20011125

攻防続く小泉改革

国民犠牲反対、高まる抵抗と連携して闘おう


 「小泉改革」の当面の目玉とされていた七特殊法人の廃止・民営化を、十一月二十二日、小泉首相と与党とが決めた。これで小泉政権は、改革の突破口を切り開いたかのように喜んでいる。
 だがこれは、六月に決めた構造改革の基本方針(いわゆる「骨太の方針」)の中のほんの入り口にすぎない。かれらはさらに、肝心の銀行の不良債権処理、他の特殊法人や地方交付税、道路特定財源問題などの「改革」を狙っている。この問題でも、来年度予算をめぐっても、激しい抵抗、攻防が予想される。
 加えて米国テロ事件後、不況はいっそう加速した。景気動向は、改革を強行するには最悪の環境となりつつある。何よりも、地方の首長が高速道路建設促進を求め相ついで決起大会を開くなど、いわゆる「抵抗勢力」の全国や与党内での抵抗は激しさを増している。
 この不況下でさらに失業、倒産増大に輪をかけ、地方や社会保障も容赦なく切り捨てる小泉改革。本格的な今後のそうした攻撃を、広く連携して阻止しなければならない。その戦線は、ますます広がっている。

7特殊法人は突破口になるか
 特殊法人改革をめぐっては、すでに今夏以来、攻防戦が繰り広げられてきた。九月始め各省庁は、小泉首相の「原則廃止・民営化」という方針に対して、ほとんど「ゼロ回答」を提出していた。中でも道路四公団については「三公団統合後、二十年間で民営」(国土交通省)などというものさえあった。真っ向から首相とは対立していたのである。
 政府としては、七十七ある特殊法人の見直し計画を十二月中旬に確定したいとしていた。中でも、突破口とみなしていた道路公団など七つについては十一月中と予定。したがって、七法人の廃止・民営化が当面の焦点となり、これをめぐって小泉と「抵抗勢力」との攻防も激化していた。
 結局、与党三党の党首会談が十一月二十二日行われ、道路四公団は統合後に民営化、住宅金融公庫、都市基盤整備公団、石油公団は廃止との決定を出した。小泉は、これで「特殊法人改革」、ひいては小泉改革の突破口が開かれたと喜んだ。
 同時に、道路四公団の統合形態や高速道路整備計画(九千三百四十二キロメートル)の見直しなどは、今後第三者機関での検討ということになった。石油公団なども同様で、廃止しても事業などは他の特殊法人で継承するともいわれている。
 したがって、高速道の未整備約二千四百キロメートルは大して影響を受けないともいう。形式上「廃止・民営化」を決めたものの、その実際の推移は今後の力関係、検討次第のようである。だから小泉は改革の「名」を取り、抵抗勢力は「実」を守ったと相互に騒いでいる。
 そもそも特殊法人そのものは、戦後経済の復興・成長過程で生まれたものである。産業政策や国民統治の必要性などからである。だから、例えば今回の金融公庫の廃止でも、低所得者向けの融資の行方が問題となった。金融公庫は、庶民が町の銀行から高利で住宅融資を借りられないので、政府出資の公庫が低利のそれを保証する仕組みである。だから今回の住宅公団廃止に伴う代替措置として、小泉政権はそういう人に減税などの案も検討しているという。つまり、わが国の生活水準からその事業の必要性を認めざるを得ない。それを今回、効率性の名のもとに切り捨てようとしているのが実態である。
 改革、効率の名のもとに、各方面で国民犠牲が進められようとしており、断じて許されない。

小泉改革は国民犠牲そのもの
 そもそも支配層が小泉首相を担ぎだし、改革断行を狙ったのは、大銀行、大企業などが国際競争に打ち勝つ国の構造改革を図るためだった。徹底した効率重視で、小さな政府をめざす経済社会構造である。また支配層は、膨大な借金の軽減、国の財政再建という緊急課題も迫られている。
 したがって、六月に決定された小泉改革の「骨太の方針」は、国民総犠牲を強いるものである。大企業が国際競争に勝つためだから、当然大多数の勤労国民の生活は無視する。倒産、失業が激増し、高齢者を始め社会保障も犠牲にする、地方交付金削減などによって地方経済も切り捨てる、という事態を招かざるを得ない。
 具体的には、不良債権処理、特殊法人改革、公共事業の見直し、道路特定財源見直し、地方交付税など地方への給付見直し、社会保障の見直しなどがあげられている。手法は、市場原理を重視し、官から民への移行、小さな政府をめざすものであった。

各界からいっせいに強まる抵抗
 こうした諸階層に犠牲を強いる改革に、予算編成期とも重なって抵抗の火は燃え盛るばかりである。
 特に高速道建設の地方の要求は切実である。最近だけでも、全国四十四知事が高速道整備の緊急アピール(十月末)、全国の知事、市町村長らによる道路整備促進大会(十一月十九日)などが続き、またブロック単位、県単位の高速道促進決起大会は日常的である。全国知事会・市長会・町村会など地方六団体は全国大会(十一月二十一日)で「地方交付税や道路特定財源の充実確保、高速道路促進」などを決議した。
 さらに、中小企業団体を網羅する全国大会(十月)では「政府系金融機関の民営化反対」を打ち出し、医療制度改悪に対しては医師会、連合、保健組合がいっせいに反対し、大阪では医師会、薬剤師会など二万人が反対集会を開催した(十一月二十三日)。
 こうした声や地方の要求を背景に、国会内最大の「抵抗勢力」が自民党内に橋本派などを中心に存在する。
 ところが、野党づらした民主党は、小泉改革の応援団の役を積極的に買って出ている。最近の党首討論でも、鳩山代表は特殊法人問題で、小泉首相に「与野党を超えて支持する」と強調する始末である。民主党は、小泉改革に反対する全国の声に背を向け、財界政治の別動隊の役割を演じているのだ。もちろん、政治再編の腹黒い意図を持ってであるが、今回、テロ関連法案に続いて小泉へのすり寄りに失敗した。
 他方、共産党は一見、小泉改革に反対する姿勢を見せてきた。だが実質は、「ムダな公共事業」「ムダな高速道」のキャンペーンをはり続け、前述のような各地の要求に背を向け小泉と歩調を合わせている。かれらもまた、現実路線を売り込むことで支配層に認知を求める裏切り者である。こうした連中には決して期待せず、広範な人びとが連携して断固闘うことが重要である。
 しかも、米国テロ事件をきっかけに、景気は連続のマイナス成長といよいよ悪化している。あれほど小泉自身が反対していた第二次補正予算を組まざるを得ないほどである。改革断行の環境は、小泉にとって、ますます不利になっている。
 抵抗の声と行動は、小泉政権がさらに改革の具体化を進める中で、いっそう高まっている。連携をつくりつつ、闘いをいっそう全国で繰り広げる好機である。


特殊法人
 国の責任で事業を企業的に実施する公団、事業団、政府系銀行、公庫などをさす。公共性と企業性の調和を掲げつつ、法律によって設立されている。小泉改革のもと、その効率性のみが問題視され、切り捨てられようとしている。日本道路公団、日本輸出入銀行、住宅金融公庫など現在77法人がある。他に、法律に基づき民間の発意で設立される認可法人は、86ある。

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