20020225(社説)

日米首脳会談/ひたすら米国追従の小泉首相

国の進路の大転換はますます迫られている


 日米首脳会談が2月18日、開かれた。
 ブッシュは、東京で「反テロ戦争」の拡大、日米同盟強化を騒ぎ立てた。今や落ち目の小泉首相はブッシュの言いなりで、大統領訪日を政権の人気ばん回のため最大限演出した 。
 だが、会談の実質はわが国進路にかかわる重大なことである。ブッシュは、「反テロ戦争」への拡大にわが国を巻き込み、同時に米国の「戦略的競争相手」である中国への対処にわが国を「同盟国」として動員しようとしている。
 このブッシュの要求に、小泉はただひたすら従うのみであった。こういう連中に、わが国の進路を断じてゆだねるわけにはいかない。米国の戦略のもとで、中国、朝鮮民主主義人民共和国、そしてアフガンやイラクなどに敵対し、アジアとは決して友好・共生できない、現在の危険な方向に断固反対しなければならない。  米国の強硬姿勢には世界から非難が集中している。小泉政権の方向にもますます疑問、不満が強まっている。日米基軸から脱却し、わが国の進路を大転換させるべき情勢が進んでいる。広い戦線をつくり、この国民的闘いを前進させなければならない。

日米同盟強化を狙うブッシュ政権
 ブッシュは、日本、韓国、中国3国歴訪の最初の訪問国を日本に定めた。ブッシュの訪日の狙いは明白である。
 第1は、「反テロ戦争」拡大への日本の協力取り付けである。特に、ブッシュが一般教書演説(1月)で「悪の枢軸」と攻撃したイラク、イラン、北朝鮮に対する政策である。ブッシュ政権は軍事力行使も含む強硬な姿勢を明確にしている。こうした戦争拡大政策にわが国の支持・協力を得ようというわけである。ブッシュは、昨年の米国テロ事件で揺らいだグローバル資本主義のシステムを保障する「環境整備」のために、再度世界に「最後の保証」=軍事力のにらみをきかせたいのであろう。
 第2は、対北朝鮮、対中国に対処する日米同盟強化の確認である。訪問順も、日本、韓国、中国となっている。
 第3は、デフレスパイラルの様相を呈するわが国経済再生への圧力である。「日本発の恐慌」ともなれば、アジアにおける米国の橋頭堡(ほ)としての日本が揺らぎ、米国の東アジア戦略に支障をきたす。先行き不明な米国経済も打撃を受ける。こうした事態を避け、この機に、不良債権処理、デフレ対策など、経済立て直しを迫ることである。
 小泉は首脳会談で、この狙い通りにブッシュに唯々(いい)諾々と従い、わが国の国益を損なう売国の道にさらに深く踏み込んだ。

まるで言いなりの小泉首相
 首脳会談では、ブッシュの狙い通り小泉首相は「悪の枢軸」発言を支持し、協力を表明した。小泉は「テロとの戦いは日本が常に米国と共にある」とブッシュに応じ、改めて「日米同盟の重要性を確認した」。
 支持率急落、政権運営が薄氷を踏む思いの小泉にとってみれば、ブッシュ来日のパフォーマンスは、政権浮揚にとって、そう悪くはなかったであろう。だがいずれにせよ、小泉政権はまたもや売国的で、危険な道を選択した。
 ブッシュ政権がイラク攻撃に踏み切った場合、日本はアフガン戦争での後方支援を上回る軍事協力を迫られる。ブッシュの選択肢の中には、北朝鮮に対する軍事攻撃も排除されていない。早速、ラムズフェルド米国防長官が来月にも、日本と韓国、フィリピンなどを訪問するといわれる。
 これに呼応して、早くも「日本のテロ対策法は、対象も米同時テロへの対応に限られている。米国がイラクへの武力行使に踏み切った場合も想定し、恒久的な法整備の検討も考慮する必要がある」(読売)と、反動的なお先棒担ぎの主張も始まっている。
 ブッシュの「悪の枢軸」発言に対して、イラク、イラン、北朝鮮はもちろんのこと、フランス、ドイツなどのヨーロッパ、カナダ、中国、ロシア、韓国などから、ブッシュ政権こそ「悪の化身」「悪の権化」といった非難や反発の声が上がっている。

ブッシュの強硬姿勢は国際的に孤立している。
 そうした中で、独りわが国政府のみが他国の政府転覆をふくむ傍若無人な政策に支持と協力を約束したのである。
 一方、首脳会談のもう一つのテーマ、日本の経済危機の問題では、米政府・財界が、前述の理由から日本に対し相当にいら立っているといわれる。
 ブッシュ政権には、日本が経済再生に失敗し中国の経済成長が続けば東アジアが不安定化し、米国の東アジア戦略に悪影響を及ぼすという安全保障上の危機感があるといわれる。大統領は記者会見で「日米同盟はアジア太平洋地域の基礎だ」と改めて述べた。
 だが今回、ブッシュは支持率急落の小泉に注文をつけながらも、精いっぱいかばう演出をした。逆にいえば、国民総犠牲を強いる不良債権処理やデフレ対策など経済再建策は、一定の「対米公約」ともなったのである。
 米国が求めるような徹底的な不良債権処理を進めれば、短期的には相当なデフレ圧力が加わる。政府が検討しているような月並みなデフレ対応策や、限界に達しつつある金融緩和でこの圧力を和らげられるか疑問の声も出ている。ブッシュに明言した構造改革とデフレ克服の二大公約が今後、小泉内閣に重い課題としてのしかかることは間違いない。
 日米基軸からの脱却、日米安保条約を破棄しない限り、わが国は国の平和と安全を脅かす米国の危険な道に引きずり込まれるのである。

対米従属脱するため国民的うねりを
 今回の日米会談は、その後の米韓、米中首脳会談を見ても、小泉首相の追従ぶりが突出している。韓国、中国では対米協調が演出される一方、また対立点も明確で露骨となった。例えば、韓国では対北朝鮮政策をめぐって、中国では台湾問題をめぐってという具合である。ところが小泉首相は、国民に「改革」を唱える時はライオンのようだが、ブッシュの前ではまるで子犬である。
 これでは、1月に小泉首相がアジアを歴訪したものの、アジアから日本の主体性のなんらない対米姿勢を見すかされ、ばかにされて、信頼を得るはずがない。
 われわれは昨年来、米国によるアフガンへの戦争に反対してきた。ましてやその拡大は断じて許されない。それに従って、自衛隊を際限なく海外派遣する小泉政権の危険性は、いっそう明らかになってきている。
 この小泉政権の道への疑問が広がりつつある。他方、支持率急落、改革も進まず、国会運営も困難などで、小泉政権は最大の窮地に立ちつつある。景気も良くならず、生活に困る勤労国民の不満も充満しつつある。
 わが国の外交・進路の問題、グローバリズム下の国民生活の困窮さ、これらはわが国のあり方の大転換を迫っている。それを実現する声は、保守層も含め広がっている。広範な国民的なうねりで、この転換を実現しなければならない。


ブッシュの「悪の枢軸」発言
 ブッシュ米大統領が1月29日、議会で内外情勢を報告し今後1年間の施政方針を述べる一般教書演説で、アフガン攻撃に続いて「反テロ戦争」を拡大する口実として言い出した。核兵器など大量破壊兵器を拡散し、テロを支援している北朝鮮、イラン、イラクが世界で「悪の枢軸」を形成しているという宣伝である。これに対し、当の3カ国や欧州、カナダ、中国、ロシア、韓国などからいっせいに反発がわき起こり、ブッシュはむしろ「悪の頭目」として国際世論で孤立しつつある。

ページの先頭へ