問題で、民主党や共産党は「野党」として真剣に取り組んでいるであろうか。
 民主、共産、自由、社民四党は2月下旬、小泉政権に対抗し来年度予算組み替え案で合意した。この組み替え案では、雇用対策はわずか5100億円の追加を求めているだけで、小泉政権の雇用対策と五十歩百歩である。
 民主党は、来年度予算で雇用のセーフティーネットを強化して「安心の確立」を図るという。彼らは昨年来「構造改革と不良債権の抜本的処理を断行する過程では、失業率が一時的に上昇するおそれがある」(経済対策、昨年4月)と、大量の失業も辞さずに改革をやると言明してきた。この点では、小泉と同じ穴のムジナである。
 実際、民主党は小泉政権成立以来、小泉改革の「応援団」を買って最近は、改革が生ぬるいとして「反小泉」のポーズも見せている。民主党はもっと徹底的に膨大な倒産、失業を生む、過酷な改革を断行するというわけである。
 これが、民主党の「雇用対策」、いや「解雇促進策」の実体である。労働者の切実な雇用・生活問題にとって、いかにぎまん的であるか明白であろう。
 共産党の失業問題での対策は、法律制定など解雇規制のルールづくり、サービス残業などをなくしたワークシェアリング、失業者保護の拡充、の3点である。
 共産党の主張が実現されるなら、それはそれで結構なことである。だが、彼らはこの実現のために、専ら国会に頼るだけである。だから、国会内の野党共闘を重視して野党の予算組み替え案に賛成し、またもや人をだました。ましてや、彼らは断固たる大衆的な力に頼って闘い、実現することをしない。彼らは公称150万人の全労連なる組織があるのだから、10万、20万の失業者を組織し、150万の国会デモでもかけたらどうか。
 だが共産党は、「ルールある資本主義」をめざし保守との連立政権に加わりたい一心から、断固たる闘いは支配層の警戒心を呼ぶことをおそれている。だから、「政策提言」でお茶を濁しているのである。この情勢のもとで労働者、失業者への重大な裏切りといえる。
 こうして、民主党や共産党は、労働者や失業者の味方づらをしながら、大企業のリストラや小泉改革に、客観的には手を貸している。決してだまされてはならない。

失業者は決起し、断固闘おう
 すでに深刻な情勢のもとで、初歩的ながら失業者自らが要求を自治体などにぶつけ、立ち上がりつつある。これをさらに全国的に発展させ、ぜひ広範なものにする必要がある。グローバリズムへの対応で、大銀行、大企業、また小泉政権の勤労国民への犠牲路線は明白である。団結した大衆的な闘いこそ、これに最も有効に対抗できる。連合中央が雇用問題でのん気に全国行脚したり、また、今春闘で雇用に関する労資合意などは、この雇用状況、経営の攻撃のもとでは何の役にも立たない。失業者のところに行って大規模に組織化し、まじめに取り組むべきである。
 一方、全国の労働組合また野党も一部は、この課題で模索し、取り組み始めた。さらに、心ある労組や政党、人士は、共同してこの取り組みを大きく発展させなければならない。
 小泉政権は悪政の結果、今や各方面で窮地に立っている。何千、何万の失業者自らの立ち上がりは、こうした小泉を揺さぶり、要求実現にとって良い条件を作り出す。またこの闘いは、労働者、失業者の生活擁護だけでなく、ひいては国民経済全般を守る重要な闘いでもある。したがって、「人ごとではない」と切に感じる国民的共感、支持を強く呼ぶことは疑いない。
 日本労働党は、そうした立場でこの課題に昨年末以来、精力的に努力してきた。引き続き、失業者、広範な労働者、労働組合、心ある諸政党などと共同して、この闘いのために奮闘する。
 状況が深刻なだけに、「打てば響く」で運動の大きな発展の可能性が広がっている。この闘いの発展のために、共同して努力を強めよう。

(注)完全失業率
 労働力人口に占める完全失業者の割合。労働力人口とは、15歳以上の就業者(休業中を含む)と失業者の合計のこと。また完全失業者とは、就業が可能で、求職活動をしている人をさす。あきらめて職探しをしない人が何百万人いても、失業者とされない。だから、日本の失業率は欧米に比べて大幅に低くなり、実態が隠されていると疑われている。

ページの先頭へ