20011115(社説)

テロ法案などで民主・公明が反動的役割果たす

大衆的闘い、共同の戦線で、
国民大多数の政治を


 米国のアフガン攻撃が泥沼化する中で、小泉政権は米国に忠義立てして、ついに海上自衛隊艦隊を戦闘地域周辺に派遣した。
 民主党、公明党の反動的本質が、テロ関連法案の成立過程、またその後急浮上した衆院の中選挙区制復活案をめぐってまたもや暴露された。小泉首相の政権基盤強化のための権謀術数もあばかれた。
 だが、国会でどんな駆け引きをしようとも、結局のところ、かれらの政治自体は対米追従で、かつわが国の軍事大国化を狙う危険な道以外の何ものでもない。ましてや、経済的危機の下で、失業、リストラ、経営破たんにさらされる、国民大多数の未曾有(みぞう)の苦しい現実を打開する政治とは、およそかけ離れたものである。そういう政治再編、党利党略である。
 現在の国民生活危機突破、国の進路問題の打開など、広範な人びとが連携して、各所で大きな闘いを巻き起こすことが迫られている。そして、社会民主勢力など政党、政派を含む共同の政治戦線をつくり、国民大多数の政治実現へ前進していく必要がある。

自衛隊海外派兵を支持する民主党
小泉・鳩山会談の決裂は茶番劇
 今国会でのテロ関連法案をめぐる民主党の動きは、かれらが国の進路の問題で小泉政権と基本的に変わらぬ本質を、いま一度暴露した。
 小泉首相は当初、テロ関連法案の成立をもくろむにあたり、特に野党民主党の賛成とりつけに気を配った。その狙いは、スムーズな国会運営と同時に、今後いっそう激化する「小泉改革」の攻防戦に備えて、民主党との連携を図り権力基盤の幅をさらに広げておこうとするものであった。
 民主党の側は、テロ対策には「与野党の壁を超えて協力すべきだ」(鳩山代表)と、新法制定を含め自衛隊の派遣には最初から基本的に賛成していた。ただ、さまざまな思惑から、国会承認問題、新たな国連決議、武器・弾薬輸送問題などの点で、政府案に比べ「高いハードル」を設定した。
 鳩山代表らも、この法案で小泉首相と合意できれば、政治再編を視野に、特殊法人改革など改革問題でも同じ構図になると期待を膨らませた。しかしその後、民主党執行部は揺れ続けた。最終的には「民主党が法案を丸のみ」という印象を与えるのは得策でないと、「国会の事前承認」を賛成の条件とすることを決めた。
 一方、連立与党の公明党は、小泉首相と民主党のパイプが太くなれば、政権内での地盤沈下、「半与党」につながることを恐れた。そこで、小泉・鳩山会談の前に開かれた与党三党の幹事長会談で、公明党の冬柴幹事長は「事後承認がギリギリの線」と強硬に主張、保守党もこれに同調して民主党との妥協の余地はなくなった。
 こうして十月十五日の党首会談は決裂、この茶番劇は終わった。法案は十月十六日に衆院特別委員会を通過、十月二十九日正式に成立した。
 結局、民主党は一見、法案に反対したかに見える。だが実際は、「国会事前承認」という「手続き」の所に固執しただけで、肝心の自衛隊の米軍支援、海外派兵自体は推進派なのである。この事実は、はっきりと押さえておかなければならない。日米安保堅持の民主党の路線からは、当然ともいえる。米帝国主義の要求、また自衛隊海外派兵を望むわが国財界の志向にはこたえるものである(多少ごねるが)。
 今回の茶番劇を通じて、労働者階級は、こうした連中の野党づらした見かけにだまされず、支持を断固拒否する必要がある。
 また、公明党も終始、自公保連立の枠組み維持、そこでの地位確保に汲々とした。「平和の党」の看板などお笑い草で、わが国を危険な道にさらすなど、国の前途のことなど眼中にもないこともはっきりした。

生き残りへ中選挙区制めざす公明党
党利党略で、連立固守の策動
 次いで、公明党の党利党略の醜態を見せたのが、衆院での中選挙区制復活騒動である。
 テロ関連法案審議と並行して、自公保の与党間では衆院での中選挙区制一部復活案が急浮上した。与党三党は、すでに九月に一部復活で合意していた。その後、いくつかの案が出たが、最終的に「二人区十二、三人区二」をつくるという案が浮上。千葉県や神奈川県内を合区して「三人区」を創設するなどの案である。これは十月二十四日、三党幹事長合意となった。
 そもそも公明党は、一九九九年十月に「衆院選挙制度改革」を含む自自公連立合意が成立した時から、「中選挙区制復活」を狙っていたという。昨年六月の衆院選で、小選挙区で擁立した十八人のうち十一人が落選した公明党としては、この課題は党の存亡にかかわるより切実な重大事となっていた。
 今年になると、その要求はいっそう強まった。自自公連立離脱をちらつかせたり、創価学会票をエサにしたり、国連平和維持活動(PKO)協力法「改正」への協力を条件にしたりした。
 しかし、あまりにも党利党略が露骨すぎたので、この案は当然にもいっせいに国民の批判を浴びた。そして十月三十一日、与党党首会談で一年間の先送りということに追い込まれた。この問題でも、小泉、森前首相など各勢力の政治再編の思惑が飛び交った。
 今回、恥も外聞もない自己保身の公明党の企みは失敗した。もともと、公明党が自党の生き残りのため、自民党にすり寄って自公保連立(最初は自民・自由・公明)に参加したこと自体、保守政権延命のきわめて犯罪的な行為である。「平和・福祉の党」などのきれいな看板は、とうに投げ捨てた。最近は、テロ関連法案や国連平和維持活動(PKO)協力法改悪などを「人質」にとるなど、悪どさはいちだんと増している。党内からも、ついに「公明党=悪者論は国民に定着した」(同党全国会議)という悲鳴、不満が噴出する始末である。こうして勤労国民に背を向け、反動政治を進める公明党にはますます前途がなくなっているのは明らかである。

国民の不満は蓄積
反動的政治再編打ち破ろう
 小泉首相は、今月始めのブルネイでの「東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3」首脳会議で、自衛隊海外派遣に理解を得られたと得意げに語ったという。だが、すでに靖国問題、歴史教科書問題などで批判を浴びたわが国は、今回、自衛隊派遣などアジアでは突出したテロ対応により、アジア諸国でいっそう孤立を深めている。日米安保体制にしばられている結果でもある。国の進路の問題で打開が求められている。
 他方、いっそう悪化する不況のもとで、深刻化する国民生活の危機突破も喫緊の課題である。
 だが前述のように、国会ではそんな国民生活の苦しい実情とは無縁な茶番劇が演じられている。小泉は、民主党との連携に成功はしなかった。公明党の策動も一進一退だ。結局、かれらの政党再編をにらみながらの策動は、勤労国民から見れば誰が悪政を担うか、その組み合わせはどうか、という問題にすぎない。
 こうした政治再編、将来的には保守二大政党制を狙うのであろうが、これは悪政を継続しようという限り断固打ち破らなければならない。
 テロ事件以後、米国の戦争、小泉政権の対応に対し、規模の大小はあれ全国で闘いが巻き起こっている。また不況と国民犠牲の政治に、不満がますます蓄積している。それらを反映して、改革問題など支配層内部でも矛盾が日増しに激化している。
 こうした時、事態打開のために、現状を憂える政党、政派、労働組合などが共同して大きな闘いを組織する必要がある。それを背景に、社会民主勢力など政党、政派を含む共同の政治戦線をつくり、国民大多数の政治実現へ前進していくことが求められている。こうした戦線形成がまた、反国民的な政治再編、保守二大政党制をも打ち破る重要な力になるに違いない。
 わが国のフツフツとした現状を見れば、そうした大きな闘い、政治戦線をつくることは可能な情勢である。

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