20020305(社説)

追い込まれた小泉政権

断固大衆行動で闘い、前進するとき


 政権発足から10カ月余、小泉政権は今や最大の窮地に立っている。
 1月末の田中外相の更迭以来、国会では鈴木宗男問題、田中前外相の小泉批判など、小泉首相にとって頭の痛いことが相ついだ。それまでほぼ70%台だった支持率は急落、今や50%以下が普通となった。
 一枚看板の「改革」は進まず、経済危機だけが進む。すでに「3月危機説」の3月になったが、なんら有効な手だても打てない。「日本発の恐慌」を恐れる米国も焦っている。
 小泉政権の支持失墜は、何も国会での動きだけが理由ではない。最も大きな背景には、経済危機の深刻化とますます進む国民生活の危機がある。これらが一体となって、小泉不信が噴出している。今まで「改革」に公然と反対できなかったものが、せきを切ったように小泉を批判しており、闘ううえできわめて有利な状況である。小泉の本質的な弱み、また国民意識の変化を確認しておくことは、この時期、闘いを進めるうえで重要である。
 小泉不信は実際は根が深いものであり、したがってそれに基づいて国民生活の危機突破の大きな大衆行動を断固推し進める必要がある。

悪政の限りの小泉政権
国民の不満、不信は明白

 今回の小泉政権の支持失墜は、田中外相更迭、ムネオ問題だけによるものではない。もちろん、その問題での不信もあり、政権批判のきっかけにはなっている。だが、根底には不況下の国民生活と営業での積年の苦しみがある。
 昨年4月、小泉は「自民党の解党的出直し」を掲げ、橋本らを破って「華々しく」自民党総裁に当選した。直ちに小泉政権を発足させた。では小泉がこの10カ月余やったことは何だったのか。
 改革というが、国民に良いことは何もない−−これが「小泉政権10カ月余の総括」である。
 当時と現在の経済状況を比べてみよう。
 成長率は、プラス2.1%(4〜6月期)から、マイナス5.9%(7〜9月期)、マイナス3.2二%(10〜12月期)とマイナス続きとなった。名目成長率では、今後2001年度(3月まで)も、来年度(この4月から)もマイナスになると、暗い見通しを政府は発表した。
 株価も13411円(昨年4月)から、今は10500円前後と約3000円も下落。円相場も、123円台(同)から、133円台にと約10円も下落した。
 倒産は、1575件(同)、1620件(本年1月)で、一月期としては過去最高となった。2001年度全体の倒産件数は、2万件を超え過去最悪になるのではといわれている。
 失業率4.8%(昨4月)、5.3%(本年1月)と確実に上がり、昨年全体は初めて5%台を記録。政府の2002年度見通しは5.6%と、さらなる失業増を認めている。

 と、いった具合で、小泉政権になってからわが国国民経済はろくなことはなかった。
 他方、大銀行、大企業にはどうであったか。至れり尽くせりである。銀行には、いざ破たんという時に備えて15兆円もの公的資金が準備されている。現在、危うい銀行に「公的資金を再注入するか、どうか」をめぐって、政府と日銀などが対立しているが、大銀行にすれば公的資金が使えるので結構な話である。
 同時に、政府は効率の悪い信用金庫、信用組合は全国的につぶしている。昨年来、すでに53もの信金・信組が破たんし、廃止・統合されたりした。これは「不良債権処理」を名目に、金融庁が「検査」などを強め、破たんに追い込んでいるのである。信金・信組は地域経済と密接なため、中小商工業、自営業などにすでに多大な影響が出ている。
 また、スーパー業界第2位のダイエー救済に見られるように、大手は公然と救済している。スーパー・マイカルや青木建設など、中堅どころや中小の倒産、市場からの退場は促進する。青木建設倒産の際、「改革が順調に進んでいる証拠(しょうこ)」と小泉がうそぶいた通りである。
 中小商工業者は現在、仕事がないことや販売不振のうえに、資金繰りに苦しんでいる。そこへ今や銀行からの貸し渋り、貸しはがし(融資の回収)が横行している。銀行側は3月決算期を控え、また小泉改革の目玉、「不良債権処理」の政府指導で中小企業などは眼中にない。中小業者から「大手並みに、銀行は債権放棄してほしい」という声が出るのも当然である。そういう具合で、中小商工業者、地域経済はますます切り捨てられようとしている。
 もちろん、実質1000万人にも達しようかという失業、労働条件の改悪など、労働者の犠牲が最大であることは言うまでもない。
 小泉改革は、全体として大して進まず中途半端などといわれている。だが、進められている部分では、前述のように確実に犠牲が押し付けられている。他にも補助金カットや市町村合併の促進なども、隠然、公然と進められている。
 結局、小泉がやってきたことは、労働者や中小業者、地方に「痛み」を押し付け、大銀行、多国籍大企業は救うことにほかならない。中途半端な「改革」ですら、これほどの犠牲が強いられるのだ。こうした小泉改革なるものには、引き続き断固反対しなければならない。
 小泉が「改革」一辺倒なのも、米国流グローバリズムの道を選択しているからである。多国籍大企業の意を受けて、かれらが国際競争に打ち勝つための効率的な国づくりである。こうした道を転換し、大多数の勤労国民が営業、生活できるような国民経済を確立しなければならない。状況全般からして、これはわが国が切実に迫られている課題である。

小泉改革打ち破る好機
 小泉政権への風当たりは日増しに強まり、景気回復や生活についての国民の要求も強まっている。われわれは、かつての小泉政権への高支持率には、苦しい生活の「現状打破」を願う人びとも含まれていると指摘してきた。小泉改革で利益を得るごく一部の連中と、小泉改革では不利益を受けるが、当面のこの閉塞状況の打開で生活危機を突破したいと願う人びとが、小泉の「現状打破」では混在していたと。つまり、未分化だったわけである。
 だが、小泉政権による「痛み」がこれほど続いてはたまらない。事物の論理は明快である。小泉不信の雰囲気は、いっそう人びとを発言しやすくするに違いない。労働者階級や中小商工業者、農民などは、小泉政権へ生活要求をさらにぶつけ、要求を実現する好機である。
 一方、政局の不安定化、政治再編などをにらみながら、野党の動きも活発化している。小沢自由党党首も「明確な政治姿勢、政策で一致すればいっしょにやる」と、野党などの連携をさぐっている。
 民主党も、小泉政権との「対決姿勢」を強めているが、そのポーズにだまされてはならない。鳩山民主党代表は、昨日まで小泉改革のれっきとした「応援団」であった。今もなお「小泉改革は後退した」として、小泉政権を批判しているのである。要するに、かれらは小泉政権の改革は生ぬるいとしているのだ。前述したように、小泉政権程度の改革でも、すでに国民経済はじめ各方面に多大な犠牲が出ている。これをもっと徹底的に進める、すなわち小泉以上の「痛み」を国民に強いるというのが、民主党の方針である。
 「痛み」への「セーフティーネット(安全網)」などといって、民主党は煙幕をはるが、実態は小泉政権以上に過酷な改革をめざしている。こういう連中に、決して幻想を抱いてはならない。
 共産党は、小泉改革に「総論反対」だが、結局のところかれらが追求するのは、ヨーロッパ並みの「ルールある資本主義」である。グローバリズムの横暴さとの闘いの中で、こうしたあいまいな態度では到底、国民経済を守ることはできない。
 政治再編も思惑に入れながら、国会では野党の策動もあるが、これらは決して頼りにならない。やはり決定的なのは国民の大衆的行動である。この期間、BSE(牛海綿状脳症)問題に悩む農民は何度も行動に立ち上がり、補償などの要求を一部かち取った。一部の失業者も直接、県庁へ押し掛けたりしている。
 国民の発言力が強まる局面である。大いに要求し、国民の発言力が強まる局面である。大いに要求し、大いに行動に立ち上がり、要求実現へ前進しよう

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